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第11話 アイドルでも別格じゃない。
しおりを挟む7LDKの部屋のうち、お風呂、キッチン、トイレ等全部がついている部屋が僕の部屋と決まっていた。
殆どの男性は引き篭もりだから、この部屋で全部の生活が出来るようになっていた。
ドリンクバーにネットもあり…確かにそういう人にとっては最高の部屋だろう。
だが、僕にとっては確かに快適だけど少し寂しい物がある。
約30畳の部屋に一人、お風呂にはジャグジーバスがついているが、こんなの1人で入っても楽しくもなんともない。
水着姿の女性と入るから楽しいんだよ。
なんで好き好んでボッチにならなくちゃならないんだ。
とは言え、記憶喪失で誤魔化しているが、ちゃんと世間の常識を知る必要がある…ネットで調べてみるか?
なんだこれ…何処にも女の裸や水着姿も無い。
男女比が偏っているからなのか?
興味はないが、男の裸も無い。
『女 裸』でくぐってみたら『男性は女性の裸に嫌悪感を抱くので気をつけましょう』そんな文章ばかりだ。
この世界にBランクが居る以上発情させる方法がある筈だ。
だが、裸や性の話が何処にも無い。
そう思って適当に調べていたら。
全身コンドームというのがあった。
写真をみてみたらモザイクは掛かっていたが顔と股間だけに穴が空いたゴムのスーツの写真があった。
『男性は女性の全てを嫌います、もしもの為に必ず用意しましょう』
こんなんじゃ胸もお尻もゴムスーツ越しにしか触れない。
此処迄、この世界の男性は女が嫌いなのか?
それにしても、こんなゴムスーツ着ている女に僕は絶対反応しないな。
結局調べた結果『女の裸は男が嫌悪感を抱くからNG』『男の裸は男が脱がないからNG』とネットはおろかTVにも出てこない。
アダルトDVDも無い。
こんなんで性処理を他の男はどうしているんだ?
調べていくと『発情薬』という物があり…Bランクですらそれを使う事も多く、自分から女性を求めるなんてほぼないらしい。
ネットで見る限り、映画やドラマも不細工な主人公が多く、しかも横柄だ。
本当に可笑しい。
ヒロインが命がけで組織と戦ったり、仕事を頑張って出世するサクセスストーリーなのに男性は凄く横柄だ。
「俺の為に命がけで戦う?当たり前だな!仕方ない俺専用のパシリにしてやる」
「ありがとう、私凄く幸せだよ!」
「貧乏だった私が女帝と言われるまで頑張ったんだよ、今や帝グループの総帥なんだ…生涯かけて幸せにします」
「お前凄く頑張ったんだな、解った君を僕のATMにしてあげるよ」
「嬉しい、頑張って良かったよ、こんな幸せな事ないよ…」
何かの冗談かと思ったけど。
これで恋愛が成立しているみたいだ。
凄く可笑しい。
お笑い番組でも不細工な男が綺麗なアイドル?の女の子に
「此処の子嫌いだからチェンジしてくれる」
なんて馬鹿な事いっていたと思ったら、その子は次の瞬間消えていた…冗談みたいな話だ。
しかし、さっきから気になるのが、女の子が出るたびに出てくる電話付きのテロップだ。
何か意味があるのかな?
洋画とか外国の女性の画像は一切見れないようだ。
これは事前に琴美さんから聞いた話だが、何処の国も自国の男の流出を恐れて海外の女性を男に見せない様にしているらしい。
男女比が此処迄偏っているのに金髪のお姉さんはまず無理、そういう事だ。
琴美さんに小学校に通いたいと言ったら…
「凄いですね~」と驚かれた。
名門小学校ですら一クラスに男子は5人居たら良い方で、試験は一切なしで入れる…更に数は5人だが不登校が多く、出席率の多い男子の教室は成績優秀者の女の子が優先して入るらしい。
普通の小学校には男の子は1クラスに1人はいるらしいがランクも低く不登校状態だそうだ。
◆◆◆
小学校に通うとして…凄く気になった事がある。
前の世界では『可愛すぎる』『日本一可愛い』そんな小学生がいた。
『可愛すぎる中学生』もいた。
この世界に居るような気はする。
流石に『日本一可愛い』そんな子なら、恋愛勝者、いわゆる勝ち組だから、男に飢えて無いんじゃないだろうか?
