上 下
29 / 38

第29話 明日の俺は疲れ果てているかも知れない。

しおりを挟む

「ようやく着いたな」

前世と違い、車も新幹線も無いから、旅は凄く大変だった。

「私達、此処で暮すの?」

「結構な田舎だね」

「はははっ、本当に田舎だね」

此処はコハネ。

山だけど、結構有名な温泉があって近くに海も湖もある。

それに此処は入り口だから栄えてないが、温泉街まで進めば、それなりに開けている筈だ。

暫くは宿で暮らしながら、住みやすい家を探して購入。

この辺りが目標で良い筈だ。

「まだ、入り口だからだよ、温泉近くには温泉街、海の近くにも街があるから、もう少しは開けている筈だよ、まぁ観光地でもあるからな」

「それで、此処でなにをする訳?」

「何か仕事でもするの?」

「僕も何かしようか?」

「いや、三人にはゆっくりして貰うつもりだ、温泉に浸かって、美味しい物を食べてな、そうすれば、かなり痛みもやわらぐ筈だ、あと此処を拠点にして、俺は狩りを中心に剣の腕を磨くつもりだ」

正直に言えば、三人を治す手段はある。

そして、必要な物は『くすねてある』

「なんだか、凄く悪いね…こんな体でごめん…」

「私も、迷惑ばかりだよ」

「僕迄、面倒見て貰って、本当にごめんなさい」

「良いって、良いって…治ったらその分こき使うからな、気にするな」

「「「リヒト」」」

3人とも感動しているが、俺には打算がある。

三人を治す方法は既に思いついている。

それには二つ必要な物がある。

1つは、死んでなければ何でも治す薬、エリクサール、本来なら此奴で治りそうだが、恐らく聖剣で斬られたから効かない。

なら、どうすれば良いのか?

簡単だ。

聖剣で傷ついた傷、内臓を一気に切断して、すぐにエリクサールを振りかける。

これで平気な筈だ。

必要な二つ目、それは剣の腕だ。

傷を斬り落とす様な攻撃。

という事は傷を挟む様に体を抉らなければならない。

つまり、聖剣で傷ついた傷を挟むような2撃を放たなければならない。

恐らく1撃でも、タイミングによっては死にかねない斬り方を2撃。

残念ながら、俺もエルザも出来ない。

チャンスは1度。

失敗したら死なせてしまう。

だからこそ、もっと経験を積む必要がある。

そこに辿り着くまで、どの位の時間が掛かるか解らない。

だから、こそ、少しでも痛みがやわらぐように湯治を思いついたんだ。

「なんて顔しやがるんだ?別に恩にきる必要は無い! 充分恩なら別の形で返して貰っているからな」

「そうかしら? 全然足りてないと思うわ、それなら今からでも…」

「そうだよ!全然返しきれていないから、それじゃ…」

「それなら僕も!」

「待て!待て! 此処は人通りもあるし、温泉宿の泊るつもりだから、その時で良いから…その分、沢山楽しませて貰うから」

「そう、解ったわ、夜が楽しみだわ」

「今日は寝かしてあげないからね?」

「うんうん、それじゃ夜どうし頑張ろうか?」

嬉しいんだが…多分明日俺は太陽が黄色く見える位疲れていそうだな。
しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

婚約破棄されたので、被害者ぶってみたら国が滅びた

恋愛 / 完結 24h.ポイント:1,547pt お気に入り:2,821

四角い世界に赤を塗る

BL / 完結 24h.ポイント:28pt お気に入り:250

【完結】皇太子も妹も決して許しませんので覚悟してください

恋愛 / 完結 24h.ポイント:220pt お気に入り:368

完結 穀潰しと言われたので家を出ます

恋愛 / 完結 24h.ポイント:525pt お気に入り:318

皇后マルティナの復讐が幕を開ける時[完]

恋愛 / 完結 24h.ポイント:120pt お気に入り:77

処理中です...