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セレスは忠臣
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これでどうにかなるだろう。
うろ覚えだが、あの時に前世で読んだ事のある『三国志』の『二喬』の話を思い出した。
確か、孫権と周瑜に嫁いでいた絶世の美女で、諸葛亮孔明がそれを差し出せば喜んで曹操は…という下りがあった。
前世の事なので自信はないが、確かそんな話だった。
結局、2人は差し出す事が出来ずに戦争になった。
これで大丈夫だ。
『宝石姉妹』は正にこの『二喬』と同じ。
ただの王妃と公爵夫人というだけでなく、ゼルド国王とバラドール公爵の結びつきでもある。
絶対に断るに決まっている。
更に国王にして、国を寄こせ。
これで大丈夫だ、最悪国と決別するかも知れないが、そうなった場合はこの国の領土を出て行けばよい、それだけだ。
◆◆◆
「バラドールよ、先程のセレス殿の発言どう思われる?」
騎士は下がらせたが、宰相に大臣も含み此処には上流貴族も多数いる。
「恐らくこちらの事情を知っていての助け舟なのかも知れませんな、これは褒美ではなく我々に大きな貸しを作る、そういう事かと思います」
「やはりそうであろうな、あの実直なセレス殿が『それ以外にあんな発言をするとは思えぬ』
「全く英雄とは良く言った物ですな、何処で知ったのか、私は個人的にも気にいってしまった、友人としての親交も視野にいれたく思います」
周りの宰相や大臣は全てがにこやかな顔で頷いている。
『宝石姉妹』が国王や公爵家にとって頭痛の種であった。
その事は男爵以上の貴族では有名な話だった。
◆◆◆
宝石姉妹。
姉の名前はジュリア
まるで本物のプラチナの様な髪を持ち、全てに愛されているかのような美貌の女性
妹の名前はルミナス
姉に対して全てを癒す様な瞳の持ち主でその瞳は宝石の様に見える。
元々、名前のせいもあって昔は『薔薇の乙女』と呼ばれていたが、彼女達を描いていた絵師が『薔薇なんかじゃない、彼女達は宝石だ』と言った事から、後に『宝石姉妹』と呼ばれる様になった。
この二人の名前はこの国だけでなく、この世界で知らない物は無いと言われ、エルフさえも二人の前では石ころに見えるとさえ称えられた美女。
実際に彼女達を手に入れる為に過去には『戦争になりかかった事もある』
その美女を手に入れる為にゼルド王は国の領地の1/8を手放したと言うのは有名な話だ。
だが、それはあくまで昔の話だ。
今現在、この国の王家、そしてバラドール公爵家は『跡取りが居ない』
その理由はこの『宝石姉妹』が原因の一つであった。
この二人はプライドが高く『側室』を一切認めなかった。
そのくせ『からだが崩れる』等理由をつけて『夜の営みは気が向いた時しかしない』
しかも、外見的に姉妹にとっては好みでは無いのか『王』や『バラドール公爵』は男としてかなり傷つけられていた。
内心『何時か捨ててやろう』そう思っていたが、彼女達の名前は広く伝わっているのでおいそれとは、それは出来ない。
それを今回、セレスは意図しないで解決しそうになっていた。
幾ら美貌の持ち主とはいえ、もう20代後半、此の世界では既にオバサン扱い。
名前ばかりで実質は10代の女性より価値は無い。
プライドを壊さない様に『側室』をとろうとしても邪魔をされ、最悪の場合は消されてしまう。
若い妻が欲しい国王と公爵。
この二人が居なくなれば、自分の娘や親類を王家、公爵家に嫁がせる事が可能になる貴族達。
正に目の上のたん瘤、それが『宝石姉妹』の今の現状だった。
◆◆◆
「実質は、子を産まぬ価値の無い妃じゃが、今迄はどうする事も出来なかった、名前が通り過ぎておるからな」
「セレス殿は気が利く人物と聞いております、恐らくは我々の世継ぎの事情を知っていたのかと」
周りの貴族も自分達に都合が良いせいか誰も口を挟んで来ないわい。
まぁ、これから自分達の娘の有力な嫁ぎ先があくのじゃ当たり前じゃな。
『王妃』『公爵夫人』の地位があくのじゃから。
「そうであろう『英雄の肩書き』一つでタダ働きしてくれていたお人好しだ、余の涙は聞いていたようじゃ、これからは『忠臣』として面倒をみてくれようぞ」
「それでは、2人は拝領妻としてこれから正式に手続きをするとしまして、国はどういたしますか?」
それなのだ、それは流石に無理難題だ、これも何か意図があるのだろうか?
「御恐れながら、私も意見を言わせて頂いても宜しいでしょうか?」
「おお、ローマか、先程は嫌われ役すまなかった、何か意見があるのであれば申せ」
「はい、セレス殿は『この国』とは申しておりません、恐らくはルランス王国の事ではないでしょうか?」
「おおう、我が国と聖教国で分割統治という名目で取り上げた小国じゃな」
「はい、あそこは我が国から遠方の為、余り価値はありません。それに聖教国からも距離があり、あまり積極的に動きたく無さそうです。」
「そうか、確かに魔王討伐の為の恩賞となれば『聖教国』も一枚かみたかろう? だがそれはセレス殿が知りうることであろうか?」
「私の調べた所、セレス殿の寵愛している奴隷の1人がその国の元王妃です」
「おおう、確か元聖女じゃったな、それなら知っていても可笑しくない、何処までもナイスな奴じゃ、余の涙一つで此処まで動く、本当に真の忠臣(笑)じゃ」
「これで、どうにかなりそうですな」
「この際だ、通信水晶を使い『聖教国』の教皇様と話しをして全て決めてしまおう、皆の者も意見を頼む」
「「「「「「「「「「「「「「「はっ」」」」」」」」」」」」」」」
話し合いの末セレスに下賜する物が決まった。
① 『宝石姉妹』2人を拝領妻として下賜する。
② ルランス王国を領地として与えそこの王として正式に認める。
③ セレスが魔王軍と戦っている間は代官を置き、その税収はセレスの物とする、そのお金を持って、支援金とする。
④ 我が国での地位は属国の王なので『自由伯爵』とする。
※自由伯爵の理由は属国とは他国の王であるから政治的発言は『提案』しか出来ない。
ただし、無税や地位は伯爵と同等の権利を有する。
⑤ セレスのパーティのメンバーの過去の罪は女神の名の元に無かった事にする。
免罪符を教皇の名前に置いて発行する事により無かった事になる。
但し奴隷は解かない
⑥ セレスの扱いを『準勇者』とする。
⑦ マリアの扱いを『元聖女』から『準聖女』と扱う事にする。
※これにより教会の支援は全て無料となる。
「これでどうだろうか?」
「流石は王、素晴らしき英断です」
実質、要らない年増二人引き取ってくれて、要らない領地に名目だけの地位。
これで『命懸け』の戦いをしてくれる。
セレスは本当に良い忠臣じゃな。
◆◆◆
元は美しかったかも知れないが、今では価値の無くなった年増二人を差し出し。
統治が難しい土地を与え、名称だけの地位を与えて…勝てない戦に向わせる。
恐らく彼は死ぬだろう。
何て惨い仕打ちなのだろうか?
誰もがそれを知っていた。
だが、誰も異論は言わない。
『王に従う、それが貴族なのだから』
うろ覚えだが、あの時に前世で読んだ事のある『三国志』の『二喬』の話を思い出した。
確か、孫権と周瑜に嫁いでいた絶世の美女で、諸葛亮孔明がそれを差し出せば喜んで曹操は…という下りがあった。
前世の事なので自信はないが、確かそんな話だった。
結局、2人は差し出す事が出来ずに戦争になった。
これで大丈夫だ。
『宝石姉妹』は正にこの『二喬』と同じ。
ただの王妃と公爵夫人というだけでなく、ゼルド国王とバラドール公爵の結びつきでもある。
絶対に断るに決まっている。
更に国王にして、国を寄こせ。
これで大丈夫だ、最悪国と決別するかも知れないが、そうなった場合はこの国の領土を出て行けばよい、それだけだ。
◆◆◆
「バラドールよ、先程のセレス殿の発言どう思われる?」
騎士は下がらせたが、宰相に大臣も含み此処には上流貴族も多数いる。
「恐らくこちらの事情を知っていての助け舟なのかも知れませんな、これは褒美ではなく我々に大きな貸しを作る、そういう事かと思います」
「やはりそうであろうな、あの実直なセレス殿が『それ以外にあんな発言をするとは思えぬ』
「全く英雄とは良く言った物ですな、何処で知ったのか、私は個人的にも気にいってしまった、友人としての親交も視野にいれたく思います」
周りの宰相や大臣は全てがにこやかな顔で頷いている。
『宝石姉妹』が国王や公爵家にとって頭痛の種であった。
その事は男爵以上の貴族では有名な話だった。
◆◆◆
宝石姉妹。
姉の名前はジュリア
まるで本物のプラチナの様な髪を持ち、全てに愛されているかのような美貌の女性
妹の名前はルミナス
姉に対して全てを癒す様な瞳の持ち主でその瞳は宝石の様に見える。
元々、名前のせいもあって昔は『薔薇の乙女』と呼ばれていたが、彼女達を描いていた絵師が『薔薇なんかじゃない、彼女達は宝石だ』と言った事から、後に『宝石姉妹』と呼ばれる様になった。
この二人の名前はこの国だけでなく、この世界で知らない物は無いと言われ、エルフさえも二人の前では石ころに見えるとさえ称えられた美女。
実際に彼女達を手に入れる為に過去には『戦争になりかかった事もある』