そう思った。
ネットで調べると『綾瀬 亜美』(あやせ あみ)という女の子がヒットした。
確かに凄く可愛い。
黒い髪に綺麗な瞳、手足はすらっとしていてバレエでもやってそうな感じだ。
前の世界に皆の妹っていわれたアイドルが居たけど、それすら比べ者にならないな。
しかも、子役に歌にアニメの声優までこなすか…凄いた。
流石にこんな子は別格だろうな。
サイトにファンクラブの募集まであるんだから。
しかも『月会費3万円安くてゴメン』ってどう考えても高い。
『今すぐ入会! これで亜美ちゃんは君の物だ』
『ここでは言えない凄い特典あり』
そんな記載もあった。
どんな子か更に調べたら、歌もうまいし演技も上手い…
3万円か、少し高いけど良いか…
入会してあまりよく無かったら退会すれば良い。
思い切って僕は綾瀬亜美のファンクラブに電話をしてみた。
「はい、こちらは綾瀬亜美ファンクラブ、あっ青ランプ男の子だ」
「はい男です、もしかして男じゃ不味かったですか?」
「いえ、そんな事ありませんよ、アイドルは男性が目当てですから」
◆◆◆
『亜美ちゃん、本当に男の子だ』
『嘘、だけどどうせブサイクよね』
『そんな事言わないの、ようやくかかってきた男の子の電話なんだから』
『解っているわ、ブサイクでもラッキーなのは間違い無いもんね』
◆◆◆
「そうなんですか?」
アイドルが男性目当て?
「はい、今直ぐに変わりますね」
「変わりますって誰にです?」
「亜美ちゃんに決まっているじゃないですか?」
「本当に? 綾瀬亜美と喋れるんですか? まだ入会もお金もまだなのに?」
「はい、もし亜美が見たいならテレビ電話モードでも大丈夫ですよ」
「本当に?」
「はい」
◆◆◆
「亜美、テレビ電話でも大丈夫だって」
「本当? 普通レベルの子かな、緊張しちゃうよ…どうしよう」
「良いから切られる前にでなさい…良いわね」
「はい」
◆◆◆
「初めまして…皆のアイ…ううん貴方のアイドル綾瀬亜美です、宜しくね」
「こちらこそ宜しくお願いします」
「名前教えて貰えるかな?」
「水野正平って言います」
「正平くんっていうんだ! 正平くんって凄くカッコ良いよね、何歳?」
「11歳だよ」
本当の所は解らないけど、この年齢に決まったんだよな。
「そうなんだ、そうしたら亜美と同い年だね、えへへ嬉しいな」
「亜美ちゃんってアイドルなんだよね凄いね」
「そうかな、ただ亜美は一生懸命なだけだよ! 頑張らないと男の子と仲良くなれないから」
「亜美ちゃんは可愛いから大丈夫だよ、歌も上手いし演技も上手いよね、しかもアニメの声優まで凄いよね」
「本当にそう思う? 嬉しいな、凄く頑張っているの…それより可愛いって本当? 正平くんはそう思ってくれるの?」
「うん、本当にそう思うよ? そう言えば入会したら『これで亜美ちゃんは君の物だ』『ここでは言えない凄い特典あり』って書いてあったけどプロモーションDVDとか貰えたりするの?」
「下に小さく『※気にいって貰えたら』とかいてあるよね」
「ああっ本当だ、じゃぁ駄目か、残念」
「ううん、違うよ、亜美は凄く正平くん気にいったよ」
アイドルって凄いな子役でもこんな表情ができるんだ。
「それじゃ何か貰えるの?」
「うん、亜美をあげるって言いたいけど子供だから残念ながら『友達』かな、大人だったら結婚前提なのに残念だよね」
「はい?」
「勿論、亜美を受け入れてくれたんだもん、特典として私のギャラでもなんでも欲しい物全部あげるよ、CDなんか買わなくても私が目の前で歌ってあげる」
「はい?」
「それじゃサインしてくれる?」
なんだこれ?
気がついたらサイト越しにサインしてしまった。
「それじゃ正平くんまた後でね! 大好きだよ、愛しているよ」
そのままビデオ通話は切れた。
◆◆◆
「正平さん、今徳永さんから連絡がありまして、綾瀬亜美の事務所から『友達』になったからと『ご学友スペース』の受け入れ要請がありましたけど、本当ですか?」
「琴美さんこれ…」
「契約しちゃってますね」
「あの子、日本一のアイドルだよね…こんな事ってあるの?」
「記憶喪失だから仕方ありませんがアイドルを他の文字に直すと愛ドル、つまりは愛をお金で買うそういう人達ですよ、男性に見て貰う為にTVやWEBにお金を払って露出して、高いお金を払ってプロダクションに売り出して貰うんです」
あっ『月会費3万円安くてゴメン』..よく考えれば貰えるお金じゃないか…亜美ちゃんが僕に払うのか?
「はいはい…解りました、はい、少しお待ちを、正平さん明日、綾瀬亜美が引退記者会見を開いて明後日からこちらへ来るそうです、キャンセルしますか?」
頑張っているよな…亜美ちゃんは…
歌に踊りに演技に声優…努力家だよ…
『友達』なら良いや。
「OKって伝えといて」
「正平さん解りました…はいOKです、但しこちらの身元は絶対にばれない様にして下さい…はい、はいお願いします」
「なんだかゴメン」
「いえ…ですが常識が身に着くまで、スマホもネットも制限を掛けますね」
「了解」
「とはいえ、Cランクなんで交際義務が発生するまえに自分から交際相手を探してしまうのも悪くは無いですよ」
「あとで詳しく教えて」
「それも解らないんですね」
本当に解らない事ばかりだ。
応援ありがとうございます!
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