上 下
33 / 85

第33話 修羅場⑤ 拝領妻

しおりを挟む


この街にある教会にやってきた。

大体、この位の規模の街だと教会は1つしかないから便利だな。

「此処に居てくれると助かるんだけどな」

「そうだね、此処に居なかった場合は、流石に僕でも解らないや」

確かにそうだ…だが、もしこの場にマリアンが居たとして、どうすれば良いんだよ…彼奴はガイアの恋人、昔も今もそういう立ち位置だった。

エルザやリラとは違う。

村にいた時にどう考えてもガイアとマリアンは仲が良くてお似合いだった。

だからこそ、俺の結婚相手はエルザかリラだと考えていた。

だから、エルザとリラとの将来は考えた事がある。

最も、エルザに対する感情は『恋愛』より『友情』一緒に居て楽しい親友がもし誰かと結婚したら一緒に遊べなくなるから、結婚しちまうか…そんな考えが強かった。

リラはパーティを組んだ時に孤立気味だった。

勇者パーティは魔王討伐まで数年単位での旅をする。

その時間は場合によっては10年を超える。

そんな中でガイアがマリアンとエルザを選ぶなら、孤立したリラを俺が引き取るしかない。

どちらも、かなり恋愛から離れるが、一緒の未来はあった。

だが、マリアンには全くない。

寧ろガイアの一番のお気に入りだったから、極力構わない様に心がけてきた。

「なぁ、つい教会まで来たが、何を話せば良いんだ?」

「あはははっ、リヒトの好きにして良いんだよ? ガイアがマリアンも捨てた様な物だから『僕みたいに』自分の物にしても良いし…任せるよ! 僕はリヒトも女の子も両方いけるから!」

「その、リヒトって言うのはなんだよ…男は俺だけって事か?」

「当たり前じゃない…当然だよ!」

「そうか…仕方が無い、行き当たりばったりだが、行くしか無いな」

「そうだね…行ってみようか?」

◆◆◆

「すみません、此処にマリアンは来ていますか?」

「リヒト様にエルザ様…確かに来ていますが、さっきから二人して泣いてばかりで…こちらとしても、もうどうして良いかもう解らないんです」

「二人という事はリラもですか?」

「ええっ二人ともいらしておりますが、一体何が起きたのですか? 部屋からは『もう魔王討伐なんて辞めてやるー-っ』とか物騒な話が聞こえてくるんですよ…もう気が気じゃありませんよ」

リラを探す手間は省けたな。

俺はその場にいる司祭とシスターに今の状況を話した。

「そんな事があったのですか?」

「まぁな」

「それで、リヒト様はどうなさるのですか?」

「正直言ってどうして良いか解らないんだ!それでまずは話をしようと思い探していたんだよ!」

「そうですな、今は何を話しても無駄でしょうから、少し待った方が良いと思います…そして、その待つ間に、部屋を貸しますから、リヒト様とエルザ様で、ある程度どうしたいか? 考えられては如何でしょうか?」

「私もそう思います」

「それじゃエルザ、そうさせて貰おうか?」

「うん、それしか無いと僕も思うよ!」

「確かにな…それで俺はどうするのが好ましいのかな…司祭とシスターの意見を聞きたい」

本来なら『様』をつけるべきだが、勇者パーティなので省いて言うように言われている。

目上の者を呼びつけるのは小心者の俺には慣れないけど仕方が無い。

「そうですな、勇者様であるガイア様が言うなら『全員貰っては如何ですか?』リヒト様は勇者パーティメンバーですからそれがあげると言うのであれば『拝領妻』扱いにも出来そうです」

「そうですね…名誉ある事です」

なんだ…拝領妻って。

聞いたことが無い。

「『拝領妻』ってなんでしょうか?」

「拝領妻とは『身分の高い者が妻を褒賞として部下に与える事』です」

「ちょっと待って僕たちは『妻』ではないよ!」

「言われてみればそうですな…ですが勇者であるガイア様が差し上げるというのであれば、当人たちが納得すれば、三人全員をリヒト様が娶るのは問題はありません…あくまで納得すればですが…」

「聖女様に賢者様に剣聖様、三人纏めて妻に出来るチャンス、男なら見逃すべきじゃありません」


これが聖職者のいう事か…

そう思ったが、此奴らは女神を信仰している。

そして勇者は女神の使者…勇者であるガイア寄りの考えなのは仕方が無い。

結局俺は1人で考える…それしか無さそうだな。











しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

異世界転移「スキル無!」~授かったユニークスキルは「なし」ではなく触れたモノを「無」に帰す最強スキルだったようです~

夢・風魔
ファンタジー
林間学校の最中に召喚(誘拐?)された鈴村翔は「スキルが無い役立たずはいらない」と金髪縦ロール女に言われ、その場に取り残された。 しかしそのスキル鑑定は間違っていた。スキルが無いのではなく、転移特典で授かったのは『無』というスキルだったのだ。 とにかく生き残るために行動を起こした翔は、モンスターに襲われていた双子のエルフ姉妹を助ける。 エルフの里へと案内された翔は、林間学校で用意したキャンプ用品一式を使って彼らの食生活を改革することに。 スキル『無』で時々無双。双子の美少女エルフや木に宿る幼女精霊に囲まれ、翔の異世界生活冒険譚は始まった。 *小説家になろう・カクヨムでも投稿しております(完結済み

勇者のハーレムパーティを追放された男が『実は別にヒロインが居るから気にしないで生活する』ような物語(仮)

石のやっさん
ファンタジー
主人公のリヒトは勇者パーティを追放されるが 別に気にも留めていなかった。 元から時期が来たら自分から出て行く予定だったし、彼には時期的にやりたい事があったからだ。 リヒトのやりたかった事、それは、元勇者のレイラが奴隷オークションに出されると聞き、それに参加する事だった。 この作品の主人公は転生者ですが、精神的に大人なだけでチートは知識も含んでありません。 勿論ヒロインもチートはありません。 そんな二人がどうやって生きていくか…それがテーマです。 他のライトノベルや漫画じゃ主人公になれない筈の二人が主人公、そんな物語です。 最近、感想欄から『人間臭さ』について書いて下さった方がいました。 確かに自分の原点はそこの様な気がしますので書き始めました。 タイトルが実はしっくりこないので、途中で代えるかも知れません。

解呪の魔法しか使えないからとSランクパーティーから追放された俺は、呪いをかけられていた美少女ドラゴンを拾って最強へと至る

早見羽流
ファンタジー
「ロイ・クノール。お前はもう用無しだ」 解呪の魔法しか使えない初心者冒険者の俺は、呪いの宝箱を解呪した途端にSランクパーティーから追放され、ダンジョンの最深部へと蹴り落とされてしまう。 そこで出会ったのは封印された邪龍。解呪の能力を使って邪龍の封印を解くと、なんとそいつは美少女の姿になり、契約を結んで欲しいと頼んできた。 彼女は元は世界を守護する守護龍で、英雄や女神の陰謀によって邪龍に堕とされ封印されていたという。契約を結んだ俺は彼女を救うため、守護龍を封印し世界を牛耳っている女神や英雄の血を引く王家に立ち向かうことを誓ったのだった。 (1話2500字程度、1章まで完結保証です)

【完結】魔王を倒してスキルを失ったら「用済み」と国を追放された勇者、数年後に里帰りしてみると既に祖国が滅んでいた

きなこもちこ
ファンタジー
🌟某小説投稿サイトにて月間3位(異ファン)獲得しました! 「勇者カナタよ、お前はもう用済みだ。この国から追放する」 魔王討伐後一年振りに目を覚ますと、突然王にそう告げられた。 魔王を倒したことで、俺は「勇者」のスキルを失っていた。 信頼していたパーティメンバーには蔑まれ、二度と国の土を踏まないように察知魔法までかけられた。 悔しさをバネに隣国で再起すること十数年……俺は結婚して妻子を持ち、大臣にまで昇り詰めた。 かつてのパーティメンバー達に「スキルが無くても幸せになった姿」を見せるため、里帰りした俺は……祖国の惨状を目にすることになる。 ※ハピエン・善人しか書いたことのない作者が、「追放」をテーマにして実験的に書いてみた作品です。普段の作風とは異なります。 ※小説家になろう、カクヨムさんで同一名義にて掲載予定です

美人四天王の妹とシテいるけど、僕は学校を卒業するまでモブに徹する、はずだった

ぐうのすけ
恋愛
【カクヨムでラブコメ週間2位】ありがとうございます! 僕【山田集】は高校3年生のモブとして何事もなく高校を卒業するはずだった。でも、義理の妹である【山田芽以】とシテいる現場をお母さんに目撃され、家族会議が開かれた。家族会議の結果隠蔽し、何事も無く高校を卒業する事が決まる。ある時学校の美人四天王の一角である【夏空日葵】に僕と芽以がベッドでシテいる所を目撃されたところからドタバタが始まる。僕の完璧なモブメッキは剥がれ、ヒマリに観察され、他の美人四天王にもメッキを剥され、何かを嗅ぎつけられていく。僕は、平穏無事に学校を卒業できるのだろうか? 『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』

スキル間違いの『双剣士』~一族の恥だと追放されたが、追放先でスキルが覚醒。気が付いたら最強双剣士に~

きょろ
ファンタジー
この世界では5歳になる全ての者に『スキル』が与えられる――。 洗礼の儀によってスキル『片手剣』を手にしたグリム・レオハートは、王国で最も有名な名家の長男。 レオハート家は代々、女神様より剣の才能を与えられる事が多い剣聖一族であり、グリムの父は王国最強と謳われる程の剣聖であった。 しかし、そんなレオハート家の長男にも関わらずグリムは全く剣の才能が伸びなかった。 スキルを手にしてから早5年――。 「貴様は一族の恥だ。最早息子でも何でもない」 突如そう父に告げられたグリムは、家族からも王国からも追放され、人が寄り付かない辺境の森へと飛ばされてしまった。 森のモンスターに襲われ絶対絶命の危機に陥ったグリム。ふと辺りを見ると、そこには過去に辺境の森に飛ばされたであろう者達の骨が沢山散らばっていた。 それを見つけたグリムは全てを諦め、最後に潔く己の墓を建てたのだった。 「どうせならこの森で1番派手にしようか――」 そこから更に8年――。 18歳になったグリムは何故か辺境の森で最強の『双剣士』となっていた。 「やべ、また力込め過ぎた……。双剣じゃやっぱ強すぎるな。こりゃ1本は飾りで十分だ」 最強となったグリムの所へ、ある日1体の珍しいモンスターが現れた。 そして、このモンスターとの出会いがグレイの運命を大きく動かす事となる――。

異世界でただ美しく! 男女比1対5の世界で美形になる事を望んだ俺は戦力外で追い出されましたので自由に生きます!

石のやっさん
ファンタジー
主人公、理人は異世界召喚で異世界ルミナスにクラスごと召喚された。 クラスの人間が、優秀なジョブやスキルを持つなか、理人は『侍』という他に比べてかなり落ちるジョブだった為、魔族討伐メンバーから外され…追い出される事に! だが、これは仕方が無い事だった…彼は戦う事よりも「美しくなる事」を望んでしまったからだ。 だが、ルミナスは男女比1対5の世界なので…まぁ色々起きます。 ※私の書く男女比物が読みたい…そのリクエストに応えてみましたが、中編で終わる可能性は高いです。

無能な勇者はいらないと辺境へ追放されたのでチートアイテム【ミストルティン】を使って辺境をゆるりと開拓しようと思います

長尾 隆生
ファンタジー
仕事帰りに怪しげな占い師に『この先不幸に見舞われるが、これを持っていれば幸せになれる』と、小枝を500円で押し売りされた直後、異世界へ召喚されてしまうリュウジ。 しかし勇者として召喚されたのに、彼にはチート能力も何もないことが鑑定によって判明する。 途端に手のひらを返され『無能勇者』というレッテルを貼られずさんな扱いを受けた上に、一方的にリュウジは凶悪な魔物が住む地へ追放されてしまう。 しかしリュウジは知る。あの胡散臭い占い師に押し売りされた小枝が【ミストルティン】という様々なアイテムを吸収し、その力を自由自在に振るうことが可能で、更に経験を積めばレベルアップしてさらなる強力な能力を手に入れることが出来るチートアイテムだったことに。 「ミストルティン。アブソープション!」 『了解しましたマスター。レベルアップして新しいスキルを覚えました』 「やった! これでまた便利になるな」   これはワンコインで押し売りされた小枝を手に異世界へ突然召喚され無能とレッテルを貼られた男が幸せを掴む物語。 ~ワンコインで買った万能アイテムで幸せな人生を目指します~

処理中です...