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第39話 修羅場⑪ 勇者は吐いた
しおりを挟む「ちょっ!待てよ!おい! リヒトお前俺を見捨てるのかよ!」
もっと急げば良かった。
宿から出る前にガイアに捕まった。
「リヒト、無視して行こうよ」
そうは言うが、後々尾を引くと困る。
それに嫌な面も多いが、俺は此奴の『友達』まで辞める気は無い。
「仕方がないな、話し合いをしようか? ただ俺はもう戻らない、それは変わらないぞ」
「解った…取り敢えずそれで良い…」
「全く、リヒトはお人よしなんだから! まぁそこがリヒトの良い所なんだから仕方ないんだけど…」
エルザが俺をジト目で見てくるが…これで最後と思い付き合う事にした。
◆◆◆
「それで?」
「どういった条件なら居残って貰えるか! その相談だ…」
「まず、俺はガイアに追放された側だ…まぁ言われたことは事実だから根には持たないが…もう俺は戻らない」
「そうか、なら仕方が無い、エルザは置いていけ! そいつは『剣聖』戦力だ、魔王討伐に参加しないならやらない!」
「ガイア、そんな性格だから二人に振られちゃうんだよ? 僕と違い、あそこ迄、ガイアを好きな二人に逃げられるなんて馬鹿だよねー-っ、僕も戻る気ないよ…だけどね、本当の所は僕はパーティに戻さない方が良いと思うよ」
「エルザ、お前何を言っているんだ? お前は貴重な戦力だ『手放す』わけないだろうが!」
「そう…これでも同じ事を言えるかな?」
そう言うとエルザは上着を脱いで、サラシに手を掛けた。
「なんだ、色仕掛けでもしようと…なっなんだ、それは! おえっ、うぷっ…ハァハァ」
胸を曝け出したエルザは胸を露わにしてポーズをとっている。
「どう? なかなかの化け乳でしょう?」
そう言いながらエルザはガイアに悪い笑顔で近づいていった。
『ぴとっ』
胸をガイアに押し付けた瞬間…
「うぷっうぐっ、おええええええー―――っ、うがげぇぇぇぇえl――っ、やめよぉ、やめょょ…気持ち悪い、うぷっうぇうぇぇぇぇぇぇー-」
盛大にガイアはゲロを吐いた。
四つん這いで蹲って吐き続けているが、まだ止まらないようだ。
俺からしたら実に羨ましく、嫉妬してしまう光景だが『ガイアには地獄』のようだ。
もしかしたら、口裂け女にキスされる位の気持ち悪さがあるのかも知れない。
エルザはサラシは巻かずに上着を羽織った。
「これで解ったかな? 僕は化け乳なのさ! 女神が嫌う『醜い化け乳女』が勇者パーティで剣聖なんて問題があるんじゃないかな? その前に気持ち悪くて一緒に居たくなんてないだろう?」
しかし、これで剣聖が『聖なる存在』と違うのが立証された様な気がするな。
貧乳聖女からはじまり、貧乳が好きな女神の加護があるなら『巨乳病』になんてかからない筈だ。
仮にも女神の使いなのだからな。
エルザから考えると女神に本当に愛されているのは三職で剣聖は外れるのかも知れないな。
「エルザ…なんだよ…その胸…気持ち悪い、まさか化け乳だとはな…ゴブリンの方がまだましだ…見ているだけでうぷっ、吐き気がする」
「そうだろう? これで僕も追放で良いよね」
「ああっ…リヒト、その化け物女を連れていけ…絶対らぁ」
噛んだな。
「ああっ、元からそのつもりだ、もう俺達が会うことは無い…最後に選別代わりに教えてやる! 普段の家事を丸投げしたいなら宿屋に泊まらず教会に泊まれよ! 勇者なんだから教会のシスターや司祭が歓迎してくれて全てやってくれるぜ…更に書類もそこで代筆を頼めば良い」
「そうなのか…?」
だが食卓は貧しく肉が出ないで、遅くまで『お祈り』に付き合わされるのは、態々、教えてやる必要は無いな。
凄く窮屈だけど…面倒は全部みてくれる。
教会は『勇者大好き』『聖女大好き』だからな。
「ああっ、あと狩りや冒険中はポーターが欲しいと教会に相談すれば多分派遣してくれるぞ」
『勇者とは』とか、かなり生活に干渉しそうな存在が派遣されそうだが…そこ迄は知らないな。
「そうか…」
驚いた顔をしているな。
「魔族領に入ったら流石について来れないだろうが、それは俺も同じだ…これで解決だな! マリアンとリラはまぁ頑張って説得してくれ、これで終わりでよいだろう?」
ガイアの口元が少し吊り上がった。
これはガイアの悪い笑顔だ。
親友の横で何度も見た『クズ』の悪い笑顔だ。
「そうか、それならもうリヒトは要らないな、その化け者つれて消えてくれ!」
これでも、俺を『親友』だと思っているし、エルザを『幼馴染』だとは思っているんだぜ…『これで少しは優しい状態』なんだ…
凄いクズだよな。
まぁ良いけど。
「それじゃ俺はエルザを連れて出て行くわ…またな親友」
「ガイア、最低、いー-だっ」
これでもう大丈夫だな。
◆◆◆
「うわぁぁぁー-ん、僕、僕、化け物だってさぁ…あはははっ、そうだね、この胸だもん…ひぐっ」
多分、さっきのは無理していたんだな。
暫く歩いていると泣き出した。
仕方ないな…本当は仕方なくないけど…
俺はエルザと肩を組むと手を上着の下にもぐり込ませ、優しく揉んだ。
「リヒト…?」
「俺は好きだよ、エルザの胸」
「ありがとう…」
これが気持ち悪いなんてとんでもないよな。
今の状態を見たら、前の世界ならきっと『リア充死ね』と何人から言われるか解らないぞ。
俺はエルザの胸を周りから解らないように揉みながら自分の宿へと向かった。
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