勇者パーティのサポートをする代わりに姉の様なアラサーの粗雑な女闘士を貰いました。

石のやっさん

文字の大きさ
上 下
47 / 60

第47話 剣聖 卑怯を教える

しおりを挟む

「石割――っ」

その後もカイト達の様子が気になった俺は他の二人の様子も見に行く事にした。

リタは剣聖。

普通に考えれば、剣の修行をしている筈だ。

恐らく、俺の予想では近くの森に居る。

そう思って見に来たんだが……居た。

一心不乱に剣で大きな石を叩いている。

剣聖の凄い所は、成長すれば『何でも斬れる』存在になる事が。

この世界では剣聖以外滅多に身につかないスキル『斬鉄』がある。

名前こそ『斬鉄』だが、実際は鉄どころかドラゴンの強靭な鱗さえ切断する。なんでも斬れるスキルだ。

勿論、これは最初から覚えている訳でなく成長したら身につくスキルだ。

その前段階が『石割り』

これは最初から剣聖なら持っているスキルで、その名の通り石すら割るスキルだ。

このスキルを鍛えていけば、やがて斬鉄のスキルを覚える事になる。

「リタ、精が出るな」

「あっ!? リヒト、ゴメン今迄気がつかなかったよ」

それだけ剣を集中して真剣に振っていた。

そういう事だろう。

「いや、いいんだ、だけど随分真剣に剣を振っているんだな」

「まぁね……ここに来るまでに実際にこの目で酷い目に遭った人たちを見たからね…..だから、少しでも早く強くなって、人々を助けたいんだ」

「どうして、そこ迄……」

「だって僕は剣聖だからね。 勇者のように人々に希望与えるようなカリスマは無い。聖女のように人を治療する力は無いからね。ただただ剣を振り、相手を殺す。それが剣聖。他の者みたいに他には何も無い。純粋な攻撃力、破壊力、それを持っているのが僕だ」

「そうだね」

「うん、だから僕の役目は殺す事。魔物も魔族も殺して殺して殺しぬく事。それしかない……その僕がこの体たらく、だから人が救えなかった」

「だが、それはまだ旅に出たばかりだから仕方ないだろう?」

「うん、だけど、それは甘え。剣聖のジョブを持つ僕に求められるのは戦闘力だけだよ。あの言葉凄く応えたよ」

「あの言葉?」

「そう『勇者の旅は救世の旅。人々を救う旅でもあるんだ。その旅の中でオークやオーガ等に襲われている村や町を救う。助けてあげれば『勇者様ありがとう』となる。その反面、今みたいにサボっていると、村や町が滅んで『なんで勇者様来てくれなかったの』と生き残った人に一生恨まれる。そのうち、歩くだけで石をぶつけられるようになる事すらある。それが嫌なら『死ぬ程努力する。それだけだ』ってカイトに言った奴だよ。勇者を剣聖に置き換えたらまんま僕に当て嵌まるからね……尤も実際に、被害にあった人を見るまでは解らなかったんだ……僕って馬鹿だよね』

「それに気がつくなら、馬鹿じゃないよ」

これがあのだらけていたリタなのか?

今なら、リタが剣聖に選ばれたのが解かる気がする。

「そう? そう言って貰えると助かるよ。それでさぁ、リヒト少しで良いから剣の相手してくれない」

俺にリタの相手が務まるのか……

まぁ良いや。

リタには一つ教えてあげたい事がある。

「良いけど!? ただ、戦い方は冒険者流。それで良いなら相手してやるよ」

「僕は別に構わないよ……剣聖だからね、手加減はしてあげる! だけど、それでも怪我したらゴメンね」

この先リタが成長したら、これは通じない。

だが、今ならまだ通じる筈だ。

「そう」

「先手は譲ってあげる……ほら来なよ」

「それじゃ……行くよ! 必殺……ハバネロアタック」

「うっペぺ……ああっああ痛いーーっ目が痛いし……ハァハァいやぁぁぁぁーー痛いーーーっ苦しいよ……ハァハァ」

ハバネロアタックとは物凄く辛い調味料やそのほかを風上からぶちまける技だ。

風の強い日に相手が風下にいたらまず初見じゃ防げない。

ちなみに、今回は死なない様な物を使ったが、本当の闘いならこれに毒を混ぜて使う。

「はははっ、これは撃退用だから水ですすげばすぐにおさまるよ。今回は俺の勝ちだね、はい水」

涙目でリタが見ている。

「ううっ、まだ目が痛くて涙がでているし、鼻水も……卑怯だよ......」

「うん、卑怯だよ! だけど相手が盗賊や魔族だったらリタは殺されているよ……戦いには卑怯なんて無い。生きている奴が勝ち。寧ろ卑怯な方法で勝てるなら『やれ』だ……覚えておいた方が良いよ」

