僕はその昔、魔法の国の王女の従者をしていた。

石のやっさん

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第8話 【過去②】 人間界のカブラ

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サリナ王女……お姉ちゃんは真正中学の2年生として学校に通っている。

弟という形の僕は同じ敷地内にある真正小学校の5年生だ。

ハァ~

なんで僕がこんな事しなくちゃいけないんだよ。

僕はこれでも魔法の国の公爵。

カブラ様なんだ。

年齢だって数百歳。

それがなんでこんな子供に交じって勉強なんてしなくちゃならないんだよ。

「カブラくんって凄くカッコ良いよね」

「頭も良いし、スポーツ万能……たまりませんわ」

「うん、うん、神は二物どころじゃない位与えちゃったんだね」

「カブラって本当に凄いよな」

そりゃ当たり前でしょう。

僕は子供じゃないし。

まして人間じゃない。

当たり前じゃん。

「そんな事ないよ……」

良い歳した大人がなんで小学生にならないとならないんだよ。

侍従をするのだって嫌なのに、なんで子供にならないといけないんだよ。

「ねぇねぇカブラくん、カブラくんは彼女とかいる?」

近頃の子はませているなぁ~

「別にいないけど?」

「本当?」

「本当」

「ねぇ、皆~カブラくん彼女いないんだってーーっ!」

「「「「「きゃぁぁぁーー」」」」」

黄色い声が上がったし、皆可愛いけど。

あくまで『子供』として可愛いというだけで……他に意味はないよ。

嫌われるよりは良いけど。

いや……ちょっとだけ嬉しいかな。

しかし、子供の姿になったせいか心も子供になった気がする。

「カブラ、ドッジボールしないか?」

「ああっ、参加させて貰うよ」

人間の子供の遊びも、面白いな。



◆◆◆

家に帰ってきた。

サリナお姉ちゃんは友達と遊んでいるのかまだ居ない。

大体、サリナお姉ちゃんも魔法使いだから『何でも出来るのに』なんで侍従が必要なんだよ。

お腹空いたな。

カレーでも食べようかな。

「マジック、マジ―アーカレーライス」

食べ物も欲しい物も魔法で全部出せるから、侍従なんて必要ないのに……

魔法の国の爵位持ちの住民に出来ない事なんて無い。

ましてサリナお姉ちゃんは王族。

『なんでも出来る』

尤も規制はある。

① 人間界に居る時は魔法使いとバレてはいけない
② 人間界で他人の為に魔法を使ってはいけない
③ 運命を変えるような魔法を使ってはいけない

こんな感じだ。

僕たち魔法使いは『何でもできる』

その気になれば莫大な財産を生み出しあげる事も出来るし、どんなブサイクな人間でも魔法一つでアイドルに出来る。

死にかけた人間でも魔法を使えば治せる。

だけど、これを他人の為に無暗にしてはいけない。

『人の人生が変わってしまうから』らしい。

魔王様も寛大で大体の事は許して貰えるけど……

掟とも言える今の3つだけは許して貰えない。

それは良く解っている。

まさか、この僕がその掟を破る事になるなんて、この時は思ってもいなかった。
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