上 下
54 / 85

第54話 【閑話】勇者パーティ解体

しおりを挟む
「それで、お前等、リヒト落とせねーの? 馬鹿じゃ無いの?裏切られた寂しさから化け物みたいな女に走った位なんだぜ」

あれから、俺はマリアンやリラと連絡をとってみた。

リヒトの言う通りに宿屋ではなく教会を拠点に今の俺は活動している。

全ての面倒を見て貰っているが、お祈りをしたり、酒が食卓に出ない等、窮屈極まりない。

シスターに手を出す事は出来そうだが…

『勇者様となら問題ありません、ですが責任はとって貰えますよね』

とニコリと笑うんだ。

教会関係者だから『手を出したら最後』確実に側室、相手によっては教会から無理やり正室に押し込まれる可能性が高い。

正にあれは『ネズミ捕りの中のチーズ』みたいな物だ。

食ったら終わりだ。

更に試しにポーターをつけて貰ったが、料理は下手だし、何かと『女神に感謝を』を連呼してくるので気が休まらない。

女が良いと言って、女にして貰ったが…此奴も食ったら最後終わりだ。

そして…最大の問題は。

魔王討伐を辞めてしまったら…特権の半分以上が無くなる。

S級冒険者だから恐らく金には困らない。

勇者という名前は討伐に参加しなくても女神から貰ったジョブだから残る。

だが、地位や名誉は違う。

勇者としての栄誉は魔王討伐の向こうにある。

王族、貴族との婚約、爵位…全てが手に入らない。

それ処か魔族と戦わなかった勇者としての汚名がつき 王国、帝国、聖教国では恐らく…かなり肩身の狭い思いをしなくちゃならないかも知れない。

「煩いわね!もうガイアとは関係ないんだから放っておいてよ! どうしても会いたいと言うから『幼馴染』の義理で来てあげただけだわ!」

「そんな嫌味を言う位なら帰るよ」

「まぁまぁ、待てよ!今日はお前等にお願いがあって来て貰ったんだ…魔王討伐だ! 世界を救う為にもう一度手を貸してくれ! 頼む!」

これは人類全部に関わる事だ此奴らだってきっと渋々でも戻ってくれるはずだ。

「それでガイア…それ引き受けたらリヒト戻る訳?」

「エルザも戻ってくるのかな?」

「いや、リヒトは三職じゃないから必要ない、脈が無いなら諦めてだな…ほら上手くやれば王子や貴族との婚姻もある、もうそれで良いんじゃないか? あとエルザは…実は化け乳だと解ったから、パーティの醜聞になりかねないから要らない...追放したんだ」

「そう? それじゃ、話は終わったのね!私はもう魔王討伐の戦いに参加はしないわ」

「そうですね、私もパス!それにエルザが、化け乳でもリヒトが見捨てないなら、私達にもチャンスはある! このまま粘れば…きっと」

「そうね、今でも最低限の面倒は見てくれているんだから、まだチャンスはあるわ」

「マリアン、リラ! 貴様ら世界はどうなる! 魔族領近くには俺らを待っている人たちが居るんだぞ!」

「別に… 私は恋に生きると決めたの! それに大体、私がそんなに貴重な戦力なら捨てたガイアが悪いわ! もう貴方の為に私は命がけになれないわ…連携も真面にとれないんだから、魔王城にたどり着く前に全滅よ、全滅!…態々、行っても死体が3つ増えるだけだわ」

「そうね、顔見知りなら兎も角、知らない人の為に命なんて張りたいと今は思わないよ! それにマリアンが言った通り、私も恋に生きたいし、無駄死にと解かるのに旅なんてしたくないな! 何より、リヒトの傍を離れてまで旅を続けたいとは思わないな」

「お前等…」

「ガイア、手柄が欲しいだけでしょう? 仲間を仲間と思わない、アンタにはうんざりよ! エルザの扱いを見て解るわ! 化け乳でも一緒にパーティ組んでいるリヒト、醜聞になるからと突き放すガイア…男としてどちらが正しいの?何時から此処迄クズになったのかしら? それとも元から?」

「そうね、もし私がドラゴンのブレスでも浴びて火傷して醜くなったらガイアは捨てるのかな? 顔以外取り柄が無いのよ。今のガイアは!」

「マリアン、リラ貴様ら!」

「このパーティは終わりよ…終わり! アンタに下手な希望を持たせちゃ悪いから、私が教会にしっかり『魔王の討伐はしない』そう伝えるわ」

「そうね『魔王討伐』したいなら一人でどうぞ!『勇者ガイア様』マリアン、私も付き合うわ!」

「そうね…面倒くさいから、直ぐに行こうか?」

「うん」

「おい…」

嘘だろう?

