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第37話 DQNがこの世界にもたらした物
しおりを挟むこれは俺の八つ当たりだ。
今の俺にはもう、何も無い。
だからこそ『本当の意味で戦う事が出来る』
勇者パーティにあいつ等が選ばれなければ『綺麗なまま』で居させてあげられた。
どう考えても、俺の頭の中では『勝てる気』がしなかった。
戦わない人生を三人に送らせるには壊すしか無かった。
どんな姿でも構わない。
三人が死ぬ未来は見たく無かった。
これは、俺のエゴだ。
容姿、名誉、栄光、そんな物全部失っても…生きて傍に居て欲しかった。
俺のエゴで全部壊した。
ドルマンが死んで、俺達が本当の意味で勇者パーティで無くなった。
その後でも、この世界はまだあいつ等を利用しようとして動いた。
それが許せなかった。
『魔王との戦い?』
『魔族との戦い?』
これが戦争だと言うのなら…なぜ、人々は笑顔で過ごしているんだ?
ここ、コハネは平和で、誰もが健全な生活を送っている。
『違うだろう』
これが戦争って言うのなら…全員で戦えよ。
今更、こんな事しても、誰も喜ばない。
つい、数か月前に、今の勇者が死んだ。
これでまた約5年間、勇者は現れない。
だから…面白い。
『俺が自由に戦える』
◆◆◆
今の俺は爺だから、真っ向勝負では戦えない。
真向勝負?
なんでする必要があるんだ?
これは戦争なんだろう?
『弱い所から攻めるのが当たり前だ』
◆◆◆
俺は1人で魔国に攻めにいった。
正々堂々糞くらえだ。
魔国に入り、村を見つけ片端から井戸に毒を放り込んでいく。
これで良い。
魔族とは言え生き物なんだ、生活は人間と変わらない。
ならば、襲えば良い。
わざわざ正面切って『勇者』の様に戦う必要は無い。
醜く卑怯に襲えば良い。
どれだけ、これで死ぬか解らない。
だが、この飲み水を飲んだ魔族は死ぬ。
そして、この井戸が使えなくなれば、飲み水に困る。
『相手が嫌がる事をする』
それで良いんだ。
これで、水は手に入らない。
俺はアイテム収納から大量の油を出し。
家に火をつけて回った。
『さぁ、何人死ぬのか?楽しみだ!』
これで良い!
ドルマンは魔国の入り口付近で死んだ。
なら、恐らくはこの辺りに出張ってきた魔族と戦い死んだ筈だ。
「火事だーーっ」
「火を消せーーっ」
わらわらと出て来たな。
「こんばんは!死んでください」
魔族とはいえ、この辺りに住んでいる奴は村人だ。
強くはない。
しかも火事で慌てている、殺すのは簡単だ。
「お前、なに…えっ人間!」
「そうだけど、それが何か?あんのか!」
剣で一息に殺す。
子供に女、関係なく殺す。
こんな外道の様な殺し方を魔族にした人間は居ない。
勇者や騎士だから正々堂々と戦い死んだ。
『そんなのは知らない』
『暗黙の了解?』
俺は、半グレの中でも尤も汚いと言われた男なんだよ…
『馬鹿じゃねーの』
火事のどさくさに紛れて殺しまくったら…案外どうにかなるものだな。
小さな村だったから、かなりの数がこれで死んだ。
俺に斬られた者。
火事で死んだ者。
そして水を飲んで死んだ者。
結構、死んだ筈だ。
「お前、何者なんだ…」
「さぁね…」
殺して、殺して、殺しまくった。
「人間はこんな汚い戦い方をするのかーーっ」
「普通にするだろう?」
武器を持たずに火傷した男を斬った。
「助けて、助けて下さい」
火傷した女を斬った。
殺したって問題無い。
魔族なんだから。
気がつくと村を制圧していた。
◆◆◆
「さてと、かなり昔の事だ、勇者ドルマンが此処に来た時に殺されたと聞いた…誰がどの様にして殺したか話せ」
「ドルマン…?」
「長老、あの男では?」
「心当たりがあるのか?」
「勇者ドルマンという男が、何人かの仲間とこの国に押し入ってきたことがある、そして村を守る自警団とぶつかり殺された!たぶん、その男だ」
「自警団?」
「そうだ、元四天王が一人バルゴ様がこの村を守っていた、そこにぶつかったんだ」
「そうか、それでそのバルゴはどうした?」
「次に来た勇者に殺された」
「そうか…」
ドルマン、俺はどうやら仇は討てないみたいだ。
「それじゃ悪かったな…俺は帰るわ」
「なっ…」
「面倒くさいから、お前等全員殺してからな!」
村に更なる悲鳴が響いた。
◆◆◆
その後、リヒトの姿を見た者は居ない。
だが、この残酷に魔族の非戦闘民を殺したリヒトの行為は、魔族と人間の戦争を局地戦から、お互いの存亡をかけた全面戦争へと発展していく。
そして、数十年後、魔族と人類の大きな戦争、人魔戦争へ発展していった。
FIN
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