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第9話 ドルマン、お前はこれが欲しいんじゃないのか?

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俺は夜まで待ってドルマンの部屋を訪ねる事にした。

「ドルマン、起きているか?」

凄く気だるそうな顔をしたドルマンが不機嫌な顔でドアを開ける

「なんだリヒトか…俺は眠いんだよ!」

一応あらかじめ様子を探っていたが、三人は部屋に居なかった。

『良かった』

「しっ…静かに、大きな声を出したら皆に気が付かれるだろう? これから一緒に飲みにいかないか?」

「セシリア達となら兎も角、お前と飲んで楽しい事ねえよ!」

これで、親友なんだぜ…マジで塩対応だろう?

「そんな事言うなよ…親友だろう? ドルマンが勇者になったから誘えなかったが、俺の夢は親友と酒を飲むことだったんだ、なぁ頼むよ」

俺は、仕方なく土下座をした。

俺の土下座も安くなったもんだ…少し前の俺なら絶対にしなかった。

「土下座までするか? 仕方ねーな…良いぜ」

どうにか誘えたな…

◆◆◆

「ここは…なんだか凄そうだな」

まぁ凄いに決まっている。

この世界ではなんて言うか解らないが前世ならキャバクラに近い。

ちなみにこの世界では、こう言う所は前の世界より敷居が高く、高額だ。

「気にするな、ドルマンは勇者なんだから、偶にこういう場所で飲むべきだ」

「良いのかよ…これ」

「ああっ、ゴメンな、パーティで男はドルマン抜かして俺だけなのに気がついてやれなくて、悪かった、お金は気にするな、さぁ入ろうぜ」

そう言いながら俺は財布を取り出した。

まぁ年季の入った財布だ。

「それ…」

「ドルマンが勇者にならなければ、お前と馬鹿やりたくて昔溜めた金だ! さぁ入ろうぜ!」

「ああっ、良いのか?」

「当たり前だ!お前が勇者だから誘いにくかったが、幼馴染の俺の夢はこういう女が居る店でお前と遊ぶ事だ…本当なら成人してすぐに来たかったが他の幼馴染は女だし、お前は勇者になったから誘えなかったんだよ…一緒にこう言う場所に、親友のお前と行きたかったんだ」

「ああっ、確かに三人と一緒じゃ、これないな」

あいつ等、結構潔癖で固いから、まぁ前世で言うなら『キャバクラ』に行っても『浮気者』ってビンタかますタイプだから『絶対に無理』だ。

「親友だろう? 男同士羽目を外して遊ぼうぜ! 三人には絶対に言わねーから」

「ああっ、そうだな…それじゃ奢られるか?」

初めてこう言う所に来るせいかドルマンは目を輝かせている気がする。

◆◆◆

「勇者パーティのリヒトだ!今日は皆の憧れの勇者ドルマンを連れてきた、お金は気にしないで良い、最高の子を頼むよ」

「解りました、最高の子をお付けします!任せて下さいな!」

「おい」

「大丈夫、大丈夫、さぁ行こうぜ」

俺はちゃんとリサーチ済みだ。

この店は美人が多い、まぁ任せて大丈夫だろう。

「ロザリーです」

「ミザリーです」

驚いたな、此処までのキャストが居るんだ。

ロザリーは没落した貴族の令嬢みたいな感じで上品さがある。
俺の感じではドルマンのドストライクの筈だ。

ミザリーは耳の感じからしてエルフか?

思った以上だな。

「二人とも、今日のメインはドルマンだからドルマンを挟む様に座ってくれ、ドルマンは知っての通り『勇者』なんだ、最高のもてなしを頼む」

「勇者様なのですか? 流石ですね風格がちがいますね」

「嘘っ、凄くカッコ良い…しかも凄いイケメンじゃない?」

「当たり前だろう? 勇者ドルマンなんだからな、俺の自慢の幼馴染だし、昔からモテモテだぞ」

「おいリヒト…言いすぎだぞ」

「ドルマンは気にしないで会話とお酒を楽しめば良いんだよ…あのよ、ドルマンは自分に自信なさすぎ『お前は勇者…お前を嫌いな女なんか世の中にいねーよ』そうだろう?」

「そんな訳ないだろう…」

しかし初心だね。

顔を真っ赤にしてさぁ…昔、初めてキャバ行った時の事思い出すわ。

「そうですね、凄くカッコ良いと思いますよ? お連れ様の言うように凄いイケメンです」

「本当に私の好み…凄~くかっこ良いです」

「そうかな…本当に」

「それじゃヘーテルのルビーボトル入れちゃうぞ!ドルマンはお酒も好きだから、ジャンジャンついでくれ」

「太っ腹ですね」

「流石は勇者様ですね」

ドルマンはご機嫌だ。

そりゃそうだ…綺麗な子が居るとは聞いていたが此処迄とはな。

指名しないでこのレベルが来るとは思わなかった。

これも『勇者特典』みたいなものだな。

『勇者』と聞いて最高の嬢をつけてくれたんだろう。

この店は前世で言うキャバクラやクラブに近い。

しかも一応高級店…そりゃ綺麗に決まっているな。

「それでさぁ、オークの大群が村を襲っていたわけよ…普通なら終わりだが…そこに俺が聖剣を持ってだな…」

「嘘、聖剣…もしかして、あの剣が」

「ああっそうだ…見たいか?」

「見たい」

「私も見たい」

「すみません…ただ見せるだけなので預けていた聖剣抜いても良いですか」

普通は剣なんて持ち込めないから預けてある。

「そうですね、お連れ様は勇者様なので『特別』ですよ」

「ありがとう…ドルマンは勇者だから『特別に剣を抜いて良い』ってさぁ..ほら」

「ああっ…特別に見せてあげるぜ…これが聖剣エグゾダスだ」

「綺麗…」

「こんな綺麗な剣初めてみました」

当たり前だよ!聖剣なんだから!

だけど、本当に免疫が無いんだな。

こんな所で聖剣を抜くなんて…良い笑い者だ。

「良いか、ドルマンが聖剣を抜いて見せてくれるなんて滅多にないんだ特別なんだぞ」

「ああっ素晴らしい物を見せて貰いありがとうございます」

「本当に目の保養になりました」

「良いんだ、良いんだ…今度はオーガと戦った時の話をしよう…」

上機嫌だな!ドルマン…

◆◆◆

「いやぁ~偶には男同士も良いもんだな…なんだか俺ばかりモテて悪いな」

金さえ払えば、誰でもモテるんだぜ!

水商売なんだからな。

「勇者がモテるのは当たり前だ、それにお前はイケメンなんだから、当たり前だ」

「そうか、そうだな」

「俺にとって自慢の幼馴染なんだモテて当たり前だ…お前といられるこの瞬間が俺の楽しみなのさ」

「そうか…なんだか悪かったな」

「別に良いよ…それよりちょっと話し良いか?」

「どうした?あらたまって、別に良いぜ」

「あの幼馴染の三人、お前にとって必要か?」

「なに言っているんだ、大切に決まっているだろう?」

「そうか…」

「ははん?!お前未練があるんだろう!流石にお前にもやれないよ」

「そうか…それなら仕方が無い、ロゼッタ姫や公爵令嬢のキャロラインより良いのか…それじゃ、そうするか…うん、まぁ良いぜ親友」

「はぁ~お前なに言ってるんだ? 今、姫様の名前が出ていたよな!」

「セシリア達が良いなら、まぁ仕方ない…お姫様の婚姻や領地は諦めるしかないな…そう思っただけだ…悪いな、そこまで好きだとは思わなかった」

明らかに動揺している。

まぁ、ドルマンは欲に弱いからな。

「なぁ、今婚姻って言わなかったか?」

「言ったけど? どうかしたか?」

「どうかした? じゃねー、ちゃんと話せよ」

見事に食いついたな。

「あのよ、ドルマン…お前、勇者なんだぜ! 魔王討伐したら王族との婚姻や領地持ち大貴族との縁談が来るに決まっているじゃないか?歴代勇者の殆どが自分から辞退するか、問題を起こさなければ、『爵位』『王族か大貴族との婚姻』『領地』この3つは貰っているんだぜ…知らないのか?」

