53 / 62
第54話 【過去】塔子SIDE これだから面白い
しおりを挟むハァ~このパーティに私がいる意味があるの?
私の名前は南条塔子。
南条財閥の一人娘で、なんでもできる存在。
別に盛っている訳じゃないのよ。
『なんでも出来る娘』というのは周りが言っている事だわ。
お金持ちだから?
確かに、それもあるかも知れないわ。
天下の南条財閥の娘だから…….それは認めるわ。
だけど、お金があるだけでなんでも一番にはなれないと思わない。
私は、それが出来る。
家にも学校にもトロフィーやカップ、盾なんかが山ほどある。
だから、つまらない。
だって、ちょっと頑張れば、大抵の事ができるんだから。
南条の家は代々、小学6年生になると300万円貰ってそれで成人まで生活する。
そういう決まりがあります。
それで学費を賄いながら成人まで生活します。
家はあり食事はでるけど、その他の事は全部それで賄います。
だから、投資がまともに出来ないと生活が出来なくなります。
その300万円を投資で増やし、気がついたら12億円。
だから、もう何もしないでも生活が出来ます。
1人暮らしをしたかったのですが、お父様が許してくれなかったので、南条の豪邸がある敷地から120坪ほど土地を買って家を建てて過ごしています。
そんな訳で、元の世界でも凄く恵まれて生活していましたの。
ですが……そんな生活、楽しくも何ともありません。
だって、夢は簡単にかなってしまうのですから。
なんでも出来るからこそ詰らない。
それが、私の人生です。
ですが……
そんな私に『異世界転移』という全く解らないものが紛れ込んできました。
今の世界で全てが面白くなかったから、これは私にとってのチャンスです。
ワクワクがとまりません。
ですが、王宮での測定の時です。
「すごい、塔子様のジョブは聖女です!」
「そうですか……」
此処でもまた退屈な日々の始まりそう思っていました。
財力こそありませんが、私の能力は健在。
この世の中はまるでイージーゲームみたいです。
『詰らない』
また、それがこの異世界でも繰り返される毎日。
そう思っていましたが……
平城さんが理人くんが『強奪』という特殊なスキルを持っている。
そう、私達に言ってきました。
熱くその事を語る彼女の姿はいつもの彼女の姿では無く、本当に焦っているのが解りました。
結局、大樹や大河、聖人までもが、彼女の説得を聞き届け、私達は王や王女に彼の……処分をお願いしました。
王や王女は『勇者パーティ』からの緊急要件だからとすぐに動き彼は……処刑されてしまいました。
だが、これが大きな間違いだったのです。
◆◆◆
理人くんの処刑が終わり。
王や王女に再び会った時です。
「『強奪』のスキルの何処が問題なのじゃ?」
急に王が言い出しました。
「はっ?!スキルを奪えるスキルですよ? しかも盗賊…危ないに…」
「そうだ!仲間にそんなスキルを使われたらどうなった物か、不安です」
「俺も大樹に同感だ!」
「僕も同じです」
4人が王様に抗議しています。
私も平城さんから聞いた話では、かなり物騒な物だと聞いていました。だから、勿論同意しました。
「私も同じですわ」
マリン王女が顔をかしげながら答えます。
「あの…何を言っているのか解りませんが『強奪』のスキルは使う時に目が緋色に変わりますから顔を隠してなければ使っているのが解ります! それに、持っていると解れば、鑑定をこまめにしますから、そこ迄怖いスキルじゃありません…それに貴方達の6人目のパーティメンバーになるのが『強奪』持ちでした…」
えっ! 平城さんから聞いた話と全然違います。
「あの…どういう事でしょうか?」
嘘ですよね。
もし、そうなら私達は無実の人間を殺した事になります。
此処は、黙って話を聞きましょう。
「「「「…」」」」
「盗賊のジョブ持ちは、斥候として必要です! 強奪のスキル持ちは貴方達が旅で快適に暮らせるように必要なスキルを囚人から奪わせます…例えば家事を獲らせて生活の向上などをはからせます…それに貴方達が戦う強敵にはやっかいなスキル持ちがいます…そういう相手への切り札です」
「ちょっと待て!いないと問題になるのか!」
大河が慌てだしました。
魔王討伐の切り札になる人物……それが理人だったのです。
「例えば、魔族の幹部に『切断』のスキル持ちがいます…これを使われたら、最後、四肢の何処かが切断されます。彼が居れば先にスキルを奪う事ができます…ですがいない現状誰かが手足を失う可能性が高いです…他にも魔王が使う『黒のカーテン』や四天王の使う『失明』恐ろしいスキルが沢山あるのです!それに対抗するのが『強奪』です」
「大樹、不味い事になったんじゃないか?」
「大樹ヤバいよ」
「ヤバいわ」
平城さんは顔を真っ青にして話しません。
どう考えても、この先大変な事になる。
それだけは良くわかりました。
可能なら……魔王討伐じたいを辞退する。
