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第28話 どっちみち見捨てるしかない
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ただただ、魔族たちが立ち去るのを目を瞑って待った。
うつ伏せになり怖くて目が開けられない。
人の肉が焼ける臭いにグチャグチャという音。
怖い……
幾ら自分が殺されないからって解っていても、目の前で人が死んでいくのには恐怖を感じる。
それが幾ら自分が嫌い憎んだ相手でもだ。
「うわぁぁぁぁーー嫌だぁぁぁぁーー助けて、助けてくれー」
大樹の悲鳴だけがこだましている。
他の人間はきっと声が出ないようになにか細工されていたのかも知れない。
狂ったように助けてを繰り返す大樹の声が聞こえて来ていたが……やがて聞こえなくなる。
今は我慢、我慢だ……魔族が去って行くまで。
もし、タイミングを間違えて起き上がったら……確実に殺される。
◆◆◆
どこ位待っていたのか解らない。
魔族の足音が遠ざかっていくのが解かる。
終わった。
これで恐怖の時間は終わりだ。
僕は馬鹿だった。
おかしいと気づきながらも奥に来た。
その結果がこれだ。
もし『お葬式ごっこ』が無ければ感づかれて死んでいた。
辺りをみると……うぷっ……思わず吐き気がした。
一番近い状態で言うなら、大量の肉食獣に食い散らかされた状態の死体と焼死した死体を見た状態だ。
だが、さっき迄魔族の恐怖に晒されていたせいか『恐怖』は無い。
ただ『惨いな』そう思うだけだ。
そうだ……大樹たちは……
「「「「「……」」」」」
恐怖から放心状態になっていて目が虚ろになっている。
多分、もう心が折れて、戦えないな。
もう復讐する必要もない。
此処にいる大樹達は……もう廃人だ。
僕は大樹達に背を向け『葬式ごっこ』をとき『空気人間』を発動させ入口へと向かった。
大樹達が5人。
洞窟の外に居たのが良くわからないが7~8人だった気がする。
これ、どう考えてももう終わりじゃないかな?
魔族となんて戦えないんじゃないか?
暫く歩くと洞窟の外に出た。
さて、報告するべきか?
いや、止めておこう。
『なぜ無事だったのか?』とか追及されても不味いしね。
◆◆◆
「なんだ、もう戻ってきたのか?」
「洞窟の奥から魔物の声が聞こえてきたので、怖くて逃げだしてきました」
「まぁ、それも良いんじゃなないか? 怪我しないうちにどこかで休んでおけよ」
「はい、そうします」
あれだけの人数が死んで居るんだ。
テントはガラガラ。
此処から戻ってくる同級生は居ない。
今誰もいないテントで休んでいれば、誰とも出くわす事は無いだろう。
今日は色々あって疲れた。
僕はテントの中に潜り込み毛布をかぶり眠った。
最初なかなか眠れなかったが、どうやらかなり疲れていたようだ。
段々と瞼が落ちて僕は……
◆◆◆
気がつくと眠っていたようだ。
「おい、起きろ撤収だ!」
騎士の声で目が覚めた。
「撤収?」
原因は解っている。
だが、敢えて僕は知らない振りして聞き返した。
「ああっ、洞窟の中でかなりの惨劇があった。 もしもの事があっても困るから、物資も放棄してすぐに撤収する事になった。 急いで此処を離れるぞ」
「何事ですか?」
「理由を説明している暇はない! 行くぞ」
「はい」
連れ帰ってくれるだけまだ親切だ。
騎士が4名に同級生は大樹を含み8名。
そうか、動けない者はそのまま見捨てていく訳か。
確かに4名の騎士で此処には歩きながら来た。
動けない者を見捨てて行くのは仕方が無い。
『本当に仕方が無い』
僕を助けてくれなかった。塔子や綾子も見捨てた奴ら。
自分が見捨てられる立場になっても文句は言えないよな。
尤も彼らが善人であっても、僕には助ける方法は無い。
元から見捨てるという事しか出来ない。
僕はただただ黙って騎士たちの後ろをついていった。
うつ伏せになり怖くて目が開けられない。
人の肉が焼ける臭いにグチャグチャという音。
怖い……
幾ら自分が殺されないからって解っていても、目の前で人が死んでいくのには恐怖を感じる。
それが幾ら自分が嫌い憎んだ相手でもだ。
「うわぁぁぁぁーー嫌だぁぁぁぁーー助けて、助けてくれー」
大樹の悲鳴だけがこだましている。
他の人間はきっと声が出ないようになにか細工されていたのかも知れない。
狂ったように助けてを繰り返す大樹の声が聞こえて来ていたが……やがて聞こえなくなる。
今は我慢、我慢だ……魔族が去って行くまで。
もし、タイミングを間違えて起き上がったら……確実に殺される。
◆◆◆
どこ位待っていたのか解らない。
魔族の足音が遠ざかっていくのが解かる。
終わった。
これで恐怖の時間は終わりだ。
僕は馬鹿だった。
おかしいと気づきながらも奥に来た。
その結果がこれだ。
もし『お葬式ごっこ』が無ければ感づかれて死んでいた。
辺りをみると……うぷっ……思わず吐き気がした。
一番近い状態で言うなら、大量の肉食獣に食い散らかされた状態の死体と焼死した死体を見た状態だ。
だが、さっき迄魔族の恐怖に晒されていたせいか『恐怖』は無い。
ただ『惨いな』そう思うだけだ。
そうだ……大樹たちは……
「「「「「……」」」」」
恐怖から放心状態になっていて目が虚ろになっている。
多分、もう心が折れて、戦えないな。
もう復讐する必要もない。
此処にいる大樹達は……もう廃人だ。
僕は大樹達に背を向け『葬式ごっこ』をとき『空気人間』を発動させ入口へと向かった。
大樹達が5人。
洞窟の外に居たのが良くわからないが7~8人だった気がする。
これ、どう考えてももう終わりじゃないかな?
魔族となんて戦えないんじゃないか?
暫く歩くと洞窟の外に出た。
さて、報告するべきか?
いや、止めておこう。
『なぜ無事だったのか?』とか追及されても不味いしね。
◆◆◆
「なんだ、もう戻ってきたのか?」
「洞窟の奥から魔物の声が聞こえてきたので、怖くて逃げだしてきました」
「まぁ、それも良いんじゃなないか? 怪我しないうちにどこかで休んでおけよ」
「はい、そうします」
あれだけの人数が死んで居るんだ。
テントはガラガラ。
此処から戻ってくる同級生は居ない。
今誰もいないテントで休んでいれば、誰とも出くわす事は無いだろう。
今日は色々あって疲れた。
僕はテントの中に潜り込み毛布をかぶり眠った。
最初なかなか眠れなかったが、どうやらかなり疲れていたようだ。
段々と瞼が落ちて僕は……
◆◆◆
気がつくと眠っていたようだ。
「おい、起きろ撤収だ!」
騎士の声で目が覚めた。
「撤収?」
原因は解っている。
だが、敢えて僕は知らない振りして聞き返した。
「ああっ、洞窟の中でかなりの惨劇があった。 もしもの事があっても困るから、物資も放棄してすぐに撤収する事になった。 急いで此処を離れるぞ」
「何事ですか?」
「理由を説明している暇はない! 行くぞ」
「はい」
連れ帰ってくれるだけまだ親切だ。
騎士が4名に同級生は大樹を含み8名。
そうか、動けない者はそのまま見捨てていく訳か。
確かに4名の騎士で此処には歩きながら来た。
動けない者を見捨てて行くのは仕方が無い。
『本当に仕方が無い』
僕を助けてくれなかった。塔子や綾子も見捨てた奴ら。
自分が見捨てられる立場になっても文句は言えないよな。
尤も彼らが善人であっても、僕には助ける方法は無い。
元から見捨てるという事しか出来ない。
僕はただただ黙って騎士たちの後ろをついていった。
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