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第40話 修羅場⑫ 教えられない
しおりを挟む「話がついて良かったね」
俺は絶賛、胸を触っている最中だ。
幾らエルザが変わり者でも幼馴染で、少しでも将来を考えた奴から『その化け者つれて消えてくれ!』とまで言われて傷つかない筈が無い。
「まぁな、これもエルザのおかげだな」
「まぁね、この胸もリヒトの役に立てたなら、悪いばかりじゃないね」
「まぁな、凄く触り心地が良いしな」
「本当にリヒトは変わり者だね、こんな気持ち悪い胸が触り心地が良いなんて…変態さんだ」
「まぁエルザとアイカに限って言うなら、俺は変態かもな、こんなにも好きなんだから」
この位のリップサービスは良いだろう。
女の子が自分の一番醜いと思っている部分を晒して、あそこ迄酷い言葉を浴びせられたんだ…辛くない筈が無い。
まして此奴は残念系、顔で笑っていても、本当はきっと凄く落ち込んでいるのは間違いない。
「あはははっ、本当に凄いね、こんなに醜いのに触れるなんて」
俺は少し力を込めて揉んだ。
「そんな風に思わないな…好きな奴の体だったら、寧ろ愛おしく感じるな…またエルザに変態呼ばわりされるのは嫌だから言わないけど?」
「うそ…好き、愛しい…リヒト…嬉しいよ僕? うん!? 今もう言わないと言わなかった?」
「言ったよ! 変態と呼ばれるのは嫌だからね」
「嘘、嘘、嘘…冗談だよ! リヒトは変態じゃ無いよ? うん変態じゃないからね、僕の言い間違いだから…」
「そう?」
「うん、だからね…その…」
「余り価値が下がるから言わないけど、俺は胸も含んでエルザもアイカも好きだよ…」
「そうなんだ、リヒトは…もういいや、ありがとうね!リヒト」
なぁ?ボーイッシュじゃないのが解るだろう?
中身は全然男らしくないんだエルザは…普通に泣き虫でかよわい面もある『普通の女の子』なんだ。
まぁ当人は違うつもりだし、世間では『麗しの剣聖エルザ様』で通っているから知っているのは幼馴染位だけどなぁ。
最もガイアはきっと気がついていないだろうが…
「本当の気持ちだから、お礼の言葉は必要ないな」
「それでリヒト、僕もうちゃんと元気出たから…胸から手を放しても大丈夫だよ」
ちょっと残念だな。
「そうか? やっぱりエルザは笑っていなくちゃな…」
「そうだね」
まぁこれでエルザは大丈夫だな…問題は、残りの二人だ。
◆◆◆
「いつまで付いてくるんだ? 用があるならさっさと言えば?」
後ろからマリアンとリラが付いて来ていた。
「気がついていたの?」
「なんで、気配は消した筈なのに…」
ガイアの宿を出てからずうっと視線を感じていた。
幾ら四職で無いとはいえ、俺だってS級なんだぜ。気がつかない筈が無いだろう?
まして、長い間一緒に居た仲間なんだからな。
「流石に馬鹿にしすぎだ!大体パーティの時は偵察に斥候は俺の仕事だっただろう?」
「そうだよ!気配を感じる能力は剣聖の僕とあまり変わらないよ」
「へぇ~、それなら私達が居るのを知っていてイチャついていたんだ」
「ある意味凄いね!」
「うん、僕とリヒトはラブラブだからね? それで二人は僕たちになにか用?」
「その私達、今後どうしたら良いのか解らなくて」
「そうそう、どうして良いのか解らないの」
此奴らは何を考えているんだ。
これからは自由にして良いに決まっているじゃないか?
「なにを考えているのか解らないけど自由にして良いんじゃないか? 金はあるし、実力だってS級冒険者なんだ。何でも出来るだろう?」
「だけど、その前に二人はちゃんとガイアや教会と話さないといけないんじゃ無いかな? 三職なんだから!」
「そんな事言うならエルザだって四職じゃない?」
「そうよ! あなた、だって不味い筈だよ!教会や聖教国からクレームが入るよ!」
「それがね、僕は大丈夫だよ! 実は僕はガイアに嫌われちゃったから追放なんだよね! 物凄~く嫌われたから、絶対にパーティに戻ることは無いね、一応気が変わると困るから、音声専用記録石で録音もして置いたけど…うんうん絶対にないよ!」
まぁガイアは吐いた位だから、絶対に無いな。
「ちょっと待って、それじゃリヒトに続いてエルザ迄もう抜けたって事なの?」
「そうなるな、最も別動隊扱いだから、籍は残っているが、もう俺達がガイアと行動をすることは無い」
話はついたからな…ガイア達が魔国に向かうなら、俺達は反対方向に向かうそれだけだ。
流石に長距離を引き返す余裕はない筈だ。
「それじゃどうすれば良いのよ? ねぇ良かったら私もリヒトのパーティに入れてくれない? 別動隊なら抜けた訳じゃ無いし問題がないんじゃない?」
「あのさぁ、賢者のリラが別動隊で魔王討伐から離れるって教会が許さないと思うぞ、さらに言うならマリアンは聖女だから余計無理だな」
「そうよね…だけど、もうガイアと一緒には居たくないわ」
「私だってそうだよ」
確かにそうだな。
「その辺りはガイアとしっかり話すしか無いだろうな」
「何か良い方法はないかしら?」
「何か方法は無いの?」
あるにはある。
それはガイアに『勇者』として活躍するより『冒険者』の方が旨味がある…それを教える事だ。
ガイア程の実力があれば冒険者とし幾らでも金が稼げる。
多分、勇者としてチヤホヤされるとは言え、恐らくは冒険者としての毎日の方が楽しい筈だ。
ガイアの力なら金も女も自由自在だ。
勇者として苦労するより…冒険者なら『今からすぐにどちらも手に入る』この事を上手く教えれば…あるいわ。
だが、それは『沢山の人を見捨てた』事になる。
勇者パーティが居なくなれば…どれだけ犠牲が生まれるか解らない。
「俺が解るわけ無いだろう」
そう答えるしか俺には無かった。
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