「知らない…」

やっぱりな…此奴、ある意味アホだ。

「絶対じゃないが、今現在未婚なのは第三王女のロゼッタ姫、そして大物貴族の令嬢で未婚なのはキャロライン嬢…まぁ他にも居るかも知れないから解らんけど…ドルマンが魔王を倒したら、この辺りと婚約になる可能性が高い...」

「マジで?」

「ああっマジだ…だが、王族や貴族は『お古』を嫌う! 先に関係を持った女が居たらこの話は無しだな」

「いや、俺は勇者だから複数婚がOKだ。姫に正室になって貰って他は側室に出来るよな?」

常識を知らないよな。

「確かにそうだけど? 王族や大貴族の令嬢が後から入るのは、プライドがあるから絶対にしない…だから、最初に迎えるのは王族、そして次に迎えるのはその王族と仲が良い貴族、そしてその貴族が側室筆頭になる。そうやって王族を中心としたハーレムが形成されるんだ。幸いロゼッタ姫の親友がキャロライン嬢だから、このハーレムはドルマンなら作れる可能性がある。残念ながらこの国は『血の繋がりが無いと王族にはなれない』それでも王族の配偶者だから上位貴族の爵位と豊かな領地が約束されるだろうな…」

「リヒト、それ本当か?」

「当たり前だろう? お前は勇者なんだから、魔王を倒せばその位は手に入る…だが、その為には順序が必要だ…先に幼馴染とのハーレムなんて作っちまったら終わりだよ…三人先にハーレムがいる状態で王女が加わるか…考えれば解るだろう?」

「確かに…」

顔が青いな。

今現在、幼馴染ハーレム完成まで秒読みだからな。

「それに、セシリア達が、最低で3人目以下で我慢すると思うか?」

「確かにあいつ等はそれじゃ無理だ…うん? 最低で3人目って何だよ!」

「俺はお前を親友と思っている、だからため口で話すな! 良いか?考えて見ろよ! ロゼッタ姫が居て、キャロライン嬢が居るんだぜ!ちょっとした派閥だぜ、仲の良い貴族令嬢で未婚者が他にもハーレムに加わるだろうが…馬鹿か? 馬鹿なのか、お前は! 最低でもそこで3枠は使うんじゃねーか…」

こうやって距離を詰めるんだ。

知らないうちに言質をとって偉い奴とため口で話す。

あるかどうか解らない未来を、さぞ確実みたいに話し、そう思わせる。

のし上がるのに必要な技術だ。

「そうか…」

「そんな未来がお前にはある! それでお前はどっちを取る? お前が望む未来を俺は応援してやる」

「あの、三人を捨てれば、それが手に入るのか…」

「悪いな、なかなか言えなくて…俺にとってお前は1番だが、あいつ等も大切な幼馴染だから、なかなか言えなかった…」

悩んでいるな…

まぁ、当たり前だ、もう完成しかかった『幼馴染ハーレム』なかなか捨てにくいよな…

だが、それさえ捨てれば、自分が欲しがっていた物全部が手に入る。

「俺は…」

「今のお前は正常じゃない、これからお前をもう一件接待してやるから、明日にでも答えを出せ…なぁ」

「何処にいくんだ! なぁ…」

「ドルマン…俺が連れて行きたい本命は次だ…」

「まだ、あるのか? 良いぜ、つきあうぜ」

俺はドルマンを次の店に連れて行った。

此処が本当の本命だ!
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