こんな簡単に俺の勇者パーティ『希望の翼』が無くなるなんて。






しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

異世界あるある 転生物語  たった一つのスキルで無双する!え?【土魔法】じゃなくって【土】スキル?

よっしぃ
ファンタジー
農民が土魔法を使って何が悪い?異世界あるある?前世の謎知識で無双する! 土砂 剛史(どしゃ つよし)24歳、独身。自宅のパソコンでネットをしていた所、突然轟音がしたと思うと窓が破壊され何かがぶつかってきた。 自宅付近で高所作業車が電線付近を作業中、トラックが高所作業車に突っ込み運悪く剛史の部屋に高所作業車のアームの先端がぶつかり、そのまま窓から剛史に一直線。 『あ、やべ!』 そして・・・・ 【あれ?ここは何処だ?】 気が付けば真っ白な世界。 気を失ったのか?だがなんか聞こえた気がしたんだが何だったんだ? ・・・・ ・・・ ・・ ・ 【ふう・・・・何とか間に合ったか。たった一つのスキルか・・・・しかもあ奴の元の名からすれば土関連になりそうじゃが。済まぬが異世界あるあるのチートはない。】 こうして剛史は新た生を異世界で受けた。 そして何も思い出す事なく10歳に。 そしてこの世界は10歳でスキルを確認する。 スキルによって一生が決まるからだ。 最低1、最高でも10。平均すると概ね5。 そんな中剛史はたった1しかスキルがなかった。 しかも土木魔法と揶揄される【土魔法】のみ、と思い込んでいたが【土魔法】ですらない【土】スキルと言う謎スキルだった。 そんな中頑張って開拓を手伝っていたらどうやら領主の意に添わなかったようで ゴウツク領主によって領地を追放されてしまう。 追放先でも土魔法は土木魔法とバカにされる。 だがここで剛史は前世の記憶を徐々に取り戻す。 『土魔法を土木魔法ってバカにすんなよ?異世界あるあるな前世の謎知識で無双する!』 不屈の精神で土魔法を極めていく剛史。 そしてそんな剛史に同じような境遇の人々が集い、やがて大きなうねりとなってこの世界を席巻していく。 その中には同じく一つスキルしか得られず、公爵家や侯爵家を追放された令嬢も。 前世の記憶を活用しつつ、やがて土木魔法と揶揄されていた土魔法を世界一のスキルに押し上げていく。 但し剛史のスキルは【土魔法】ですらない【土】スキル。 転生時にチートはなかったと思われたが、努力の末にチートと言われるほどスキルを活用していく事になる。 これは所持スキルの少なさから世間から見放された人々が集い、ギルド『ワンチャンス』を結成、努力の末に世界一と言われる事となる物語・・・・だよな? 何故か追放された公爵令嬢や他の貴族の令嬢が集まってくるんだが? 俺は農家の4男だぞ?

異世界でただ美しく! 男女比1対5の世界で美形になる事を望んだ俺は戦力外で追い出されましたので自由に生きます!

石のやっさん
ファンタジー
主人公、理人は異世界召喚で異世界ルミナスにクラスごと召喚された。 クラスの人間が、優秀なジョブやスキルを持つなか、理人は『侍』という他に比べてかなり落ちるジョブだった為、魔族討伐メンバーから外され…追い出される事に! だが、これは仕方が無い事だった…彼は戦う事よりも「美しくなる事」を望んでしまったからだ。 だが、ルミナスは男女比1対5の世界なので…まぁ色々起きます。 ※私の書く男女比物が読みたい…そのリクエストに応えてみましたが、中編で終わる可能性は高いです。

俺が死んでから始まる物語

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていたポーター(荷物運び)のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもないことは自分でも解っていた。 だが、それでもセレスはパーティに残りたかったので土下座までしてリヒトに情けなくもしがみついた。 余りにしつこいセレスに頭に来たリヒトはつい剣の柄でセレスを殴った…そして、セレスは亡くなった。 そこからこの話は始まる。 セレスには誰にも言った事が無い『秘密』があり、その秘密のせいで、死ぬことは怖く無かった…死から始まるファンタジー此処に開幕

備蓄スキルで異世界転移もナンノソノ

ちかず
ファンタジー
久しぶりの早帰りの金曜日の夜(但し、矢作基準)ラッキーの連続に浮かれた矢作の行った先は。 見た事のない空き地に1人。異世界だと気づかない矢作のした事は? 異世界アニメも見た事のない矢作が、自分のスキルに気づく日はいつ来るのだろうか。スキル【備蓄】で異世界に騒動を起こすもちょっぴりズレた矢作はそれに気づかずマイペースに頑張るお話。 鈍感な主人公が降り注ぐ困難もナンノソノとクリアしながら仲間を増やして居場所を作るまで。

