25 / 38
第25話 二つの別れ
しおりを挟む「ドルマン、本当にこれで良いのか?」
「ああっ、最高だ! 凄いだろう?」
確かに凄いな、女騎士にエルフのアーチャー、女メイジ、そして何故か没落貴族の令嬢。
教会から凄腕のヒーラーが派遣されるから6人パーティ。
いやサキュバを含めて7人か?
お金で買える存在だとこれ以上の戦力は無理だな。
『綺麗な女だけ』
その条件ならな。
皆が美形だ。
外見を気にしなければ、女ならアマゾネスの剣士等、更に戦力になる奴隷も居た。
だが、美少女、美女だけで組んだこのパーティ。
正にドルマンらしい。
「そうだな…ドルマン、解っていると思うが…」
「解っている、もう俺には王族との婚姻も上位貴族との婚姻も無い…魔王を倒しても恐らくはかなり褒賞は減らされる…そう言う事だろう…」
「ああっ、恐らく良くて貰える爵位は子爵、下手したら男爵だろうな…そして縁談も…」
「ああっ、解っている…あの時俺はどうかしていたし、聖剣にあんな力があるなんて思わなかった。自分で成功の切符は燃やしてしまった、解っているさ…済まないな…そのあいつ等を頼んだ」
少しは反省しているんだな…
「頼まれた」
「精々、俺はもがいて、頑張ってみるさ」
「ああっ、頑張れよ」
「お別れだな」
「そうだな」
ドルマンは新しい仲間と旅立っていった。
これでハーレムパーティじゃ無ければカッコ良いんだけどな…
お別れだ。
◆◆◆
問題はこっちだ。
「取り敢えず、今日は宿屋に泊って…」
「ハイハイ、犯りまくるんでしょう? もう良いって」
「うんうん、これから一生迷惑かけるんだから」
「僕は片手は使えないけど、まぁ相手出来るよ!、初めてだから優しくしてね」
ハァ~なんだかな。
「それじゃ、宿屋に行くか?」
なんだか調子狂うわ。
まぁ良いや、今日は宿屋に泊って、明日からどうするか決めれば良い。
宿屋へ向かっている途中話声を聞いてしまった。
「シルカ村が盗賊に襲われているそうだ!」
「今どうなっているんだ?」
「自警団が守っているが、もう無理だろうな…領主はそのまま見捨てるらしく、街から兵は出さないらしい」
まぁ、小さな村だし恐らく税収も低いから斬り捨てる。
そんな所だな。
「リヒト…どうする?」
「そうだな、エルザ、2人を頼んで良いか?」
「やっぱり行くんだ、流石『英雄』は違うね、2人は引き受けたから」
「なんだかんだ言ってもリヒトって、そんな奴だよね」
「相変わらずのお人よしだね」
ちげーよ。
「まぁ良い、行ってくるわ」
俺はシルカ村へと走りだした。
◆◆◆
俺がついた時シルカ村の自警団は負け、既に殺された後だった。
村の人間は広場に集められて、物資や貴重品を運ばされている。
女は縛りあげられて、まぁ売り物にでもするんだろうな。
恐らく、この後楽しんでからどこかに売り飛ばすんだろう。
正規の奴隷商じゃ買い取らないから、酷い所に…まぁ知らね。
それより、ルミナス、ルミナスと…居た。
「どうも~」
「お前何者だ! げっ勇者パーティのリヒト!そうか討伐に来たのかーーっ糞っ!こうなれば玉砕覚悟で…行くぞ」
「「「「「「「「「「おうっ」」」」」」」」」」
ざっと10数人か…
「リヒト様だ、リヒト様が助けに来てくれた」
「リヒト様….」
「待て!待て!待て!…女1人と1/5の分け前でどうだ?」
「どういう事だ? 討伐に来たんじゃないのか?」
「勇者パーティは解散した!今は冒険者だからな、別に討伐の義務は無い! 個人的に恩がある女が居るから、そいつの引き渡しと1/5の分け前で手をうとう! どうだ?」
「嘘じゃねーよな! だまし討ちするんじゃねーよな?」
「しない、しない、条件を飲むなら、村人を殺そうが知らない女が犯されようがどうでも良い! 分け前は悪いが金でくれ」
「それで良いなら良いぜ…なぁ」
「ああっ、手を打つぜ」
村人は絶望しているが気になどしない。
「あんたは英雄、そう呼ばれていた筈です、助けて…」
「うるせーよ! お前等さぁ、そういう扱いしなかったんだろうが!仕方ないじゃん!世の中ギブ&テイクだ!それを怠ったお前らが悪い!それじゃ、そこの女をくれ…後は金の勘定が終わったら…」
けたたましいな…なんだ?
