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第71話【閑話】安全な街
しおりを挟む「良いか?これで解ったか? リヒト達には最大の敬意を払え、もし、外から流れて来て『知らない人間』にもしっかりと説明する事。これがファルハン伯爵と話し合って決まった事だ」
俺事、スベンは、リヒト達を除くこの街の全ての冒険者に対して『講習』という名目でリヒト達への接し方を教えていた。
5人すべてがS級相当。
その実力にファルハン伯爵は歓喜した。
『これで魔族が攻めて来てもわが領地は安泰だ』
そう、考えた。
それに伴い情報が命の商業ギルドのギルマス、カウゾーは…
『この場所が安住の地になる…その為なら全商人にリヒト様達への優遇処置の徹底を通達をする』
と追随した。
商人にとって魔族から守られ財産を守れる場所は喉から手が出る程欲しい物だ。
それが今回、いとも簡単にたった5人を優遇するだけで手に入る。
『やらない』そんな選択は絶対しないだろう…
入念に証拠を残さず口頭で伝えられ、具体的には『愛想よく接し、物をサービスし、高価な物でも大幅値引きする…そして頭の中では感謝の念を忘れない』それを主軸に行動するように徹底するそうだ。
ワイバーン26羽…それがリヒト達の凄さを物語っている。
ファルハン伯爵は勇者パーティ以上と判断したようだ。
勇者パーティには実は殆どの領主は関心が無い。
幾ら強くても旅から旅で、一か所には居ない。
もし仲良くなってもピンチに陥った時に遠くにいたら駆けつけてなど貰えない。
そして魔王討伐があくまで優先だから、領地を守って貰える筈はなく、領主としてはあまり利用価値は無い。
だが、リヒト達は違う…自分の領地に居たら『確実に助けて貰える』それに加えて、ワイバーン等、他の人間に狩れない獲物を狩ってくるから、経済効果は抜群だ。
ファルハン伯爵や商業ギルドにとっては『最重要人物』扱いになるのは頷ける。
だからこそ、冒険者ギルドも追随しなくてはならない。
何しろ、ファルハン伯爵の方では、初めてこの街を訪れる人間にはこの優遇について、門番担当の衛兵が説明するようだしな…
「いや、態々説明を受けなくても、ちゃんと敬意を払うよ…俺はまだ死にたくないしな」
「あそこにあるワイバーンの素材を見れば…その怖さが解る…誰が何羽狩ったか解らねーが、平均5羽、勇者パーティ以外で1羽すら、この街に狩れる奴は居ない…俺はもうあいつ等を『魔王』だと思う事にした…怒らせたら確実に死ぬからな」
「確かにある意味、魔王と同等だな…なぁギルマス、あいつ等が本気を出したら、国の一つ位滅ぼせるんじゃないか?」
「ああっ…」
その通りだ。
今のリヒト達は勇者パーティ以上。
勇者が魔王城に数人で突入して魔王を討てるなら、今のリヒト達には多分同じ事が出来る。
そして、もしそれが何処かの国に向かったなら、一国を滅ぼしても可笑しくない。
「リヒト達は優しいからそんな事はしない! だが、もしやろうと思えば簡単に出来るだろうな」
「私もそう思います!リヒト様は優しいから忘れがちですがS級、そして他の4人もS級…その実力を考えるべきです…最強の味方ですが、敵に回すなら、魔王並みの怖さだという事を考えなくてはいけませんよ?」
力を見誤っていた事に冒険者の全てが気がついたようだ。
もう、この街で彼女達を馬鹿にする存在は居ない筈だ。
後は、俺の元にリヒトが『家』の相談をしに来るのを待つだけだな。
ファルハン伯爵が持っている邸宅を1つ無料で渡す話まで進んでいる。
これで、この街は安全だ。
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