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第45話 勇者、王女SIDE 心が折れて
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俺の名前は大樹。
勇者だった男だ。
だが今は……
「お前さぁ、勇者なのになんでこんな事している訳? プライドとか無い訳?」
「いやぁ俺は今の仕事で充分だ」
「そうか!? まぁ自分の人生だから俺はとやかく言わんけどさぁ……頑張れば王女様との婚姻や貴族にもなれる筈だったんだろう? 良いのかい?」
「あんな死ぬ様な思いする位なら……これで良いよ」
今の俺は、王都の裏門の門番をしている。
あの魔族との戦いで心が折れた。
同級生がまるでオモチャの様に殺されていき、目の前に腕や足が降って来た。
助けを求める同級生を見捨て、見ない様にしてただただ自分の命乞いをしていた。
『うん、君は殺さないよ。だけど、お友達は別だね』
その魔族の言葉を聞いた時、心からホッとした。
『友達は別』
それはお前は殺さないけど……お前の友達は殺す……そう言う事だ。
その状態で安心して……目の前で友達が殺されて行くのを黙って見ていた。
いや……自分は助かるのだと安心していた。
『最低だ』
こんな俺が何故……勇者なんだ。
勇者……勇気ある者。
きっと俺はそんな物じゃない。
只の……学生だ。
「なぁ、その手治らないのか?」
「病気でも無いのに……」
「これは恐怖からだよ……魔族と遭遇した時から手の震えが止まらないんだ」
「話は聞いた……魔族に……まぁ、それじゃ仕方ねーよな」
「はい……」
あの恐怖……もう二度と味わいたくない。
だから……勇者の権利を減らし、普通の生活をお願いした。
それは同級生の生き残り全員一緒だ。
だが、どうも異世界人は、これでも強くなる可能性があるらしく、国の管理下に置きたいらしい。
それこそ、塔子や綾子みたいに目が見えなくなるとか、聖夜みたいに才能が全く無い。
そういう事でも無い限り、国の管理を離れることは無いそうだ。
その為、俺や生き残った同級生たちは殆どの権利を手放し、その結果一般的な兵士レベルの仕事をしながら国に養って貰っている。
しかも、割と安全な場所を任せて貰えている。
この辺りが、ギリギリの妥協点なようだ。
ハァ~ これなら異世界に転移なんてしない方が良かった。
実質、警備員の仕事しながら生活している様なものだ。
しかも、この世界は本当に危ない。
安全というならここでも、盗賊や魔物の脅威はある。
ただ比較的安全……ただそれだけだ。
ただ、他よりマシだというだけだ。
「だがよ、それでも大樹は勇者のジョブ持ちだ。 才能だけなら、この世界の人間の誰よりもあるんだぞ……いきなり最初から魔族とあたり、敗北から始まったのかも知れない。 それでも勇者は世界最強のジョブなんだ! そのお前が怖がってどうする? 命のやり取りなんぞ、この国では子供でもしているんだぜ……いつか持ちなおしてくれ」
「はぁ~」
それでも俺は……もう無理だ。
◆◆◆
「それで、勇者大樹様達は?」
「ライア王女……それが、いつもの通りです」
「あの戦いで、すっかりと……その心が折れてしまったようです」
「そうですか? ハァ~相変わらず心は折れたままなのですね! それで、追い出した者達は?」
「冒険者になって逞しく生きていますね」
「あの惨状の中を生き延びて、心が折れなかったのですね」
「そう言う事です」
あの洞窟に入った者の多くの者は死に、生きて戻った者は心に障害を受け真面に生活を出来なくなってしまいました。
今現在、普通に生活している異世界人は、魔族とあの時に逢わなかった者だけです。
ですが、調べではあの聖夜という人物は『あの地獄』から帰ってきたふしがあります。
もっと詳しくあの聖夜という少年を調べる必要がありますね。
勇者だった男だ。
だが今は……
「お前さぁ、勇者なのになんでこんな事している訳? プライドとか無い訳?」
「いやぁ俺は今の仕事で充分だ」
「そうか!? まぁ自分の人生だから俺はとやかく言わんけどさぁ……頑張れば王女様との婚姻や貴族にもなれる筈だったんだろう? 良いのかい?」
「あんな死ぬ様な思いする位なら……これで良いよ」
今の俺は、王都の裏門の門番をしている。
あの魔族との戦いで心が折れた。
同級生がまるでオモチャの様に殺されていき、目の前に腕や足が降って来た。
助けを求める同級生を見捨て、見ない様にしてただただ自分の命乞いをしていた。
『うん、君は殺さないよ。だけど、お友達は別だね』
その魔族の言葉を聞いた時、心からホッとした。
『友達は別』
それはお前は殺さないけど……お前の友達は殺す……そう言う事だ。
その状態で安心して……目の前で友達が殺されて行くのを黙って見ていた。
いや……自分は助かるのだと安心していた。
『最低だ』
こんな俺が何故……勇者なんだ。
勇者……勇気ある者。
きっと俺はそんな物じゃない。
只の……学生だ。
「なぁ、その手治らないのか?」
「病気でも無いのに……」
「これは恐怖からだよ……魔族と遭遇した時から手の震えが止まらないんだ」
「話は聞いた……魔族に……まぁ、それじゃ仕方ねーよな」
「はい……」
あの恐怖……もう二度と味わいたくない。
だから……勇者の権利を減らし、普通の生活をお願いした。
それは同級生の生き残り全員一緒だ。
だが、どうも異世界人は、これでも強くなる可能性があるらしく、国の管理下に置きたいらしい。
それこそ、塔子や綾子みたいに目が見えなくなるとか、聖夜みたいに才能が全く無い。
そういう事でも無い限り、国の管理を離れることは無いそうだ。
その為、俺や生き残った同級生たちは殆どの権利を手放し、その結果一般的な兵士レベルの仕事をしながら国に養って貰っている。
しかも、割と安全な場所を任せて貰えている。
この辺りが、ギリギリの妥協点なようだ。
ハァ~ これなら異世界に転移なんてしない方が良かった。
実質、警備員の仕事しながら生活している様なものだ。
しかも、この世界は本当に危ない。
安全というならここでも、盗賊や魔物の脅威はある。
ただ比較的安全……ただそれだけだ。
ただ、他よりマシだというだけだ。
「だがよ、それでも大樹は勇者のジョブ持ちだ。 才能だけなら、この世界の人間の誰よりもあるんだぞ……いきなり最初から魔族とあたり、敗北から始まったのかも知れない。 それでも勇者は世界最強のジョブなんだ! そのお前が怖がってどうする? 命のやり取りなんぞ、この国では子供でもしているんだぜ……いつか持ちなおしてくれ」
「はぁ~」
それでも俺は……もう無理だ。
◆◆◆
「それで、勇者大樹様達は?」
「ライア王女……それが、いつもの通りです」
「あの戦いで、すっかりと……その心が折れてしまったようです」
「そうですか? ハァ~相変わらず心は折れたままなのですね! それで、追い出した者達は?」
「冒険者になって逞しく生きていますね」
「あの惨状の中を生き延びて、心が折れなかったのですね」
「そう言う事です」
あの洞窟に入った者の多くの者は死に、生きて戻った者は心に障害を受け真面に生活を出来なくなってしまいました。
今現在、普通に生活している異世界人は、魔族とあの時に逢わなかった者だけです。
ですが、調べではあの聖夜という人物は『あの地獄』から帰ってきたふしがあります。
もっと詳しくあの聖夜という少年を調べる必要がありますね。
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