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第19話 傷物 2人
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お昼位になりようやく事態は好転した。
血が流れていた傷がどうにか塞がった。
だが、見た目はどうする事も出来ない。
聖剣で斬られたからか傷は塞がったが約3cmで左右に焼き切られたような傷が残こった。
ヤクザ漫画や映画のような傷が顔から体に掛けて出来ている。
そして最悪な事にそこに僅かなズレがある。
スース―と息をし心臓は動いているから死ぬことは恐らくない。
だが、この容姿はもう治る事は無いだろう…
それに恐らく此処迄の傷だ。
骨ごと斬られたから、体にも後遺症が出る筈だ。
セシリアはまだ解らないがイザベルは完全に手足を切断されていた。
もう女性としての人生は終わった。
如何に、聖女や賢者でも此処迄ボロボロな人間を娶る相手は居ないだろう。
前の世界で言うなら…介護が必要な人間だ。
「リヒト…私…」
先に気がついたのはセシリアだった。
「良かった、目が覚めて…」
「私..この傷…嘘やっぱり、私斬られて…、そこに居るのはイザベルよね?」
「そうだよ…」
「うっ、体が思うように動かないわ」
「怪我したんだ、当たり前だろう? 今は休んだ方が良い…ほうら」
「うん、そうかも…あっリヒト、鏡頂戴…」
不味い、自分の体の包帯を動く右手で強引に引き千切るようにといた。
渡したくない。
「鏡は…」
「良いから頂戴!」
渡さない訳にいかないな。
セシリアは、自分の顔の包帯を引き千切ると鏡を覗き込むようにして見た。
「こ、これが私なの…これがいやぁぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーっ!」
「セシリア落ち着いて」
「あはははっ、うふふふ、そうよね、斬られたのが聖剣だもん、こうなるわ…この傷はもう、絶対に治らないわ、エリクサールでもハイヒールでもね…あははっもう終わりよ…体ももう真面になる事もないわ…」
「セシリア、落ち着いて何か方法を考え…」
「無理よ! 聖女の私が治らないって言ってんだから…絶対に治らないわ!」
セシリアは聖女。
回復のプロだ…それが治らないと言うんだから、恐らく間違い無いだろう。
世界に数本しか無いエリクサールが効かないなら…
もう絶望しかないな…
「ううん…セシリア…リヒト、セシリア、その傷…あっあぁぁぁぁぁぁーーーっ! 私、私は…ハァハァ私は…」
「イザベル落ち着いて、頼むから…」
イザベルは、まるで芋虫の様に這いつくばり、セシリアの落した鏡を覗き込んだ。
「この包帯の下にはセシリアと同じような傷があるのね…そうよね、そうよ…うわぁぁぁぁーーーーーっグススンスン…なんで、なんでこうなるのよ…」
今は何を言っても無駄だ。
泣き止む迄放って置くしかないだろう。
◆◆◆
どの位泣き叫び続けたか解らない。
ようやくは2人は泣き止み、今はまるで死人のようにぐったりしている。
この後、俺はどうするかドルマンと話さないとならない。
「泣いている所悪いが…これからどうする?」
「リヒト…どうもこうも私、体が真面に動かないのよ」
気丈にもセシリアは立って見せたが、そのまま崩れる様に座り込んだ。
「セシリアはまだ良いわ…私は立つ事も出来ない」
「それで…どうなんだ? これでもまだドルマンと居たいのか?」
「馬鹿じゃないの? そんな訳無いじゃない! 此処までされて好きで居られる訳無いじゃない! もう恨みしかないわ…100年の恋が冷めるどころじゃないわ…ドルマンなんてゴブリン以下だわ」
「私も同じ、もう恨みしかない、殺せるなら殺してやりたい位よ」
「そうか、それじゃ二人ともドルマンはもう好きじゃないんだな?」
「そう言っているわ」
「当たり前でしょう」
それがそうでもない。
世の中にはとんでもない愛し方をする奴が居る。
愛する男の為に風俗で働き、暴力を振るわれても愛し続ける女。
前歯が全部無くなる程の暴力を受けても、それで片目の視力を無くしても愛し続ける、そんな異常な愛を持っている女もいた。
俺も異常だとは思ったが…そういう奴を見たから…その可能性も否定できなかった。
「そうか…それなら、これからどうするか決めないとな…これからの2年間どうするか…」
勇者パーティであり、三職なのだからおいそれとパーティから抜けられない。
四職でない俺とは違う…
どうしたいのか? どうするのか?
