91 / 104
第91話 理人之命
しおりを挟む「助けて下さい…」
「何で私が助けると思うのですか? 貴方は恋人を殺されたとして許せます? 許せませんわよね?」
「助けて…助けて…北条さん」
「北条さん? 豚が私に『さん?』様の間違えですよね…己の立場を知らない豚はこれだから…ほうら…」
「ぎやぁぁぁぁぁぁーーーっ、助けて、助けてよ平城さん」
「由香里ちゃん…酷いよ、私がさぁ理人くんを好きなの知っていて殺すんだから…あははははっ、大丈夫、まだ殺さないよ? 命は私は助けてあげる…だけど、死にたいって言う位酷い事するから」
「そんな…助けて下さい!何でもします」
「そう?よりによって私に頼むんですの? そうですわね? 命を助ける代わりに死ぬまで娼婦として生きるのと、拷問されながら「殺して下さい」って言う位残酷な事されるのはどちらが良いんですの?」
「そんな…」
「5.4.3.2.1…はい時間切れですわ、拷問コースに決定ですわ」
「そんな…」
助けてが殺してに変わる迄そんなに時間は掛からなかった。
◆◆◆
俺は今死んだ。
普通に考えたら回避できた筈だ。
持っていた能力の一つを使っただけで回避できた。
だが、それは敢えてしなかった。
その理由は3つある。
一つ目は異世界人(日本人)の敵を明確にあぶりだす為。
魔族と和解している帝国にとっての最大の脅威は異世界人だ。
その反面、味方になってくれるなら強い味方だ。
木崎君のように仲間になってくれるなら大歓迎だが、敵になるなら殺す事も視野に入れなくてはならない、恐ろしい敵だ。
今回の事で、王国に居る18人と緑川の合計19人は敵と解った。
他の人間も王国の庇護下にいるのだから、敵対して問題無い。
今迄の様な友好的な態度をとる必要は無い、ジョブだけ取り上げてポイか、あるいは殺しも視野に入れて良いだろう。
俺を殺そうとしたんだから…容赦しない
二つ目はこれでアレフロード王国に何時でも戦争を仕掛けられる。
俺は、まだ祭典こそ行われていないが、帝国にとって実質的な王だ。
それを殺そうとしたんだ『戦争』した所で誰も咎めない。
国と国の争いには正当性が必要だ。
これで俺個人ではなく帝国として正当な理由で戦争が仕掛けられる。
そして最後の三つ目の理由は『神』になる為に必要だった。
◆◆◆
「初めて話しますね、理人」
目の前にこの世の者とは思えない位、気高い美女が立っている。
何処と無くテラス様に似た存在…
「私の様な者が、まさか貴方様に出会えるなんて思いもしませんでした…天照さま」
「そう畏まる事はありませんよ、眷属のテラスを通して貴方を見ていましたからね…すみません一度死んで貰って」
「いえ、構いません、俺が死ぬ必要がある事はテラス様からも聞いておりましたから」
テラス様はあの世界をもうイシュタスに返すつもりはない。
あの世界の…テラス教の本当の意味での『象徴』が必要になる。
その為『神』になる為に一度死ぬ必要があった。
俺が、あの世界で生まれたテラス教の神になる事で、他の神から今後の介入がしにくい状況に出来る。
「さぁ、これからあの世界での貴方の真の戦いが始まるのです。千引岩(あの世とこの世の境界の岩)はどけさせてあります。決して何があろうと振り返らずに一気に走り抜けるのです」
確かに此処で振り返ると大変な事になるのは解っている。
「はい」
俺は、そう答えるとひたすら走った。
やがて地上に出た俺は千引岩を閉じた。
こんな大岩を簡単に動かせる。
俺が完璧に神になった証拠だ。
凄いな、この感覚は全能感と言うのか…今なら何でも出来そうな気がする。
外は夜で月が綺麗だった。
さぁ、あちらの世界に帰ろう…ただ願うだけでそのまま、次元を超えて戻る事が出来る。
『理人之命(りひとのみこと)帰って来たね』
『テラス様、ただ今戻りました』
『皆、心配しているから直ぐに顔を出してあげなよ』
『解りました』
理人之命
職業:神(全ての能力が統合され神に到った。)
HP:無限
MP:無限
装備:草薙の剣、八咫の盾、八尺の鎧
◆◆◆
「ただいま~」
「理人様ですわ、死んだのでは無かったのですね」
「理人、嘘、死んでいなかったんだ…良かった」
「理人くん、良かった~良かったよーーーーっ」
異世界に新たな神が誕生した瞬間だった。
※神道では死んだ人間が神になる、そこからの話です。
ですが、ご都合主義なのでこの物語は理人のみ適応にさせて頂きます。
19
お気に入りに追加
2,797
あなたにおすすめの小説

俺の好きな人は勇者の母で俺の姉さん! パーティ追放から始まる新しい生活
石のやっさん
ファンタジー
主人公のリヒトは勇者パーティを追放されるが別に気にも留めていなかった。
ハーレムパーティ状態だったので元から時期が来たら自分から出て行く予定だったし、三人の幼馴染は確かに可愛いが、リヒトにとって恋愛対象にどうしても見られなかったからだ。
だから、ただ見せつけられても困るだけだった。
何故ならリヒトの好きなタイプの女性は…大人の女性だったから。
この作品の主人公は転生者ですが、精神的に大人なだけでチートは知識も含んでありません。
勿論ヒロインもチートはありません。
他のライトノベルや漫画じゃ主人公にはなれない、背景に居るような主人公やヒロインが、楽しく暮すような話です。
1~2話は何時もの使いまわし。
亀更新になるかも知れません。
他の作品を書く段階で、考えてついたヒロインをメインに純愛で書いていこうと思います。

