上 下
7 / 62

第7話 【過去】地獄の始まり…早く死にたい

しおりを挟む


「何故、此処にきたんだ、もっと近くでも良かったじゃないか?」

「いや、ちょっとだけ、此奴に同情したんだ、此奴まだ何もしていないんだろう?ただ『スキル強奪』のスキル持ちなだけだしな。命令には逆らえないが、楽に死ねるこの場所にしてやろうと思って…」

「確かに、ゴブリンの巣やオークに比べたら此処は天国だ、運が良ければ、快楽の中で死ねるからな」

「恨まないでくれよ!此処はバンパイアとサキュバスが巣にしている血と快楽の地下城だ!運が良ければ快楽の中死ねる…」

どうせ、死ぬんじゃないか…

まだ喋れないし、動けない。

俺は此処で死ぬのか。

異世界なんて来なければ良かった。

特殊なスキルで浮かれた俺が悪いのか…

俺は…いや、もう良い。

同級生もこの世界も全部が俺の敵だった。

それだけだ…

俺は一体、どんなスキルを奪ったんだ。

もしかしたら…なにか反撃...

「悪いな、万が一お前が逃げ出し、反撃されても困るから、右手首を貰っておくぜ!右手が無ければスキルは発動しないからな」

やめろ…やめてくれ...

俺が入っている袋に手をいれると、騎士の男が俺の右手を切断した。

「馬鹿、なにやっているんだ! 此処はもう快楽の地下城の前だ血は不味い…えっ、グハッ」

「あらあら、久々の獲物ね…うん美味しいわ」

袋越しに血が飛び散ったのが解かった。

一体何が起きているんだ。

「酷い、全部吸い尽くして…久々の獲物なのに…殺しちゃうなんて、生き血の方が美味いのよ、ペロっ」

「化け物め…死ね」

何が起きているか解らないが、争っているようだ。

「此処は女バンパイアとサキュバスの巣窟、もし抵抗しなければ苦痛なく殺してあげるわよ」

「我が剣は炎」

「残念…ね」

争いは一方的で騎士の敗北で終わったようだ…

「あら、この袋になにか入っているわ」

「嘘、人間…しかも異世界人…」

「これは、凄いご馳走じゃないかな…持ち帰らないとね」

体が動かない俺が目にしたのは、騎士を面白半分に殺し血を吸いながら俺を見つめる妖艶な美女達だった。


◆◆◆

『助かった』

そう思ったのは大間違いだった。

今の俺は無数の美女に囲まれている。

幼女から熟女まで…

「あはははっ、これ最高だわ…こんな上手い血は初めてだわ」

「極上のワイン、それに匹敵するのがこの血だわ」

「ううん、血だけじゃないわ…精の方も最高…吸っても吸っても吸い尽くせない極上の物よ」

「た、助けてくれーーーーーっ」

毒だったのか睡眠薬だったのか解らないが此処でようやく薬が薄まってきたのか声が出せるようになった。

「あら、あら、痛い事はしていない筈よ? それにこんなハーレムはなかなか経験できないでしょう?」

確かに見た目はハーレムだ。

更に言うならハーレムなんて規模を遥かに超える美女の群れ。

見た感じ、傍に居るだけでも50は下らない美女から美少女、美幼女がいる。

そしてそんな美しい女たちの前で俺は裸で…噛みつかれ、吸い付かれていた。

確かに痛くはない。

痛くはないが無数の女が牙を剥いて噛みついてくるし、吸い付いてくる。

「嫌だ嫌だ嫌だーーーーっ!助けて、助けて…糞 スキル強奪、スキル強奪――っ」

「あら、何かしたのかしら…」

一瞬牙を離したが、何も起きないと解ると再び噛みついてくる。

そうか…

『そのスキルは人間にだけしか使えないらしいわ』

此奴らはどう見ても人間じゃない。

このスキルは意味がない。

「ぎゃぁぁぁぁーー助けて、助けてーーっ糞っ、ステータス」

「あはははっ、貴方右手が無いのよ? 知らないの? 右手が無いとスキルを持っていても、使えないのよ…馬鹿ね」

そうなのか。

だから右腕を切断したのか。

そう言えば騎士も言っていた気がする。

もし、スキル強奪が魔物相手に使えても、右腕を切断された俺には何も反撃は…出来ない。

このまま血や精を吸われ続ければ死ぬだろう。

あの時、騎士が言っていた『運が良ければ快楽の中死ねる』って。

女バンパイアも言っていた『もし抵抗しなければ苦痛なく殺してあげるわ』と。

「…抵抗はしない…好きなだけ吸えば良いさ…」

俺は静かに目を瞑った。

バンパイアに血を吸われても、サキュバスに吸い付かれ皮膚から精を吸われても此奴らが言っている通り、痛みはない。

だが、見てしまうと無数の牙が噛みついている様子が見えるし、吸い付いている姿が見える。

そんなのは見たくはない。

きっと、もう俺は女とのキスには嫌悪感や恐怖しか感じないだろうな...

怖さしかない。

「しかし、なんでこれで死なないのかしら?」

「もう、何十人もの同胞が血を吸い続けているのに死なないなんて…あれれ、よく見ると手が生え始めているわよ」

「不味いわ、手が生えたら反撃してくるかもよ」

「引き千切っちゃいましょう...ねぇそうしよう」

「どうせなら足も、なんだか体が動くようになって来てるし、足も取っちゃった方が良いわ」

「そうね」

「「「「そうしましょう!せーの!」」」」

ビチビチッーーッ

「うわぁぁぁぁーーーー!ぎゃぁぁぁぁぁーーーーーっ痛い、痛いっ ふんぐっううん」

四肢が千切られた。

転げまわる様な痛みの中急に唇が奪われた。

俺の人生最初のキスは血の味がした。

「うんふぐっうんうん、美味いわ、私は口から精を吸わせて貰うわ…噛んだらその目を潰すわよ?」

「うんぐっううんっ、ハァハァ痛い…」

「ぷはぁ…サキュバスは夢魔とも呼ばれているのよ、身を任せなさい、そうすれば、痛みすら忘れる快感をあげるわ…受け入れなさい」

「ハァハァうんぐ…ふぁい」

俺には、もう受け入れるしか無かった。

それは人間の尊厳を捨てる事なのかも知れない。

恐怖、痛みから逃げる為にはそれしか無かった。

早く、早く…死にたい。

この恐怖が終わるなら…それで良い。

少しでも早く...終われ。











しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【リクエスト作品】邪神のしもべ  異世界での守護神に邪神を選びました…だって俺には凄く気高く綺麗に見えたから!

石のやっさん
ファンタジー
主人公の黒木瞳(男)は小さい頃に事故に遭い精神障害をおこす。 その障害は『美醜逆転』ではなく『美恐逆転』という物。 一般人から見て恐怖するものや、悍ましいものが美しく見え、美しいものが醜く見えるという物だった。 幼い頃には通院をしていたが、結局それは治らず…今では周りに言わずに、1人で抱えて生活していた。 そんな辛い日々の中教室が光り輝き、クラス全員が異世界転移に巻き込まれた。 白い空間に声が流れる。 『我が名はティオス…別世界に置いて創造神と呼ばれる存在である。お前達は、異世界ブリエールの者の召喚呪文によって呼ばれた者である』 話を聞けば、異世界に召喚された俺達に神々が祝福をくれると言う。 幾つもの神を見ていくなか、黒木は、誰もが近寄りさえしない女神に目がいった。 金髪の美しくまるで誰も彼女の魅力には敵わない。 そう言い切れるほど美しい存在… 彼女こそが邪神エグソーダス。 災いと不幸をもたらす女神だった。 今回の作品は『邪神』『美醜逆転』その二つのリクエストから書き始めました。

異世界でただ美しく! 男女比1対5の世界で美形になる事を望んだ俺は戦力外で追い出されましたので自由に生きます!

石のやっさん
ファンタジー
主人公、理人は異世界召喚で異世界ルミナスにクラスごと召喚された。 クラスの人間が、優秀なジョブやスキルを持つなか、理人は『侍』という他に比べてかなり落ちるジョブだった為、魔族討伐メンバーから外され…追い出される事に! だが、これは仕方が無い事だった…彼は戦う事よりも「美しくなる事」を望んでしまったからだ。 だが、ルミナスは男女比1対5の世界なので…まぁ色々起きます。 ※私の書く男女比物が読みたい…そのリクエストに応えてみましたが、中編で終わる可能性は高いです。

隠して忘れていたギフト『ステータスカスタム』で能力を魔改造 〜自由自在にカスタマイズしたら有り得ないほど最強になった俺〜

桜井正宗
ファンタジー
 能力(スキル)を隠して、その事を忘れていた帝国出身の錬金術師スローンは、無能扱いで大手ギルド『クレセントムーン』を追放された。追放後、隠していた能力を思い出しスキルを習得すると『ステータスカスタム』が発現する。これは、自身や相手のステータスを魔改造【カスタム】できる最強の能力だった。  スローンは、偶然出会った『大聖女フィラ』と共にステータスをいじりまくって最強のステータスを手に入れる。その後、超高難易度のクエストを難なくクリア、無双しまくっていく。その噂が広がると元ギルドから戻って来いと頭を下げられるが、もう遅い。  真の仲間と共にスローンは、各地で暴れ回る。究極のスローライフを手に入れる為に。

クラス転移から逃げ出したイジメられっ子、女神に頼まれ渋々異世界転移するが職業[逃亡者]が無能だと処刑される

こたろう文庫
ファンタジー
日頃からいじめにあっていた影宮 灰人は授業中に突如現れた転移陣によってクラスごと転移されそうになるが、咄嗟の機転により転移を一人だけ回避することに成功する。しかし女神の説得?により結局異世界転移するが、転移先の国王から職業[逃亡者]が無能という理由にて処刑されることになる 初執筆作品になりますので日本語などおかしい部分があるかと思いますが、温かい目で読んで頂き、少しでも面白いと思って頂ければ幸いです。 なろう・カクヨム・アルファポリスにて公開しています こちらの作品も宜しければお願いします [イラついた俺は強奪スキルで神からスキルを奪うことにしました。神の力で学園最強に・・・]

クラス転移で無能判定されて追放されたけど、努力してSSランクのチートスキルに進化しました~【生命付与】スキルで異世界を自由に楽しみます~

いちまる
ファンタジー
ある日、クラスごと異世界に召喚されてしまった少年、天羽イオリ。 他のクラスメートが強力なスキルを発現させてゆく中、イオリだけが最低ランクのEランクスキル【生命付与】の持ち主だと鑑定される。 「無能は不要だ」と判断した他の生徒や、召喚した張本人である神官によって、イオリは追放され、川に突き落とされた。 しかしそこで、川底に沈んでいた謎の男の力でスキルを強化するチャンスを得た――。 1千年の努力とともに、イオリのスキルはSSランクへと進化! 自分を拾ってくれた田舎町のアイテムショップで、チートスキルをフル稼働! 「転移者が世界を良くする?」 「知らねえよ、俺は異世界を自由気ままに楽しむんだ!」 追放された少年の第2の人生が、始まる――! ※本作品は他サイト様でも掲載中です。

俺だけに効くエリクサー。飲んで戦って気が付けば異世界最強に⁉

まるせい
ファンタジー
異世界に召喚された熱海 湊(あたみ みなと)が得たのは(自分だけにしか効果のない)エリクサーを作り出す能力だった。『外れ異世界人』認定された湊は神殿から追放されてしまう。 貰った手切れ金を元手に装備を整え、湊はこの世界で生きることを決意する。

俺が死んでから始まる物語

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていたポーター(荷物運び)のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもないことは自分でも解っていた。 だが、それでもセレスはパーティに残りたかったので土下座までしてリヒトに情けなくもしがみついた。 余りにしつこいセレスに頭に来たリヒトはつい剣の柄でセレスを殴った…そして、セレスは亡くなった。 そこからこの話は始まる。 セレスには誰にも言った事が無い『秘密』があり、その秘密のせいで、死ぬことは怖く無かった…死から始まるファンタジー此処に開幕

チートスキル【レベル投げ】でレアアイテム大量獲得&スローライフ!?

桜井正宗
ファンタジー
「アウルム・キルクルスお前は勇者ではない、追放だ!!」  その後、第二勇者・セクンドスが召喚され、彼が魔王を倒した。俺はその日に聖女フルクと出会い、レベル0ながらも【レベル投げ】を習得した。レベル0だから投げても魔力(MP)が減らないし、無限なのだ。  影響するステータスは『運』。  聖女フルクさえいれば運が向上され、俺は幸運に恵まれ、スキルの威力も倍増した。  第二勇者が魔王を倒すとエンディングと共に『EXダンジョン』が出現する。その隙を狙い、フルクと共にダンジョンの所有権をゲット、独占する。ダンジョンのレアアイテムを入手しまくり売却、やがて莫大な富を手に入れ、最強にもなる。  すると、第二勇者がEXダンジョンを返せとやって来る。しかし、先に侵入した者が所有権を持つため譲渡は不可能。第二勇者を拒絶する。  より強くなった俺は元ギルドメンバーや世界の国中から戻ってこいとせがまれるが、もう遅い!!  真の仲間と共にダンジョン攻略スローライフを送る。 【簡単な流れ】 勇者がボコボコにされます→元勇者として活動→聖女と出会います→レベル投げを習得→EXダンジョンゲット→レア装備ゲットしまくり→元パーティざまぁ 【原題】 『お前は勇者ではないとギルドを追放され、第二勇者が魔王を倒しエンディングの最中レベル0の俺は出現したEXダンジョンを独占~【レベル投げ】でレアアイテム大量獲得~戻って来いと言われても、もう遅いんだが』

処理中です...