23 / 60
第23話 幸せな冒険者とは
しおりを挟む「今日は、ゴブリンじゃなく、オークを狩りに行こうか?」
「良いの?」
「うん!? これが狩れたら、もう初心者冒険者は卒業で良いと思うよ! 冒険者でも余り、実力がない者は案外、ゴブリンからオーク位しか狩れない存在も多くいるよ。1人で生きられる。そういう意味であればギリ合格だね。もう、その実力はある……だからこれは1人前としての卒業試験みたいなものだね」
「そうなの? 」
「ああっ、だから、今日からはオークを狩ろう。但し、洞窟とかじゃ無く草原や森で1体~2体でいるような、はぐれ者をね。これが出来れば、冒険者として家族を持って生きていけるという事だよ?頑張ろうか?」
「わかった、頑張るよ!」
という訳でレイラと一緒に近くの街道沿いの森に来ている。
ここで今日の獲物をじっくりと待つ。
「リヒト、この場所を選ぶ理由はわかるかな?」
「安全な場所で討伐をする事。ここなら危なくなったら街道沿いにいき、そのまま街方面に逃げられる」
「正解。補足すると、街方面に逃げれば、途中で冒険者や商隊に助けを求める事も出来るわ。最悪、良くないけど、擦り付けて逃げる事もできる。街道沿いは誰の自治でも無いから身を守るのは自己責任だから、その責任は問われない。尤もこれは法律的には問題はないけど、良心から考えて、最後の最後までしちゃ駄目だけどね」
「それは、確かに人間としてしちゃ不味いよ」
「これはリヒトが夫だから伝えたことだよ! 他の人間には絶対に言わない。 折角、結婚したのに未亡人は嫌だからね……私。英雄や勇者は逃げられないけど、普通の冒険者は逃げる事が出来る。冒険者は冒険なんてしちゃいけない。自分の命を一番に考え、なにがあっても家に帰ってくる。それが『家族にとって理想』の冒険者なんだよ」
「確かにそうだね……それが俺にとっても理想の冒険者だよ」
俺は、ただ楽しく生きられればそれで充分だ。
それにはリスク回避も含まれる。
「さぁ、あそこにオークが2体いるけど、どうする?」
「まだ、俺には2体は無理だから、見逃す」
「正解。だけど、今は私もいるから、行こうほら!」
「うん!」
こうして俺達は……あれっ?
「あたいの拳は無敵だーーっ! ウリヤァァァァ――ッ!」
「ぶもっ……」
戦う時には私じゃなくてあたいになるんだ。
それよりも……ただの一撃。
レイラのブラスナックルの一撃で、オークの頭は潰され息絶えた。
これが、元英雄パーティ。その力か。
「ほら、ぼさっとしない!」
「ぶもぉぉぉぉーーーっ」
オークのこん棒の一撃を躱して、さくッと腕を短剣で刺した。
痛さで、棍棒を落としたオークを遠巻きに見ながらがら空きの腹に潜り込む。
お腹をナイフで突き刺し、裂いて……危ない。
反対側の手でパンチが飛んできたので一旦離脱だ。
「そうそう、それで良いよ。態々イチかバチかに賭けて裂きに行く必要は無いからね。一度腹を刺した時点で、そのオークは確実に数時間後には死ぬ。チャンスを待つんだ」
「了解」
無理はしない。
これがレイラから最初に教わった事だ。
流石のオークも腹を何回も刺されていれば痛さから、腹を庇うようになる。
チャンスだ。
振り回す両手をかいくぐり、とうとう腹を裂く事に成功した。
オークの内臓が体からこぼれ落ちる。
「やったーーっ」
「ハァハァ……どうにか」
俺はオークが死ぬまで遠巻きで気をつけながら待っていた。
◆◆◆
「なかなかやるじゃん!」
「レイラの教え方が上手いからだよ」
「そりゃぁ……私の旦那様なんだから、死なれちゃ困るから、真剣に教えるよ。だけど、リヒトは凄く才能があると思うよ」
「そう?」
「此処までの事を反復して練習して技術を磨けばオーガまではすぐ狩れるようになると思うよ」
「そうですか、良かった」
「それで、そこから先はどうするの?」
「オーガから先の獲物は強敵で命がけの戦いになると思うから。そこでゴールで良いと思う。目指せC級冒険者。そんな感じ」
「英雄パーティにいたからわかるけど。その辺りの冒険者が一番幸せだよ。それじゃオークも2体狩れたし帰ろうか?」
「帰ろう」
俺とレイラはオークをレイラの収納袋にしまうと街への帰路についた。
オーク一体銀貨8枚(約8万円位)
今日一日で金貨1枚に銀貨6枚。
これだけ稼げれば、充分だよな。
54
お気に入りに追加
194
あなたにおすすめの小説

俺だけ2つスキルを持っていたので異端認定されました
七鳳
ファンタジー
いいね&お気に入り登録&感想頂けると励みになります。
世界には生まれた瞬間に 「1人1つのオリジナルスキル」 が与えられる。
それが、この世界の 絶対のルール だった。
そんな中で主人公だけがスキルを2つ持ってしまっていた。
異端認定された主人公は様々な苦難を乗り越えながら、世界に復讐を決意する。
※1話毎の文字数少なめで、不定期で更新の予定です。
最難関ダンジョンをクリアした成功報酬は勇者パーティーの裏切りでした
新緑あらた
ファンタジー
最難関であるS級ダンジョン最深部の隠し部屋。金銀財宝を前に告げられた言葉は労いでも喜びでもなく、解雇通告だった。
「もうオマエはいらん」
勇者アレクサンダー、癒し手エリーゼ、赤魔道士フェルノに、自身の黒髪黒目を忌避しないことから期待していた俺は大きなショックを受ける。
ヤツらは俺の外見を受け入れていたわけじゃない。ただ仲間と思っていなかっただけ、眼中になかっただけなのだ。
転生者は曾祖父だけどチートは隔世遺伝した「俺」にも受け継がれています。
勇者達は大富豪スタートで貧民窟の住人がゴールです(笑)

おっさんなのに異世界召喚されたらしいので適当に生きてみることにした
高鉢 健太
ファンタジー
ふと気づけば見知らぬ石造りの建物の中に居た。どうやら召喚によって異世界転移させられたらしかった。
ラノベでよくある展開に、俺は呆れたね。
もし、あと20年早ければ喜んだかもしれん。だが、アラフォーだぞ?こんなおっさんを召喚させて何をやらせる気だ。
とは思ったが、召喚した連中は俺に生贄の美少女を差し出してくれるらしいじゃないか、その役得を存分に味わいながら異世界の冒険を楽しんでやろう!

通販で買った妖刀がガチだった ~試し斬りしたら空間が裂けて異世界に飛ばされた挙句、伝説の勇者だと勘違いされて困っています~
日之影ソラ
ファンタジー
ゲームや漫画が好きな大学生、宮本総司は、なんとなくネットサーフィンをしていると、アムゾンの購入サイトで妖刀が1000円で売っているのを見つけた。デザインは格好よく、どことなく惹かれるものを感じたから購入し、家に届いて試し切りをしたら……空間が斬れた!
斬れた空間に吸い込まれ、気がつけばそこは見たことがない異世界。勇者召喚の儀式最中だった王城に現れたことで、伝説の勇者が現れたと勘違いされてしまう。好待遇や周りの人の期待に流され、人違いだとは言えずにいたら、王女様に偽者だとバレてしまった。
偽物だったと世に知られたら死刑と脅され、死刑を免れるためには本当に魔王を倒して、勇者としての責任を果たすしかないと宣言される。
「偽者として死ぬか。本物の英雄になるか――どちらか選びなさい」
選択肢は一つしかない。死にたくない総司は嘘を本当にするため、伝説の勇者の名を騙る。

