上 下
36 / 60

第36話 勇者覚醒

しおりを挟む
「カイト達いる?」

「いつも通りです」

今日もまだ宿屋に居る。

なんで女神はカイト達を勇者に選んだんだ。

大きな声で言うと不敬罪になるから言わないけどな。

トントントン

いつも通りノックしてドアを開ける。

「なんだ!? 今日もやってないのか?」

「あのなぁ~ いつもいつもやっている訳じゃないぞ?」

「そうよ、なに言っているのかしら」

「僕をなんだと思っているんだい?」

「そうだよ」

そろそろ、本格的に飽きて来た頃だな。

幾らなんでも四六時中引き篭もってやっていれば飽きが来る。

此処からがある意味男女の関係の始まりだ。

何時でもやれる女と何時でもやれる男。

そうなれば、行為そのものの価値が下がる。

此処からは性欲じゃなくて『本物の愛』が無ければ虚しくなる。

実際にカイト達はこの爛れた生活を手に入れた為に王族や貴族との婚姻を手放した。

果たして今後、その事をどう考えるようになるのかは俺には解らない。

「それで? まだ討伐に行かないの? 昨日明日から頑張る。そう言ったよな!」

「いや、それがな……」

「まぁ良いや、それじゃ今日は俺と一緒に討伐にいこうか?」

本当に面倒くさい。

大体、俺は事務や手配みたいな雑用をサポートするだけの予定だったんだ。

それなのに、なんで此処まで面倒みないんといけないんだろうか?

書類を教会に届けたり、報告書を冒険者ギルドに届ける度に『どうにかしてくれませんか?』そういう目で見て来る。

とうとうこの間……『勇者様達をどうにかしてくれませんか? お礼なら教会から差し上げますから』と言われてしまった。

教会は勇者や聖女に優しいからカイト達には何も言わない。

だから、俺に言ってくる。

今回は懐柔策だが……このまま放置するとそのうち、俺に対して脅してくる可能性もある。

だから『頑張ってみます』それしか言えなかった。

「リヒトととか? いやだが……」

「え~と明日じゃ駄目かな?」

「ゴメン、今日は都合が悪いんだ」

「ごめんね」

「あのなぁ、俺はお前達みたいな超人じゃない。その俺が討伐出来るような場所での討伐だ! 絶対に安全だから、リハビリ兼ねてやってみようぜ……ほら、じゃないともういい加減に報告に困るんだよ」

「解ったよ」

全く解ったよじゃないよ。

俺だってこんな事したく無いが仕方ない。

こいつ等が悪いんだからな。

◆◆◆

「さぁついたぞ!」

「此処は洞窟じゃないか? 見た感じからして危ない気がするぞ」

「私達が、何回も危ない目にあった場所に似ているわ」

多分、それ以上に危ない場所だな。

「本当に僕、こんな場所で戦って大丈夫なの?」

多分、大丈夫だ。

「あの~本当に平気?」


「ああっ、大丈夫だ! 今のカイト達は自信を無くしているだけだ! だから、それを取り戻せば大丈夫だから、ほらこれでも飲んで頑張ってみろよ!」

そう言って俺は4人にポーションを差し出した。

「これはなんだ!」

「ポーションよね?」

「ポーションだよな!」

「ポーション、これを飲めって事?」

「そうだよ。これを飲めば大丈夫! これは精神をカバーする薬なんだ! これを飲めば興奮して戦闘欲が増す。だから、安心して戦う事が出来る……さぁ飲め!」

「「「「解った」」」」

このポーションの作り方はゼウスさんから教わったものだ。

ゼウスさんの話ではこれは元はタバコだったらしい。

傭兵などが戦争で恐怖で心を押しつぶされないように作られた物で、飲むと興奮して高揚感が増し、疲労すら感じなくなるそうだ。

但し、あまりに利用すると依存するようになるから、常時服用してはならない。

そう言われた。

飲んで暫く経つと明らかにカイト達の雰囲気が変わった。

「なんだ、この高揚感は! 今ならなんでも出来そうな気がする」

「うん、私は天才聖女! ゴブリン如きで苦戦なんかする存在じゃないのよ」

「あははははっ僕に斬れない物はない……全て斬ってやる」

「うふふふ、私が全て焼き尽くしてやるわ」

うん……目が可笑しいけど、ヤル気にはなったようだ。

「それじゃ、勇者カイト。洞窟に居る魔物は皆殺しだぁぁぁーー」

「「「「うぉぉぉぉーー」」」」

大丈夫だよな……このポーション。

ゼウスさん特製で特別に作り方を昔教わったんだけど……
まぁヤル気になったんだ良しとしよう。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

美人四天王の妹とシテいるけど、僕は学校を卒業するまでモブに徹する、はずだった

ぐうのすけ
恋愛
【カクヨムでラブコメ週間2位】ありがとうございます! 僕【山田集】は高校3年生のモブとして何事もなく高校を卒業するはずだった。でも、義理の妹である【山田芽以】とシテいる現場をお母さんに目撃され、家族会議が開かれた。家族会議の結果隠蔽し、何事も無く高校を卒業する事が決まる。ある時学校の美人四天王の一角である【夏空日葵】に僕と芽以がベッドでシテいる所を目撃されたところからドタバタが始まる。僕の完璧なモブメッキは剥がれ、ヒマリに観察され、他の美人四天王にもメッキを剥され、何かを嗅ぎつけられていく。僕は、平穏無事に学校を卒業できるのだろうか? 『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

NTRエロゲの世界に転移した俺、ヒロインの好感度は限界突破。レベルアップ出来ない俺はスキルを取得して無双する。~お前らNTRを狙いすぎだろ~

ぐうのすけ
ファンタジー
高校生で18才の【黒野 速人】はクラス転移で異世界に召喚される。 城に召喚され、ステータス確認で他の者はレア固有スキルを持つ中、速人の固有スキルは呪い扱いされ城を追い出された。 速人は気づく。 この世界、俺がやっていたエロゲ、プリンセストラップダンジョン学園・NTRと同じ世界だ! この世界の攻略法を俺は知っている! そして自分のステータスを見て気づく。 そうか、俺の固有スキルは大器晩成型の強スキルだ! こうして速人は徐々に頭角を現し、ハーレムと大きな地位を築いていく。 一方速人を追放したクラスメートの勇者源氏朝陽はゲームの仕様を知らず、徐々に成長が止まり、落ちぶれていく。 そしてクラス1の美人【姫野 姫】にも逃げられ更に追い込まれる。 順調に強くなっていく中速人は気づく。 俺達が転移した事でゲームの歴史が変わっていく。 更にゲームオーバーを回避するためにヒロインを助けた事でヒロインの好感度が限界突破していく。 強くなり、ヒロインを救いつつ成り上がっていくお話。 『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』 カクヨムとアルファポリス同時掲載。

蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる

フルーツパフェ
大衆娯楽
 転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。  一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。  そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!  寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。 ――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです  そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。  大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。  相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。      

異世界でただ美しく! 男女比1対5の世界で美形になる事を望んだ俺は戦力外で追い出されましたので自由に生きます!

石のやっさん
ファンタジー
主人公、理人は異世界召喚で異世界ルミナスにクラスごと召喚された。 クラスの人間が、優秀なジョブやスキルを持つなか、理人は『侍』という他に比べてかなり落ちるジョブだった為、魔族討伐メンバーから外され…追い出される事に! だが、これは仕方が無い事だった…彼は戦う事よりも「美しくなる事」を望んでしまったからだ。 だが、ルミナスは男女比1対5の世界なので…まぁ色々起きます。 ※私の書く男女比物が読みたい…そのリクエストに応えてみましたが、中編で終わる可能性は高いです。

ブリードスキル いじめられっこ覚醒! いじめられスキルで異世界でも怖くありません……

石のやっさん
ファンタジー
虐められ自殺までした僕が異世界転移......もう知らない。 主人公である竜崎聖夜はクラスで酷いイジメにあっていた。 その執拗なイジメに耐えかねて屋上から飛び降り自殺をした瞬間。 聖夜のクラスが光輝き女神イシュタスの元に召喚されてしまう。 話しを聞くと他の皆は既に異世界ルミナスに転移ずみ。 聖夜は自殺し、死んでいたので蘇生したぶん後になったのだと言う。 聖夜は異世界ルミナスに行きたくなかったが、転移魔法はクラス全員に掛かっているため、拒否できない。 しかも、自分のジョブやスキルは、クラスの情報でイシュタスが勝手に決めていた。 そのステータスに絶望したが……実は。 おもいつきで書き始めたので更新はゆっくりになるかも知れません。 いじめられっこ覚醒! いじめられスキルで異世界でも怖くありません…… からタイトルを『ブリードスキル いじめられっこ覚醒! いじめられスキルで異世界でも怖くありません……』に変更しました。 カクヨムコン9に出品予定でしたが、期間内に10万文字まで書けそうも無いのでカクヨムコン出品取り消しました。

勝負に勝ったので委員長におっぱいを見せてもらった

矢木羽研
青春
優等生の委員長と「勝ったほうが言うことを聞く」という賭けをしたので、「おっぱい見せて」と頼んでみたら……青春寸止めストーリー。

ゲーム序盤で死ぬモブ炎使いに転生したので、主人公に先回りしてイベントをクリアしたらヒロインが俺について来た

ぐうのすけ
ファンタジー
カクヨムで日間・週間・月間総合1位獲得!ありがとうございます。 社畜として働き、いつものように寝て起きると、俺はゲーム『ブレイブクエストファンタジー』とよく似た世界のモブ『ゲット』に転生していた。俺は物語序盤で盗賊に襲われて死ぬ運命だ。しかも主人公のダストは俺を手下のようにこき使う。 「主人公にこき使われるのはもうごめんだ!死ぬのもごめんだ!俺がゲームのストーリーを覆してやる!」 幼いころから努力を続けていると、ゲームヒロインが俺に好意を寄せている? いや、気のせいだ。俺はしょせんモブ! 今は死亡フラグを解決する!そして次のステップに進む! 一方、同じく転生したダストは主人公キャラを利用して成り上がろうとするが、ダンジョンのお宝はすでに無く、仲間にするはずの美人キャラには見限られ、努力を嫌ったことでどんどん衰退していく。

処理中です...