盗賊ならこの位の事はヤル。

こういう相手もいるんだ。

それは教えておいた方が良い。

「解った……」

「それじゃ俺は行くね」

「リヒト、ありがとう」

卑怯な方法で負けてお礼が言える。

随分変わったものだ。

「どう致しまして」

多分、リタももう大丈夫だ。


しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

少し冷めた村人少年の冒険記

mizuno sei
ファンタジー
 辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。  トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。  優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。

おっさんなのに異世界召喚されたらしいので適当に生きてみることにした

高鉢 健太
ファンタジー
 ふと気づけば見知らぬ石造りの建物の中に居た。どうやら召喚によって異世界転移させられたらしかった。  ラノベでよくある展開に、俺は呆れたね。  もし、あと20年早ければ喜んだかもしれん。だが、アラフォーだぞ?こんなおっさんを召喚させて何をやらせる気だ。  とは思ったが、召喚した連中は俺に生贄の美少女を差し出してくれるらしいじゃないか、その役得を存分に味わいながら異世界の冒険を楽しんでやろう!

凡人がおまけ召喚されてしまった件

根鳥 泰造
ファンタジー
 勇者召喚に巻き込まれて、異世界にきてしまった祐介。最初は勇者の様に大切に扱われていたが、ごく普通の才能しかないので、冷遇されるようになり、ついには王宮から追い出される。  仕方なく冒険者登録することにしたが、この世界では希少なヒーラー適正を持っていた。一年掛けて治癒魔法を習得し、治癒剣士となると、引く手あまたに。しかも、彼は『強欲』という大罪スキルを持っていて、倒した敵のスキルを自分のものにできるのだ。  それらのお蔭で、才能は凡人でも、数多のスキルで能力を補い、熟練度は飛びぬけ、高難度クエストも熟せる有名冒険者となる。そして、裏では気配消去や不可視化スキルを活かして、暗殺という裏の仕事も始めた。  異世界に来て八年後、その暗殺依頼で、召喚勇者の暗殺を受けたのだが、それは祐介を捕まえるための罠だった。祐介が暗殺者になっていると知った勇者が、改心させよう企てたもので、その後は勇者一行に加わり、魔王討伐の旅に同行することに。  最初は脅され渋々同行していた祐介も、勇者や仲間の思いをしり、どんどん勇者が好きになり、勇者から告白までされる。  だが、魔王を討伐を成し遂げるも、魔王戦で勇者は祐介を庇い、障害者になる。  祐介は、勇者の嘘で、病院を作り、医師の道を歩みだすのだった。

ブラックギルドマスターへ、社畜以下の道具として扱ってくれてあざーす!お陰で転職した俺は初日にSランクハンターに成り上がりました!

仁徳
ファンタジー
あらすじ リュシアン・プライムはブラックハンターギルドの一員だった。 彼はギルドマスターやギルド仲間から、常人ではこなせない量の依頼を押し付けられていたが、夜遅くまで働くことで全ての依頼を一日で終わらせていた。 ある日、リュシアンは仲間の罠に嵌められ、依頼を終わらせることができなかった。その一度の失敗をきっかけに、ギルドマスターから無能ハンターの烙印を押され、クビになる。 途方に暮れていると、モンスターに襲われている女性を彼は見つけてしまう。 ハンターとして襲われている人を見過ごせないリュシアンは、モンスターから女性を守った。 彼は助けた女性が、隣町にあるハンターギルドのギルドマスターであることを知る。 リュシアンの才能に目をつけたギルドマスターは、彼をスカウトした。 一方ブラックギルドでは、リュシアンがいないことで依頼達成の効率が悪くなり、依頼は溜まっていく一方だった。ついにブラックギルドは町の住民たちからのクレームなどが殺到して町民たちから見放されることになる。 そんな彼らに反してリュシアンは新しい職場、新しい仲間と出会い、ブッラックギルドの経験を活かして最速でギルドランキング一位を獲得し、ギルドマスターや町の住民たちから一目置かれるようになった。 これはブラックな環境で働いていた主人公が一人の女性を助けたことがきっかけで人生が一変し、ホワイトなギルド環境で最強、無双、ときどきスローライフをしていく物語!

