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第17話 シルカ村のルミナス

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しかし、しんどいな…

無言で歩くのがこれ程しんどいとは思わなかった。

セシリアは兎も角、エルザやイザベルはいきなりの話だから仕方ないな。

セシリアには俺が自分が3番以下に落ちる話はしていた。とは言え、いきなりの事で…そして相手が王族でも貴族でも無く只の娼婦。

まぁ、元気位はなくなるな。

いたたまれなくなり…

「なんだかゴメン」

俺がこう言うと…

「「「リヒトは悪くないから(ね)」」」

この返事が返ってきて、そして無言になる。

その繰り返し。

まぁ、泣かれるよりはましだ。

仕方なく、無言で歩き続けたが…

「ううっ、すんグス…」

「なんでだよ…糞…ドルマン」

「ううっ、すん、グスっ、なんでよ…」

とうとう泣き出した。

此処は、足を止めずに歩くしかないな。

下手に止まったら、もう歩けなくなりそうだ。

泣いていて可哀そうに思えるが…お前達は俺が傍に居るのも許さない追放を俺に望んだよな…

特にイザベル、お前なんか、俺からドルマンに乗り換えたんじゃないか!

大体ドルマンを選べば早かれ遅かれこうなった。

時期が早まり、相手が王族、貴族じゃなくて只の平民『娼婦』だった。それだけの事だ。

◆◆◆

しかし、辛気臭いな。

グスグス泣きながら俺の後をついてくる女の光景。

まるで俺が泣かせたみたいじゃないか...

そろそろシルカ村が近い。

「おい、そろそろ村が近い! 仮にも三職がそんな顔じゃ不味いぞ、すぐそこに小川があるから、顔位洗っておけよ…もう此処からは泣くな」

「そう…解ったわ!ずずうっ…」

「解ったよ…グスッ」

「だけど、だけど…グスッ、スンスン無理だよ」

ハァ~馬鹿か…

「無理?! あのな、お前達は只の女じゃねーんだよ! イザベル、無理にでも泣きやめよ…大体勇者パーティなんだから、仲間が死ぬ事も、誰かを守れないで目の前で殺される事も、して魔物の集団に捕まり拷問の上犯され、苗床にされた上殺される事だってある!たかが失恋位で泣いている暇なんて無い! 三職は弱い者の希望だ! 見えない所で泣いても見える所で泣くなよ!それが出来ないなら、イザベル、勇者パーティなんて辞めて故郷に帰れば良い…それだけだ」

「リヒト、言い方って物があるわ」

「少しは、こちらの気持ちを考えてくれよ…」

「酷い…リヒトにはこの気持ち解らないよ」

「馬鹿じゃねーの! 解らない? そう思うならそう思えば良い!お前らが俺を追放しようとしたの忘れたか? お前はドルマンを諦めるだけだよな? だが、俺はあの一瞬で、全部を失う所だったんだぜ違うか? 何が解らないだバーカ! 俺を地獄に放り込もうとした事忘れたかイザベル!」

「リヒト、解ったからやめて…」

「リヒト…」

「リヒト…ごめんなさい…うっグスッ」

「言い過ぎた…ほら顔を洗ったら行くぞ」

そんな事、もう根に持ってねーよ。

だが、使える物は使わせて貰う。

善意があるならさぞ堪えるだろうな。

◆◆◆



「シルカ村へようこそ…さあさぁ、三職の方は此方へ、リヒト様もお休み頂ける所をご用意しました! 案内させますのでそちらへ着いていって下さい」

「「「リヒト」」」

「気にしないで良いから、ほら行け」

この村は、俺が嫌いなタイプの村だ。

俺は一応は勇者パーティだが、四職じゃない。

だからなのか、こういう扱いを受ける事も多い。

明らかに差別して、まるで従者みたいに扱う村や街もある。

もう慣れたから別にどうとも思わない。

だが、今回は、都合が良い。

ドルマンの部屋から聞こえてくる生々しい声。

いつものパターンだと村長の家を丸々貸す事が多いから、一つ屋根の下で別部屋とはいえ、今迄仲良くしていたのに、別の女を抱く声が聞こえてくるんだ…どうなるんだろうな?

