上 下
17 / 73

第17話 レベルアップとめんどくさい女が増えた。

しおりを挟む
人生とはあっけないものだ。

大河はあれから治療のかいもなく死んでしまった。

僕に触れた場所から腐り始め、指が腐り落ち、手が腐っていったそうだ。

そして、その腐った状態が体に広がり、ただ腐るだけでなく、まるで喘息のように咳き込みながら吐血を繰り返し……死んだ。

その姿はまるでアンデットみたいだったことから、魔王や邪神の呪いだと思われたみたいだ。

この世界にも細菌の知識は多少はあるが、その病気全てを魔法で治していたようで、そういう方面の薬は発展して無い。

大河の治療には、万能薬エリクサールが使われたようだが『それすら効かなかった』そうだ。

この秘薬は城よりも高く世界に数本しか無いそうで、その使用料金は大樹や聖人の勇者パーティに重くのしかかる。

『使う事に同意』したから、彼等が魔王を討伐した折の褒賞から引かれるらしい。

僕が一番殺したい相手は大河だった。

それが殺せたのだからまずは『これで良い』

あとは実習をこなして、一度クラスの奴らから離脱すればそれでおしまい。

その後、復讐を続けるのか? 

それとも、復讐は此処で止めて他の生き方をするのか?

少し、ゆっくり考えれば良いのかも知れない。

それよりも驚いた事がある。

大河が死んだことでレベルが上がった。

どうやら人を殺してもレベルがあがるようだ。

聖夜
LV 10
HP 153
MP 126
ジョブ:ジャームズマン(ばい菌男)
スキル:翻訳、アイテム収納(収納品あり)空気人間 お葬式ごっこ ばい菌 亀人間 下級人間 腐る目 物隠し(NEW) 風評(NEW)

しかし、MPがあるのに魔法が覚えられていない。

そして、また正体不明のスキルが増えている。

これもまたどう言うスキルか解らない。

まぁ、今は解らなくても良い。

そのうち解る様になるはずだ。

◆◆◆

問題なのはこれだ。

「あんた! どの面下げて此処に居るの?」

「塔子さん、そう怒んないで……ほら私達友達だったでしょう?」

「『元』よね? 今は一番嫌いな女だわ!」

「そんな……聖夜くんは優しくて正義感があるから、目の見えない私を見捨てたりしないよね?」

「昔の僕ならね……だけど、僕は君を助けようとしたばかりに、地獄の人生を送ってきたんだ……そんな僕が助けると思う?」

「そんな……」

思わぬ誤算があった。

『ばい菌』には人を殺す力があるのに、『腐る目』には人を殺す力がなかったんだ。

確かに自分が受けたいじめがそのままスキルになったのなら。

ばい菌扱いされた時は……

『聖夜菌がついた、聖夜菌がつくと死ぬぞ』

『気持ち悪い! 聖夜菌がついた病気になって手が腐るーーえんがちょだ』

たしかに『死ぬぞ』と言っていた。

それに対して『腐る目』の元になったいじめは……

『なんだ!? その目、お前のその目なんなんだよ! お前キモイんだよ。あーあ、目が腐るわキモ!』

『あいつ本当にキモイ! あっ、目が合っちゃったよ、目が腐っちゃう』

良く考えたら『死ぬ』とは言ってなかった。

文字通り、目が腐るだけで、死にはしないスキルだったようだ。

「本当に土下座させた相手に今更良く媚を売れるわね」

塔子の場合はジョブは聖女。

治療職だから、目が見えなくても教会に入り一生回復師として生きていく。 そういう道もある。

だが、綾子は違う。

大魔導が使うのは攻撃魔法。

戦わないと意味がない。

恐らく、目が見えず、ここに来た時点で半分人生が詰んだかも知れない。

平和な前の世界なら兎も角、こんな世界で目の見えない女が放り出されたらまず生きていけない。

まぁ媚も売りたくなるよな。

「お願いよ……悪かったわ、塔子ちゃん! 聖夜くんも本当にごめんなさい……謝るから……お願いよ……グスッ、スン……ねぇ頼むから見捨てないでよ」

塔子は僅かに視力があるが、綾子は完全に盲目だから、怖くて仕方が無いだろう。

しかし此奴大河が死んだのに、随分と自分の事ばかりだな。





しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

ハズレスキル【収納】のせいで実家を追放されたが、全てを収納できるチートスキルでした。今更土下座してももう遅い

平山和人
ファンタジー
侯爵家の三男であるカイトが成人の儀で授けられたスキルは【収納】であった。アイテムボックスの下位互換だと、家族からも見放され、カイトは家を追放されることになった。 ダンジョンをさまよい、魔物に襲われ死ぬと思われた時、カイトは【収納】の真の力に気づく。【収納】は魔物や魔法を吸収し、さらには異世界の飲食物を取り寄せることができるチートスキルであったのだ。 かくして自由になったカイトは世界中を自由気ままに旅することになった。一方、カイトの家族は彼の活躍を耳にしてカイトに戻ってくるように土下座してくるがもう遅い。

アイテムボックス無双 ~何でも収納! 奥義・首狩りアイテムボックス!~

明治サブ🍆スニーカー大賞【金賞】受賞作家
ファンタジー
※大・大・大どんでん返し回まで投稿済です!! 『第1回 次世代ファンタジーカップ ~最強「進化系ざまぁ」決定戦!』投稿作品。  無限収納機能を持つ『マジックバッグ』が巷にあふれる街で、収納魔法【アイテムボックス】しか使えない主人公・クリスは冒険者たちから無能扱いされ続け、ついに100パーティー目から追放されてしまう。  破れかぶれになって単騎で魔物討伐に向かい、あわや死にかけたところに謎の美しき旅の魔女が現れ、クリスに告げる。 「【アイテムボックス】は最強の魔法なんだよ。儂が使い方を教えてやろう」 【アイテムボックス】で魔物の首を、家屋を、オークの集落を丸ごと収納!? 【アイテムボックス】で道を作り、川を作り、街を作る!? ただの収納魔法と侮るなかれ。知覚できるものなら疫病だろうが敵の軍勢だろうが何だって除去する超能力! 主人公・クリスの成り上がりと「進化系ざまぁ」展開、そして最後に待ち受ける極上のどんでん返しを、とくとご覧あれ! 随所に散りばめられた大小さまざまな伏線を、あなたは見抜けるか!?

最遅で最強のレベルアップ~経験値1000分の1の大器晩成型探索者は勤続10年目10度目のレベルアップで覚醒しました!~

ある中管理職
ファンタジー
 勤続10年目10度目のレベルアップ。  人よりも貰える経験値が極端に少なく、年に1回程度しかレベルアップしない32歳の主人公宮下要は10年掛かりようやくレベル10に到達した。  すると、ハズレスキル【大器晩成】が覚醒。  なんと1回のレベルアップのステータス上昇が通常の1000倍に。  チートスキル【ステータス上昇1000】を得た宮下はこれをきっかけに、今まで出会う事すら想像してこなかったモンスターを討伐。  探索者としての知名度や地位を一気に上げ、勤めていた店は討伐したレアモンスターの肉と素材の販売で大繁盛。  万年Fランクの【永遠の新米おじさん】と言われた宮下の成り上がり劇が今幕を開ける。

クラス転移、異世界に召喚された俺の特典が外れスキル『危険察知』だったけどあらゆる危険を回避して成り上がります

まるせい
ファンタジー
クラスごと集団転移させられた主人公の鈴木は、クラスメイトと違い訓練をしてもスキルが発現しなかった。 そんな中、召喚されたサントブルム王国で【召喚者】と【王候補】が協力をし、王選を戦う儀式が始まる。 選定の儀にて王候補を選ぶ鈴木だったがここで初めてスキルが発動し、数合わせの王族を選んでしまうことになる。 あらゆる危険を『危険察知』で切り抜けツンデレ王女やメイドとイチャイチャ生活。 鈴木のハーレム生活が始まる!

ボッチはハズレスキル『状態異常倍加』の使い手

Outlook!
ファンタジー
経緯は朝活動始まる一分前、それは突然起こった。床が突如、眩い光が輝き始め、輝きが膨大になった瞬間、俺を含めて30人のクラスメイト達がどこか知らない所に寝かされていた。 俺達はその後、いかにも王様っぽいひとに出会い、「七つの剣を探してほしい」と言われた。皆最初は否定してたが、俺はこの世界に残りたいがために今まで閉じていた口を開いた。 そしてステータスを確認するときに、俺は驚愕する他なかった。 理由は簡単、皆の授かった固有スキルには強スキルがあるのに対して、俺が授かったのはバットスキルにも程がある、状態異常倍加だったからだ。 ※不定期更新です。ゆっくりと投稿していこうと思いますので、どうかよろしくお願いします。 カクヨム、小説家になろう、エブリスタにも投稿しています。

ハズレ職業のテイマーは【強奪】スキルで無双する〜最弱の職業とバカにされたテイマーは魔物のスキルを自分のものにできる最強の職業でした〜

平山和人
ファンタジー
Sランクパーティー【黄金の獅子王】に所属するテイマーのカイトは役立たずを理由にパーティーから追放される。 途方に暮れるカイトであったが、伝説の神獣であるフェンリルと遭遇したことで、テイムした魔物の能力を自分のものに出来る力に目覚める。 さらにカイトは100年に一度しか産まれないゴッドテイマーであることが判明し、フェンリルを始めとする神獣を従える存在となる。 魔物のスキルを吸収しまくってカイトはやがて最強のテイマーとして世界中に名を轟かせていくことになる。 一方、カイトを追放した【黄金の獅子王】はカイトを失ったことで没落の道を歩み、パーティーを解散することになった。

治療院の聖者様 ~パーティーを追放されたけど、俺は治療院の仕事で忙しいので今さら戻ってこいと言われてももう遅いです~

大山 たろう
ファンタジー
「ロード、君はこのパーティーに相応しくない」  唐突に主人公:ロードはパーティーを追放された。  そして生計を立てるために、ロードは治療院で働くことになった。 「なんで無詠唱でそれだけの回復ができるの!」 「これぐらいできないと怒鳴られましたから......」  一方、ロードが追放されたパーティーは、だんだんと崩壊していくのだった。  これは、一人の少年が幸せを送り、幸せを探す話である。 ※小説家になろう様でも連載しております。 2021/02/12日、完結しました。

レベルが上がらずパーティから捨てられましたが、実は成長曲線が「勇者」でした

桐山じゃろ
ファンタジー
同い年の幼馴染で作ったパーティの中で、ラウトだけがレベル10から上がらなくなってしまった。パーティリーダーのセルパンはラウトに頼り切っている現状に気づかないまま、レベルが低いという理由だけでラウトをパーティから追放する。しかしその後、仲間のひとりはラウトについてきてくれたし、弱い魔物を倒しただけでレベルが上がり始めた。やがてラウトは精霊に寵愛されし最強の勇者となる。一方でラウトを捨てた元仲間たちは自業自得によるざまぁに遭ったりします。※小説家になろう、カクヨムにも同じものを公開しています。

処理中です...