異世界転移「スキル無!」~授かったユニークスキルは「なし」ではなく触れたモノを「無」に帰す最強スキルだったようです~

夢・風魔
ファンタジー
林間学校の最中に召喚(誘拐?)された鈴村翔は「スキルが無い役立たずはいらない」と金髪縦ロール女に言われ、その場に取り残された。 しかしそのスキル鑑定は間違っていた。スキルが無いのではなく、転移特典で授かったのは『無』というスキルだったのだ。 とにかく生き残るために行動を起こした翔は、モンスターに襲われていた双子のエルフ姉妹を助ける。 エルフの里へと案内された翔は、林間学校で用意したキャンプ用品一式を使って彼らの食生活を改革することに。 スキル『無』で時々無双。双子の美少女エルフや木に宿る幼女精霊に囲まれ、翔の異世界生活冒険譚は始まった。 *小説家になろう・カクヨムでも投稿しております(完結済み

勇者のハーレムパーティを追放された男が『実は別にヒロインが居るから気にしないで生活する』ような物語(仮)

石のやっさん
ファンタジー
主人公のリヒトは勇者パーティを追放されるが 別に気にも留めていなかった。 元から時期が来たら自分から出て行く予定だったし、彼には時期的にやりたい事があったからだ。 リヒトのやりたかった事、それは、元勇者のレイラが奴隷オークションに出されると聞き、それに参加する事だった。 この作品の主人公は転生者ですが、精神的に大人なだけでチートは知識も含んでありません。 勿論ヒロインもチートはありません。 そんな二人がどうやって生きていくか…それがテーマです。 他のライトノベルや漫画じゃ主人公になれない筈の二人が主人公、そんな物語です。 最近、感想欄から『人間臭さ』について書いて下さった方がいました。 確かに自分の原点はそこの様な気がしますので書き始めました。 タイトルが実はしっくりこないので、途中で代えるかも知れません。

異世界に召喚されたが勇者ではなかったために放り出された夫婦は拾った赤ちゃんを守り育てる。そして3人の孤児を弟子にする。

お小遣い月3万
ファンタジー
 異世界に召喚された夫婦。だけど2人は勇者の資質を持っていなかった。ステータス画面を出現させることはできなかったのだ。ステータス画面が出現できない2人はレベルが上がらなかった。  夫の淳は初級魔法は使えるけど、それ以上の魔法は使えなかった。  妻の美子は魔法すら使えなかった。だけど、のちにユニークスキルを持っていることがわかる。彼女が作った料理を食べるとHPが回復するというユニークスキルである。  勇者になれなかった夫婦は城から放り出され、見知らぬ土地である異世界で暮らし始めた。  ある日、妻は川に洗濯に、夫はゴブリンの討伐に森に出かけた。  夫は竹のような植物が光っているのを見つける。光の正体を確認するために植物を切ると、そこに現れたのは赤ちゃんだった。  夫婦は赤ちゃんを育てることになった。赤ちゃんは女の子だった。  その子を大切に育てる。  女の子が5歳の時に、彼女がステータス画面を発現させることができるのに気づいてしまう。  2人は王様に子どもが奪われないようにステータス画面が発現することを隠した。  だけど子どもはどんどんと強くなって行く。    大切な我が子が魔王討伐に向かうまでの物語。世界で一番大切なモノを守るために夫婦は奮闘する。世界で一番愛しているモノの幸せのために夫婦は奮闘する。

パーティーの役立たずとして追放された魔力タンク、世界でただ一人の自動人形『ドール』使いになる

日之影ソラ
ファンタジー
「ラスト、今日でお前はクビだ」 冒険者パーティで魔力タンク兼雑用係をしていたラストは、ある日突然リーダーから追放を宣告されてしまった。追放の理由は戦闘で役に立たないから。戦闘中に『コネクト』スキルで仲間と繋がり、仲間たちに自信の魔力を分け与えていたのだが……。それしかやっていないことを責められ、戦える人間のほうがマシだと仲間たちから言い放たれてしまう。 一人になり途方にくれるラストだったが、そこへ行方不明だった冒険者の祖父から送り物が届いた。贈り物と一緒に入れられた手紙には一言。 「ラストよ。彼女たちはお前の力になってくれる。ドール使いとなり、使い熟してみせよ」 そう記され、大きな木箱の中に入っていたのは綺麗な少女だった。 これは無能と言われた一人の冒険者が、自動人形(ドール)と共に成り上がる物語。 7/25男性向けHOTランキング1位

処理中です...