56 / 60
第56話 勇者に選ばれたのは
しおりを挟む結局、話しあいの結果、カイト達のパーティは解散する事になった。
マリアは、残りの人生を救世……教会に所属し回復師(ヒーラー)としての人生を送るようだ。
リタはというとマリアの護衛をしてその旅に加わるそうだ。
そういう人生も良いのかも知れない。
そして、二人の旅にリアもついて行く事を決めた。
案外、二人よりは事務仕事が得意そうだからこれはこれでよいかも知れない。
バランスがとれている。
そして、勇者パーティが解散した事により俺の仕事は無事終わりを告げる事になる。
最後の報告書を作り、冒険者ギルドを介して国に、教会に報告して無事、お役御免となる。
長いようで短い旅だった。
パーティ解散の理由は『性格の不一致』で連携がとれない。
そう報告書を仕上げた。
流石に性病については書くのはやめた。
最後までカイトから三人に謝罪は無く……
『この世界にゃ、お前達より綺麗な女は沢山いるからな……』
のカイトの捨て台詞に三人が
『最低』
『見損なったよ!』
『カイトなんて好きになるんじゃ無かった』
と応対して終わった。
◆◆◆
俺は三人を見送る為に街はずれまで来ている。
「マリア達は何処に行くんだ?」
「そうね、折角だから、まず最初は聖都に行ってみようと思うのよ! そこで修行して腕を磨くわ! 聖都なら三人一緒に腕を磨けるからね」
「うん、僕は聖教騎士団で修行するつもり」
「私も魔法の腕を磨くわ」
魔王討伐をしない今、実戦より地道に力をつけた方が確かによいかも知れない。
「多分、もう会うことは無いだろう。幸せにな」
「「「リヒトもね」」」
三人を見送り、俺はカイトが居る宿屋へ向かった。
◆◆◆
「それでカイト……これはどう言うつもりかな?」
俺にはどうしても気になっていた事があった。
「どう言うつもりとは? 何が言いたい!」
「お前、本当は性病なんかに掛かってないだろう? あの五人ともヤって無いよな?」
「どうして、そう思うんだ?」
あの子たちはオークの苗床になっていた。
オークのペニスは人間の拳くらいある。
そんな物を突っ込まれていた人間相手にヤレるわけがない。
「オークの苗床にされていた人間は……出来ないだろうが」
「いや、やったよ……裸で抱き合って手で抜いて貰った」
それなら性病になんてならないよな。
「だったら性病になんてなってないよな?」
「そうだな! 最後までヤッたなんて俺は言ってない……心が今にも壊れそうだし、恐怖にさいなまれていたから、裸で抱き合った。手でして貰ったのは……自分を卑下していて寂しそうだから、そう言う行為をしただけだ、まぁ最後までしなくても愛する形もある……それを伝えるためだ」
「話は解ったが、それならなぜ三人にそれを言わなかったんだ」
「なぁ、リヒト……お前は俺が魔王に勝てると思うか? 本音で言ってくれ!」
恐らく勝てない可能性が高い。
どう考えても伝説で聞く勇者には届いてない気がする。
「……多分勝てない」
「だろう? それなら4人で死ぬことは無いって! 俺一人が死ねば良い事だ」
「カイト……お前……」
「全員で逃げたら、それなりに責任を皆が追う事になるよな? 俺が馬鹿やってパーティを解散して、俺が一人で魔王と戦うと言うのなら……彼奴らが責任を負うことは無いよな」
「それじゃ……」
「ああっ、単独勇者になって魔王城を目指すさ……まぁ俺は恐らくたどり着けずに死ぬだろうが……彼奴らは助かる……これで良いんだ」
「なぜ、そこ迄……」
「俺が死ぬ事で、幼馴染で自分の女のあいつ等が助かるなら安いもんだ」
「そうか……」
こいつ本当に変わったな。
「お前……カッコ良いよ」
「そうか」
カイトが勇者に選ばれたのが解った気がした。
44
お気に入りに追加
192
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

僕の秘密を知った自称勇者が聖剣を寄越せと言ってきたので渡してみた
黒木メイ
ファンタジー
世界に一人しかいないと言われている『勇者』。
その『勇者』は今、ワグナー王国にいるらしい。
曖昧なのには理由があった。
『勇者』だと思わしき少年、レンが頑なに「僕は勇者じゃない」と言っているからだ。
どんなに周りが勇者だと持て囃してもレンは認めようとしない。
※小説家になろうにも随時転載中。
レンはただ、ある目的のついでに人々を助けただけだと言う。
それでも皆はレンが勇者だと思っていた。
突如日本という国から彼らが転移してくるまでは。
はたして、レンは本当に勇者ではないのか……。
ざまぁあり・友情あり・謎ありな作品です。
※小説家になろう、カクヨム、ネオページにも掲載。

