73 / 104
第73話 異世界の神々SIDE
しおりを挟む「可笑しい、何時まで待っても『感謝の祈り』が増えない」
普通は、勇者召喚をした後には必ず、信者からの祈りが増え、信仰が高まるのに、何故か今回は感謝の祈りが来ない。
私は女神…だからこそ、この『信仰の力』が必要なのよ。
信仰が少なくなれば、私の力は弱まっていく。
こんなに信仰の力が集まらないなんて事は今迄無かったわ。
いや、過去に1度はあったわ。
あの時は確か、勇者が序盤の街で殺されのでしたね。
だけど、今回は可笑しい。
『勇者は生きている』
それなのに感謝の祈りがいつもと変わらない。
勇者が死んだら、私には解る。
それは『勇者のジョブ』その物が私の元に戻ってくるから。
勇者を含む五大ジョブは二つと無い存在。
その持ち主が死んだ時は必ず私の元に戻って来る。
ジョブが戻らないと言う事は…勇者が生きている事になる。
それなら、何故、信仰が上がらないの?
解らないわ。
◆◆◆
不安を抱えながら気を落ち着かせる為にお茶を飲んでいると
創造神クリエ様が私の元にやってきました。
「創造神クリエ様が自ら、来られるなんて、何かあったのでしょうか?」
「この世界を任したのは儂だ…だからお前を信じているが、邪神側からお前が不正をしているのでは無いか? その様な申し出があったのだが!心当たりはあるか?」
まさか、他の世界から少年や少女をこちらに連れてきているのがバレたの?
いや、バレているなら創造神クリエ様の性格なら即刻、処分が下る筈。
「いえ、心当たりはありません」
「そうか…そうか…まさかとは思うが、他の神が慈しみ育てた存在を言葉巧みに騙し、自分の世界に連れてくる様な事はして無いよな?」
「その様な事は…致しておりません」
「そうか?ならば良い。もしその様な事をしていたのなら女神と言えども、消滅処分じゃ」
これは流石に不味いのかも知れない。
消滅…本当にそんな事があるのか…
私は女神なのよ。
「本当に私は…致しておりません!」
「ほぅ。しらを切るのか? 実はな、もう実態は掴んでおったのだ。異世界の神の分体、テラスという者が儂の所に訴えてきてのう。こちらでも詳しく調べたのじゃ。邪神や魔族の代表や天使達からも話を聞いておる。残るはお前だけになっておったのだ。 黙って非を認めて反省するのであれば許すつもりでおったが、もう許せぬ」
「待って下さい! 消滅だけは、消滅だけはお許し下さい」
創造神クリエ様が黙った状態がかなり続いた。
実際には数秒かも知れなかったが、私には凄く長い時間に感じた。
「お前の処分は置いておき、まずは異世界の神からの和解条件は『この世界で自由に布教する権利』と『向こう300年の間お前がこの世界に一切の干渉をしない』だ」
「待って下さい。そんな事をされたら、あの世界の人々はどうなるのですか? 私を信じて祈ってくれる存在なのです…」
「その世界の人間の可能性を信じずに、安易に他の世界の人間を攫って来たのだ。お前にそれを言う資格はない。 よく考えろ。向こう側が一方的な被害者だ。向こう側の世界から大量に誘拐し、詐欺に近い事をしていたお前の罪が『布教』と『300年の謹慎』で済むんだ。随分と寛大な処置だと思うが、違うか?」
「解りました」
もう既に決まってしまった様だ。
今更、私が口を挟んでも、何も変わらないわ。
「あと、邪神側からだが」
「まだ何かあると言うのですか?」
「今のは異世界の神に対する責任じゃ。お前のイカサマみたいな方法で魔族と人族の勢力図はかなり人族に傾いておる。それに対しての償いじゃ。『300年の謹慎が終わった後、向こう300年『五大ジョブ』を授けるのを禁止』して欲しいそうだ」
これじゃ実質600年、私はこの世界に大きく関われなくなる。
余りに重い。
「創造神クリエ様『異世界転移』を行っていた女神は私だけじゃありません。他にも沢山います。それが何故私だけこんな罰を受けなければならないのでしょうか?」
「イシュタス、お前だけじゃない。今迄、異世界転移に関わった神のその全てをこれから罰するつもりだ」
「そんな…」
「これで済んで良かったと思う事じゃ。テラスの本体の神の仲間だけで八百万の神々がおる。他にもイエスだ釈迦だと異世界には神が沢山おるんじゃ。その殆どが怒っておると聞き、生きた心地がしなかったわい。場合によっては神同士の全面戦争になる所じゃったんじゃよ」
「たかが、人間の事で向こうの神はそんな事までするのですか…」
「お前が攫った癖にジョブを与えなかった子供がおったじゃろう?」
「他の神の臭いがした子ですね…」