「衛兵が来たぞー!」
「衛兵だーーっ、貴様、騙したな」
来ない筈だったのに来たのか…
「騙して無いからな!俺は約束を守る男だ! 助けてやるから、そうだな?俺の女、除いて皆殺しにできるか?」
「冗談だよな?」
「冗談じゃねーよ! そのスカーフ貸せ」
「これか…どうするんだ!」
「良いから、貸せ」
俺はスカーフをひったくり、顔に巻き衛兵隊の討伐に向かった。
衛兵達に悪いが、今は取引中だ。
半グレでもヤクザでも取引中は仲間だ。
警察や敵対組織が相手でも『取引中』は一緒に対処する。
取引が成立した以上は盗賊が今の俺の臨時の仲間だ。
「いま、始末してくるから、ちゃんと分け前用意しておけよ」
「ああっ…」
唖然としやがって、此奴ら素人か。
◆◆◆
衛兵20人…まぁ俺なら余裕だ。
可哀そうだが死んで貰った。
ばれたらヤバいしな。
「さぁ、傭兵隊は殺して来たぞ…分け前寄越せ!」
「はい…」
「おめーら腑抜けているんじゃねーぞ! 衛兵が来たんだ、早く此奴ら皆殺しにして逃げるんだ」
「皆殺し…」
「馬鹿か?顔が割れているんだ、盗賊は死罪だ!バレて死にたくないならしっかり殺せ…良いな」
「ああっ、解った…やるぞ」
「「「「「「「「「「やるしかねーな」」」」」」」」」」
「助けて、助けて下さい、命だけは…」
「お願いです、息子の命だけは…」
「ううっ」
「お前等、まさか殺さないとか言わねーよな? しないならお前等を俺が…殺すからな!」
この盗賊、あまりキャリアが無いのか?殺すのに躊躇がある。
手が震え、泣きながら、村人を殺すさまを見て、俺はシルカ村をルミナスとともに後にした。
◆◆◆
街に戻ってきた。
「それじゃ、これをやるから、頑張って暮せよ…じゃぁな」
今回手に入れたお金は全部ルミナスに渡した。
「あの…何故私を助けてくれたのですか?それにお金迄」
「借りがあったから返したまでだ、その位あれば10年位は遊んで暮らせるだろう?まぁ頑張れ…」
「借りですか? 私何かしましたか?」
「体を恵んで貰った!俺にはこれは借りだ」
女の体には価値がある。
男の体に価値は無い。
だから、無償で俺が抱いた女には『借りがある』そう俺は考えている。
だから、楽しかったあの一夜の『借り』それを返しただけだ。
「あんなもので…その」
「俺には価値がある…それじゃあな!」
ルミナスが見送る中振り向かずに俺は立ち去った。
ずうっと傍に置いて置きたい、だが俺は頭が可笑しいから絶対にルミナスを傷つける。
善人の彼女に俺は似合わない。
ルミナスに借りを返した。
それだけで良い。
そしてドルマンの醜聞を知る者は皆殺し…まさに一石二鳥だ。
12
お気に入りに追加
111
あなたにおすすめの小説

召喚されたら無能力だと追放されたが、俺の力はヘルプ機能とチュートリアルモードだった。世界の全てを事前に予習してイージーモードで活躍します
あけちともあき
ファンタジー
異世界召喚されたコトマエ・マナビ。
異世界パルメディアは、大魔法文明時代。
だが、その時代は崩壊寸前だった。
なのに人類同志は争いをやめず、異世界召喚した特殊能力を持つ人間同士を戦わせて覇を競っている。
マナビは魔力も闘気もゼロということで無能と断じられ、彼を召喚したハーフエルフ巫女のルミイとともに追放される。
追放先は、魔法文明人の娯楽にして公開処刑装置、滅びの塔。
ここで命運尽きるかと思われたが、マナビの能力、ヘルプ機能とチュートリアルシステムが発動する。
世界のすべてを事前に調べ、起こる出来事を予習する。
無理ゲーだって軽々くぐり抜け、デスゲームもヌルゲーに変わる。
化け物だって天変地異だって、事前の予習でサクサククリア。
そして自分を舐めてきた相手を、さんざん煽り倒す。
当座の目的は、ハーフエルフ巫女のルミイを実家に帰すこと。
ディストピアから、ポストアポカリプスへと崩壊していくこの世界で、マナビとルミイのどこか呑気な旅が続く。

雑用係の回復術士、【魔力無限】なのに専属ギルドから戦力外通告を受けて追放される〜ケモ耳少女とエルフでダンジョン攻略始めたら『伝説』になった〜
霞杏檎
ファンタジー
祝【コミカライズ決定】!!
「使えん者はいらん……よって、正式にお前には戦力外通告を申し立てる。即刻、このギルドから立ち去って貰おう!! 」
回復術士なのにギルド内で雑用係に成り下がっていたフールは自身が専属で働いていたギルドから、何も活躍がないと言う理由で戦力外通告を受けて、追放されてしまう。
フールは回復術士でありながら自己主張の低さ、そして『単体回復魔法しか使えない』と言う能力上の理由からギルドメンバーからは舐められ、S級ギルドパーティのリーダーであるダレンからも馬鹿にされる存在だった。
しかし、奴らは知らない、フールが【魔力無限】の能力を持っていることを……
途方に暮れている道中で見つけたダンジョン。そこで傷ついた”ケモ耳銀髪美少女”セシリアを助けたことによって彼女はフールの能力を知ることになる。
フールに助けてもらったセシリアはフールの事を気に入り、パーティの前衛として共に冒険することを決めるのであった。
フールとセシリアは共にダンジョン攻略をしながら自由に生きていくことを始めた一方で、フールのダンジョン攻略の噂を聞いたギルドをはじめ、ダレンはフールを引き戻そうとするが、フールの意思が変わることはなかった……
これは雑用係に成り下がった【最強】回復術士フールと"ケモ耳美少女"達が『伝説』のパーティだと語られるまでを描いた冒険の物語である!
(160話で完結予定)
元タイトル
「雑用係の回復術士、【魔力無限】なのに専属ギルドから戦力外通告を受けて追放される〜でも、ケモ耳少女とエルフでダンジョン攻略始めたら『伝説』になった。噂を聞いたギルドが戻ってこいと言ってるがお断りします〜」
【完結】帝国から追放された最強のチーム、リミッター外して無双する
エース皇命
ファンタジー
【HOTランキング2位獲得作品】
スペイゴール大陸最強の帝国、ユハ帝国。
帝国に仕え、最強の戦力を誇っていたチーム、『デイブレイク』は、突然議会から追放を言い渡される。
しかし帝国は気づいていなかった。彼らの力が帝国を拡大し、恐るべき戦力を誇示していたことに。
自由になった『デイブレイク』のメンバー、エルフのクリス、バランス型のアキラ、強大な魔力を宿すジャック、杖さばきの達人ランラン、絶世の美女シエナは、今まで抑えていた実力を完全開放し、ゼロからユハ帝国を超える国を建国していく。
※この世界では、杖と魔法を使って戦闘を行います。しかし、あの稲妻型の傷を持つメガネの少年のように戦うわけではありません。どうやって戦うのかは、本文を読んでのお楽しみです。杖で戦う戦士のことを、本文では杖士(ブレイカー)と描写しています。
※舞台の雰囲気は中世ヨーロッパ〜近世ヨーロッパに近いです。
〜『デイブレイク』のメンバー紹介〜
・クリス(男・エルフ・570歳)
チームのリーダー。もともとはエルフの貴族の家系だったため、上品で高潔。白く透明感のある肌に、整った顔立ちである。エルフ特有のとがった耳も特徴的。メンバーからも信頼されているが……
・アキラ(男・人間・29歳)
杖術、身体能力、頭脳、魔力など、あらゆる面のバランスが取れたチームの主力。独特なユーモアのセンスがあり、ムードメーカーでもある。唯一の弱点が……
・ジャック(男・人間・34歳)
怪物級の魔力を持つ杖士。その魔力が強大すぎるがゆえに、普段はその魔力を抑え込んでいるため、感情をあまり出さない。チームで唯一の黒人で、ドレッドヘアが特徴的。戦闘で右腕を失って以来義手を装着しているが……
・ランラン(女・人間・25歳)
優れた杖の腕前を持ち、チームを支える杖士。陽気でチャレンジャーな一面もあり、可愛さも武器である。性格の共通点から、アキラと親しく、親友である。しかし実は……
・シエナ(女・人間・28歳)
絶世の美女。とはいっても杖士としての実力も高く、アキラと同じくバランス型である。誰もが羨む美貌をもっているが、本人はあまり自信がないらしく、相手の反応を確認しながら静かに話す。あるメンバーのことが……

フリーター転生。公爵家に転生したけど継承権が低い件。精霊の加護(チート)を得たので、努力と知識と根性で公爵家当主へと成り上がる
SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
400倍の魔力ってマジ!?魔力が多すぎて範囲攻撃魔法だけとか縛りでしょ
25歳子供部屋在住。彼女なし=年齢のフリーター・バンドマンはある日理不尽にも、バンドリーダでボーカルからクビを宣告され、反論を述べる間もなくガッチャ切りされそんな失意のか、理不尽に言い渡された残業中に急死してしまう。
目が覚めると俺は広大な領地を有するノーフォーク公爵家の長男の息子ユーサー・フォン・ハワードに転生していた。
ユーサーは一度目の人生の漠然とした目標であった『有名になりたい』他人から好かれ、知られる何者かになりたかった。と言う目標を再認識し、二度目の生を悔いの無いように、全力で生きる事を誓うのであった。
しかし、俺が公爵になるためには父の兄弟である次男、三男の息子。つまり従妹達と争う事になってしまい。
ユーサーは富国強兵を掲げ、先ずは小さな事から始めるのであった。
そんな主人公のゆったり成長期!!


クラス転移して授かった外れスキルの『無能』が理由で召喚国から奈落ダンジョンへ追放されたが、実は無能は最強のチートスキルでした
コレゼン
ファンタジー
小日向 悠(コヒナタ ユウ)は、クラスメイトと一緒に異世界召喚に巻き込まれる。
クラスメイトの幾人かは勇者に剣聖、賢者に聖女というレアスキルを授かるが一方、ユウが授かったのはなんと外れスキルの無能だった。
召喚国の責任者の女性は、役立たずで戦力外のユウを奈落というダンジョンへゴミとして廃棄処分すると告げる。
理不尽に奈落へと追放したクラスメイトと召喚者たちに対して、ユウは復讐を誓う。
ユウは奈落で無能というスキルが実は『すべてを無にする』、最強のチートスキルだということを知り、奈落の規格外の魔物たちを無能によって倒し、規格外の強さを身につけていく。
これは、理不尽に追放された青年が最強のチートスキルを手に入れて、復讐を果たし、世界と己を救う物語である。

劣悪だと言われたハズレ加護の『空間魔法』を、便利だと思っているのは僕だけなのだろうか?
はらくろ
ファンタジー
海と交易で栄えた国を支える貴族家のひとつに、
強くて聡明な父と、優しくて活動的な母の間に生まれ育った少年がいた。
母親似に育った賢く可愛らしい少年は優秀で、将来が楽しみだと言われていたが、
その少年に、突然の困難が立ちはだかる。
理由は、貴族の跡取りとしては公言できないほどの、劣悪な加護を洗礼で授かってしまったから。
一生外へ出られないかもしれない幽閉のような生活を続けるよりも、少年は屋敷を出て行く選択をする。
それでも持ち前の強く非常識なほどの魔力の多さと、負けず嫌いな性格でその困難を乗り越えていく。
そんな少年の物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる