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第33話 修羅場⑤ 拝領妻
しおりを挟むこの街にある教会にやってきた。
大体、この位の規模の街だと教会は1つしかないから便利だな。
「此処に居てくれると助かるんだけどな」
「そうだね、此処に居なかった場合は、流石に僕でも解らないや」
確かにそうだ…だが、もしこの場にマリアンが居たとして、どうすれば良いんだよ…彼奴はガイアの恋人、昔も今もそういう立ち位置だった。
エルザやリラとは違う。
村にいた時にどう考えてもガイアとマリアンは仲が良くてお似合いだった。
だからこそ、俺の結婚相手はエルザかリラだと考えていた。
だから、エルザとリラとの将来は考えた事がある。
最も、エルザに対する感情は『恋愛』より『友情』一緒に居て楽しい親友がもし誰かと結婚したら一緒に遊べなくなるから、結婚しちまうか…そんな考えが強かった。
リラはパーティを組んだ時に孤立気味だった。
勇者パーティは魔王討伐まで数年単位での旅をする。
その時間は場合によっては10年を超える。
そんな中でガイアがマリアンとエルザを選ぶなら、孤立したリラを俺が引き取るしかない。
どちらも、かなり恋愛から離れるが、一緒の未来はあった。
だが、マリアンには全くない。
寧ろガイアの一番のお気に入りだったから、極力構わない様に心がけてきた。
「なぁ、つい教会まで来たが、何を話せば良いんだ?」
「あはははっ、リヒトの好きにして良いんだよ? ガイアがマリアンも捨てた様な物だから『僕みたいに』自分の物にしても良いし…任せるよ! 僕はリヒトも女の子も両方いけるから!」
「その、リヒトって言うのはなんだよ…男は俺だけって事か?」
「当たり前じゃない…当然だよ!」
「そうか…仕方が無い、行き当たりばったりだが、行くしか無いな」
「そうだね…行ってみようか?」
◆◆◆
「すみません、此処にマリアンは来ていますか?」
「リヒト様にエルザ様…確かに来ていますが、さっきから二人して泣いてばかりで…こちらとしても、もうどうして良いかもう解らないんです」
「二人という事はリラもですか?」
「ええっ二人ともいらしておりますが、一体何が起きたのですか? 部屋からは『もう魔王討伐なんて辞めてやるー-っ』とか物騒な話が聞こえてくるんですよ…もう気が気じゃありませんよ」
リラを探す手間は省けたな。
俺はその場にいる司祭とシスターに今の状況を話した。
「そんな事があったのですか?」
「まぁな」
「それで、リヒト様はどうなさるのですか?」
「正直言ってどうして良いか解らないんだ!それでまずは話をしようと思い探していたんだよ!」
「そうですな、今は何を話しても無駄でしょうから、少し待った方が良いと思います…そして、その待つ間に、部屋を貸しますから、リヒト様とエルザ様で、ある程度どうしたいか? 考えられては如何でしょうか?」
「私もそう思います」
「それじゃエルザ、そうさせて貰おうか?」
「うん、それしか無いと僕も思うよ!」
「確かにな…それで俺はどうするのが好ましいのかな…司祭とシスターの意見を聞きたい」
本来なら『様』をつけるべきだが、勇者パーティなので省いて言うように言われている。
目上の者を呼びつけるのは小心者の俺には慣れないけど仕方が無い。
「そうですな、勇者様であるガイア様が言うなら『全員貰っては如何ですか?』リヒト様は勇者パーティメンバーですからそれがあげると言うのであれば『拝領妻』扱いにも出来そうです」
「そうですね…名誉ある事です」
なんだ…拝領妻って。
聞いたことが無い。
「『拝領妻』ってなんでしょうか?」
「拝領妻とは『身分の高い者が妻を褒賞として部下に与える事』です」
「ちょっと待って僕たちは『妻』ではないよ!」
「言われてみればそうですな…ですが勇者であるガイア様が差し上げるというのであれば、当人たちが納得すれば、三人全員をリヒト様が娶るのは問題はありません…あくまで納得すればですが…」
「聖女様に賢者様に剣聖様、三人纏めて妻に出来るチャンス、男なら見逃すべきじゃありません」
これが聖職者のいう事か…
そう思ったが、此奴らは女神を信仰している。
そして勇者は女神の使者…勇者であるガイア寄りの考えなのは仕方が無い。
結局俺は1人で考える…それしか無さそうだな。
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