「他の神の臭いがした。だったら何故、その時に思い止まらなかったのだ。その子がその世界の天照様に代々愛されておる一族の子だ。いわゆる神の愛し子に近い存在だった。そんな子に手を出して向こう側の神が怒らないと思うのか?」
「まさか、ここ迄の事になると思いませんでした」
「ハァ~まぁ良い、これから300年この世界に関われない様に天界に引き戻す」
「待って下さい。せめてこの場所に居させて下さい」
「それは無理な話だ、良いかこれは温情なのだ。天使にも落とさず、女神のままで300年ただ天界で楽しく暮らすだけ等本来は軽すぎる。ここ迄優しい罰で文句をまだお前は言うのか?」
「解りました、謹んで罰を受けます」
◆◆◆
『時間』を与えてしまった事がどれ程不味かったか。
それを300年後創造神やイシュタスは思い知る事になる。
5
お気に入りに追加
2,790
あなたにおすすめの小説
フリーター転生。公爵家に転生したけど継承権が低い件。精霊の加護(チート)を得たので、努力と知識と根性で公爵家当主へと成り上がる
SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
400倍の魔力ってマジ!?魔力が多すぎて範囲攻撃魔法だけとか縛りでしょ
25歳子供部屋在住。彼女なし=年齢のフリーター・バンドマンはある日理不尽にも、バンドリーダでボーカルからクビを宣告され、反論を述べる間もなくガッチャ切りされそんな失意のか、理不尽に言い渡された残業中に急死してしまう。
目が覚めると俺は広大な領地を有するノーフォーク公爵家の長男の息子ユーサー・フォン・ハワードに転生していた。
ユーサーは一度目の人生の漠然とした目標であった『有名になりたい』他人から好かれ、知られる何者かになりたかった。と言う目標を再認識し、二度目の生を悔いの無いように、全力で生きる事を誓うのであった。
しかし、俺が公爵になるためには父の兄弟である次男、三男の息子。つまり従妹達と争う事になってしまい。
ユーサーは富国強兵を掲げ、先ずは小さな事から始めるのであった。
そんな主人公のゆったり成長期!!
俺が死んでから始まる物語
石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていたポーター(荷物運び)のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもないことは自分でも解っていた。
だが、それでもセレスはパーティに残りたかったので土下座までしてリヒトに情けなくもしがみついた。
余りにしつこいセレスに頭に来たリヒトはつい剣の柄でセレスを殴った…そして、セレスは亡くなった。
そこからこの話は始まる。
セレスには誰にも言った事が無い『秘密』があり、その秘密のせいで、死ぬことは怖く無かった…死から始まるファンタジー此処に開幕
夢幻の錬金術師 ~【異空間収納】【錬金術】【鑑定】【スキル剥奪&付与】を兼ね備えたチートスキル【錬金工房】で最強の錬金術師として成り上がる~
青山 有
ファンタジー
女神の助手として異世界に召喚された厨二病少年・神薙拓光。
彼が手にしたユニークスキルは【錬金工房】。
ただでさえ、魔法があり魔物がはびこる危険な世界。そこを生産職の助手と巡るのかと、女神も頭を抱えたのだが……。
彼の持つ【錬金工房】は、レアスキルである【異空間収納】【錬金術】【鑑定】の上位互換機能を合わせ持ってるだけでなく、スキルの【剥奪】【付与】まで行えるという、女神の想像を遥かに超えたチートスキルだった。
これは一人の少年が異世界で伝説の錬金術師として成り上がっていく物語。
※カクヨムにも投稿しています
異世界でただ美しく! 男女比1対5の世界で美形になる事を望んだ俺は戦力外で追い出されましたので自由に生きます!
石のやっさん
ファンタジー
主人公、理人は異世界召喚で異世界ルミナスにクラスごと召喚された。
クラスの人間が、優秀なジョブやスキルを持つなか、理人は『侍』という他に比べてかなり落ちるジョブだった為、魔族討伐メンバーから外され…追い出される事に!
だが、これは仕方が無い事だった…彼は戦う事よりも「美しくなる事」を望んでしまったからだ。
だが、ルミナスは男女比1対5の世界なので…まぁ色々起きます。
※私の書く男女比物が読みたい…そのリクエストに応えてみましたが、中編で終わる可能性は高いです。
【リクエスト作品】邪神のしもべ 異世界での守護神に邪神を選びました…だって俺には凄く気高く綺麗に見えたから!
石のやっさん
ファンタジー
主人公の黒木瞳(男)は小さい頃に事故に遭い精神障害をおこす。
その障害は『美醜逆転』ではなく『美恐逆転』という物。
一般人から見て恐怖するものや、悍ましいものが美しく見え、美しいものが醜く見えるという物だった。
幼い頃には通院をしていたが、結局それは治らず…今では周りに言わずに、1人で抱えて生活していた。
そんな辛い日々の中教室が光り輝き、クラス全員が異世界転移に巻き込まれた。
白い空間に声が流れる。
『我が名はティオス…別世界に置いて創造神と呼ばれる存在である。お前達は、異世界ブリエールの者の召喚呪文によって呼ばれた者である』
話を聞けば、異世界に召喚された俺達に神々が祝福をくれると言う。
幾つもの神を見ていくなか、黒木は、誰もが近寄りさえしない女神に目がいった。
金髪の美しくまるで誰も彼女の魅力には敵わない。
そう言い切れるほど美しい存在…
彼女こそが邪神エグソーダス。
災いと不幸をもたらす女神だった。
今回の作品は『邪神』『美醜逆転』その二つのリクエストから書き始めました。
地獄の手違いで殺されてしまったが、閻魔大王が愛猫と一緒にネット環境付きで異世界転生させてくれました。
克全
ファンタジー
「第3回次世代ファンタジーカップ」参加作、面白いと感じましたらお気に入り登録と感想をくださると作者の励みになります!
高橋翔は地獄の官吏のミスで寿命でもないのに殺されてしまった。だが流石に地獄の十王達だった。配下の失敗にいち早く気付き、本来なら地獄の泰広王(不動明王)だけが初七日に審理する場に、十王全員が勢揃いして善後策を協議する事になった。だが、流石の十王達でも、配下の失敗に気がつくのに六日掛かっていた、高橋翔の身体は既に焼かれて灰となっていた。高橋翔は閻魔大王たちを相手に交渉した。現世で残されていた寿命を異世界で全うさせてくれる事。どのような異世界であろうと、異世界間ネットスーパーを利用して元の生活水準を保証してくれる事。死ぬまでに得ていた貯金と家屋敷、死亡保険金を保証して異世界で使えるようにする事。更には異世界に行く前に地獄で鍛錬させてもらう事まで要求し、権利を勝ち取った。そのお陰で異世界では楽々に生きる事ができた。
隠して忘れていたギフト『ステータスカスタム』で能力を魔改造 〜自由自在にカスタマイズしたら有り得ないほど最強になった俺〜
桜井正宗
ファンタジー
能力(スキル)を隠して、その事を忘れていた帝国出身の錬金術師スローンは、無能扱いで大手ギルド『クレセントムーン』を追放された。追放後、隠していた能力を思い出しスキルを習得すると『ステータスカスタム』が発現する。これは、自身や相手のステータスを魔改造【カスタム】できる最強の能力だった。
スローンは、偶然出会った『大聖女フィラ』と共にステータスをいじりまくって最強のステータスを手に入れる。その後、超高難易度のクエストを難なくクリア、無双しまくっていく。その噂が広がると元ギルドから戻って来いと頭を下げられるが、もう遅い。
真の仲間と共にスローンは、各地で暴れ回る。究極のスローライフを手に入れる為に。
転生したおばあちゃんはチートが欲しい ~この世界が乙女ゲームなのは誰も知らない~
ピエール
ファンタジー
おばあちゃん。
異世界転生しちゃいました。
そういえば、孫が「転生するとチートが貰えるんだよ!」と言ってたけど
チート無いみたいだけど?
おばあちゃんよく分かんないわぁ。
頭は老人 体は子供
乙女ゲームの世界に紛れ込んだ おばあちゃん。
当然、おばあちゃんはここが乙女ゲームの世界だなんて知りません。
訳が分からないながら、一生懸命歩んで行きます。
おばあちゃん奮闘記です。
果たして、おばあちゃんは断罪イベントを回避できるか?
[第1章おばあちゃん編]は文章が拙い為読みづらいかもしれません。
第二章 学園編 始まりました。
いよいよゲームスタートです!
[1章]はおばあちゃんの語りと生い立ちが多く、あまり話に動きがありません。
話が動き出す[2章]から読んでも意味が分かると思います。
おばあちゃんの転生後の生活に興味が出てきたら一章を読んでみて下さい。(伏線がありますので)
初投稿です
不慣れですが宜しくお願いします。
最初の頃、不慣れで長文が書けませんでした。
申し訳ございません。
少しづつ修正して纏めていこうと思います。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる