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第35話 修羅場⑦ 教会にて

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さてこれからどうした物かな…

まぁ話すしか無いな。

「リヒト何しにきたのかしら? まさかガイアが『私をくれる』って言ったから私が自分の物になると思ったのかしらね? 馬鹿じゃ無いの! あーあ意地汚い!」

「ハァ~ 私は仕方が無いから、リヒトで我慢するしかないのかな…」

そう言いながら、目にはまだ涙があった。

この言葉を額面通りに取る訳にはいかないな。

だが、俺に八つ当たりされてもな…

ただ一つだけ解っている事は『ガイアはもう完全に二人は要らない、そう思っている』それだけだ。

ここで嫌な事を思い出した。

彼奴は昔から要らなくなると俺に色々な物をくれた。

そして『要らないから返す』と言うと『じゃぁ俺も要らないから捨てておいて』そう、いつも言っていた。

三人は幼馴染だが、もうガイアにとって必要が無い存在なんだろうな。

さてどうした物かな。

「リラ、我慢なんてする必要は無いよ、マリアンも同じだ、ガイアがくれると言っても二人は奴隷でも何でもないんだから、自分が好きなようにすれば良いと思う! 自分がどうしたいかよく考えるんだな…俺は二人の意見を尊重するよ…二人はどうしたいんだ? まずはそこからだ!」

「わわ私はどうしてよいか解らないわよ…」

「私はリヒトで良い…我慢するから」

馬鹿か此奴ら。

「まず、リラ我慢する位なら俺の傍にいる必要は無いよ…幾らなんでもそれは無いな。我慢?馬鹿にするにも程がある。マリアン、俺だって別に自分を好きでもない人間に無理やり付き合って欲しいとは思わない。意地汚い? そう思うならもう俺は要らないだろう? ガイアと三人で旅を続ければ良い、それだけだ」

「そうだね、うん、そうしなよ!僕はパーティから抜けてリヒトと行くから、うん、そのままガイアの所に戻ると良いよ!」

確かに幼馴染だ。

だが、ギブ&テイクという関係で言うなら、俺は散々ギブだけを続けてきた。

前世の言葉で言うなら『貸はあるけど借りは無い』その状態だ。

此処迄言われて一緒に居る必要は無い。

「ちょっと待ってよ! あの状態のガイアと一緒に居ろって、いうの? ふざけないでよ、無責任だわ」

「私はマリアンと違うじゃない?リヒトと付き合って良いって言っているのに酷くない?」

此奴らどこまで我儘なのかな?

聖女と賢者になってから性格がかなり悪くなった気がする。

更にガイアが居ないから本性が出た。

そんな所か。

「まず、マリアン、俺は四職じゃないんだ。本来なら一緒に居る義務はない、お前等の親から頼まれたから、ついてきただけだ。責任なんて無いだろう?それにお前は子供じゃないんだから、ガイアと一緒に居たくないなら、離れて生活すれば良いだけだ。 聖女だから離れられない? それは戦闘義務だけだ! 戦う時は一緒でも宿は別にして私生活は別にすれば済む。冒険者の中には男女でパーティを組んでいるけど、私生活は別々でお互いに違う家庭を築いている者も少なくない…それで良いんじゃないか?  リラも同じだ。ガイアに言われたからって俺と付き合うことは無い。ガイアとは戦う時だけ一緒でそれ以外は別行動で良いんじゃないか?」

良く考えたらこれで解決じゃないか?

「ちょっと待ってよ!さっきからの話だとリヒトは戻らない…まさか?そう言うつもりなの!」

「戻らない、そう言いたいの?そんなこと無いよね?」

大体、追放したのは皆だ。

しかも、俺は悠々自適に暮らしているんだから、戻る理由は無い。

なんで、俺が『あの生活に戻る』なんて考えているんだろうか?

「戻る訳ないだろう! なんで俺が好き好んで、自分を好きでも無い奴の面倒見ないといけないんだ?お前らの親に恩があって頼まれたから、仕方なくしていただけだよ! それもお前等から追放されたんだからもう終わりで良いだろう? 違うか!」

「まぁ、当たり前だよね」

「戻って来ない気なの…」

「嘘だよね」

「なんで嘘だと思う? だったら俺がやっていた仕事を1人でやってみれば良いよ。そうだな『パーティで稼いだ金からは銅貨1枚受け取らない。その状態で討伐の準備は1人で行い、薬品から備品迄管理して、全員分の家事を1人でこなして、自分の生活費は自分一人で稼ぐ。そして野営の時の警戒は自分一人で行い、報告書の作成も全部1人で行い、管理する』マリアンでもリラでも1人でやってみれば大変さが解る筈だ」

「ごめんなさい、これからは私も少しは手伝うわ」

「私が悪かったよ…報告書が大変なのは身を持って知っているからゴメン」

まぁ今更、それはどうでも良い。

幼馴染として、友人としての情は無いとは言わないが…それだけの事だ。

「それはもう気にしないで良いよ! だが、キツイ事言わせて貰うけど、マリアンもリラも女だろう…ガイアが好きなら尽くせば良いんだよ…二人のお母さん、料理も美味いし凄く旦那を立てるタイプじゃないかな?何もしないし出来ないから嫌われるんだ…今からでも頑張れば良いんじゃないか?」

「私にそんな事出来ると思うの? 聖女の修行ばかりしていたんだから仕方ないじゃない」

「そうだよ、旅から旅だったんだから、そんなの覚える暇なんて無かったんだから…」

「二人って僕より馬鹿なの? リヒトは同じ状態なのに出来るじゃないか?出来る人間が目の前に居るのに、それは無いよ」

「エルザ、貴方だって出来ないじゃない」

「そうだよ」

「うん、僕は出来ないよ、その通りだよ! だけど僕は二人とは違うよ…僕はリヒトを愛するって決めたんだよ! 出来ないから出来る事でリヒトに喜んで貰うように努力するって決めたんだ…だからリヒトを好きでも無いのに利用しようとする二人とは違うよ」

「だったらどうすれば良いのよ…」

「もうどうして良いのか解らない」

「だから話し合いが必要なんだろう? もうパーティに戻る気は無いけど! 義務だと思ってこの話し合いには参加するから、ガイアと腹を割って話し合ってみろよ…それしか無いだろう? 逃げても仕方ない」

「「そうね」」

明日、ガイアが泊っている宿屋の前で待ち合わせする約束をして俺とエルザは教会を後にした。




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