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第56話 【過去】勇者パーティ 無残

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「俺の名はカルトキング、魔族12人衆のうちの一人である! 貴様らは勇者パーティで間違い無いか?」

恐らく、此奴が幹部の一人だ。

幹部と言いながらも、たった3人。

騎士の様な姿は明らかに強そうな気がする。

「俺が勇者大樹だ! そして……」

「聞く必要は無い! 此処でお前等の旅は終わり! 死ぬ事になる……あと、此処に居る2人は見届け人であって、一緒には戦わないから安心するが良い」

「それは一対五でやり合うと言う事でいいのか?」

大河が挑発気味にカルトキングに言い放った。

「それで構わない! 俺は強いからな!」

強いと言いながら12人衆。

城で聞いた話だと、魔王がいてその下に四天王がいて、その下に12人衆がいる。

つまり、此奴と同格が12人。

その上に4人の更に強い存在がいる。

そして、その上に魔王がいる。

此処で此奴に負けるようであれば、魔王討伐なんて夢また夢だ。

「そうか、俺達五人にたった1人で挑んでくるとはな! 行くぞ、皆!」

「「おう!」」

「「はい」」

聖人がいきなりファイヤーボールをぶち込むが簡単に躱されてしまう。

それに合わせて大河が斬り込んでいったが……

「切断」

「えっ……うわぁぁぁぁぁーーうぐっ俺の腕……俺の腕があぁぁぁぁぁーー」

カルトキングが呪文を唱えた瞬間に剣ごと大河の右腕が切断された。

「ふははははっ! ファイヤーーーっ」

カルトキングがそう唱えると大河の右腕は燃え始めた。

「「止めろーーっ」」

「「やめてーーっ」」

「こうしないと繋げられるからな! 流石の聖女の魔法でも腕を生やす事は出来ぬ……そら、これで終わりではないのだろう? さぁ勇者よ掛かって来るがよい!」

塔子は回復魔法が使えない。

だから、元から繋ぐことはできない。

消し炭となった大河の右腕。

「ハァハァ、うわぁぁぁぁぁーー俺の腕! 俺の腕がぁぁぁぁぁーー! 痛ぇぇぇぇぇぇーー」

腕を切断され転げまわる大河を前に俺は……駄目だ。

今しかない。

突っ込んだ方が良い。

「うわぁぁぁぁーーっ!」

俺は思いっきり突っ込んでいく。

たかが詠唱一つで腕を切断出来るような敵。

話す時間を与えては駄目だ。

「はははっ、なかなか良い判断だ! だが、他の者が出遅れているではないか!」

笑いながらカルトキングは俺の攻撃を躱し剣で斬りつけてくる。

クソッ!

「ウインドカッター」

「ファイヤーボール」

平城さんと聖人が魔法を唱えるが、それすら簡単に躱した。

「邪魔だ! 『切断』」

嘘だろう……たかが詠唱するだけで、聖人の右腕が杖ごと宙に舞った。

「うあわぁぁぁ! うわぁぁぁぁ、僕の腕、僕の腕がぁぁぁぁぁーーっ」

「塔子、平城、どちらでも良いから! 早く聖人の腕を回収しろ!  ハァハァ……こうなったら……ヤルしかない」

「なにをするつもりだ!」

「これが、勇者のみが使える奥義――っ! 光の翼だぁぁぁぁーーっ!」

刃が光の鳥のような形を纏い、そのまま斬りつけた。

聖剣を使えば、この鳥は羽ばたき、相手に襲い掛かるが。

聖剣ではないこの剣では羽ばたかない。

だから、そのまま剣で斬るしかない。

だが……

「ぐわぁぁぁぁーーっ! 俺の腕がぁぁぁぁーー」

「どうやら、技の威力に腕が耐えられなかったようだな! だが、見事だ……ぐふっ……俺を倒すとはな! だが、タタでは死なぬ! この命と引き換えにお前の……ハァハァ目を貰う」

そう言うとカルトキングの右手の人差し指が俺の目をついてきた。

「ぎゃぁぁぁぁーー」

そして、俺の左目を爪で抉ると、口をあけて食った。

「ハァハァ、さらばだ勇者達よ……このカルトキングに勝った事誇るが良い」

そういうとカルトキングはその場に倒れた。

他の二人の魔族はカルトキングを置き、その場を去っていく。

約束通り、こちらに攻撃せず去った。

聖人の腕はくっつくかも知れない。

ハァハァ、だが大河の腕と俺の左目は治せない。

『理人がいれば』あのスキルを奪えた。

そして、こんな無様な戦いにならなかった筈だ。

蹲まり痛がっている大河と聖人を見たあとに、気がつくと俺は平城の方を見つめてしまった。



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