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第24話 涙の歓迎会

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今日は早起きして料理に取り掛かった。

とは言っても、今回は少し趣向を凝らして鉄板焼きにしたから、用意してくれた食材を自分が調理しやすい様に並べただけだ。

目の前で焼いて出す…

この世界は氷を入れたジュースを出すだけで、男の手作りと喜ぶんだから…きっと気にいってくれると思う。

美香さんの話では、昔、男性が握るおにぎりやさんがあったらしいが、おにぎり1個1万円だったらしい…しかもこのおにぎり具の無いただの塩にぎりだった、それなのに連日長蛇の列が出来る程の行列が出来ていたらしいがある日…

『めんどくさいから辞める』と辞めてしまったらしい。

とある上場企業の社長の旦那さんは、偶にレトルトの味噌汁を入れてあげるのだそうだ…それだけで『心の支え』となり、この会社が大きくなったのは夫のおかげと週刊誌に書かれていた。

しかも…おにぎりのお店の店主も件の社長の旦那さんも、凄くブサイクだ。

この世界ではブサイクな男でも、何かしたら喜ばれる位に男性に優しく甘い世界…だが俺は妥協はしたくない。

歓迎会の話は三人にはしていない。

本当は、またカラオケで歌を歌いたかったが…

『死人が出るからやめましょう!』

と琴美さんに怖い笑顔で言われたので今回はカラオケは用意していない。

その代りのサプライズが『鉄板焼き』目の前で俺がステーキを焼いて切り分ける。

これだ…

「正平さん、これは一体…」

「想像がつきましたわ…凄すぎますわ…これ…」

「こんな事考えるのは正平様位だよ…幸せ過ぎて怖いよ」

「あの…正平くん、今日は何をするんですか?」

「今日は新しく三人が仲間になるから、その歓迎会だよ…前回の事を反省して少し自重したんだ…」

「絶対に自重していませんよね! 前にも話しましたが女性に歓迎会を開く男性は居ないんですよ…」

「琴美さん、諦めが肝心ですわ、それに既に歓迎会をして貰った私達としては止める権利はありませんわよ」

「そうだよ…結局私ら恩恵に預かっているんだから…」

「そうよね、またこれから楽しい一時が始まるのね、亜美凄く楽しみ!」

先に席について貰い3人を待った。

◆◆◆

今日の俺はシェフの恰好をしている。

「正平く~ん貴方の麻里奈が…ナニコレ?」

「正平くん…あれっ綾瀬亜美がいる…」

「綾瀬亜美だ…」

「みうにゆかり、お久しぶり! それに麻里奈は初めまして、これからは仲間ですから宜しくね」

「あの亜美…これから何が始まるの、みう解かんない」

「亜美さん、何かのイベントですか? 何かゆかりも手伝いましょうか?」

「麻里奈もなにかお手伝いした方が良いかな…」

驚いている、驚いている…掴みはばっちりだ。

「今日は、三人の歓迎会、君たちが主役だよ! 可愛らしい俺のお姫様…座って、座って」

「えっ…みうの歓迎会…」

「みうちゃん違う、三人の歓迎会だよ」

「麻里奈を歓迎してくれるの…そんなうわぁぁ」

顔が泣きそうになり涙が溜まってきている。

この世界は凄く…大げさだな。

「涙ぐむのは止めてね...折角の歓迎会なんだから、ほら立ってないで早く座って…始めるからね」

「「「うん…」」」

自己紹介は後回しで、すぐに料理からスタートだ。

俺は全員のグラスにジュースを注いだ。

それだけで、皆の表情が変わり、にやけているのが解る。

琴美さんや亜美たちは慣れているから驚かないが、三人は驚いた顔で俺を見つめてくる…これが凄く面白い。

「正平くんが注いでくれるの? みう…男性の手作り初めて」

「こんなサービス初めて、正平くん、ゆかり一生忘れないよ」

「やっぱり、正平くんは凄いね、前もそうだったけど、こんな経験普通は滅多に無いよ」

ただグラスにジュースを注いだだけでこれだ…

本当にこの世界の男は何もしないのな…

「こちらは山梨産の白ぶどうジュースです、どうぞお召し上がり下さい…皆様には今回コースを用意しましたから、出来るだけ静かにお願い致します」

「「「「「「「わかりました」」」」」」」

わざと高級料理店風に話してみた。

「前菜は、A5松坂牛と北海道産ウニの握りです、是非堪能下さい」

俺は半生の松坂牛で寿司を握り、その上にウニを乗せた物を作っていき、それぞれの前に置いた。

「どうぞ」

『出来るだけ静かに』

これのせいか誰も喋らないが…手が震えていたり、泣きそうな顔になったり大変だ。

「続いての前菜は伊勢海老とホタテの黒酢ジェレです…どうぞ」

流石にこれを人数分、この場で作るのは大変だから予め作っておいて冷蔵庫に入れて置いた。

更に体を震わせて手が震えている…泣きそうにして食べている。

「続いては 季節の野菜のサラダ、ゆずドレシッングを添えて、それと焼き野菜です…トウモロコシが美味いですよ」

「あの…正平さん…少し自重をした方が…」

「これ幾ら払えば良いですの…」

「一品10万円以上は必要だよね…」

「男性の料理なんて…1万円のおにぎり以来…あれと全然違うよ」

「こんなの幾ら払って良いか解らないよ…オークションなら1000万円以下にならないよ…」

「「…どうしよう…」」

しかし、この貢ぎ体質…凄すぎるな。

「今日は歓迎会…お金なんて要りませんよ、次はメインA5 松坂のステーキです」

「正平さん、自らが焼いて切るのですか?」

「嘘だ…これ凄すぎるよ…こんなのは聞いたことが無いよ」

「私の為に肉を焼いて切り分けてくれるなんて信じられませんわ」

「亜美は…勿体なくて食べられないよ…」

「みうは、みうは…こんな物が食べられるなんて」

「美味しいよ、美味しいよー――っ」

「うまいよー-っ、うまいー-っ」

「喜んで貰えて嬉しいよ…次はデザート、季節のアイスの盛り合わせです…これで終わり…後は自己紹介でもして、少し、皆で遊ぼうか? え~と…どうしたの?」

「正平さん、あれ程…自重してと言ったのに…うっうううっ…嬉しくて涙が…涙が止まりません」

「今日、今死んでしまってもうっうっ、悔いはないよ」

「こんな素敵な事が人生であるなんて、信じられませんわ…感動で、感動で涙が止まりませんわー-っ」

「アイドル頑張っていて良かった…正平くんに選ばれて…本当に良かった…主演女優賞よりも…なによりも今が幸せです…ありがとう、正平くん…本当にありがとう、すんすん」

「お兄ちゃん、本当にありがとう…みうはみうは…人生で1番幸せだよ!あるうぃがうとー―――」

「最高の料理だったわ…この私を唸らせるなんて信じられないわ…これからも精進なさい、スンスン…グスッ」

流石は声優…自分の看板キャラを使ってきたな。

「正平くん…グスッ、グスッ麻里奈、生きててよかったよ…うえぇぇぇぇー-ん」

「「「「「「うぇぇぇぇー-ん」」」」」」

「え~と…」

「あれ程自重して下さいと言ったのに…ハァハァ、この世界で男性が…作るコース料理なんて大統領でも食べれません」

結局、全員が泣き止むまで3時間かかり、歓迎会は一時中断せざるを得なくなった。





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