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第59話 【過去】 理人が帰るなら帰れない
しおりを挟む凱旋の中、城に入り、謁見の間に行くと雰囲気がガラリと変わった。
マリン王女に似た女性が俺達を見つけている。
おかしい。
玉座にエルド六世がいない。
「エルド王都、マリン王女は……」
「私なら、目の前にいるじゃないですか? お父様は……亡くなりました。 女神様から、理人殿を殺した罰だそうですよ……それぞれ寿命を10年とられてしまいました」
「そんな」
「平城殿、正直言えば私は貴方が嫌いです。ですが世界を救う事に貢献されたのも事実です。そこは女王として適切に扱うから安心して下さい」
「「「「「……」」」」」
「平城殿を除く四職の方には伯爵の爵位と領地を与えます。尤もこれはこの世界に残った場合の事です。勿論、元の世界に戻ると言う事であれば止めません。あと私と大樹殿の婚約ですが、私の容姿がこれではもう無理でしょう。白紙に致します」
「「「「「……」」」」」
「それで平城殿ですが、理人殿を殺す原因を作った分、褒賞を減らしまして、男爵の爵位と領地を与えます……以上です」
「あの……それで良いんですか?」
「平城殿、正直言えば貴方が憎い。ですが、私は女王ですから……しっかり判断させて貰いました。 ただ、傍に居るとどうしても八つ当たりしてしまいそうですから、王都からかなり遠くの領地です。余生を楽しく暮すには良い場所ですよ! それでは……」
褒賞の話が終わったら、マリン女王は、その場から去っていった。
恐らく次は同級生に褒賞の話をしに行くのだろう。
確かに、爵位を貰い、待遇は良いのかも知れない。
だが……こんなのは俺を含む皆が望む異世界生活じゃ無かった筈だ。
◆◆◆
その日の夜王城で眠っていると、女神イシュタス様と出会った空間に居た。
「「「「「此処は?」」」」」」
「目が覚めたようですね……魔王討伐ご苦労様でした……目的を果たした貴方達に聞きに来たのです……この世界に留まるか、元の世界に戻るかです……私としては戻る事はお勧めしません」
「何故ですか?」
「この世界はこりごりだわ」
「こんな世界、居たくねーよ」
「僕も同じだ」
「私も」
「ですが、残った方が無難ですよ! 理人は生きて居て、向こうの世界に帰る事を選びました。かなり貴方達を憎んでいましたよ? もし、向こうの世界に戻ったら殺されるかも知れません! もし、貴方達が戻られたらきっと生涯かけて復讐されるかも知れません。それに此処で過ごした10年近い月日は返せません。その姿で帰っても生きづらいでしょう?」
結局、戻って理人に復讐される位ならと5人ともこの世界に留まる事にした。
理人の為にも……それが良い。
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