ドルマンに会う前に決めないとな…
血が流れていた傷がどうにか塞がった。
だが、見た目はどうする事も出来ない。
聖剣で斬られたからか傷は塞がったが約3cmで左右に焼き切られたような傷が残こった。
ヤクザ漫画や映画のような傷が顔から体に掛けて出来ている。
そして最悪な事にそこに僅かなズレがある。
スース―と息をし心臓は動いているから死ぬことは恐らくない。
だが、この容姿はもう治る事は無いだろう…
それに恐らく此処迄の傷だ。
骨ごと斬られたから、体にも後遺症が出る筈だ。
セシリアはまだ解らないがイザベルは完全に手足を切断されていた。
もう女性としての人生は終わった。
如何に、聖女や賢者でも此処迄ボロボロな人間を娶る相手は居ないだろう。
前の世界で言うなら…介護が必要な人間だ。
「リヒト…私…」
先に気がついたのはセシリアだった。
「良かった、目が覚めて…」
「私..この傷…嘘やっぱり、私斬られて…、そこに居るのはイザベルよね?」
「そうだよ…」
「うっ、体が思うように動かないわ」
「怪我したんだ、当たり前だろう? 今は休んだ方が良い…ほうら」
「うん、そうかも…あっリヒト、鏡頂戴…」
不味い、自分の体の包帯を動く右手で強引に引き千切るようにといた。
渡したくない。
「鏡は…」
「良いから頂戴!」
渡さない訳にいかないな。
セシリアは、自分の顔の包帯を引き千切ると鏡を覗き込むようにして見た。
「こ、これが私なの…これがいやぁぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーっ!」
「セシリア落ち着いて」
「あはははっ、うふふふ、そうよね、斬られたのが聖剣だもん、こうなるわ…この傷はもう、絶対に治らないわ、エリクサールでもハイヒールでもね…あははっもう終わりよ…体ももう真面になる事もないわ…」
「セシリア、落ち着いて何か方法を考え…」
「無理よ! 聖女の私が治らないって言ってんだから…絶対に治らないわ!」
セシリアは聖女。
回復のプロだ…それが治らないと言うんだから、恐らく間違い無いだろう。
世界に数本しか無いエリクサールが効かないなら…
もう絶望しかないな…
「ううん…セシリア…リヒト、セシリア、その傷…あっあぁぁぁぁぁぁーーーっ! 私、私は…ハァハァ私は…」
「イザベル落ち着いて、頼むから…」
イザベルは、まるで芋虫の様に這いつくばり、セシリアの落した鏡を覗き込んだ。
「この包帯の下にはセシリアと同じような傷があるのね…そうよね、そうよ…うわぁぁぁぁーーーーーっグススンスン…なんで、なんでこうなるのよ…」
今は何を言っても無駄だ。
泣き止む迄放って置くしかないだろう。
◆◆◆
どの位泣き叫び続けたか解らない。
ようやくは2人は泣き止み、今はまるで死人のようにぐったりしている。
この後、俺はどうするかドルマンと話さないとならない。
「泣いている所悪いが…これからどうする?」
「リヒト…どうもこうも私、体が真面に動かないのよ」
気丈にもセシリアは立って見せたが、そのまま崩れる様に座り込んだ。
「セシリアはまだ良いわ…私は立つ事も出来ない」
「それで…どうなんだ? これでもまだドルマンと居たいのか?」
「馬鹿じゃないの? そんな訳無いじゃない! 此処までされて好きで居られる訳無いじゃない! もう恨みしかないわ…100年の恋が冷めるどころじゃないわ…ドルマンなんてゴブリン以下だわ」
「私も同じ、もう恨みしかない、殺せるなら殺してやりたい位よ」
「そうか、それじゃ二人ともドルマンはもう好きじゃないんだな?」
「そう言っているわ」
「当たり前でしょう」
それがそうでもない。
世の中にはとんでもない愛し方をする奴が居る。
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前歯が全部無くなる程の暴力を受けても、それで片目の視力を無くしても愛し続ける、そんな異常な愛を持っている女もいた。
俺も異常だとは思ったが…そういう奴を見たから…その可能性も否定できなかった。
「そうか…それなら、これからどうするか決めないとな…これからの2年間どうするか…」
勇者パーティであり、三職なのだからおいそれとパーティから抜けられない。
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