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第31話 握手会
しおりを挟む結局その日の午前中は話し合いで終わり、午後からなんとか授業への参加が決まった。
個人的には給食を一緒に食べたいと思ったのに…
「さてそろそろお昼ですね、我々は此処で退室させて頂きます…お好きな物を自由にケータリング下さい」
そう言い出て行ってしまった。
なんでも好きな物を自由に頼んで良いそうだ…
仕方なくジョジョジョ園の焼肉弁当を頼んだ。
どういう仕組みか解らないが15分も待たずに届き…ドリンクバーのウーロン茶を飲みながら食べた。
確かにこの部屋には何でもあるが…この時代の引き篭もりで無い俺には1人は寂しく思えた。
さてどうしようか?
この世界では男に生まれれば勝ち組。
勉強なんてしないでも、生活が出来る。
まして俺は前の世界ではもう老人と言っても可笑しくない年齢まで生きた。
勉強という意味なら小学校で習う必要は無い。
あくまでコミュニケーションの為の通学だ。
午後からの授業は2時間かギリギリ間に合うか…
俺はタブレットでクッキーと小袋、メッセージカードを頼み注文した
◆◆◆
「小松先生…正平くんはこのクラスの転入で良いんですよね?」
「はい、その通りです」
「それで何時から通うんですか?」
「え~と今日から通うと先生は聞いていますよ…ですが、先程のは恐らく奇跡で…手続きだけしてそのまま帰るか…転入はAクラスに変更になると思います」
「なんで…酷い、人生で初めてあった男の子なのに…」
「それは、貴方達が悪いのよ…Fランクなんだからね…努力もしないで公立…しかも馬鹿なクラスなんだから…先生は努力したのに…グスッ…男の子に会えない…あんた達と違って努力したのに…死ぬ程、努力したのに…グスッ、うわぁぁぁぁー-ん」
「あ~あっ小松っちゃん泣いちゃったじゃん…泣きたいのはこっちだよ…こんなチャンスがあるなら、死ぬ程勉強したのに…Aクラスに取られちゃうのかな」
「違うよ…多分もう学校に来ないよ…」
「来ませんよ…普通は」
「先生、ちょっとトイレ」
「あっ、私も行く」
「あっ、私も行かせてください…」
「今は授業中ですよ…我慢できないんですか?」
「小松先生可愛いー-っ、おぼこぶって、先生、皆、トイレにオナニーしに行くんですよ…折角生身の男の子が見れたんだから…抜きにいきたいだけです…そっちじゃありません」
ハァ~この子たちが男性に会えるチャンスなんて確かにそうは有りませんね…
まして話せたんだから…そうなりますね。
「解りました…行くなら静かに移動して下さい…他の教室の人に迷惑かけないようにね…出来るだけ早く終わらせて帰ってきてください」
どうせ、生身の男性と触れ合う機会なんて滅多にないですからこの位許してあげても良いでしょう…ばれても校長だってモテない女…見過ごしてくれるでしょう。
結局、耳を澄ませて聞いていてもAクラスも静かなものです…やはり只の転入手続きだけで登校はもうしてこないのでしょう…
理由は解りませんが、男の子と会って話せただけこのクラスの子は幸せです。
しかも、あんなイケメンの子が話してくれたのですから…
「そこ、にやけてないでしっかりして下さい」
「先生だって、同じ問題2個書いているよ…」
「あっごめんなさい…まぁ仕方ないわ、今日は自習にしますから…静かにして下さい」
「「「「「「「「「「はぁーい」」」」」」」」」」
◆◆◆
クッキーは3枚ずつ詰めて…カードを添える。
『よろしくね』
時間が無いからシンプルだけどしょうがない…
しかし、凄いな男性用アルゾン…頼むと30分で配達されてくるんだから…女の子は翌日なのに…どれだけ優遇されているんだ。
授業が終わる迄あと20分どうにか間に合った。
VIPルームから出ると…
「正平くん、授業に行かれるのですか?」
武装教師に声を掛けられたので、早速クッキーの袋を2つ手渡した。
「はい…あとこれ」
「これは何ですか?」
「クッキーです」
「ありがとう…男性から…えぇぇぇぇー――っ、メッセージカード付…そんな、こんな物が頂けるなんて…ありがとうございます」
「これからもよろしくね…はい」
「あの…これは…」
「はい、握手…」
「嘘…手を握って貰えるなんて…嬉しい」
顔が真っ赤だ…まぁ良いや。
「それじゃ行ってきます…もう一人の方にも渡して置いて下さいね」
「必ず渡しておきます、行ってらっしゃい」
二人いた筈なのに…まぁ良いか。
再びFクラスに行きドアを開けた。
「嘘…正平君、私の授業を受けにきてくれたのですか? 今日はあれ…自習です」
「それなら、丁度良かった…」
俺は教壇の上にクッキーの小袋を置き、黒板に大きく書いた。
『水野正平 握手会』
「正平君、これは一体…」
「先生、折角皆と知り合えたから、皆と仲良くなろうと思って…駄目ですか?」
「駄目じゃないですが…本当に…大丈夫なの…倒れたりしない?」
「平気です…それじゃ、ほら皆並んで…1人20秒ね」
「嘘…正平くん戻ってきた」
「握手会…涙で目がかすんで見えないよー――っ」
「こんな夢のような話…嘘みたい…ううん嘘でも良いあの手に触れられるなら…幾らでも払うよ」
「夢だよね…こんな都合が良い事が起きるなんて」
「今なら私、神様、信じる」
「こんな奇跡の様な事は滅多におきませんからね、他のクラスに聞こえない様に静かに1列に並びなさい…ばれたら邪魔されますからね」
「「「「「「「「「「は~い」」」」」」」」」」
凄いな、騒ぐことなく静かに並んでいる。
「それじゃ、最初は先生から…はい」
「あの…私も良いの?」
「はい…先生、これからもよろしくね…」
俺は手を伸ばし、担任の手を握った。
「よよ…宜しくお願い致します…」
アイドルの亜美ですら握手がなかなか出来ないんだ…
ならばこれで凄く喜ばれる筈だ。
「はい、先生これ」
「これは何ですか…嘘、直筆のメッセージカードまで…先生、先生…凄く嬉しい…卒業までオール5にしちゃいますよ…ありがとう、ありがとう…」
このあと、先生に時計で20秒を計って貰い握手会をスタートした。
「美瑠加ちゃんだっけ、宜しくね」
「そんな、握手して貰えるなんて…信じられない…もうこの手は死ぬまで洗わないよ…」
「汚いからちゃんと洗って…握手位またしてあげるから…」
「本当に? 嬉しいな…ありがとう」
「はい、これ」
「嘘、直筆のメッセージカードが入っている…正平くん私…キャッ痛い」
「委員長、後がつかえているの…こういう時は素早く終わらせて遠慮する物よ…正平くん宜しく」
「宜しくね」
まるで俺がアイドルにでもなったみたいだ。
握手する度にクラスの子が顔を真っ赤にして喜んでくれる。
こんなに喜んでくれるなら…握手位何時でもしてあげるよ…思わずそう口から出そうになった。
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