上 下
76 / 104

第76話 王国の危機

しおりを挟む



「これはどう言う事ですか?」

王城を離れ、久々に馬車で城下町に出ましたら、可笑しなくらい町が廃れていました。

見間違いではないですよね?

思わず目を擦る位に、以前とは違います。

此処は王都のメイン通り。

それなのに閉まっている店が沢山あります。

気のせいか、人通りも少ない気がします。

本来なら、此処に店を構えるのは商人の憧れの筈なのに、閉まっているお店が多く、よく見れば明らかに閉店しているお店もあります。

凄く可笑しいです。

此処が私の国アレフロードの王都なのですか?

この目で見ていても、信じられません。

「姫様、それがルブランド帝国の方が、今凄く景気が良くてそちらに行ってしまわれたようです」

「そんな、帝国なんて野蛮な国に行ったのですか?ですが、幾ら何でも信じられません。此処は王都の表通りです。可笑しいでしょう? この辺りには王宮御用達の商会もあるのですから」

「私も詳しい事は存じ上げませんが、多くの王宮ご用達のお店が『対面を保つ事が出来なくなりましたので返上します』と王宮に届を出して去っていった。との事です」

これはかなり不味いのでは無いですか。

馬車から見る限り、かなりの店が閉まっている様に見えます。

開いているお店は1/5も無い様な気がします。

ここ迄、王都のお店が閉まったのを、私は見たことがありません。

こんなにお店が閉まっていると言う事は…スラム近くの貧しい者はどうしているのでしょうか?

商人が居ないなら…手伝う仕事が無い。

このままでは餓死している人間も居るかも知れません。

「スラムに向って下さい」

「姫様、危ないです!」

それ処じゃありません。

このままでは大変な事になります。

「近づける所までで構いません」

「解りました」

騎士5名の警護です。

何を恐れる必要があると言うのですか。

「可笑しいですね。見た感じ誰も居ない様に感じます」

「確かに見た感じ子供一人居ない様に見えますね」

幾らスラムとは言え『家を持っている人間も居ます』

全員が全て財産を持ってない訳ではありません。

「騎士のうち3人残して、他2人はちょっと様子を見てきてくれませんか」

「「はっ」」

暫くして騎士が戻ると信じられない事を言い出しました。

「ご報告いたします…スラムの住人が一人も居ません」

「何ですって…あんなに居たスラムの住人が居ないのですか?」

「はい」

よく考えて見れば…大通りにも人が少なかった気がします。

何か良くない事が起きている気がします。

今日は買い物に来たのですが、何か嫌な予感がして仕方がありません。

今日は、必要な物だけ買ったらすぐに王城に戻り報告しないといけません。

「何でこんな物しか無いのですか?」

私は今回の目的である宝石商に来ています。

次の舞踏会でつけるブローチを買う為にです。

「すみません姫様、良い宝石の殆どをルブランド帝国の宝石商に持っていかれました」

言われて見ればショーケースの中がまばらになっています。

このお店のこんな状態見たことがありません。

「そんなにルブランド帝国の方は景気が良いのですか?」

「…はい、姫様には言いにくいのですが、比べ物になりません。それで申し訳ないのですがその、当店も王室御用達を返上する予定です」

「何故ですか? 何代にも渡り王室御用達を務めていたポートランド商会がどうして」

「すみません」

目を伏せて怯えています。

これ以上言っても無駄ですね。

「解りました…父にはあらかじめ私から打診しておきましょう」

「助かります」

「その代わり、嘘ではなく本当の理由を教えて下さい」

「それが…」

嘘でしょう。

この国ではもう真面な商売が出来ないなんて、信じられません。

帝国で商売をすると此処の何倍もの価格での商売が成立するそうです。

「まさか、帝国の方では偽の金貨が流通しているのでしょうか?こうも景気に差が出るとは思えません」

「それは我がポートランド商会でも疑い、お金について徹底的に調べましたが、間違いなく本物でした」

この世界の金貨や銀貨、果ては銅貨まで全部金属の割合が決まっています。

特に金貨についてはちゃんとした金の割合で金貨を作ると、僅かに損するような『金』の量にしています。

『本物を作るのは国が僅かに損するようになっているのです』

だから、もし儲けたい。

そう思うなら、割合を変えた偽の貨幣を用意しなくてはなりません。

ですが、そんなのはすぐにバレます。

優秀な商人なら僅かな重さの違いでも分かり、持っただけで真偽が解ると聞いています。

王家ご用達のポートランド商会の従業員全員を欺くなんて、絶対に出来ません。


それにこんなになる迄、何故誰も気がつかなかったのでしょうか?


「解りました…直ぐに城に帰ります」

私は急ぎ城へ帰りました。


◆◆◆

城に帰った私が見た物は…机の上に大量に積まれた『退職願い』でした。

「お父様これは一体?」

「儂にもなにが起きたのか解らぬ、だが貴族を除く、雇っている者の多くがこれを押し付けて出て行ったらしいのじゃ」

不味い…これでは、この国が終わってしまうわ。







しおりを挟む
感想 47

あなたにおすすめの小説

フリーター転生。公爵家に転生したけど継承権が低い件。精霊の加護(チート)を得たので、努力と知識と根性で公爵家当主へと成り上がる 

SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
400倍の魔力ってマジ!?魔力が多すぎて範囲攻撃魔法だけとか縛りでしょ 25歳子供部屋在住。彼女なし=年齢のフリーター・バンドマンはある日理不尽にも、バンドリーダでボーカルからクビを宣告され、反論を述べる間もなくガッチャ切りされそんな失意のか、理不尽に言い渡された残業中に急死してしまう。  目が覚めると俺は広大な領地を有するノーフォーク公爵家の長男の息子ユーサー・フォン・ハワードに転生していた。 ユーサーは一度目の人生の漠然とした目標であった『有名になりたい』他人から好かれ、知られる何者かになりたかった。と言う目標を再認識し、二度目の生を悔いの無いように、全力で生きる事を誓うのであった。 しかし、俺が公爵になるためには父の兄弟である次男、三男の息子。つまり従妹達と争う事になってしまい。 ユーサーは富国強兵を掲げ、先ずは小さな事から始めるのであった。 そんな主人公のゆったり成長期!!

俺が死んでから始まる物語

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていたポーター(荷物運び)のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもないことは自分でも解っていた。 だが、それでもセレスはパーティに残りたかったので土下座までしてリヒトに情けなくもしがみついた。 余りにしつこいセレスに頭に来たリヒトはつい剣の柄でセレスを殴った…そして、セレスは亡くなった。 そこからこの話は始まる。 セレスには誰にも言った事が無い『秘密』があり、その秘密のせいで、死ぬことは怖く無かった…死から始まるファンタジー此処に開幕

【リクエスト作品】邪神のしもべ  異世界での守護神に邪神を選びました…だって俺には凄く気高く綺麗に見えたから!

石のやっさん
ファンタジー
主人公の黒木瞳(男)は小さい頃に事故に遭い精神障害をおこす。 その障害は『美醜逆転』ではなく『美恐逆転』という物。 一般人から見て恐怖するものや、悍ましいものが美しく見え、美しいものが醜く見えるという物だった。 幼い頃には通院をしていたが、結局それは治らず…今では周りに言わずに、1人で抱えて生活していた。 そんな辛い日々の中教室が光り輝き、クラス全員が異世界転移に巻き込まれた。 白い空間に声が流れる。 『我が名はティオス…別世界に置いて創造神と呼ばれる存在である。お前達は、異世界ブリエールの者の召喚呪文によって呼ばれた者である』 話を聞けば、異世界に召喚された俺達に神々が祝福をくれると言う。 幾つもの神を見ていくなか、黒木は、誰もが近寄りさえしない女神に目がいった。 金髪の美しくまるで誰も彼女の魅力には敵わない。 そう言い切れるほど美しい存在… 彼女こそが邪神エグソーダス。 災いと不幸をもたらす女神だった。 今回の作品は『邪神』『美醜逆転』その二つのリクエストから書き始めました。

夢幻の錬金術師 ~【異空間収納】【錬金術】【鑑定】【スキル剥奪&付与】を兼ね備えたチートスキル【錬金工房】で最強の錬金術師として成り上がる~

青山 有
ファンタジー
女神の助手として異世界に召喚された厨二病少年・神薙拓光。 彼が手にしたユニークスキルは【錬金工房】。 ただでさえ、魔法があり魔物がはびこる危険な世界。そこを生産職の助手と巡るのかと、女神も頭を抱えたのだが……。 彼の持つ【錬金工房】は、レアスキルである【異空間収納】【錬金術】【鑑定】の上位互換機能を合わせ持ってるだけでなく、スキルの【剥奪】【付与】まで行えるという、女神の想像を遥かに超えたチートスキルだった。 これは一人の少年が異世界で伝説の錬金術師として成り上がっていく物語。 ※カクヨムにも投稿しています

異世界でただ美しく! 男女比1対5の世界で美形になる事を望んだ俺は戦力外で追い出されましたので自由に生きます!

石のやっさん
ファンタジー
主人公、理人は異世界召喚で異世界ルミナスにクラスごと召喚された。 クラスの人間が、優秀なジョブやスキルを持つなか、理人は『侍』という他に比べてかなり落ちるジョブだった為、魔族討伐メンバーから外され…追い出される事に! だが、これは仕方が無い事だった…彼は戦う事よりも「美しくなる事」を望んでしまったからだ。 だが、ルミナスは男女比1対5の世界なので…まぁ色々起きます。 ※私の書く男女比物が読みたい…そのリクエストに応えてみましたが、中編で終わる可能性は高いです。

地獄の手違いで殺されてしまったが、閻魔大王が愛猫と一緒にネット環境付きで異世界転生させてくれました。

克全
ファンタジー
「第3回次世代ファンタジーカップ」参加作、面白いと感じましたらお気に入り登録と感想をくださると作者の励みになります! 高橋翔は地獄の官吏のミスで寿命でもないのに殺されてしまった。だが流石に地獄の十王達だった。配下の失敗にいち早く気付き、本来なら地獄の泰広王(不動明王)だけが初七日に審理する場に、十王全員が勢揃いして善後策を協議する事になった。だが、流石の十王達でも、配下の失敗に気がつくのに六日掛かっていた、高橋翔の身体は既に焼かれて灰となっていた。高橋翔は閻魔大王たちを相手に交渉した。現世で残されていた寿命を異世界で全うさせてくれる事。どのような異世界であろうと、異世界間ネットスーパーを利用して元の生活水準を保証してくれる事。死ぬまでに得ていた貯金と家屋敷、死亡保険金を保証して異世界で使えるようにする事。更には異世界に行く前に地獄で鍛錬させてもらう事まで要求し、権利を勝ち取った。そのお陰で異世界では楽々に生きる事ができた。

隠して忘れていたギフト『ステータスカスタム』で能力を魔改造 〜自由自在にカスタマイズしたら有り得ないほど最強になった俺〜

桜井正宗
ファンタジー
 能力(スキル)を隠して、その事を忘れていた帝国出身の錬金術師スローンは、無能扱いで大手ギルド『クレセントムーン』を追放された。追放後、隠していた能力を思い出しスキルを習得すると『ステータスカスタム』が発現する。これは、自身や相手のステータスを魔改造【カスタム】できる最強の能力だった。  スローンは、偶然出会った『大聖女フィラ』と共にステータスをいじりまくって最強のステータスを手に入れる。その後、超高難易度のクエストを難なくクリア、無双しまくっていく。その噂が広がると元ギルドから戻って来いと頭を下げられるが、もう遅い。  真の仲間と共にスローンは、各地で暴れ回る。究極のスローライフを手に入れる為に。

転生したおばあちゃんはチートが欲しい ~この世界が乙女ゲームなのは誰も知らない~

ピエール
ファンタジー
おばあちゃん。 異世界転生しちゃいました。 そういえば、孫が「転生するとチートが貰えるんだよ!」と言ってたけど チート無いみたいだけど? おばあちゃんよく分かんないわぁ。 頭は老人 体は子供 乙女ゲームの世界に紛れ込んだ おばあちゃん。 当然、おばあちゃんはここが乙女ゲームの世界だなんて知りません。 訳が分からないながら、一生懸命歩んで行きます。 おばあちゃん奮闘記です。 果たして、おばあちゃんは断罪イベントを回避できるか? [第1章おばあちゃん編]は文章が拙い為読みづらいかもしれません。 第二章 学園編 始まりました。 いよいよゲームスタートです! [1章]はおばあちゃんの語りと生い立ちが多く、あまり話に動きがありません。 話が動き出す[2章]から読んでも意味が分かると思います。 おばあちゃんの転生後の生活に興味が出てきたら一章を読んでみて下さい。(伏線がありますので) 初投稿です 不慣れですが宜しくお願いします。 最初の頃、不慣れで長文が書けませんでした。 申し訳ございません。 少しづつ修正して纏めていこうと思います。

処理中です...