勇者パーティー追放された解呪師、お迎えの死神少女とうっかりキスして最強の力に覚醒!? この力で10年前、僕のすべてを奪った犯人へ復讐します。
カズマ・ユキヒロ
ファンタジー
解呪師マモル・フジタニは追放された。
伝説の武器の封印を解いたあとで、勇者パーティーに裏切られて。
深い傷と毒で、死を待つばかりとなったマモル。
しかし。
お迎えにきた死神少女との『うっかりキス』が、マモルを変えた。
伝説の武器の封印を解いたとき、体内に取り込んでいた『いにしえの勇者パーティー』の力。
その無敵の力が異種族異性とのキスで覚醒、最強となったのだ。
一方で。
愚かな勇者たちは、魔王に呪いを受けてしまう。
死へのタイムリミットまでは、あと72時間。
マモル追放をなげいても、もう遅かった。
マモルは、手にした最強の『力』を使い。
人助けや、死神助けをしながら。
10年前、己のすべてを奪った犯人への復讐を目指す。
これは、過去の復讐に燃える男が。
死神少女とともに、失ったはずの幼なじみや妹を取り戻しながら。
結果的に世界を救ってしまう、そんな物語。

異世界転移しましたが、面倒事に巻き込まれそうな予感しかしないので早めに逃げ出す事にします。
sou
ファンタジー
蕪木高等学校3年1組の生徒40名は突如眩い光に包まれた。
目が覚めた彼らは異世界転移し見知らぬ国、リスランダ王国へと転移していたのだ。
「勇者たちよ…この国を救ってくれ…えっ!一人いなくなった?どこに?」
これは、面倒事を予感した主人公がいち早く逃げ出し、平穏な暮らしを目指す物語。
なろう、カクヨムにも同作を投稿しています。

スキル間違いの『双剣士』~一族の恥だと追放されたが、追放先でスキルが覚醒。気が付いたら最強双剣士に~
きょろ
ファンタジー
この世界では5歳になる全ての者に『スキル』が与えられる――。
洗礼の儀によってスキル『片手剣』を手にしたグリム・レオハートは、王国で最も有名な名家の長男。
レオハート家は代々、女神様より剣の才能を与えられる事が多い剣聖一族であり、グリムの父は王国最強と謳われる程の剣聖であった。
しかし、そんなレオハート家の長男にも関わらずグリムは全く剣の才能が伸びなかった。
スキルを手にしてから早5年――。
「貴様は一族の恥だ。最早息子でも何でもない」
突如そう父に告げられたグリムは、家族からも王国からも追放され、人が寄り付かない辺境の森へと飛ばされてしまった。
森のモンスターに襲われ絶対絶命の危機に陥ったグリム。ふと辺りを見ると、そこには過去に辺境の森に飛ばされたであろう者達の骨が沢山散らばっていた。
それを見つけたグリムは全てを諦め、最後に潔く己の墓を建てたのだった。
「どうせならこの森で1番派手にしようか――」
そこから更に8年――。
18歳になったグリムは何故か辺境の森で最強の『双剣士』となっていた。
「やべ、また力込め過ぎた……。双剣じゃやっぱ強すぎるな。こりゃ1本は飾りで十分だ」
最強となったグリムの所へ、ある日1体の珍しいモンスターが現れた。
そして、このモンスターとの出会いがグレイの運命を大きく動かす事となる――。

僕の秘密を知った自称勇者が聖剣を寄越せと言ってきたので渡してみた
黒木メイ
ファンタジー
世界に一人しかいないと言われている『勇者』。
その『勇者』は今、ワグナー王国にいるらしい。
曖昧なのには理由があった。
『勇者』だと思わしき少年、レンが頑なに「僕は勇者じゃない」と言っているからだ。
どんなに周りが勇者だと持て囃してもレンは認めようとしない。
※小説家になろうにも随時転載中。
レンはただ、ある目的のついでに人々を助けただけだと言う。
それでも皆はレンが勇者だと思っていた。
突如日本という国から彼らが転移してくるまでは。
はたして、レンは本当に勇者ではないのか……。
ざまぁあり・友情あり・謎ありな作品です。
※小説家になろう、カクヨム、ネオページにも掲載。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる