上 下
92 / 104

第92話  材料

しおりを挟む



「はぁはぁ」

まさかこんな事になるなんて、硫酸がこの世界にもあるなんて知らなかったぞ。

木崎の反撃までは予想はしていたが、まさか硫酸みたいな物を掛けられるとは思わなかった。

しかも、木崎の攻撃はポーションである程度治ったが、この焼けただれた顔は治らない。

「アルカ、シルカ、イルカ~逃げるぞ」

「貴方、何があったのか説明してくれる」

「酷い顔ですね、その怪我は薬品によるものじゃないですか、だとしたらもう」

「これは治らないわ、一応ヒールは掛けるけど…薬品によって顔の筋肉から骨まで溶けている、無理だよ、これは」


「時間が無い、逃げるぞ」

「ちょっと待て、貴方何があったか教えてくれる」

「説明している暇は無いんだーーーっ」

「理由位は聴かせて…それじゃ無ければ動かないわ…それにそこ迄されたなら、こっちだって報復するわよ」

「そうよ…大切な人をそんな目に合わせられたら黙っていられない」

「解かった…説明させて貰う」

私は自身に起きた事を事細かに説明した。

「貴方…それで全部か?」

「それで全部なのですか?」

「本当にそれだけなの?」

「そうだ、だからすぐに此処から逃げなくてはならないんだ」

「ほう…貴方、いや緑川…あんた外道だな」

「本当に最低の人間ですね」

「あの聡明な貴方は何処に行ったのかしら」

なんだ、これは…

「通報もしない、確保もしない、これが最後の情けだ。1人で出ていきな」

「そうね、本来なら確保するか殺さなくちゃいけないわ…だけど、最後の情け見逃してあげる」

「そこ迄しか出来ないよ」

何故だ…そうか私が酸を被って醜くなったからか…

「そうか、私がこの姿になったからか…そんな女だったなんて」

「ふざけるな! 私達はこれでも冒険者だぞ! 怪我なんて隣り合わせだ、例えドラゴンブレスで焼かれた姿でもわかれたりしないぞ!」

「「うん」」

「それじゃ、なんで私を見捨てようとするんだ…私は」

「冒険者だからだ!」

「そうよ、確かに実力は貴方には及ばない、だけどそれでも冒険者なのよ! 冒険者は約束を果たす為に努力をする。場合によっては死ぬ事があってもね…それが出来ないならクズなのよ」

「護衛依頼を受けたら、死ぬ事になっても守らなくちゃいけないわ」

「そうだ、それに義理を大切にするのが冒険者だ」

「私はどっぷり浸かってはいないけど、それでも約束は守るよ」

そうか…

「その事については、後で謝る、だからついて来てくれないか?」


「ハァ~緑川、あんた本当に教師だったのかよ! 住む所から仕事に生活まで全部、理人様が用意してくれたんだろうが…それを殺す手助けをしたんだぞ」

「恥ずかしいわ…嫌なら世話なんて受けないで、決闘を申し込みなさいよ。クズが」

「一緒に先生として死ぬまで過ごせると思っていたのよ…残念ですよ」


そんな…全部失うというのか…まぁ良い。

私は異世界人だ。彼女達と別れても、次がある。

理人は殺せたんだ。貴族籍が貰える。

そうすれば、彼女達以上の女と暮らせる…

「そうか、絶対後悔するぞ!」

「「「見逃す(から)(は)とっとと出て行(け)(きなさい)!」」」


「覚えていろよ!」

大丈夫だ、王国に着けば全てが上手く行く。

自分から幸せを逃すなんて馬鹿な女だ。

折角、貴族の妻になれたのに…馬鹿な奴らだ。


◆◆◆

「理人くん、直ぐに追撃しないで大丈夫なの」

「緑川は許せませんから消した方が良い筈よ」

「フルールはもう手を打っているんじゃないか?」

「流石は理人様ですわ、ちゃんと見張りをつけて放置しておりますわ」

流石だな。

此処で捕まえても意味がない。

王国に逃げ帰らせた方がより多くの物が手に出来る。

つまり…異世界人に対してではなく王国につけをまわせる。

あれだけ纏まった異世界人を使ったんだから、国が絡んでいるに違いない。

殺して終わりではなく、そっちに話を持っていった方が面白い。

王国がこれから火の海になる…それが解ったら、彼奴らはどんな顔をするのだろうか?

