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二つの手紙 絶望へ

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「セレス様、手紙がきております」

ギルドに顔を出すと、手紙が二枚届いていた。

はぁ~どうせ嫌な内容に決まっている。

俺に手紙を出してくる人物は『仲の良い相手で勇者パーティ』が多い。

それ以外は、政治がらみ。

つまり、殆ど碌な内容で無いと言う事だ。

見た瞬間から、嫌な気分で仕方ない。

『百合のロウソクの封印』がしてある。

これは『ゼルド王からの直々の手紙だ』

このゼルド王というのが実に狸なのだ。

15歳の俺なら絡めとられる。

『正体に気がつかないと慈悲深い最高の王様』だが前世の記憶がある俺からしたら…

『狡猾な恐ろしい男』だと解る。

恐る恐る封を切る。

やっぱり、嫌な手紙だった。

【手紙】


偉大なる英雄セレス殿

   リヒト殿のパーティから独立をし、新たなパーティを作られた事、余も心からお祝い申し上げる。

無論、リヒト殿の統括するパーティとして『勇者の仲間』として扱うように教皇様とも話し合いの末決めた。

黒き翼に続き、魔族に対抗する新たな白き翼の誕生は実に喜ばしい事だ。

だが、素晴らしいパーティが新たに現れたのに、ここ暫くは黒き翼の武勇も白き翼の武勇も余の元に届かぬ。

四職でもない貴公に頼むのは筋が違うのかも知れぬが、セレス殿の武を用いて『四天王』の一角を崩して貰えぬだろうか?

これは命令では無い、王としてのお願いである。

だが余は『英雄』とまで呼ばれる其方であれば出来ぬと思わぬ。

『英雄』が白き翼で羽ばたき魔を崩す事、心の底から期待しておる。

その時には其方にも『勇者』の資格を贈る気もあるのだ。

余も、国も世界もそなたの活躍を期待しておるぞ。

                         ゼルド


素晴らしい手紙に見えるが..

要は、ホワイトウイングを正式に勇者パーティの下部パーティとして教皇と話し合いの末決めたよ。
だから、今迄通りだ、良かったな。
いやぁ、魔族に対抗する手段が増えたのは嬉しいな。
最近、勇者パーティからもお前からも活躍が聞こえて来ないよ。
そこでさぁ、お前達で四天王の1人倒してくれよ。
お前ならきっと出来る、本当に期待しているからな。

最悪だろう?

俺は国から何も貰ってない。

まぁ『勇者支援法』を使わせて貰っているといえばそうだが、それだけだ。

その状態維持で…

俺は『四天王』を倒さなければならない事になった。

しかも、報償の事も書いてない。

つまり、倒した後どうなるかは王次第だ。

ほぼ生還不可能な依頼に報奨の確定無し。

前世なら退職届を叩きつけて、こんな会社辞めているよ、辞めれないので仕方ない。


◆◆◆

本当に上手いわ…

昔もそうだった、最初ゼルド王は、宴の席にリヒト達4人しか招かなった。

一応は俺もパーティメンバーに居るのに、無視したのだ。

所が、俺が実力を示してワイバーンを討伐した途端、手のひらを返した。

次回の宴の席に俺は呼ばれ、目の前で宰相が土下座をしていた。

俺はいきなり、ゼルド王に抱きしめられ

「すまなかった、余は知らなかったのだ、四職に匹敵する『英雄』が居たのに佞臣のせいで気が付かなかった、この通り諸悪の根源は罰したから許してくれ」

しかも泣いて見せた。

此処までなら素晴らしい話だろう?

だが、幾ら待とうが『俺に支援金が届く事は無かった』

リヒトが手違いだと思って聞いたら『四職以外には国はお金を払わない』そう言われたそうだ。

つまり『英雄』という呼び名だけ与えて俺は『タダ働き』だ。

今となっては『支援金を貰わないから』俺が稼いだものは全部俺の物、という理屈が成り立ち..逆に良かったが。

また何か言われると嫌だから『支援金を貰わない代わりに自分で稼いで暮らす』それを許す旨の手紙を送り、返事を貰った。

つまり俺はゼルド王から『英雄』という形だけの地位と『勇者パーティ在籍』この二つしか貰ってないのだ。

それなのに、四天王の討伐を押し付けられた。

しかも逃げられない…最悪だ。

本当に狸だ。


◆◆◆

もう一つの手紙を開いた。

嘘だろう、そこには騎士団長の名前で…

『勇者敗北』と書かれていた。

詳しく読むと、四天王の1人ドラムキングに負け行方不明と書かれていた。


今迄の幸せが一瞬で….崩れ落ちた様な気がして、目の前が真っ暗になった。














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