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変わる世界

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俺は目のせいで街では嫌われる様になっていた。

「幾ら可愛くても、魔王に似ているんでしょう?」

「しかも、夜になると目が光るらしいじゃない」

自分で言うのもなんだが…俺はそれなりにモテていた筈だ。

年上のお姉さんから、求婚された事もある…それが目が光る事と魔王に似ている。

その情報が伝わっただけでこれだ。

「すまないね…泊めてあげたいけど…あんたを泊めると他のお客からクレームが入るんだ」

「はんっ 魔族のガキには売れないな」

「俺は魔族じゃない、ちゃんと冒険者証もあるし、元は勇者パーティだ」

「お前が魔族だから追放されたんだろうが…」

違うと言っても信じてくれない…

お金があっても…物が買えない。

仕方なく、俺は何時もギルドの食堂で食事をし、ギルド直轄の宿屋に住んでいる。

どちらも、お金の無い冒険者用だから、飯は不味いし、宿屋もトイレは共同、シャワーも無いから井戸水で体をふくだけの生活。

冒険者なら必ず使える…これだけは適応されていた。

まぁスラムに行かないで済むだけましだな。

ただ、全てを失った俺にはこれがお似合いかも知れない….

だが、それすらもある日奪われてしまった。

「リヒト…お前依頼をこなしていないだろう?」

「いや、ゴブリンやオーク、オーガを狩っている」

俺は一般依頼を受けようとすると、客側が嫌がるからと受けて貰えない。

だから、自然と常時依頼を受ける事になっていた。

「いや、常時依頼じゃなくて、一般依頼を月に二度受ける必要がある」

「俺は受けようとしたがギルド側が断るんだ…もし義務を言うのなら、受けられる権利を俺は主張する」

「確かに…そうだな..それは解っているが…」

周りから追い出すように言われたのだろう…付き合いが長いから此奴も困っているんだろうな。

いいや…仕方が無い。

「解かったよ…世話になった、ほらよ」

「おい…いやすまない」

俺は冒険者証を投げ返した。

「いいさぁ…ただこれを返したらもう、俺は冒険者でない..ただのリヒトだ。今迄勇者パーティだからと、困った人を助けてきた…だが、これからは見て見ぬふりだ…死にそうな人間や襲われている人間を見ても、見殺しにする…覚えておけ」

「ああっ…冒険者で無い人間に、何も強制は出来ない..すまない」

「あと、金を全部降ろさせて貰う…金貨300枚(三千万円)をおろさせて貰う、早く用意しろ」

「それは待ってくれ、今ギルドにそんなお金は無い」

「いや、ギルドの口座は冒険者じゃないと使えない…そうだろう、今直ぐ返せ…無いなら、受付嬢を売り払え」

「貴様…」

「ルールだろう?」

「解かった、午後まで待て」

「待て…いや今直ぐだ」

「待ってくれ…お願いだ」

「解かった12時ちょうどに受け取りに行く」

「解かった」

これで終わりだな…

12時丁度に金を受取り…収納袋に放り込むと俺はスラムへと落ちて行った。

それからはただの浮浪者として生きるしか無かった。


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