しかし…思った以上に異世界人(日本人)の多くが敵になったな。

結局、こちらの味方になってくれたのは木崎君1人か?

やはり緑川は駄目だったんだな。

計画的では無いかも知れないが、結局は裏切った。

ただ、馬鹿みたいに、てんぱっていたから、直前で計画に乗ったのだろう。

多数決で決めたとしても塔子と綾子が入ってないじゃないか?

まぁどちらにしても許せる事ではない。

「それで、理人様ぁ~死ななかったカラクリは教えて頂けますわよねーーーっ!」

「理人くん、酷いよ…私、私、本当に悲しかったんだからーーー」

「理人…ちゃんと教えてくれるよね(怒)」

ヤバイ、まぁ覚悟はしていたけど…かなり怒っている。

うん…それより、床に転がっている…人形? いや蛹、違うな!なんだこれ!

「後でちゃんと説明するけど、そこで転がっているのは一体なに?」

「これですか? うにうにですわ!」

「うにうに?」

「はい、本当は赤ん坊から作るのですが、女性の手足を切断した状態をダルマ女というのですわ。そこから更に歯を全部抜きまして、更に穴を使い心地良い様に加工するのですわ。まだ作成途中ですが、薬品を使って体を柔らかくして、感度もあげますの…まぁ究極の性奴隷ですわね…完成したらトイレの横に設置…」

「待って、その材料って何を使っているんだ」

「由香里よ!由香里、まぁ理人を殺したんだから当然よ!」

「由香里ちゃんですよ? だって理人くんを殺したんだもん」

いや、凄く可愛らしく話しているけど…ちょっと怖い。

まぁ良いや…俺は指をパチンと鳴らした。

その瞬間由香里は光に包まれ、元の状態に戻った。

「殺して…殺してくださぁぁぁぁぁーーーい…」

「体は元に戻った筈だけど、大丈夫か? 三端…」

「あっ、私のうにうに…」

神だからこの位は簡単だ。

「ひぃ~神代君、私が、私が悪かったのよ~ ただ来るだけで良いって言われて…許して下さい」

服も来てない状態なのに土下座してきた。

神になってしまったせいか…真偽が解かる。

嘘は言ってない。

まぁ、本好きの地味子が三端さんだから、大方逆らえずについて来た。

そんな所だな。

かなりひどい目にあったようだし、ジョブだけ取り上げて牢屋で良いや。

何故だ、何もしないのに『ジョブがとれてしまった』しかも、一瞬で粉々になった。

後でこの辺りの事はテラス様に相談しよう。

まぁ、職業が無い無能ならもう脅威ではないだろう。

「まぁ良い、良いよ、命は助けてあげるし、牢屋には入れるけど、三職昼寝つきの良い生活を保証してあげるよ…だから証言をしっかりしろよ」

「何をかな?」

「俺を殺そうとした経緯だ…これから王国と戦争をする事になるんだからな」

「そんな…」

「ちゃんと話すなら、俺が責任もって好待遇を保証する、だが嘘をつくなら、俺は知らないな。場合によってはもう一回うにうにに…」

横でフルールが何かの薬品を取り出そうとしていた。


「話す…嘘なんかつきませんから…それは止めてぇぇぇぇぇー――」

「そう、それなら良いや…それじゃ後はフルール頼んだよ」

「任されましたわ」

次は木崎君だな…

『親友』かぁ…なんだかちょっと気恥ずかしいな。



しおりを挟む
感想 47

あなたにおすすめの小説

フリーター転生。公爵家に転生したけど継承権が低い件。精霊の加護(チート)を得たので、努力と知識と根性で公爵家当主へと成り上がる 

SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
400倍の魔力ってマジ!?魔力が多すぎて範囲攻撃魔法だけとか縛りでしょ 25歳子供部屋在住。彼女なし=年齢のフリーター・バンドマンはある日理不尽にも、バンドリーダでボーカルからクビを宣告され、反論を述べる間もなくガッチャ切りされそんな失意のか、理不尽に言い渡された残業中に急死してしまう。  目が覚めると俺は広大な領地を有するノーフォーク公爵家の長男の息子ユーサー・フォン・ハワードに転生していた。 ユーサーは一度目の人生の漠然とした目標であった『有名になりたい』他人から好かれ、知られる何者かになりたかった。と言う目標を再認識し、二度目の生を悔いの無いように、全力で生きる事を誓うのであった。 しかし、俺が公爵になるためには父の兄弟である次男、三男の息子。つまり従妹達と争う事になってしまい。 ユーサーは富国強兵を掲げ、先ずは小さな事から始めるのであった。 そんな主人公のゆったり成長期!!

【リクエスト作品】邪神のしもべ  異世界での守護神に邪神を選びました…だって俺には凄く気高く綺麗に見えたから!

石のやっさん
ファンタジー
主人公の黒木瞳(男)は小さい頃に事故に遭い精神障害をおこす。 その障害は『美醜逆転』ではなく『美恐逆転』という物。 一般人から見て恐怖するものや、悍ましいものが美しく見え、美しいものが醜く見えるという物だった。 幼い頃には通院をしていたが、結局それは治らず…今では周りに言わずに、1人で抱えて生活していた。 そんな辛い日々の中教室が光り輝き、クラス全員が異世界転移に巻き込まれた。 白い空間に声が流れる。 『我が名はティオス…別世界に置いて創造神と呼ばれる存在である。お前達は、異世界ブリエールの者の召喚呪文によって呼ばれた者である』 話を聞けば、異世界に召喚された俺達に神々が祝福をくれると言う。 幾つもの神を見ていくなか、黒木は、誰もが近寄りさえしない女神に目がいった。 金髪の美しくまるで誰も彼女の魅力には敵わない。 そう言い切れるほど美しい存在… 彼女こそが邪神エグソーダス。 災いと不幸をもたらす女神だった。 今回の作品は『邪神』『美醜逆転』その二つのリクエストから書き始めました。

俺が死んでから始まる物語

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていたポーター(荷物運び)のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもないことは自分でも解っていた。 だが、それでもセレスはパーティに残りたかったので土下座までしてリヒトに情けなくもしがみついた。 余りにしつこいセレスに頭に来たリヒトはつい剣の柄でセレスを殴った…そして、セレスは亡くなった。 そこからこの話は始まる。 セレスには誰にも言った事が無い『秘密』があり、その秘密のせいで、死ぬことは怖く無かった…死から始まるファンタジー此処に開幕

地獄の手違いで殺されてしまったが、閻魔大王が愛猫と一緒にネット環境付きで異世界転生させてくれました。

克全
ファンタジー
「第3回次世代ファンタジーカップ」参加作、面白いと感じましたらお気に入り登録と感想をくださると作者の励みになります! 高橋翔は地獄の官吏のミスで寿命でもないのに殺されてしまった。だが流石に地獄の十王達だった。配下の失敗にいち早く気付き、本来なら地獄の泰広王(不動明王)だけが初七日に審理する場に、十王全員が勢揃いして善後策を協議する事になった。だが、流石の十王達でも、配下の失敗に気がつくのに六日掛かっていた、高橋翔の身体は既に焼かれて灰となっていた。高橋翔は閻魔大王たちを相手に交渉した。現世で残されていた寿命を異世界で全うさせてくれる事。どのような異世界であろうと、異世界間ネットスーパーを利用して元の生活水準を保証してくれる事。死ぬまでに得ていた貯金と家屋敷、死亡保険金を保証して異世界で使えるようにする事。更には異世界に行く前に地獄で鍛錬させてもらう事まで要求し、権利を勝ち取った。そのお陰で異世界では楽々に生きる事ができた。