日本列島、時震により転移す!
黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。

凡人がおまけ召喚されてしまった件
根鳥 泰造
ファンタジー
勇者召喚に巻き込まれて、異世界にきてしまった祐介。最初は勇者の様に大切に扱われていたが、ごく普通の才能しかないので、冷遇されるようになり、ついには王宮から追い出される。
仕方なく冒険者登録することにしたが、この世界では希少なヒーラー適正を持っていた。一年掛けて治癒魔法を習得し、治癒剣士となると、引く手あまたに。しかも、彼は『強欲』という大罪スキルを持っていて、倒した敵のスキルを自分のものにできるのだ。
それらのお蔭で、才能は凡人でも、数多のスキルで能力を補い、熟練度は飛びぬけ、高難度クエストも熟せる有名冒険者となる。そして、裏では気配消去や不可視化スキルを活かして、暗殺という裏の仕事も始めた。
異世界に来て八年後、その暗殺依頼で、召喚勇者の暗殺を受けたのだが、それは祐介を捕まえるための罠だった。祐介が暗殺者になっていると知った勇者が、改心させよう企てたもので、その後は勇者一行に加わり、魔王討伐の旅に同行することに。
最初は脅され渋々同行していた祐介も、勇者や仲間の思いをしり、どんどん勇者が好きになり、勇者から告白までされる。
だが、魔王を討伐を成し遂げるも、魔王戦で勇者は祐介を庇い、障害者になる。
祐介は、勇者の嘘で、病院を作り、医師の道を歩みだすのだった。
【完結】帝国から追放された最強のチーム、リミッター外して無双する
エース皇命
ファンタジー
【HOTランキング2位獲得作品】
スペイゴール大陸最強の帝国、ユハ帝国。
帝国に仕え、最強の戦力を誇っていたチーム、『デイブレイク』は、突然議会から追放を言い渡される。
しかし帝国は気づいていなかった。彼らの力が帝国を拡大し、恐るべき戦力を誇示していたことに。
自由になった『デイブレイク』のメンバー、エルフのクリス、バランス型のアキラ、強大な魔力を宿すジャック、杖さばきの達人ランラン、絶世の美女シエナは、今まで抑えていた実力を完全開放し、ゼロからユハ帝国を超える国を建国していく。
※この世界では、杖と魔法を使って戦闘を行います。しかし、あの稲妻型の傷を持つメガネの少年のように戦うわけではありません。どうやって戦うのかは、本文を読んでのお楽しみです。杖で戦う戦士のことを、本文では杖士(ブレイカー)と描写しています。
※舞台の雰囲気は中世ヨーロッパ〜近世ヨーロッパに近いです。
〜『デイブレイク』のメンバー紹介〜
・クリス(男・エルフ・570歳)
チームのリーダー。もともとはエルフの貴族の家系だったため、上品で高潔。白く透明感のある肌に、整った顔立ちである。エルフ特有のとがった耳も特徴的。メンバーからも信頼されているが……
・アキラ(男・人間・29歳)
杖術、身体能力、頭脳、魔力など、あらゆる面のバランスが取れたチームの主力。独特なユーモアのセンスがあり、ムードメーカーでもある。唯一の弱点が……
・ジャック(男・人間・34歳)
怪物級の魔力を持つ杖士。その魔力が強大すぎるがゆえに、普段はその魔力を抑え込んでいるため、感情をあまり出さない。チームで唯一の黒人で、ドレッドヘアが特徴的。戦闘で右腕を失って以来義手を装着しているが……
・ランラン(女・人間・25歳)
優れた杖の腕前を持ち、チームを支える杖士。陽気でチャレンジャーな一面もあり、可愛さも武器である。性格の共通点から、アキラと親しく、親友である。しかし実は……
・シエナ(女・人間・28歳)
絶世の美女。とはいっても杖士としての実力も高く、アキラと同じくバランス型である。誰もが羨む美貌をもっているが、本人はあまり自信がないらしく、相手の反応を確認しながら静かに話す。あるメンバーのことが……

帰って来た勇者、現代の世界を引っ掻きまわす
黄昏人
ファンタジー
ハヤトは15歳、中学3年生の時に異世界に召喚され、7年の苦労の後、22歳にて魔族と魔王を滅ぼして日本に帰還した。帰還の際には、莫大な財宝を持たされ、さらに身につけた魔法を始めとする能力も保持できたが、マナの濃度の低い地球における能力は限定的なものであった。しかし、それでも圧倒的な体力と戦闘能力、限定的とは言え魔法能力は現代日本を、いや世界を大きく動かすのであった。
4年前に書いたものをリライトして載せてみます。

ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる