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第1話 追放はされません

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パーティーリーダーであり勇者のジョブを持つドルマンが告げる。

「悪いが今日でクビだ」

「ちょっと待ってくれないか?」

 ドルマンとは幼なじみだ。

 「今迄ずっと仲間で支え合いながらやっとここまで来た」俺がそう思っていると思っているのか?

 そんな風に思っているのは、お前達の方だけなんだぜ。

 剣聖のエルザ

 聖女のセシリア

 賢者のイザベル

 五人揃ってSランクパーティー『ブラックウイング』そう呼ばれていた。

やや中二病な名前だがまぁドルマンは勇者だし、剣聖や、聖女、賢者まで居るから可笑しくないな…

確かに最近の俺は取り残されていた。

ジョブの差で成長した3人に能力が追いついていないのは事実だな仕方ない。

だから、別にクビになっても良いと思っていた。

『あれを見るまではな』

腐ってもSランクパーティーのメンバーなんだぜ、俺も。

此処を出れば、幾らでも次があるんだからしがみつく必要は本来は無い。

こいつ等が凄いだけで他のSランクパーティーならまだ通用するし、Aランクまで落とせば恐らく引くてあまただ。

その位の価値はあるんだ…だから追い出されるなら『それで良い』そう思っていたんだ。

『だがドルマン…やり方が汚いんだよ…お前はよ』


「ついて来れないのは分かっているだろリヒト」

「そうだな、確かに魔法戦士の俺じゃ皆について行くのは...難しいな」

確かにその通りだ。

だがな、ドルマン…お前の目的はそれじゃねーよな。

此奴の狙いは解っている、ハーレムが欲しいんだろう?

「勇者とし大きく飛躍するには大きな手柄が必要なんだ。残念ながらお前とじゃ無理なんだ。なぁ分かってくれよ、パーティを抜けてもお前が親友なのは変わりないからな。」

そんな訳ねーよな。

親友と言うなら、親友の恋人に手を出すか?

居場所を奪うか?

虐げたりするか?

まぁ、男の友達が俺しかいねードルマンにとっては『これでも親友』なのか…糞野郎には違いない。


他の奴はどうなんだ。


俺は元恋人であるイザベルの目を見た、彼女ももう昔の優しい目をして居ないしドルマンの女になっているのも知っている。

「私もドルマンの意見に賛成だわ!貴方はもうこのパーティについていけないじゃない。きっと近いうちに死ぬか大怪我をするわ..さっさと辞めた方が良い...これは貴方の事を思って言っているのよ」

まぁ、そう言うだろうな!俺と目を合わせないんだからな。

ふと、イザベルの左手に目が行く。

薬指には見覚えのない指輪があった、これは多分ドルマンが買い与えた物だろう。

俺の指輪はもうしていない...まぁ解っているけどね

勇者と魔法戦士、仕方ないと諦めならつく。

他の2人も同じ指輪をはめていた。まぁそう言う事だ...

ハーレムパーティーに俺は要らない。

そう言う事だ…だがやり方が気に食わない。

だから、俺は

「イザベル...そんな事を言わないでくれよ、確かにこの先は厳しいかも知れないけど、あと1年、いや半年で良い…此処に居させて貰えるように頼んでくれないか? これでも元恋人だろう? なぁ頼むよ」

「....」

「なんで何も言ってくれないんだよ」

「もう、貴方を愛していない」

そんな事は...もうとっくに気が付いていたさ。

「イザベルがドルマンと恋仲になったのは知っている! それでも俺は幼馴染で友達だろう」

「し..知っていたの?」

「相手がドルマンじゃ仕方ない、ドルマンは勇者だ...他の男なら決闘だが、ドルマンなら諦めもつく…別に恋人に戻りたい訳じゃない…此処にいたいだけだなんだ」

「ごめんなさい!」

「もう気にしないで良い…だが、此処に、頼むから居させてくれないか?」

もうどうでも良い事だ。

ただ、俺が振られて、新しい恋人がドルマンそれだけだ。

「大人しく村に帰って田舎冒険者にでもなるか、別の弱いパーティでも探すんだな」

「ドルマン、頼むから、此処に居させてくれないか? 1年、いや半年で良いんだ、俺にとってはお前達が全てなんだよ!」

 ドルマンは俺は俺がイザベルと付き合っているのを知っていて寝取ったんだ。

まぁいいさ...前の世界でも『恋愛と友情は別』そういう親友は居た。

だがな、何も言わずになんで、こんな事したんだよ。

相談も無し…それが気にくわねーな。

ドルマンは勝ち誇った顔で俺を見ている。

思いっきり、俺をあざ笑っているんだな。

何をしても優秀で、顔も良くて、強くて、おまけに勇者に選ばれた。

そんなお前が、おれは自慢だったんだ。

こうなる迄は、親友だと思っていたからな!


イザベルは確かにおれの恋人だったが、それもお前のパーティに居るからなんだぞ...馬鹿野郎。

勇者パーティに居るならメンバー以外に選択肢が無いからな、エルザとセシリアをお前が好きだから選んだんだぞ。


俺には親友だったお前が一番だからよ。

本音で言えよ。


「さようなら、リヒト」

「さようなら」

「貴方より!ドルマンの方がごめん...」

 三人の幼なじみが一斉にお別れの言葉を言ってくる...思ったより堪えるなこれ..


「荷物持ちで良い…これから頑張るから、頼むお願いだ!」


「情けない奴だ、そんなに此処に居たいのか? なら、それを態度で示せ」

「そうね…本当に居たいなら態度で示すべきだわ」

「私は潔さが必要だと思うが…」

「そうね」

「解ったよ」

俺は『五体投地』を行った。


五体投地とは一般的には知られてないが『土下座』を超える謝罪行為だ。

大地に寝転がり…どうとでもして良いという事を表現している。

ドルマンは意地悪くにやりと笑った。

ドルマンはこの意味を知っている

「五体投地か…仕方が無い3か月だ、3か月だけこのパーティから抜けるのを待ってやるよ」

「ドルマンありがとうな!ドルマン達は世界を救う勇者達だ、俺はただの魔法戦士…せめてこの3か月ドルマン達との最後の思いでにさせて貰うよ」


 「そうか、そうか…まぁ頑張れよ」

他の三人はもう、何も言わなかった。

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