今頃、彼奴らは歓迎会でも受けているんだろう…

まぁ、そんな場所に俺は居たくないから、これで良い。

ドルマンとサキュバ、そして三人がどんな顔をしているか見られないのが残念だ。

◆◆◆

少し豪華な食事を貰い、散歩に出た。

「お月さまが綺麗だな…」

「そうですね…本当に綺麗…」

この村の女か?

黒髪に切れ長の目、そしてふくよかな体…年の頃は27、8って所か、ガキじゃない大人の良い女って感じだ。

「そうだな、凄く綺麗だな」

「良かったら、晩酌に付き合って貰えませんか?」

「俺はこの村じゃ、あんまり歓迎されて無いようだが、俺みたいな男の相手なんて嫌じゃ無いのか?」

「うふふ、嫌だったら誘いませんよ? それにリヒト様って、英雄と言われるだけあって、凄く凛々しくてお綺麗ですよ! 綺麗な銀髪に女性みたいに白い肌、本当に帝都の役者さんみたいです...寧ろ私みたいな田舎娘で未亡人が相手では勿体ない位です」

そうか、未亡人なのか…

この世界でこの齢で未婚な訳ないな。

「そんな事は無いぞ!俺には美人で可愛いく見える…」

「本当に? だったら夜は永いですから朝まで一緒にね!過ごしませんか?」

結局、俺達は酒もそこそこに、お互いを求めあうように愛し始めた。

この世界に生まれて初めて抱いた女に、俺の体はまるで砂漠で水を手にした様に反応した。

薬なんて使わないで充分だった。

ただ、ただ快感を求めあい、お互いにそれを満たしていく。

それだけで心の隙間が埋まっていく。

貪るように何回も何回も体を重ねる。

気がつくと俺は腕枕をし女を抱きしめていた。

「なんで、俺の相手をしてくれたんだ」

「リヒト様位お綺麗な方ならジョブなんて関係ありませんよ、例えジョブが村人でもお誘いしたと思います...ですが魔法剣士だからという下心もありました」

「どういう事?」

「だって、魔法戦士との間に子供が生まれたら必ず剣術系か、魔術系のジョブがつくんですよ、そんな子供、女だったら欲しいに決まっていますよ!ですが、避妊紋がありましたので、それは無理なのは解りました!だから、思う存分求めました。それだけですよ…もうこの齢ですから誰も女扱いなんてしてくれませんし…ね、うふふっ、かなり恥ずかしいですが、久々に燃えちゃいました」

そうか、確かに、勇者、聖女、賢者、剣聖の四大ジョブは「魔王討伐の為のジョブ」だから子供には引き継がれない。

だけど、魔法剣士は「常時ジョブ」だからかなりの確実で生まれた子に剣術系や魔法系のジョブがつく、確かにそうだ。

「それなら、避妊紋を刻まない方が良かったんだな…失敗したな」

「そうですね、少し残念ですが仕方ありません、ですが、本当に良かった、久々に寂しさを忘れられました…ありがとうございます、リヒト様…」

寂しさか…俺も同じだったのかもな。

なぜ?なぜそう思うんだ…そうか、これは勇者パーティにならなかった場合の俺の日常に近い…だからだな。

「いや、お礼を言うのは俺の方だ、そう言えば名前を聞いて居なかったな」

「ルミナスです」

「そうか、良い名前だな」

「ありがとうございます、褒めて貰って凄く嬉しいです…それじゃもう少し頑張りますか?」

気が付くと早朝になり、辺りはもう明るくなっていた。

「あいつ等を魔王城まで送り届けたら、もう一度ここに来ても良いか?」

「リヒト様が覚えていてくれたら寄って下さい、これからも過酷な旅を続けるんですから忘れても文句言いませんわ、うふふふっ」

何をするかは解らない。

だが、これは恩だ…だから、何かしらは返すつもりだ。

◆◆◆

「リヒト様、すぐに来て下さいっ! 勇者様達が…大変なんです!」

なんだ、人が心地よく寝ていたのに…

今は何時だ…ルミナスは居なくなっているが、まだ早朝だよな…

「朝から何のようだ? 何か頼むならドルマン達に頼めよ…」

俺を接待の輪に入れなかったんだ…これで良いだろう?

「その勇者様達が大変な事に、すぐに来てください」

あいつ等、一体何をしたんだ?



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