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第13話 6人目の勇者パーティメンバー

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「セシリア、エルザ、イザベル、すぐに街を出る、すぐに支度しろ!」

「ドルマン、どうしたの?急に理由を聞かせて!」

「いきなり、何かあったのかい、近隣の村が襲われているとかか?」

「一体どうしたと言うのよ! なにか緊急事態なの!」

「このパーティのリーダーは俺だ!今は理由は言えないが急ぐんだ、すぐに支度して街の入り口でリヒトを待つ…すぐに旅支度するんだ」

「解ったわ、一刻を争うのね、了解」

「解った、すぐに旅支度する」

「ドルマンがそこ迄言うなら、解ったよ」

頼んだぞ…リヒト。

◆◆◆

『旅の恥じはかき捨て』

それで良い…

まさか、此処まで転がり落ちるのが早いとは…思わなかった。

俺の考えでは、暫く飲み屋通いや風俗店通いが続き徐々に…そう考えていたのに…たった1回。

それも相手は王侯貴族でも大商人の娘でも無く、娼婦だ。

誤算だよ、誤算。

人生のクズだった俺が言うのも可笑しいけど…言うだけ無駄だな。

流石に無茶をするのも2回目。

今回の醜聞はこの街に確実に広がるから、すぐに街を出た方が良い。

そして俺は、ナイトムーンに居る。

流石にこれは、言いづらい。

散々、前の世界でイチャもんつけて来た俺だが…

こんな馬鹿な話は無い。

頭の中でゆっくりと国か教会から金を引っ張る算段をしていたら…もうこれだ…

まぁ考えるのは良そう。

今、やるならこれしか無い。

「いらっしゃいませ、リヒト様、今日は1人でお楽しみですか?」

「サキュバ嬢はいるか?」

「サキュバなら今客をとっています、他の子なら…」

「悪いが『勇者案件』だ、今すぐ連れて来てくれ」

「ですが、今…」

「勇者案件だ! 勇者案件は全てに優先する! 国王ですら他の仕事を止めても謁見するのだが…それでも待たせるのか!」

俺は脅しの意味を兼ねて剣の柄に手を掛けた。

「ひぃ…只今」

すぐに店主は奥に走っていった。

ハァ~まさか娼館で『勇者案件』という言葉を使うと思わなかったな。

これは緊急事態に使う言葉なのだが…不毛だ、考えるのは止めよう。

「あの…リヒト様、私、昨日なにか粗相でもしましたか?」

「いや、していない」

「それなら、なんでサキュバを呼び出したのですか? 理由を教えて下さい」

店主もサキュバも顔が青ざめている。

当たり前だ…『勇者案件』なんて持ち出したんだ。


「サキュバ、君は勇者パーティ、ブラックウイングの6人目の仲間に選ばれたんだ、おめでとう! さぁ服を着て魔王討伐の戦いに旅立とうではないか…行くぞ!」

「「はい?」」

まぁ訳解らないよな…俺も解らん。

「勇者であるドルマンが君を魔王討伐に必要とし、討伐メンバーに選んだんだ、これは拒むことは出来ない…さぁ行くぞ、サキュバ」

「リヒト様、待って下さい! 私、娼婦ですよ? 更に恥ずかしいのですがジョブも娼婦なんです…戦えませんよ!」

ジョブが娼婦、凄いなそれ…いや違う。

「それなら大丈夫だ、君は別の事をして貰う、安全は約束する」

「あの…私はサキュバスの血が入っています、それでも構わないなら良いんですが…その…」

「リヒト様、サキュバを身請けするなら身請け金を貰わないと…」

「そんな物払わない…書類が必要なら、無料でさっさと書類を書いて下さい…急いで」

「リヒト様、娼館や奴隷商は国の認可だ、そして身請け金も当然の権利、連れて行くなら払うもん位は払って頂かないと…あんた英雄と呼ばれているんだろうが…」

「勇者保護法 第6条 第2項 何人とも勇者パーティの召喚を拒んではいけない! 同じく、第3項 それを拒む者を斬り捨てる事、これを認める…こう勇者保護法に書かれている! そして今回の召喚は勇者であるドルマンの正式な物…邪魔するなら斬り捨てるまで…」

俺は仕方なく剣を抜いた。

「ひぃ…そんな…」

「悪いな、俺だって俺が間違っているのは解っているんだ…だが、勇者の命令に逆らう事は教皇様に逆らうのと同じ、そしてしいては女神の意思に逆らう事…そう言われている…俺はあんたを斬りたくない…だから黙って言う事を聞いてくれないか…」

「そうですか…解りました…お互い、グスッ辛いですな」

此奴、思ったより善人じゃないか…糞。

心が痛む…

「すまないな」

「いえ、仕方ない事です、サキュバほら着替えてきなさい…リヒト様、今、身請けの書類書きますね、身請け人はドルマン様で構いませんね」

「ああっ、お願いする」

まぁドルマンに頼まれたからした事だけど、絶対に恨まれるよな。

◆◆◆

「あの…私、本当に、その娼婦みたいな事しか出来ませんよ…」

「ははっ、それで構わない、ドルマンが君を気に入ったから、慰安的な事をしてくれれば良いんだ…あいつこの間の経験が初めてでな、凄く君を好きになったみたいだ、悪い奴じゃないから相手して貰えるか?」

「それは別に構いません…サキュバスの血が入っていますから、あの行為その物が、半分食事ですから、ですが、その好きは多分、偽物ですよ…誰もが私とした人間はそうなりますから」

まぁ知っていたよ。

「そうだな、まぁ何となく解っていたよ! だが、彼奴は勇者だから、悲しい事に恋愛なんてする暇がない、そのまま偽りで構わないから決して、その秘密を言わず、恋愛関係を続けてくれないか?」

「それで良いなら良いですが…本当に良いんですよね」

「ドルマンが良いって言うんだから良いに決まっている」

勇者パーティブラックウイング その6人目のメンバーが『サキュバスの血が入った娼婦』 良いのかな…

まぁ良いや…知らん。

恥じは此処で全部かいていくか…

「すみません、パーティの登録お願いいたします…」

「リヒト様…パーティ登録って、まさかブラックウィングに6人目のメンバーが…凄い、栄えあるメンバーは誰ですか?」

まぁ、勇者パーティの追加メンバーだ驚くよな。

「この子…これはドルマンが勝手に選んだ…絶対に口に出すなよ…」

俺は睨みつけながら話す。

「解りました…嘘」

「良いか、ドルマンが選んだんだ、口外するなよ、冒険者ギルドは守秘義務あるよな」

「はい…」

「俺も可笑しいのは解るんだ…恥をかきたくないから、手早く済ませてくれ」

ううっ憐れむような目が痛い。

まぁ仕方ないよな。

これで正式な6人目の仲間だ…

俺が考える以上に早く詰みそうな気がする…

それより、ドルマンは三人にどう説明するんだ…

これは俺にもどうする事も出来ないな。



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