上 下
12 / 68

出歩く

しおりを挟む

流石にアイシャは疲れて寝ている。

あれだけの事があったんだ、今日一日寝かせておいた方が良いだろう。

消化の良い食事を作ってきて、手紙を書いて、これで大丈夫だ。

俺は、今後どうするか考える為に今日は一日出歩く事にした。

◆◆◆

まずは奴隷商に来た。

前回お世話になったし、色々と聞きたい事もあった

「セレス様、今日はどうなさいました?」

「いや、この間お世話になったから挨拶にと思いまして」

「そうですか?生憎、主は所用で出かけています」

マイクさんも奴隷のプロだ。

話しを聞いて貰うのも良いかも知れない。


「ああっそういう事ですか? アイシャさんに刻んだ奴隷紋は緩いからですね」

「えっ奴隷紋にも色々あるんですか?」

「そうですね、強くすれば『逆らえば死ぬ』なんてレベルもあります、ですがセレスさんの場合は家族みたいな関係を望んでいましたので、そちらで調整しました、これだとある程度自由がきいて、スキンシップが出来ます。 基本『殺意を向ける』『明らかに危害を与える』この位で無いと発動しません、多少は主人にも逆らえます」

「成程」

「それに『英雄セレス様』に勝てるような存在はそうは居ないから、態々縛る事も無いでしょう」

まぁそうだな。

確かに、奴隷紋で縛った付き合いは本意じゃない。

マイクさんの判断は正しい。

「色々教えて頂きありがとうございました」

お礼を言って奴隷商から立ち去った。

◆◆◆

今度は冒険者ギルドに来た。

今の俺の立場がどうなっているか知る為だ。

結論から言うと完全には勇者パーティから抜けてはいなかった。

勇者パーティの別動隊扱いになっていた。

この状態なら『俺が新たに他のパーティに加入しなければ』勇者パーティの権利が行使できる。

俺がもし中心になってパーティを作るなら『別動隊』になる。

つまり、俺が他の誰かのパーティに入るまでは『勇者のパーティの特権』が使える。


俺の場合は少し特殊な立ち位置だった。

勇者→ 王国が支援

聖女→ 教会が支援

賢者→ アカデミーが支援

剣聖→ 商会が支援

こんな感じでそれぞれ『支援するバック』が存在する。

彼等はそこから支援金を貰い、勇者パーティのギルドカードにお金が振り込まれる。

何が言いたいのかと言えば俺には支援するバック、つまり後ろ盾がいない。

簡単に言えば、後ろ盾の居ない俺は、勇者パーティの使い走りみたいな感じで、必要なお金はパーティから貰っていた。

国から見れば『勇者達』は四職。

勇者、聖女、賢者、剣聖のみが勇者の仲間たち。

俺は国ではなく「ブラックウイング」の方の仲間だと言う事だ。

多分、俺が『勇者保護法』で保護されているのは…多分リヒトを含む勇者パーティが仲間だと主張してくれている事が大きいと思う。

追放されて無いのに依頼を受けたのは不味いかと思ったが、別動隊だし、何処からもお金を貰っていない俺だからこそ『自分の生活費は自分で稼ぐしかない』そういう理屈で問題が無いそうだ。

◆◆◆

教会の方はご丁寧にソニアが教皇を通し「姉弟みたいな存在」だからお願いしますね。

と通達がされているようだ。

最も、俺は勇者や聖女と仲が良く、更に平民に人気があるので本来は魔法戦士なのだが『英雄』と呼ばれている。
だからこそ、その人気を取り込む意味でも『勇者の仲間』と扱われているのかも知れない。

アカデミーも商会も教会程ではないがやはり『勇者の仲間』としての扱いを受けられている。

これなら問題が無い。

今の俺ならアイシャを守る力がある。

今の立ち位置が崩れる前に、行動を起こすべきだろう。





しおりを挟む
感想 222

あなたにおすすめの小説

【完結】魔王を倒してスキルを失ったら「用済み」と国を追放された勇者、数年後に里帰りしてみると既に祖国が滅んでいた

きなこもちこ
ファンタジー
🌟某小説投稿サイトにて月間3位(異ファン)獲得しました! 「勇者カナタよ、お前はもう用済みだ。この国から追放する」 魔王討伐後一年振りに目を覚ますと、突然王にそう告げられた。 魔王を倒したことで、俺は「勇者」のスキルを失っていた。 信頼していたパーティメンバーには蔑まれ、二度と国の土を踏まないように察知魔法までかけられた。 悔しさをバネに隣国で再起すること十数年……俺は結婚して妻子を持ち、大臣にまで昇り詰めた。 かつてのパーティメンバー達に「スキルが無くても幸せになった姿」を見せるため、里帰りした俺は……祖国の惨状を目にすることになる。 ※ハピエン・善人しか書いたことのない作者が、「追放」をテーマにして実験的に書いてみた作品です。普段の作風とは異なります。 ※小説家になろう、カクヨムさんで同一名義にて掲載予定です

勇者に全部取られたけど幸せ確定の俺は「ざまぁ」なんてしない!

石のやっさん
ファンタジー
皆さまの応援のお陰でなんと【書籍化】しました。 応援本当に有難うございました。 イラストはサクミチ様で、アイシャにアリス他美少女キャラクターが絵になりましたのでそれを見るだけでも面白いかも知れません。 書籍化に伴い、旧タイトル「パーティーを追放された挙句、幼馴染も全部取られたけど「ざまぁ」なんてしない!だって俺の方が幸せ確定だからな!」 から新タイトル「勇者に全部取られたけど幸せ確定の俺は「ざまぁ」なんてしない!」にタイトルが変更になりました。 書籍化に伴いまして設定や内容が一部変わっています。 WEB版と異なった世界が楽しめるかも知れません。 この作品を愛して下さった方、長きにわたり、私を応援をし続けて下さった方...本当に感謝です。 本当にありがとうございました。 【以下あらすじ】 パーティーでお荷物扱いされていた魔法戦士のケインは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもないことを悟った彼は、一人さった... ここから、彼は何をするのか? 何もしないで普通に生活するだけだ「ざまぁ」なんて必要ない、ただ生活するだけで幸せなんだ...俺にとって勇者パーティーも幼馴染も離れるだけで幸せになれるんだから... 第13回ファンタジー小説大賞奨励賞受賞作品。 何と!『現在3巻まで書籍化されています』 そして書籍も堂々完結...ケインとは何者か此処で正体が解ります。 応援、本当にありがとうございました!

俺が死んでから始まる物語

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていたポーター(荷物運び)のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもないことは自分でも解っていた。 だが、それでもセレスはパーティに残りたかったので土下座までしてリヒトに情けなくもしがみついた。 余りにしつこいセレスに頭に来たリヒトはつい剣の柄でセレスを殴った…そして、セレスは亡くなった。 そこからこの話は始まる。 セレスには誰にも言った事が無い『秘密』があり、その秘密のせいで、死ぬことは怖く無かった…死から始まるファンタジー此処に開幕

お荷物認定を受けてSSS級PTを追放されました。でも実は俺がいたからSSS級になれていたようです。

幌須 慶治
ファンタジー
S級冒険者PT『疾風の英雄』 電光石火の攻撃で凶悪なモンスターを次々討伐して瞬く間に最上級ランクまで上がった冒険者の夢を体現するPTである。 龍狩りの一閃ゲラートを筆頭に極炎のバーバラ、岩盤砕きガイル、地竜射抜くローラの4人の圧倒的な火力を以って凶悪モンスターを次々と打ち倒していく姿は冒険者どころか庶民の憧れを一身に集めていた。 そんな中で俺、ロイドはただの盾持ち兼荷物運びとして見られている。 盾持ちなのだからと他の4人が動く前に現地で相手の注意を引き、模擬戦の時は2対1での攻撃を受ける。 当然地味な役割なのだから居ても居なくても気にも留められずに居ないものとして扱われる。 今日もそうして地竜を討伐して、俺は1人後処理をしてからギルドに戻る。 ようやく帰り着いた頃には日も沈み酒場で祝杯を挙げる仲間たちに報酬を私に近づいた時にそれは起こる。 ニヤついた目をしたゲラートが言い放つ 「ロイド、お前役にたたなすぎるからクビな!」 全員の目と口が弧を描いたのが見えた。 一応毎日更新目指して、15話位で終わる予定です。 作品紹介に出てる人物、主人公以外重要じゃないのはご愛嬌() 15話で終わる気がしないので終わるまで延長します、脱線多くてごめんなさい 2020/7/26

レベルが上がらずパーティから捨てられましたが、実は成長曲線が「勇者」でした

桐山じゃろ
ファンタジー
同い年の幼馴染で作ったパーティの中で、ラウトだけがレベル10から上がらなくなってしまった。パーティリーダーのセルパンはラウトに頼り切っている現状に気づかないまま、レベルが低いという理由だけでラウトをパーティから追放する。しかしその後、仲間のひとりはラウトについてきてくれたし、弱い魔物を倒しただけでレベルが上がり始めた。やがてラウトは精霊に寵愛されし最強の勇者となる。一方でラウトを捨てた元仲間たちは自業自得によるざまぁに遭ったりします。※小説家になろう、カクヨムにも同じものを公開しています。

投獄された聖女は祈るのをやめ、自由を満喫している。

七辻ゆゆ
ファンタジー
「偽聖女リーリエ、おまえとの婚約を破棄する。衛兵、偽聖女を地下牢に入れよ!」  リーリエは喜んだ。 「じゆ……、じゆう……自由だわ……!」  もう教会で一日中祈り続けなくてもいいのだ。

追放された回復術師は、なんでも『回復』できて万能でした

新緑あらた
ファンタジー
死闘の末、強敵の討伐クエストを達成した回復術師ヨシュアを待っていたのは、称賛の言葉ではなく、解雇通告だった。 「ヨシュア……てめえはクビだ」 ポーションを湯水のように使える最高位冒険者になった彼らは、今まで散々ポーションの代用品としてヨシュアを利用してきたのに、回復術師は不要だと考えて切り捨てることにしたのだ。 「ポーションの下位互換」とまで罵られて気落ちしていたヨシュアだったが、ブラックな労働をしいるあのパーティーから解放されて喜んでいる自分に気づく。 危機から救った辺境の地方領主の娘との出会いをきっかけに、彼の世界はどんどん広がっていく……。 一方、Sランク冒険者パーティーはクエストの未達成でどんどんランクを落としていく。 彼らは知らなかったのだ、ヨシュアが彼らの傷だけでなく、状態異常や武器の破損など、なんでも『回復』していたことを……。

異世界転移「スキル無!」~授かったユニークスキルは「なし」ではなく触れたモノを「無」に帰す最強スキルだったようです~

夢・風魔
ファンタジー
林間学校の最中に召喚(誘拐?)された鈴村翔は「スキルが無い役立たずはいらない」と金髪縦ロール女に言われ、その場に取り残された。 しかしそのスキル鑑定は間違っていた。スキルが無いのではなく、転移特典で授かったのは『無』というスキルだったのだ。 とにかく生き残るために行動を起こした翔は、モンスターに襲われていた双子のエルフ姉妹を助ける。 エルフの里へと案内された翔は、林間学校で用意したキャンプ用品一式を使って彼らの食生活を改革することに。 スキル『無』で時々無双。双子の美少女エルフや木に宿る幼女精霊に囲まれ、翔の異世界生活冒険譚は始まった。 *小説家になろう・カクヨムでも投稿しております(完結済み

処理中です...