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第28話 最初は子供
しおりを挟む今はかける声が無い。
宿屋にカイト達の様子を聞きに行ったが、まだ引き篭もり状態だ。
心の中では『可哀そう』そういう気持ちがある。
恐らくカイト達は魔王に勝てない。
これは決して口には出せないが魔王と戦った場合の勇者の勝率は三割位だ。
負ける確率が高い。
レイラは英雄パーティだった。
小さい頃から俺はレイラが好きだった。
周りの人間はレイラを野蛮だ、怖い。
そう言っていたが、その戦い方は幼い俺からみて、女神が舞っているみたいで綺麗に見えた。
レイラが所属していたのは英雄パーティ。
凄いパーティではあるが勇者パーティより劣る。
今のカイトが努力してもレイラみたいになれる。そういう未来は俺には浮かばない。
だが、それは俺が言って良い事じゃない。
あくまで勇者は『皆の希望』なんだから。
◆◆◆
自分の宿に戻って来た。
「リヒト、本当に一人で行くの?」
「ああっ、これは俺一人の方が良い!」
俺は今回の盗賊退治の依頼を一人でやるつもりだ。
『人を殺す仕事』
俺が人を殺める姿をレイラに見られたくない。
例え、それがレイラの方が慣れていても……
「慢心してない? 相手は人間とはいえ多い、結構難しい依頼だよ」
レイラが俺の瞳を覗き込む。
だが、俺は真っ直ぐ見つめて答えた。
「慢心してないよ? これは俺が乗り越えなくちゃいけない壁だからね。それにレイラが強いのは解っているけど、女絡みの話だから夫として関わらせたくない」
「そう……慢心してないなら良いや。頑張って」
「うん」
真剣そうな顔のレイラに見送られ俺は盗賊退治に旅立った。
◆◆◆
今回の盗賊退治は村だ。
人数は凄く多いが能力はさほどではない。
だからこそ、レイラがこの依頼を選んだ。
子供から大人までまんべんなく殺さなければならない。この依頼を。
なぜ、そんな村になるのか?
簡単な話だ、村が襲われたとき降伏して村人全員が盗賊になった。
案外、こう言う『盗賊村』は良くに存在する。
そして村人全員が盗賊だから旅人や冒険者などがそれに気がつかないで立ち寄ると、地獄を見る事になる。
村ごと盗賊というのは質が悪い。
身ぐるみ剥がされ殺される事も多いし。
女性なんかは大勢の人間に犯され地獄の様な日々を送ったあげく、運が良くて奴隷落ち、場合によっては殺される。
これがあるから、強くてもレイラを連れてこなかったんだ。
ようやく、村の近くに来た。
「お兄さんこんにちは!」
「こんにちは」
街道沿いで子供が二人話かけてきた。
「君たちはシルカ村の子?」
「「そうだよ!」」
そうか……周りに人もいない。
それなら、簡単だ。
「そうか……残念だね!」
「なっ何するの!」
「なんで、お兄ちゃん剣を抜くの……」
「盗賊だから!」
俺は剣を抜き子供の首を跳ねた。
幼い子供の首が二つ宙に舞う。
うぷっ、うげぇぇぇぇぇーーーーっ
ゴブリンとは切った感覚は同じ。
だが、同族を殺した嫌悪感のせいか、気持ち悪くなり胃の中の物を全部吐き出した。
うげぇぇぇぇぇーーうぷ。
このままじゃ不味い。
街道脇に子供の首と体を放り込む。
恐らく、獣か魔物が食うだろう。
盗賊に人権は無い。
子供でも盗賊に落ちた以上は殺さなければならない。
村ごと盗賊になってしまった以上は、女子供関係なく、殺すしかない。
最初が子供で良かった。
相手がもし、大人だったら。
もっと人数が多かったら、俺は死んでいたかも知れない。
『盗賊は魔物と同じ……だから殺す』
絶対に情けはかけない。
そうしないと、死ぬのが俺になる。
取り敢えず、殺しは経験した。
後は……
木に登り夜になるのを待った。
◆◆◆
子供が亡くなったせいか、大人が子供を探し回っていた。
だが、深夜になると諦めて家に戻っていった。
村の中心の井戸にきた。
あらかじめ、用意して置いた毒草から作っておいた毒袋を放り込んでいく。
ここだけじゃない。
この村の井戸という井戸に毒を入れていく。
真向勝負なんて要らない。
相手は盗賊だ、卑怯なんて事は無い。
『何をやっても良い犯罪者だ』
ようやく、飲み水になる井戸全部に毒を入れ終わった。
あとは……
村から風上にあたる場所にある木に同じく用意しておいた油をまく。
残った油はその近くの家に撒いていった。
後は油に火をつけ……一旦村を離脱した。
火は瞬く間に村に広がっていった。
そして俺は街道沿いの村の入り口の茂みに身を隠した。
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