それが出来るなら、それに越した事はありません。
「そんな悪い条件で俺達は戦いたくない!」
「そうよ…無理だわ」
マリン王女の目つきが変わりました。
同じ女だからわかります。
これは、そうネズミやカエルを見る蛇の目。
『逃がさない』そういう目です。
「貴方達の先生の赤川殿から聞きましたよ? 貴方達の世界でも罪の無い者を殺せば重罪だそうですね? この世界も同じです!貴方達は勝手な判断で罪の無い者を殺しました…しかも緊急案件として『王権』まで発動させて…勇者パーティとして戦うなら不問にしますが…戦わないならギロチン送りです」
「そうじゃな……無罪の者を手にかけたのだ、死刑も仕方なかろう」
「「「「「そんな」」」」」
取り敢えず驚いたふりをしておきましたが……
無実の人間を自分達の馬鹿な考えで殺してしまったのですから、その対価を求められるのは当たり前の事です。
前の世界なら、未成年とは言え刑務所案件です。
「お好きな方をお選び下さい! 勇者パーティとして戦うか……それとも処刑かを」
ほらね……
「殺人は重罪じゃ、だが勇者パーティは特別な存在、その罪を許そう…但し、その生涯は魔王討伐に捧げる覚悟があればじゃ」
権力者なんてこんな者。
私のお父様やおじい様もきっと同じ状況なら、同じように追い込むはずです。
「解りました…皆もそれで良いよな?」
「「「「はい」」」」
自分達が選んだように見せかけて、実は選択が無い。
流石王族、狸と女狐と言った所ですか。
ですが『面白い事』になりましたね。
11
お気に入りに追加
75
あなたにおすすめの小説
勇者召喚に巻き込まれ、異世界転移・貰えたスキルも鑑定だけ・・・・だけど、何かあるはず!
よっしぃ
ファンタジー
9月11日、12日、ファンタジー部門2位達成中です!
僕はもうすぐ25歳になる常山 順平 24歳。
つねやま じゅんぺいと読む。
何処にでもいる普通のサラリーマン。
仕事帰りの電車で、吊革に捕まりうつらうつらしていると・・・・
突然気分が悪くなり、倒れそうになる。
周りを見ると、周りの人々もどんどん倒れている。明らかな異常事態。
何が起こったか分からないまま、気を失う。
気が付けば電車ではなく、どこかの建物。
周りにも人が倒れている。
僕と同じようなリーマンから、数人の女子高生や男子学生、仕事帰りの若い女性や、定年近いおっさんとか。
気が付けば誰かがしゃべってる。
どうやらよくある勇者召喚とやらが行われ、たまたま僕は異世界転移に巻き込まれたようだ。
そして・・・・帰るには、魔王を倒してもらう必要がある・・・・と。
想定外の人数がやって来たらしく、渡すギフト・・・・スキルらしいけど、それも数が限られていて、勇者として召喚した人以外、つまり巻き込まれて転移したその他大勢は、1人1つのギフト?スキルを。あとは支度金と装備一式を渡されるらしい。
どうしても無理な人は、戻ってきたら面倒を見ると。
一方的だが、日本に戻るには、勇者が魔王を倒すしかなく、それを待つのもよし、自ら勇者に協力するもよし・・・・
ですが、ここで問題が。
スキルやギフトにはそれぞれランク、格、強さがバラバラで・・・・
より良いスキルは早い者勝ち。
我も我もと群がる人々。
そんな中突き飛ばされて倒れる1人の女性が。
僕はその女性を助け・・・同じように突き飛ばされ、またもや気を失う。
気が付けば2人だけになっていて・・・・
スキルも2つしか残っていない。
一つは鑑定。
もう一つは家事全般。
両方とも微妙だ・・・・
彼女の名は才村 友郁
さいむら ゆか。 23歳。
今年社会人になりたて。
取り残された2人が、すったもんだで生き残り、最終的には成り上がるお話。
レベルを上げて通販で殴る~囮にされて落とし穴に落とされたが大幅レベルアップしてざまぁする。危険な封印ダンジョンも俺にかかればちょろいもんさ~
喰寝丸太
ファンタジー
異世界に転移した山田(やまだ) 無二(むに)はポーターの仕事をして早6年。
おっさんになってからも、冒険者になれずくすぶっていた。
ある日、モンスター無限増殖装置を誤って作動させたパーティは無二を囮にして逃げ出す。
落とし穴にも落とされ絶体絶命の無二。
機転を利かせ助かるも、そこはダンジョンボスの扉の前。
覚悟を決めてボスに挑む無二。
通販能力でからくも勝利する。
そして、ダンジョンコアの魔力を吸出し大幅レベルアップ。
アンデッドには聖水代わりに殺菌剤、光魔法代わりに紫外線ライト。
霧のモンスターには掃除機が大活躍。
異世界モンスターを現代製品の通販で殴る快進撃が始まった。
カクヨム、小説家になろう、アルファポリスに掲載しております。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
美人四天王の妹とシテいるけど、僕は学校を卒業するまでモブに徹する、はずだった
ぐうのすけ
恋愛
【カクヨムでラブコメ週間2位】ありがとうございます!
僕【山田集】は高校3年生のモブとして何事もなく高校を卒業するはずだった。でも、義理の妹である【山田芽以】とシテいる現場をお母さんに目撃され、家族会議が開かれた。家族会議の結果隠蔽し、何事も無く高校を卒業する事が決まる。ある時学校の美人四天王の一角である【夏空日葵】に僕と芽以がベッドでシテいる所を目撃されたところからドタバタが始まる。僕の完璧なモブメッキは剥がれ、ヒマリに観察され、他の美人四天王にもメッキを剥され、何かを嗅ぎつけられていく。僕は、平穏無事に学校を卒業できるのだろうか?
『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』
クラス転移で無能判定されて追放されたけど、努力してSSランクのチートスキルに進化しました~【生命付与】スキルで異世界を自由に楽しみます~
いちまる
ファンタジー
ある日、クラスごと異世界に召喚されてしまった少年、天羽イオリ。
他のクラスメートが強力なスキルを発現させてゆく中、イオリだけが最低ランクのEランクスキル【生命付与】の持ち主だと鑑定される。
「無能は不要だ」と判断した他の生徒や、召喚した張本人である神官によって、イオリは追放され、川に突き落とされた。
しかしそこで、川底に沈んでいた謎の男の力でスキルを強化するチャンスを得た――。
1千年の努力とともに、イオリのスキルはSSランクへと進化!
自分を拾ってくれた田舎町のアイテムショップで、チートスキルをフル稼働!
「転移者が世界を良くする?」
「知らねえよ、俺は異世界を自由気ままに楽しむんだ!」
追放された少年の第2の人生が、始まる――!
※本作品は他サイト様でも掲載中です。
クラス転移から逃げ出したイジメられっ子、女神に頼まれ渋々異世界転移するが職業[逃亡者]が無能だと処刑される
こたろう文庫
ファンタジー
日頃からいじめにあっていた影宮 灰人は授業中に突如現れた転移陣によってクラスごと転移されそうになるが、咄嗟の機転により転移を一人だけ回避することに成功する。しかし女神の説得?により結局異世界転移するが、転移先の国王から職業[逃亡者]が無能という理由にて処刑されることになる
初執筆作品になりますので日本語などおかしい部分があるかと思いますが、温かい目で読んで頂き、少しでも面白いと思って頂ければ幸いです。
なろう・カクヨム・アルファポリスにて公開しています
こちらの作品も宜しければお願いします
[イラついた俺は強奪スキルで神からスキルを奪うことにしました。神の力で学園最強に・・・]
異世界転移「スキル無!」~授かったユニークスキルは「なし」ではなく触れたモノを「無」に帰す最強スキルだったようです~
夢・風魔
ファンタジー
林間学校の最中に召喚(誘拐?)された鈴村翔は「スキルが無い役立たずはいらない」と金髪縦ロール女に言われ、その場に取り残された。
しかしそのスキル鑑定は間違っていた。スキルが無いのではなく、転移特典で授かったのは『無』というスキルだったのだ。
とにかく生き残るために行動を起こした翔は、モンスターに襲われていた双子のエルフ姉妹を助ける。
エルフの里へと案内された翔は、林間学校で用意したキャンプ用品一式を使って彼らの食生活を改革することに。
スキル『無』で時々無双。双子の美少女エルフや木に宿る幼女精霊に囲まれ、翔の異世界生活冒険譚は始まった。
*小説家になろう・カクヨムでも投稿しております(完結済み
クラス転移、異世界に召喚された俺の特典が外れスキル『危険察知』だったけどあらゆる危険を回避して成り上がります
まるせい
ファンタジー
クラスごと集団転移させられた主人公の鈴木は、クラスメイトと違い訓練をしてもスキルが発現しなかった。
そんな中、召喚されたサントブルム王国で【召喚者】と【王候補】が協力をし、王選を戦う儀式が始まる。
選定の儀にて王候補を選ぶ鈴木だったがここで初めてスキルが発動し、数合わせの王族を選んでしまうことになる。
あらゆる危険を『危険察知』で切り抜けツンデレ王女やメイドとイチャイチャ生活。
鈴木のハーレム生活が始まる!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる