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真祖返り

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「おかえりなさい…」

なんだか随分と不機嫌そうに見える。

なんでだ?

お小遣いは沢山置いていったよな。

「ただいま」

「あんた、何していたの?」

本当に何でだろう?

明かに怒っている。

まぁ、事情位話した方が良いだろう。

俺は自分が何をしていたのか、アイシャに話した。

「あのさぁ、なんでそこ迄してくれるの?」

「俺にとって、たいした事じゃないから?」

「あのさぁ、一国の国王と対峙して、公爵を平民に落とす、それがたいした事じゃないなら、一体セレスにとって『たいした事』ってどういう事をいうのかしらね?」

うううっ確かに無理があるな。

「そうだな、『魔王を倒す』とか『古の古代竜』を倒すとかかな」

ああ勇者パーティで良かった。

「確かにそうね…」


「だけど、アイシャだからした事だ、アイシャじゃ無かったらしなかったよ」

「そ、そうなんだ仕方ないな、まぁセレスはババコンで、あああたしが好きなんだから仕方ないよね」

「そうだね」

「まぁ、それなら良いわ、許してあげる」


◆◆◆

次の日俺とアイシャは一緒に少し離れた岩場に来ていた。

理由は簡単、オーガを狩る為だ。

アイシャに『留守番は嫌だからセレスと一緒に冒険者をしたい』と言われたので俺はアイシャと狩に出た。

最初からオーガにしたのには訳がある、アイシャは姫騎士だから、恐らくゴブリンやオークなら最初から楽に狩れてしまう可能性が高い。

だが、それだと討伐を舐めてしまい、先々良くない。

だからこそ、アイシャであっても強敵であるオーガにした。

「ふーん、あの大男みたいな奴を狩れば良いの?」

「まぁそうだな」

アイシャには此処に来る前に、鉄で出来た軽装鎧と鋼鉄の剣を買って渡した。

ほぼ、俺と同じ装備だ。

魔法戦士の俺と同じ装備だ。

普通に考えて重い筈なのに『セレスと同じのが良い』と聞かなかった。

ジョブの補正は恐ろしく、華奢なアイシャが鋼鉄の剣を普通に振れた。

まぁ、流石に実戦は無理だろう。

「それでセレスは、あの化け物はどの位で狩れるの?」

「まぁ俺くらいなら瞬殺だな!」

「そう!」

「ちょっと待てよ!」

俺の制止も聴かずにアイシャはオーガの群れに突っ込んでいった。

『痛い目』に遭うと良い。

これは決して意地悪でなく『慎重に行動しろ』という意味で、案外ベテラン冒険者の鍛え方では多い。

ちなみにリヒトとリタは…同じような事をして大怪我をしたが『痛みを知るのも必要』と引率の騎士に言われ、制止され、ソニアに回復魔法を暫く掛けて貰えなかった。

今回は危なくなれば俺が入るし、薬もバッチリ用意してある…

「ダンシングソード」

アイシャがそんな技を唱えた。

初陣で、何も知らない筈のアイシャが..スキル。

そうか、ただ言っただけだよな。

只のカッコつけの筈だ。

「…スキルが使えている」

産まれて初めて戦って何故、スキルが使えるんだ。

しかも、オーガ相手に、普通にいや余裕で戦っている。

こんな事、初めての戦いでリヒトにだって出来なかった。

当然、俺だって出来なかった。

リヒトは勇者だ。

そのリヒトに出来ない事を、アイシャは出来る。

何故だ。

「ファイヤーフェニックス!セレス、終わったわよ! あんまりたいした事無かったわよ」

「凄いな」

「何が~」

オーガ6匹の死体に囲まれ笑っているアイシャに俺は別の意味でも目を奪われた。

◆◆◆

「アイシャ、お前狩りは、今日初めてだよな?」

「そうだけど? 何か失敗した?」

失敗所か上出来だ。

だが、信じられない。

「なぁ、アイシャは何故、初めての戦いで、スキルが使えたんだ」

「あっ、それ? 前にメイドに聴いたんだけど、多分、私って『真祖返り』なのかも知れない」

真祖返り?話には聞いた事がある。

古の英雄の能力をそのまま、引き継いだ存在だ。

確かに昔から『真祖返り』の英雄の逸話は沢山ある。

だが、これはあくまで架空の話で実際には存在しないと言われている。

「凄いな、それでアイシャは一体、誰の真祖返りなんだ?」

「解らないよ、此処まではね、だけど、戦うそう決めただけで戦い方やスキルの使い方が頭に浮かぶのよ」

この位戦えるなら、パーティを組んでも大丈夫だろう。

「それは凄いな」

「ねぇ、これで良いよね」

「ああっ合格だ、これから冒険者ギルドに行って登録しよう」

「そう、ありがとう」

こうして俺はアイシャと正式にパーティを組んだ。



※此処から数話、主人公とアイシャと別の物語が入ります。














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