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第4話 買い出し
しおりを挟む「仕方ないから来たわ」
俺の元に来たのは聖女のセシリアだった。
自分達の必要な物を買うのに『仕方ない』という位だから凄くヤル気が無いな。
「来てくれたのがセシリアで良かったよ! そうだな、セシリアだったらやっぱり今日は買い出しにしようか?」
「なんで私が買い出しな訳、何か理由があるの?」
「三人の中で薬に一番知識あるのが聖女のセシリアでしょう?だからポーションの買い出しもあるから一番向いているんだよ!」
「そうなの…」
「まぁな」
なんだ!この嫌そうな顔は…自分達の仕事だろうが!
まぁ良いや!
「こうやって、狩り以外で一緒に歩くのは久しぶりだな」
「そうね…」
相変わらずの塩対応だな。
まぁ、セシリアはロングのやや青い髪の毛に背が少し高くスラッとした感じの美少女。
何が言いたいのかと言えば、ドルマンの好みの外見で1番のお気に入りだ。
しかもセシリアもドルマンが好きだから相思相愛。
恐らく、ドルマンが勇者にならないで複数婚が出来なければ、セシリアを選んだ筈だ。
だから、三人の中で一番俺を追い出したい。
そう思っている筈だ。
頭の中に『此奴を奪えばドルマンは一番、悲しみ傷つくだろうな』そんな事が思い浮かぶ。
俺はクズだったが幾つか決めている事がある。
その一つが『親友の女は絶対に奪わない』事だ。
前世で『懲役になった兄貴分のかみさんを寝取った』が彼奴は知り合いであって親友ではない。
俺の中では親友ではない、存在だ。
前の世界での俺の性分は親友でも仲間でも、ムカついたらぶん殴る。
だが、親友が大事にしている女には手を出さない。
クズの俺だが、このルールは守っていた。
だが、ドルマンはもう『親友』ではない。
だから、セシリアも『親友の女』じゃない。
◆◆◆
「大体、こんな物だな、薬品関係はセシリアの方が詳しいから、教えるのも楽だ」
「そりゃ聖女だから薬品は得意だわ、当たり前じゃない?」
「そりゃそうだ! 食料は嗜好を気にしなければ、大体何日分必要か言えば食料品店で用意してくれる…雑貨もどんな所に行くのか、何日掛るのか、その辺りを相談すれば向こうが用意してくれる。最初のうちは、全部任せれば良いと思う。基本的に薬品店、食料品店、雑貨屋、服屋、あとは宿屋、この辺りで殆どの用事は済む。薬品以外はお任せで大丈夫だから、セシリアがやっぱり一番買い出しに向いているな」
「そうね、確かにそれだけ回れば済むわね! だけど、それじゃリヒトと同じにはならないわよね」
「そりゃあ当たり前だろう? 俺はこれでも大切な幼馴染を思い、頑張って来たんだ! 全部同じに出来る訳ないだろう。時間は3か月だから、教えてあげられる事は少ない」
「そうね…だけど、追い出しに掛った、私達に随分親切ね」
「幼馴染だから、引継ぎはするよ…だけど悔しいから、それ以上はしない」
「悔しい?」
「だってそうだろう? もしドルマンが勇者にならなければ複数婚は出来ないから3人の中から1人としか結婚は出来ない。そうすれば、恐らく残った2人のうち1人がお嫁さんだ、悔しいのは当たり前だろう? セシリアだって俺と嫁さん…」
「無いわね、3人の中から1人ならドルマンは必ず私を選ぶもの」
「確かにそうだ…違いない、だけどセシリアだってエルザだってイザベルだって2番目を選ぶなら俺だろう?」
「そうね、村に年頃の男の子は2人しか居ないんだから、まぁそうなるわね」
「絶対に埋まらない1番と2番の差、それが悔しいんだ」
「まぁ、絶対に埋まらないわね、しかし今日のリヒトは随分話すのね?」
「まぁね」
そろそろだな。
「リヒト、悪いけどこの店見て行っても良い?」
「別に良いけど?好きだね~」
「当たり前じゃない! 宝石が嫌いな女の子なんて居ないわよ」
「そう?エルザは興味無さそうだけど?」
「エルザは、まぁ変っているから…」
「確かにな…それじゃ見たいんだろう?」
「うん」
しかし、女ってなんでこう宝石が好きなんだろうね。
こんなのガラス玉となにが違うんだ。
俺には解らないな。
「いらっしゃいませ、何かお探しですか?」
「ええっ、まぁ、少し見させて貰って良い」
「はい、別に構いません」
勇者、聖女のお金は国や教会のからの支給。
こういう嗜好品は買えない。
恐らく、お店もそれは知っている。
だが面と向かって聖女に『金持って無いなら出ていけ』なんて言えないから好きにさせているんだろうな。
まぁ、買わないという意味で『嫌な客』だ。
買えもしないのに、羨ましそうに見ている。
ちなみに俺は、支援金を貰っていない。
酷い話だが皆と別れて、狩りで1人金を稼いでいる。
自分の金だから買う事は可能だ。
セシリアが見ている様な物は到底買えないけどな。
「随分、熱心に見ているんだな?」
「リヒト、これ凄く綺麗だと思わない?」
ダイヤだな…げっ金貨1000枚(約1億円)
「ダイヤだね、凄く綺麗だ…」
「綺麗だけど高嶺の花ね、私には到底手が出ないし、誰かが買ってなんてくれないわ」
そりゃそうだ。
「そうだな、こんなの金持ちだって自分の妻か娘とか家族にしか買わないな」
「そうね…」
まぁドルマンじゃ無理だな。
尤もセシリアなら魔王を討伐した時にくれと言えば貰えるだろうけど『俗物』とか思われるから、貰えないだろうな。
「なぁ、セシリア、もし俺がその宝石を手に入れてセシリアにプレゼントしてプロポーズしたら受けてくれたりする?」
「そうね『あり』かな…嘘冗談よ」
「まぁ冗談…だよな」
「そうよ、まぁその前にあり得ない事でしょう?」
「そうだね」
俺はセシリアと共に宝石店を後にした。
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