最難関ダンジョンをクリアした成功報酬は勇者パーティーの裏切りでした

新緑あらた
ファンタジー
最難関であるS級ダンジョン最深部の隠し部屋。金銀財宝を前に告げられた言葉は労いでも喜びでもなく、解雇通告だった。 「もうオマエはいらん」 勇者アレクサンダー、癒し手エリーゼ、赤魔道士フェルノに、自身の黒髪黒目を忌避しないことから期待していた俺は大きなショックを受ける。 ヤツらは俺の外見を受け入れていたわけじゃない。ただ仲間と思っていなかっただけ、眼中になかっただけなのだ。 転生者は曾祖父だけどチートは隔世遺伝した「俺」にも受け継がれています。 勇者達は大富豪スタートで貧民窟の住人がゴールです(笑)

Sランク昇進を記念して追放された俺は、追放サイドの令嬢を助けたことがきっかけで、彼女が押しかけ女房のようになって困る!

仁徳
ファンタジー
シロウ・オルダーは、Sランク昇進をきっかけに赤いバラという冒険者チームから『スキル非所持の無能』とを侮蔑され、パーティーから追放される。 しかし彼は、異世界の知識を利用して新な魔法を生み出すスキル【魔学者】を使用できるが、彼はそのスキルを隠し、無能を演じていただけだった。 そうとは知らずに、彼を追放した赤いバラは、今までシロウのサポートのお陰で強くなっていたことを知らずに、ダンジョンに挑む。だが、初めての敗北を経験したり、その後借金を背負ったり地位と名声を失っていく。 一方自由になったシロウは、新な町での冒険者活動で活躍し、一目置かれる存在となりながら、追放したマリーを助けたことで惚れられてしまう。手料理を振る舞ったり、背中を流したり、それはまるで押しかけ女房だった! これは、チート能力を手に入れてしまったことで、無能を演じたシロウがパーティーを追放され、その後ソロとして活躍して無双すると、他のパーティーから追放されたエルフや魔族といった様々な追放少女が集まり、いつの間にかハーレムパーティーを結成している物語!

フリーター転生。公爵家に転生したけど継承権が低い件。精霊の加護(チート)を得たので、努力と知識と根性で公爵家当主へと成り上がる 

SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
400倍の魔力ってマジ!?魔力が多すぎて範囲攻撃魔法だけとか縛りでしょ 25歳子供部屋在住。彼女なし=年齢のフリーター・バンドマンはある日理不尽にも、バンドリーダでボーカルからクビを宣告され、反論を述べる間もなくガッチャ切りされそんな失意のか、理不尽に言い渡された残業中に急死してしまう。  目が覚めると俺は広大な領地を有するノーフォーク公爵家の長男の息子ユーサー・フォン・ハワードに転生していた。 ユーサーは一度目の人生の漠然とした目標であった『有名になりたい』他人から好かれ、知られる何者かになりたかった。と言う目標を再認識し、二度目の生を悔いの無いように、全力で生きる事を誓うのであった。 しかし、俺が公爵になるためには父の兄弟である次男、三男の息子。つまり従妹達と争う事になってしまい。 ユーサーは富国強兵を掲げ、先ずは小さな事から始めるのであった。 そんな主人公のゆったり成長期!!

僕の秘密を知った自称勇者が聖剣を寄越せと言ってきたので渡してみた

黒木メイ
ファンタジー
世界に一人しかいないと言われている『勇者』。 その『勇者』は今、ワグナー王国にいるらしい。 曖昧なのには理由があった。 『勇者』だと思わしき少年、レンが頑なに「僕は勇者じゃない」と言っているからだ。 どんなに周りが勇者だと持て囃してもレンは認めようとしない。 ※小説家になろうにも随時転載中。 レンはただ、ある目的のついでに人々を助けただけだと言う。 それでも皆はレンが勇者だと思っていた。 突如日本という国から彼らが転移してくるまでは。 はたして、レンは本当に勇者ではないのか……。 ざまぁあり・友情あり・謎ありな作品です。 ※小説家になろう、カクヨム、ネオページにも掲載。

処理中です...