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第25話 【閑話】 壊れた幼馴染
しおりを挟む4人で話し合った結果、リヒトを連れ戻そうという話になった。
冒険者ギルドに依頼を掛けて行方と現在の様子について調べて貰った。
結局リヒトは俺達と別れた街近辺でそのまま生活していた。
「リヒト様もガイア様達と同じS級冒険者ですので、それなりに良い生活を送っていますよ。あと、勇者パーティは追放にはなりません。抜けた場合は別動隊扱いになりますので、『希望の翼』の別動隊のリーダーという扱いになっています」
「完全に抜けたわけではないんだな」
「そうなりますね?!それで迎えにいくんですか?」
「ああっ、そうするつもりだが?」
なんで顔を歪めたんだ?
今のリヒトに何かが起きているのか?
「そうですか…」
「どうかしたのか?」
「いえ、今リヒト様は奴隷の女性を買って二人で生活しているのですが…」
彼奴、ふざけるなよ!
俺達が辛い旅を続ける中『奴隷』だと!
腹が立つな。
よく考えたら彼奴もS級冒険者。
支援金が何処からも貰えない代わりに幾らでも依頼を受けたり、狩りが出来る。
金なんてどうにでもなる。
幾ら幼馴染が可愛くても流石に絶世の美女のエルフやダークエルフには負ける。
畜生!
彼奴ばかりが良い思いしやがって!
「そうか? 遊び惚けているのか!それなら連れ戻しても問題ないな…」
「リヒト最低だよ!僕たちと別れたらすぐに奴隷を買うなんて」
「所詮はそう言う男だった、そういう事ですね! 女に現を抜かすなら連れ戻してこき使ってあげます」
「本当、最低だな、他のパーティで活躍しているなら気が引けたが、これなら強制的に連れ戻しても問題は無いな」
「大ありですよ…(ボソッ)」
今この受付嬢、嫌な顔をしたな。
「今、何か言ったか?」
「大ありだと言いました! 今のリヒト様は壊れています! 可哀そうですから暫く放って置いてあげませんか?」
「何が大ありなんだよ!美人の奴隷を買って遊び惚けているんだろうが!」
「そうよ、なんでそれで放って置かないとならないの」
「可笑しいじゃない」
「私達にはリヒトの補助が必要なの」
なんで俺達を睨みつける。
確かにリヒトは冒険者に人気があった。
だが、なんだこの目は勇者だぞ俺は!
「おい、勘違いしているようだから俺が教えてやる! リヒトが連れているのは…ブサイクな女だ」
「ブサイク?」
「そうね、凄くブサイク、あれに比べたら私の方が数倍良い女だわ」
「そうです…決して綺麗な奴隷じゃないんですよ…とんでもない化け乳女の奴隷を買ったんです…しかも、あんな気持ち悪い女んあおに凄く大切に…可笑しいですよ」
「リヒトは狂っている…誰が見ても醜い化け乳女、リヒトならエルフでも余裕で買える筈なのに…可笑しいんだよ、多分あれ以下の女を俺は見たことが無い」
「リヒトがブサイクな女の奴隷を買って、生活している? しかも相当醜い、それで間違いないか?」
「可笑しいよ」
「なんでブサイクを態々買ったのか理解に苦しむわ」
「なんでだろう?」
なんで態々そんな女を買ったんだ…可笑しい。
「それで間違いありません。リヒト様なら幾らでも相手には困らない筈です。実際にリヒト様とパーティを組みたい女性は山ほどいます。そんな二目と見れない化け乳を態々お金を出して買う必要は無い筈です。買うにしてもあそこ迄醜い化け乳を何で買うのでしょうか?考えられません」
「マジか…彼奴化け乳女なんて気持ち悪い奴隷を買ったのか、凄いな」
「これ僕たちが悪いのかな…」
「今思えば一生懸命雑用迄していたわよ…リヒト」
「私でさえ嫌がるような書類も1人でやっていたのに追い出したんだよ…私達」
「反省するのは良いですが…もう放って置いてあげる事は出来ないのでしょうか」
「リヒトは狂っている、なぁ親友や幼馴染を失ったから頭が狂っちまったんだよ…きっとブサイクな女なら裏切らない、そう思ったから態々不細工な奴選んで買ったんじゃねーのか?オルドで一番安い奴隷…そう言えば解るだろう」
そんな最低の奴隷を彼奴は買ったのか…家事奴隷じゃなくて。
「そんな…」
「なぁ、幼馴染が勇者になったんだ。普通なら劣等感から余り傍に居たくないよな? それでも親友だと思っていたから旅についてきてくれたんじゃないのか? その状況で小さい頃から一緒に過ごした幼馴染を総どりされて毎日イチャイチャする姿を見せられたら、ガイアあんたは耐えられるのかい!」
「俺はそんな…」
「俺は万年C級のおっさんだがな、言わせて貰うよ…可哀そうだよ」
「恋愛は自由だ、負けたリヒトが悪いんだろうな? だが態々見せつける必要迄は無いんじゃないか? 幼馴染の女は全員手に入れた…それでもう良いじゃないか? 此処から先は流石に虐めだぜ!」
「そう思いますよ! 親友から幼馴染を全部失って心まで壊れてしまったリヒト様…もう放って置いてあげて下さい、不憫ですから」
「ああっ解った」
この空気の中、それでも『連れもどす』とは俺には言えなかった。
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