その美女を手に入れる為にゼルド王は国の領地の1/8を手放したと言うのは有名な話だ。
だが、それはあくまで昔の話だ。
今現在、この国の王家、そしてバラドール公爵家は『跡取りが居ない』
その理由はこの『宝石姉妹』が原因の一つであった。
この二人はプライドが高く『側室』を一切認めなかった。
そのくせ『からだが崩れる』等理由をつけて『夜の営みは気が向いた時しかしない』
しかも、外見的に姉妹にとっては好みでは無いのか『王』や『バラドール公爵』は男としてかなり傷つけられていた。
内心『何時か捨ててやろう』そう思っていたが、彼女達の名前は広く伝わっているのでおいそれとは、それは出来ない。
それを今回、セレスは意図しないで解決しそうになっていた。
幾ら美貌の持ち主とはいえ、もう20代後半、此の世界では既にオバサン扱い。
名前ばかりで実質は10代の女性より価値は無い。
プライドを壊さない様に『側室』をとろうとしても邪魔をされ、最悪の場合は消されてしまう。
若い妻が欲しい国王と公爵。
この二人が居なくなれば、自分の娘や親類を王家、公爵家に嫁がせる事が可能になる貴族達。
正に目の上のたん瘤、それが『宝石姉妹』の今の現状だった。
◆◆◆
「実質は、子を産まぬ価値の無い妃じゃが、今迄はどうする事も出来なかった、名前が通り過ぎておるからな」
「セレス殿は気が利く人物と聞いております、恐らくは我々の世継ぎの事情を知っていたのかと」
周りの貴族も自分達に都合が良いせいか誰も口を挟んで来ないわい。
まぁ、これから自分達の娘の有力な嫁ぎ先があくのじゃ当たり前じゃな。
『王妃』『公爵夫人』の地位があくのじゃから。
「そうであろう『英雄の肩書き』一つでタダ働きしてくれていたお人好しだ、余の涙は聞いていたようじゃ、これからは『忠臣』として面倒をみてくれようぞ」
「それでは、2人は拝領妻としてこれから正式に手続きをするとしまして、国はどういたしますか?」
それなのだ、それは流石に無理難題だ、これも何か意図があるのだろうか?
「御恐れながら、私も意見を言わせて頂いても宜しいでしょうか?」
「おお、ローマか、先程は嫌われ役すまなかった、何か意見があるのであれば申せ」
「はい、セレス殿は『この国』とは申しておりません、恐らくはルランス王国の事ではないでしょうか?」
「おおう、我が国と聖教国で分割統治という名目で取り上げた小国じゃな」
「はい、あそこは我が国から遠方の為、余り価値はありません。それに聖教国からも距離があり、あまり積極的に動きたく無さそうです。」
「そうか、確かに魔王討伐の為の恩賞となれば『聖教国』も一枚かみたかろう? だがそれはセレス殿が知りうることであろうか?」
「私の調べた所、セレス殿の寵愛している奴隷の1人がその国の元王妃です」
「おおう、確か元聖女じゃったな、それなら知っていても可笑しくない、何処までもナイスな奴じゃ、余の涙一つで此処まで動く、本当に真の忠臣(笑)じゃ」
「これで、どうにかなりそうですな」
「この際だ、通信水晶を使い『聖教国』の教皇様と話しをして全て決めてしまおう、皆の者も意見を頼む」
「「「「「「「「「「「「「「「はっ」」」」」」」」」」」」」」」
話し合いの末セレスに下賜する物が決まった。
① 『宝石姉妹』2人を拝領妻として下賜する。
② ルランス王国を領地として与えそこの王として正式に認める。
③ セレスが魔王軍と戦っている間は代官を置き、その税収はセレスの物とする、そのお金を持って、支援金とする。
④ 我が国での地位は属国の王なので『自由伯爵』とする。
※自由伯爵の理由は属国とは他国の王であるから政治的発言は『提案』しか出来ない。
ただし、無税や地位は伯爵と同等の権利を有する。
⑤ セレスのパーティのメンバーの過去の罪は女神の名の元に無かった事にする。
免罪符を教皇の名前に置いて発行する事により無かった事になる。
但し奴隷は解かない
⑥ セレスの扱いを『準勇者』とする。
⑦ マリアの扱いを『元聖女』から『準聖女』と扱う事にする。
※これにより教会の支援は全て無料となる。
「これでどうだろうか?」
「流石は王、素晴らしき英断です」
実質、要らない年増二人引き取ってくれて、要らない領地に名目だけの地位。
これで『命懸け』の戦いをしてくれる。
セレスは本当に良い忠臣じゃな。
◆◆◆
元は美しかったかも知れないが、今では価値の無くなった年増二人を差し出し。
統治が難しい土地を与え、名称だけの地位を与えて…勝てない戦に向わせる。
恐らく彼は死ぬだろう。
何て惨い仕打ちなのだろうか?
誰もがそれを知っていた。
だが、誰も異論は言わない。
『王に従う、それが貴族なのだから』
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