僕はその昔、魔法の国の王女の従者をしていた。

石のやっさん

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第3話 何故か涙が出てくる。

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クラスの一番後ろ窓側の席。

そこが僕の席だ。

今日も何時ものように窓から外の景色を眺めている。

空は青いし雲は白くて良い天気だ。

だけど、僕は何もヤル気が起きない。

何時から僕はこんなにヤル気が起きなくなったんだろう。

前はきっとこんなんじゃ無かった筈。

だけど……今は本当にヤル気が起きないんだ。

「鏑木ぃぃーー! またよそ見しているな! 此処の文章を訳してみろ」

フムフム。

「あ~ 『彼は勇者じゃなく英雄だから戦いません』」

「くっ、正解だ」

担任の赤川先生が悔しそうにこちらを睨んでくる。

まぁ、いつもの光景だ。

僕は頭が良いの、大抵の事はサボっていても答えられる。

テストも特に勉強しなくても学園で上位。

スポーツも部活に入って努力なんかしなくてもそこそこ出来てしまう。

何故か解らない。

『あのなぁ、お前その気になれば学内1位も取れるし、頑張れば東大にだって入れる実力はあるのに……なんで努力しないんだ』

良く赤川先生に良く言われるけど……

なんでだろうか?

僕の心には、ぽっかりと穴があいた様に虚しさがこみ上げてくる。

『何もヤル気が起きないんだ』

これは、きっと僕が失ってしまった記憶の中に何かがある気がする。

だけど……幾ら考えても過去は解らないから、どうする事も出来ない。

多分、失った記憶の中で僕はかなり頑張っていたのかも知れない。

『何を頑張っていたんだろう』

『誰かを好きだったんだろうか』

幾ら考えても解らない。

だが、きっと失った記憶の中に僕にとって大切な物が沢山あった気がする。

その証拠に、無理やり思い出そうとすると2人の少女の顔が浮かび、涙がこみ上げてくるんだ。

この二人は何者なのだろうか?

亜麻色の髪の少女は齢からして『お姉ちゃん』黒髪の少女は齢から考えて『妹』の様な気がする。

だが、僕の住民票にも戸籍にも姉も妹もいなかった。

だったら『誰なのだろうか?』

『会いたいな』

そんな感情が浮かぶのだから、きっと僕にとって大切な人なのだろう。

だけど、考えれば考える程……誰なのか解らず。

ただただ、涙がこみ上げてくるだけなんだ。

「おい、またか? 事情が事情だ、仕方ない。顔を洗ってきなさい」

「先生……僕」

もしかして僕……また泣いていたのか?

「今の鏑木なら仕方ない……ほら顔を洗ってきなさい」

「解りました……すみません」

それだけ伝えると僕は廊下に出て洗面所に向かった。
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