ようこそ異世界へ!うっかりから始まる異世界転生物語
Eunoi
ファンタジー
本来12人が異世界転生だったはずが、神様のうっかりで異世界転生に巻き込まれた主人公。
チート能力をもらえるかと思いきや、予定外だったため、チート能力なし。
その代わりに公爵家子息として異世界転生するも、まさかの没落→島流し。
さぁ、どん底から這い上がろうか
そして、少年は流刑地より、王政が当たり前の国家の中で、民主主義国家を樹立することとなる。
少年は英雄への道を歩き始めるのだった。
※第4章に入る前に、各話の改定作業に入りますので、ご了承ください。

無能と呼ばれたレベル0の転生者は、効果がチートだったスキル限界突破の力で最強を目指す
紅月シン
ファンタジー
七歳の誕生日を迎えたその日に、レオン・ハーヴェイの全ては一変することになった。
才能限界0。
それが、その日レオンという少年に下されたその身の価値であった。
レベルが存在するその世界で、才能限界とはレベルの成長限界を意味する。
つまりは、レベルが0のまま一生変わらない――未来永劫一般人であることが確定してしまったのだ。
だがそんなことは、レオンにはどうでもいいことでもあった。
その結果として実家の公爵家を追放されたことも。
同日に前世の記憶を思い出したことも。
一つの出会いに比べれば、全ては些事に過ぎなかったからだ。
その出会いの果てに誓いを立てた少年は、その世界で役立たずとされているものに目を付ける。
スキル。
そして、自らのスキルである限界突破。
やがてそのスキルの意味を理解した時、少年は誓いを果たすため、世界最強を目指すことを決意するのであった。
※小説家になろう様にも投稿しています

異世界で快適な生活するのに自重なんかしてられないだろ?
お子様
ファンタジー
机の引き出しから過去未来ではなく異世界へ。
飛ばされた世界で日本のような快適な生活を過ごすにはどうしたらいい?
自重して目立たないようにする?
無理無理。快適な生活を送るにはお金が必要なんだよ!
お金を稼ぎ目立っても、問題無く暮らす方法は?
主人公の考えた手段は、ドン引きされるような内容だった。
(実践出来るかどうかは別だけど)

荷物持ちだけど最強です、空間魔法でラクラク発明
まったりー
ファンタジー
主人公はダンジョンに向かう冒険者の荷物を持つポーターと言う職業、その職業に必須の収納魔法を持っていないことで悲惨な毎日を過ごしていました。
そんなある時仕事中に前世の記憶がよみがえり、ステータスを確認するとユニークスキルを持っていました。
その中に前世で好きだったゲームに似た空間魔法があり街づくりを始めます、そしてそこから人生が思わぬ方向に変わります。

【完結】前世の不幸は神様のミスでした?異世界転生、条件通りなうえチート能力で幸せです
yun.
ファンタジー
~タイトル変更しました~
旧タイトルに、もどしました。
日本に生まれ、直後に捨てられた。養護施設に暮らし、中学卒業後働く。
まともな職もなく、日雇いでしのぐ毎日。
劣悪な環境。上司にののしられ、仲のいい友人はいない。
日々の衣食住にも困る。
幸せ?生まれてこのかた一度もない。
ついに、死んだ。現場で鉄パイプの下敷きに・・・
目覚めると、真っ白な世界。
目の前には神々しい人。
地球の神がサボった?だから幸せが1度もなかったと・・・
短編→長編に変更しました。
R4.6.20 完結しました。
長らくお読みいただき、ありがとうございました。

異世界で貧乏神を守護神に選ぶのは間違っているのだろうか?
石のやっさん
ファンタジー
異世界への転移、僕にはもう祝福を受けた女神様が居ます!
主人公の黒木翼はクラスでは浮いた存在だった。
黒木はある理由から人との関りを最小限に押さえ生活していた。
そんなある日の事、クラス全員が異世界召喚に巻き込まれる。
全員が女神からジョブやチートを貰うなか、黒木はあえて断り、何も貰わずに異世界に行く事にした。
その理由は、彼にはもう『貧乏神』の守護神が居たからだ。
この物語は、貧乏神に恋する少年と少年を愛する貧乏神が異世界で暮す物語。
貧乏神の解釈が独自解釈ですので、その辺りはお許し下さい。

追放されたギルドの書記ですが、落ちこぼれスキル《転写》が覚醒して何でも《コピー》出来るようになったので、魔法を極めることにしました
遥 かずら
ファンタジー
冒険者ギルドに所属しているエンジは剣と魔法の才能が無く、文字を書くことだけが取り柄であった。落ちこぼれスキル【転写】を使いギルド帳の筆記作業で生計を立てていた。そんなある日、立ち寄った勇者パーティーの貴重な古代書を間違って書き写してしまい、盗人扱いされ、勇者によってギルドから追放されてしまう。
追放されたエンジは、【転写】スキルが、物やスキル、ステータスや魔法に至るまで何でも【コピー】できるほどに極められていることに気が付く。
やがて彼は【コピー】マスターと呼ばれ、世界最強の冒険者となっていくのであった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる