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第25話 VS世界チャンピオン
しおりを挟む「なんや…それ、5億じゃなくちゃうけないやと!しかも、向こうのルールじゃなきゃ受けない…くっ」
時也も解っている筈だ。
今迄の2回は相手はアウェーで戦っていた。
空手なのにボクシングのルールでだ。
二回もそちらのルールで戦っていたのだから、3回目をやるなら今度は此方のルールで…これは当たり前の要求だ。
5億という金額は確かに吹っ掛け過ぎだが、可笑しな金額じゃない。
『相手は戦いたくない』のだから…
こちらが諦める金額を吹っ掛けてきた。
そう考えれば普通の事だな。
「やれば良いんじゃねーか? 今の時也なら、まず負けねーんだから」
「飛鳥、本当に大丈夫なのか?」
「良いか?亀岡流の怖さはボクシングの防御じゃ防げない事にある、だが、時也なら防御に徹すれば元から優れた動体視力があるから、まず当たる事は無い! そこに俺が教えた防御だ、ほぼ負ける事はないだろう」
「本当だろうな?」
「ああっ、それにあんたから聞いた話だと蹴りの話もしていたようだが、亀岡流には蹴りは無い」
蹴りが無い?
「蹴りが無いだと!」
「ああっ、少なくとも、亀岡仙人が蹴りを使った話を聞いた事が無い。中指の代に間接を突起させる特殊な握りから繰り出すパンチ、まるで突起物のあるハンマーで殴る、それが基本技だ…尤もあのガキも同じとは限らないけどな?」
「まぁええんやない?俺天才だから負けないし…それで翔子も帰ってくるなら、ええやん」
「それがな…何でもない」
今、翔子ちゃんが彼奴の恋人になっている。
それは言わない方が良いだろう。
「なんや、歯に何か挟まっているような言い方やな」
「まぁ、色々あるんだ」
「そうやな、お金の問題や俺の全財産は3億5千万やで1憶五千万足りんのう…」
「はぁ~乗りかかった船だ、その1億5千万はジムで貸してやる…負けるなよ」
「あたりまえやん」
確かに負ける要素はない。
だが、会長としての第六感が、不安を感じる。
「解った、話を進めて良いんだな? 折角の成功者が負けたら1億5千万の借金持ちだ…大丈夫なんだな」
「ああっ任せておき」
こうして、俺達は理人というガキに試合を申し込む事となった。
◆◆◆
「本気で5億の試合をするのか? 冗談だろう?」
まさか、本当に試合を申し込まれるとは思わなかったな。
「冗談じゃない…その金額なら受けると言ったのはお前だろう? ルールもそちらにあわせる、それで文句ないな?」
「解った、ルールは目突き以外は全部あり、それでどうだ?」
「良かろう、それで判定は?」
「どちらかが動けなくなるか降参するまで」
「解った、それで良い」
マジか?
まぁ良いや、5億円貰えば生活は楽になるし…問題はないな。
◆◆◆
結局、また大橋ボクシングクラブか…
「約束通りきたぜ!」
「此処に来るのも久しぶりだなぁ~」
「そう言えば、翔子と出会ったのは此処だったよな」
「そうだね、懐かしいね」
時也が元彼なのに、ついて来るって言うから連れてきたけど…大丈夫なのか?
しかも、今の翔子の恰好は胸元が大きく開いたTシャツにパンツが見えそうな位の黒のミニスカート。
それが俺にひっついている。
向こうからこっちを見ている。
「なぁ、あれが…」
「そう、時也ね、ミドル級の世界チャンピオン! 大丈夫?」
今の時間は夕方6時。
最近、なんとなくだが夕方5時を過ぎると徐々に力を増してくるような気がする。
手加減しないとな。
「まぁ余裕じゃないかな?」
「お前、今余裕っていうたん? 俺これでも世界チャンピオンやで翔子、今取り返してやるからなぁ~」
「私はもう理人の物だから試合に関係なく戻らないよ!」
「お前、なに言ってるん!」
「だ~か~ら~もう身も心も理人の物だからこの試合の結果関係なく戻らないからね!」
「おまっ!」
此奴、本当に馬鹿じゃ無いの?
1週間も彼女放っておくかよ。
勝つか負けるか、解らなくても普通は心配で飛んでくるだろう。
「お前、馬鹿じゃないの? 普通、自分の好きな女がとられたらすぐに飛んでくるんじゃねーの? 余裕ぶって1週間以上も他の男の傍においていたら犯られちゃうでしょう?もう、朝から晩までヤリまくり、結果、もう俺の女…どうなっても帰らない…はいおしまい」
「お前、殺すぞ」
「そうそう、殺さないと彼女は戻らない…だが、言わせて貰えば、お前にとっての1番はボクシングで翔子は2番以下だったんじゃねーのかな?俺なら好きな女がそんな事になっていたら飛んでいく、それをしないお前は…寝取られても仕方ねーんじゃねーの!」
「クソッ」
「それでやるの、やらないの?」
「リングに上がれーーっ」
「勝ったら5億くれるんだよな!」
「ああっ、俺に勝てたらな」
「OK」
これ手に入ったらもうお金の事は全て解決だな。
◆◆◆
「それで、どうするん?」
「亀岡流は別に形に拘らない、このまま戦っても構わない」
「それじゃ俺もかまへんで…それじゃ今からスタートで良いんやな」
「良いぜ」
「そうかい、それじゃーな」
確かに、世界チャンピオンというだけあって速い。
「あれを躱せるのか?」
「飛鳥大丈夫か?」
「ヤバいな、ボクシングのジャブ、世界チャンピオンクラスのジャブは他の空手家じゃ躱せない筈なのに…流石亀岡流」
「まさかグローブをつけてない時也のジャブを躱すなんて世界ランカーにも居ないぞ」
流石に、彼女を寝取って5億も貰うのに大怪我までさせたく無いな。
「亀岡流振動波―――っ」
俺は軽くデコピンをした。
「なんや、デコピン…うぎゃやぁぁぁぁぁぁぁーー」
「「「なっ」」」
「流石理人凄おーーーい」
「これ、此処から攻撃した方が良いのか?頭押さえて転がりまわっているけど?」
「負けだ…負けで良い」
リングに白いタオルが放り込まれた。
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