隠して忘れていたギフト『ステータスカスタム』で能力を魔改造 〜自由自在にカスタマイズしたら有り得ないほど最強になった俺〜

桜井正宗
ファンタジー
 能力(スキル)を隠して、その事を忘れていた帝国出身の錬金術師スローンは、無能扱いで大手ギルド『クレセントムーン』を追放された。追放後、隠していた能力を思い出しスキルを習得すると『ステータスカスタム』が発現する。これは、自身や相手のステータスを魔改造【カスタム】できる最強の能力だった。  スローンは、偶然出会った『大聖女フィラ』と共にステータスをいじりまくって最強のステータスを手に入れる。その後、超高難易度のクエストを難なくクリア、無双しまくっていく。その噂が広がると元ギルドから戻って来いと頭を下げられるが、もう遅い。  真の仲間と共にスローンは、各地で暴れ回る。究極のスローライフを手に入れる為に。

異世界でただ美しく! 男女比1対5の世界で美形になる事を望んだ俺は戦力外で追い出されましたので自由に生きます!

石のやっさん
ファンタジー
主人公、理人は異世界召喚で異世界ルミナスにクラスごと召喚された。 クラスの人間が、優秀なジョブやスキルを持つなか、理人は『侍』という他に比べてかなり落ちるジョブだった為、魔族討伐メンバーから外され…追い出される事に! だが、これは仕方が無い事だった…彼は戦う事よりも「美しくなる事」を望んでしまったからだ。 だが、ルミナスは男女比1対5の世界なので…まぁ色々起きます。 ※私の書く男女比物が読みたい…そのリクエストに応えてみましたが、中編で終わる可能性は高いです。

転生したおばあちゃんはチートが欲しい ~この世界が乙女ゲームなのは誰も知らない~

ピエール
ファンタジー
おばあちゃん。 異世界転生しちゃいました。 そういえば、孫が「転生するとチートが貰えるんだよ!」と言ってたけど チート無いみたいだけど? おばあちゃんよく分かんないわぁ。 頭は老人 体は子供 乙女ゲームの世界に紛れ込んだ おばあちゃん。 当然、おばあちゃんはここが乙女ゲームの世界だなんて知りません。 訳が分からないながら、一生懸命歩んで行きます。 おばあちゃん奮闘記です。 果たして、おばあちゃんは断罪イベントを回避できるか? [第1章おばあちゃん編]は文章が拙い為読みづらいかもしれません。 第二章 学園編 始まりました。 いよいよゲームスタートです! [1章]はおばあちゃんの語りと生い立ちが多く、あまり話に動きがありません。 話が動き出す[2章]から読んでも意味が分かると思います。 おばあちゃんの転生後の生活に興味が出てきたら一章を読んでみて下さい。(伏線がありますので) 初投稿です 不慣れですが宜しくお願いします。 最初の頃、不慣れで長文が書けませんでした。 申し訳ございません。 少しづつ修正して纏めていこうと思います。

夢幻の錬金術師 ~【異空間収納】【錬金術】【鑑定】【スキル剥奪&付与】を兼ね備えたチートスキル【錬金工房】で最強の錬金術師として成り上がる~

青山 有
ファンタジー
女神の助手として異世界に召喚された厨二病少年・神薙拓光。 彼が手にしたユニークスキルは【錬金工房】。 ただでさえ、魔法があり魔物がはびこる危険な世界。そこを生産職の助手と巡るのかと、女神も頭を抱えたのだが……。 彼の持つ【錬金工房】は、レアスキルである【異空間収納】【錬金術】【鑑定】の上位互換機能を合わせ持ってるだけでなく、スキルの【剥奪】【付与】まで行えるという、女神の想像を遥かに超えたチートスキルだった。 これは一人の少年が異世界で伝説の錬金術師として成り上がっていく物語。 ※カクヨムにも投稿しています

処理中です...