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第33話 リリア
しおりを挟む「本当に買われたんですね…驚きましたわ…」
奴隷商で支払いを済ませて、奴隷紋を刻んで貰った。
顔が半分焼けているのに、思ったより元気が良い。
「今現在、目が見えなくて介護が必要な人間が二人いるから、悪いが介護を頼みたいんだ」
「私は奴隷ですわ。悪いなんて言う必要はありません。『介護しろ』もしくは『介護しなさい』で充分ですわ」
「ああっそうか……」
「そうですわ……あと、こんな醜くて気持ち悪い女を買って頂き有難うございました。これからは誠心誠意仕えさせて頂きます」
「ありがとう」
顔が半分薬品で焼かれただけでも女の子ならショックだろう。
此処までやる人間がその前まで優しいとは思えない。
恐らく、僕以上の地獄の中で暮していたのかも知れない。
『強いな』
「私みたいな顔の女を買って頂けただけで、本当にありがたいのです」
「そう……だけど、本当にそんなに感謝する事は無いよ? 家事をして貰う為に購入したんだから」
「頑張らせて頂きますわ」
よく考えたら、まだ自己紹介もして無かったな。
「僕の名前は聖夜、君の名前は? ごめん聞いて無かったよね」
「リリアですわ、家名は今はありません」
「そう、リリアか……」
今現在、一緒に歩いているリリアは奴隷が着るような前の世界で言うようなポンチョ1枚羽織った感じの服というよりボロ布だ。
「はい」
「良い名前だね。そのままじゃなんだから、これから服と靴を買いに行こうか?」
「買って下さるのですか?」
「生活するのに必要じゃない? 当たり前じゃん」
「ありがとうございます」
リリアを連れて古着屋に来た。
「いら……しゃい」
リリアの顔を見るとお店の店主の顔色が変わった。
だが、流石は商売人すぐに持ち直した。
「いらっしゃいませ」
「リリア、好きな服3着と靴、その他必要な物があったら選んで買って」
「良いの……ですか?」
「勿論」
この世界には古着とフルオーダーの服しかない。
安くて出来合いの服は無いみたいだ。
古着なら、そんな高くないから、自由に選ばせてあげても問題は無い。
元貴族だから少しは贅沢な服を選ぶかと思っていたら、ごく普通の街娘が着るような服を選んでいた。
「これが良いですわ」
「本当にそれで良いの?」
「ええっ、動きやすいのが一番ですわ」
「そう、それなら良いんだけど、まぁ良いや、それじゃおばさん、これ頂けますか?」
「あいよ。全部で銀貨1枚ね」
「はい、これ」
あとは、顔を隠せる様な物があれば良いんだけど……
仮面とかつけろとか言うのはなんとなく可哀そうだな。
まぁ良いや。
あとで考えるか。
◆◆◆
「此処が僕たちが住んでいる宿だよ」
「此処がそうなのですね」
「ああっ、それでそこに居る二人が、今日から君に介護して貰いたい相手だよ」
「リリアと申します、宜しくお願い致しますわ」
「塔子です。あのその方は一体?」
「綾子です。お客様?」
二人には黙って買って来たからな。
「いや、今日から二人のお世話をしてくれる、リリアさんだ。まぁ同じ奴隷だよ。言っておくけどお世話はお願いするけど、扱いは二人と同じだから、横柄な態度はとるなよ」
「あの……ご家族じゃなく奴隷なのですか?」
「そう、奴隷。 面倒はちゃんと看て欲しいけど? それ以外は特別扱いしないで良いからね。頼んだよ」
「解りました」
「二人ともこれからのお世話はリリアさんに頼むから、まぁ仲良くやってくれ」
「「……解りました」」
なんで変な目で見るんだよ。
まぁ良いか……これでようやく介護から解放される。
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