【しっかり書き換え版】『異世界でたった1人の日本人』~ 異世界で日本の神の加護を持つたった1人の男~

石のやっさん

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第56話 ワイバーン討伐

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宿に帰ると三人は凄く労ってくれた。

この世界の宿屋は少し変わっていて前の世界でいうキッチンがついていた。

テーブルの上には、ご馳走が並んでいて、この料理は全部フルールが作ってくれたものらしい。

塔子も綾子もお嬢様だから、料理は出来なくて当然。

それが元で奴隷を見に行ったんだしな…

しかし、フルールは凄い。

よく考えればフルールは公爵令嬢だった。

令嬢で家事が完璧に出来る。

もう何もいう事は無い。

完璧すぎる。

「理人様、もし宜しければ食事の前にお湯でさっぱりしませんか?」

この世界は余程の高級宿屋じゃないとお風呂は無い。

勿論この宿屋にも無い。

「お風呂は無いよな?」

「理人様、お風呂は無くても、タライをお借りしてお湯は貰えますのよ…綺麗にして差し上げますわ」

背中でも流してくれるのかな?

「そうか…ならお願いしようか?」

少し位のスキンシップは良いかも知れないな。

それに男女で旅をしていくんだから、少しは慣れもお互いに必要だな。

「駄目! フルールさん理人くんの背中なら私が流します!」

「私だって背中位流せます! 私がします」

「大丈夫なのですわ! 私はプロなのでお任せなのですわ、それともお二人は経験がありますの?」

「経験ってフルールさん…」

「ありません…そんな不潔な事…」

「ならば、ご遠慮願いますわ! 今迄何百何千と綺麗にしてきた私が気持ちよく綺麗にして差し上げますわ…さぁ理人様、そこに裸になって横になって下さい…ですわ」

なにこれ…まさかフルールは風俗まで経験があるのか?

いつの間にか、お湯は用意されていて…下には敷物が敷かれていた。

いつ用意したんだ?

塔子や綾子は顔を赤くして口をパクパクしている。

フルールの目が急かす様にこちらを見つめてくる。

「解った…」

俺は服を脱ぎパンツ1枚になりフルールの前の敷物に仰向けに寝た」

「それも必要ありませんわ」

そう言ってフルールは俺のパンツを指さした。

「流石に、これは…」

「なに言ってますの? そこが一番汚い場所ですわ」

そう言って、フルールにいとも簡単に脱がされてしまった。

『本当にプロなのか?』

そう思うほどに手際が良い。

「ちょっと、フルールさん…それハァハァ、なにしようといているのかな?」

「フルール、それ可笑しい、どう見ても如何わしい事にしか見えない」

そう言いながら塔子も綾子も赤くなった顔を手で隠しながら止めようとしない。

「フルール?」

「良いからお任せですわ!先日私が持っていた物を返して頂けましたので、凄く気持ちよくして差し上げますわ!」

そう言いながら、フルールはスカートの中に手を突っ込んで、ローションみたいな物を取り出し…俺に掛けてきた。


「嘘だろう…」

◆◆◆

「凄く気持ち良かった…本当にさっぱりしたよ」

俺が思っていたのと違っていた。

そういう物とは違う。

近い物をあげるなら『老人介護』だが…

俺の頭には職業病なのか『エンバーミング』や『湯灌の義』というような死者を綺麗にする方法が浮かんでいた。

フルールは汚れ仕事をしていた。

監禁や拷問もその仕事に含まれる。

実際に行う事は物語や漫画とは違う。

『その後のかたづけや、汚れた体を綺麗にしたり、治療をする事もあるだろう』

きっとフルールはその事を『プロ』だと言っていたんだな。

少なくとも、俺の体を綺麗にするフルールの目は真剣でプロその物の目だった。

だからこそ、塔子も綾子も途中から何も言わずに見ていた。

「私はプロですから」

「確かにプロだよ…だけどフルール少し常識の勉強をしようか?」


「私、なにか可笑しかったのですか?」

完璧と思えるフルールにも欠点がある。

それが何故か俺には嬉しく思えた。

◆◆◆

こっそり調べて見たら、ゴブリンキングから貰ったお金は銅貨から金貨まで、全部合わせると価値にして金貨800枚分(日本円で8000万円分)もあった。

これだけあれば、娯楽の少ないこの世界。

慎ましく生きれば4人一生働かないで生きていく事も可能だ。

『あくまでこの世界なら』


尤も、これではただ貰っただけなので、俺が稼いでいるとは言えない。

これでは『養って』いないので、狩れるかどうか解らないがワイバーンを見に行く事にした。

次の日俺はお礼を兼ねて肉を買いゴブリンキングの元を訪れた。

ワイバーンについて相談すると案内をつけてくれると言う。

ゴブリンは後ろ姿を見る分には緑色の臭い子供に見えるから、問題無い。

ただ、前から見ると『年とった悪い妖精』みたいに見える。

敵じゃないと解っているせいか…そこ迄気持ち悪くない。

ただ、臭い。

近くまで来るとゴブリンは指をさして帰っていった。

何となく『此処からは危ないから案内出来ないよ』そう言われた気がする。

言われた方向に歩くと森を抜けて岩場があった。

そこにはワイバーンが数羽飛んでいた。

まるでプテラノドンだな。

子供の時に読んだ恐竜図鑑を思い出した。

見た感じでは仲間同士はそれ程助けあっている様に思えない。

流石に空を飛んでいるワイバーンは狩れない。

だが、ここは岩場で恐らくは巣なのだろう。

羽を畳んで休んでいる個体が居る。

万が一群れで助け合う。

そんな事があったら危ない。

手始めに、群れから離れた個体を狙った。

『草薙の剣召喚』

俺の手の中に日本の神話に出てくる聖剣、草薙の剣が現れた。

恐らく勇者の聖剣召喚が『日本仕様』になったのかも知れない。

確か、ダチョウを殺す時は気がつかれない様に後ろから近づいて喉を斬るんだったな。

鶏も同じで食べる時は一瞬で鎌で首を爺ちゃんが跳ねていた記憶がある。

同じ様に静かに近づき…一気に喉を狙った。

「クワァァァ」

一言声をあげたと思ったらすぐに絶命した。

流石に首を刎ねキレていないが、中途位迄ははざっくりと斬れた。

アイテム収納に入るから…死んだという事だ。

ジョブと言うのは凄いな。

恐らく、これは『英雄』『剣聖』の影響に違いない。

感覚で言うなら『バターを熱したナイフで切る』それ位に滑らかに斬れる。

何だ、簡単じゃ無いか。

他の竜種は結構な相手だと聞いたが、ワイバーンは複数で来られなければ強敵とは思えない。

結局、俺はこの日6羽のワイバーンを狩り冒険者ギルドに向かった。

途中何回か体が熱くなったから、多分レベルも上がった筈だ。

だが『人間を狩った時』程は強く成った気がしない。

やはり、俺の神はテラスちゃんなのでそういう仕様なのかも知れない。


◆◆冒険者ギルドにて◆◆

俺はゴブリンキングから貰ったお金はアイテム収納に入れたままにし、預けない事にした。

6羽のワイバーンの買取り依頼だけをお願いするつもりだ。

特別な時を除き、殆どの魔物は常時依頼だから、依頼書を剥がす必要は無い。

「理人様、本日はどういったご用件でしょうか?」

「ワイバーンを討伐してきたので報告と買取りをお願いしたい」

「ワイバーンですか? 流石異世界人ですね。それでは買取りさせて頂きますのでこちらにお出しください」

俺は異世界人(元日本人)じゃなくて日本人だが、それを態々いう必要は無いな。

「此処じゃ無理だと思います」

どう見てもこのカウンターじゃ1羽で精いっぱいだ。

「そうですか? まさか2羽ですか…凄いですね、それじゃ倉庫に行きますか?」

「お願いする」

「さぁ、此処であれば広さは充分あります。2羽が大物でも充分です。さぁどうぞ出して下さい」

「それじゃ出しますね」

「えーと…1羽、2羽、嘘3羽…まだあるんですか?」

「全部で6羽です」

「嘘、6羽、すぐに応援連れてきますから、暫く待っていて下さい」

凄く慌てて走っていったな。

簡単に狩れたから気にしなかったけど、本来は強敵なのだろう。

何だか髭もじゃ親父が焦った様に来た。

「儂は此処のギルマスのボルドーだ。なんでもワイバーンを6羽狩ってきたそうだな。凄いじゃないか!1羽ビッグサイズが居る」

「とんでも無い話ですよね。ワイバーン1羽だけでも騎士が20名で倒すのに、それを6羽なのですから」

「異世界人としても彼は凄く優秀だ」

これで優秀なのか?

あまり実感が無いな。

「そうですか、有難うございます。まだ新人なので色々と教えてください。異世界人でもワイバーンはそんな簡単には狩れないのでしょうか?」

「ああっ、まだ転移してきたばかりだろう? この時期にワイバーンなんて狩れるのは5職だけだ。それも精々がソロなら1羽か2羽だ。6羽なんて普通は異世界人でもあり得んよ。所でお金の方だが少し待って欲しい…これの代金を払うと買い取り金が底をつく」

「何故ですか?」

「ワイバーン1羽辺り金貨60枚(約600万円)それが5羽で金貨300枚。ビッグサイズは金貨90枚(約900万円)だから流石にギルドの手持ちの金じゃ払ったら運営に問題が出る…だが貴重な素材だから直ぐ売れるから支払いには1週間とは掛からない。他に討伐報酬が1羽金貨10枚だから6羽で金貨60枚。こちらは直ぐに振り込む…どうだ待って貰えないか?」

大きなお金だ用意できないのも仕方が無いだろう。

金貨30枚以上は現金でなくギルドで作った冒険者証の口座に振り込まれるそうだ。

これで、金貨390枚+60枚。合計450枚(四千五百万)か。

ワイバーンを狩っていればお金は溜まっていく。

お金が欲しければワイバーンを狩れば良い。

問題は『この程度の事を異世界人が出来ない事だ』

「今の話だと『異世界人はそんなに強くない』とも取れるのですが、どうなのでしょうか?」

この程度…恐らくは数の暴力の前には負けそうな気がする。

「つえーよ! 1年も経てば、殆どの異世界人は誰もワイバーン位は狩れる。この世界の人間じゃそんな事が出来るのはごく一部だ。だが、流石に最初から無敵な訳じゃない」

ある程度強くなるまで1年掛る。

そういう事か。

だが、どうしても、更に強くなっても『俺が思っている程強くはない』そんな気がしてならない。

「それじゃ、魔族に対抗できるようになるにはどの位掛かるんでしょうか?」

「魔物じゃ無く、知能が高い通常の魔族のでワイバーン位と考えると1年位だな…まぁ5職は別の話だ」

と言う事は普通の異世界人は1年以内に魔族と戦うと負け確定とも取れる。

同級生は…気にしても仕方が無いな。

その割にはギルドマスターが落ち着いているのは何故だ。

「問題は無いのですか」

「あると言えばあるが…考えても仕方ねーだろう」

諦めている。

そうとも取れる。

まぁ良い。

俺はまだこの世界について知らない。

これからおいおい知って行けばよいさぁ。

取り敢えず、今日は凄く稼げた。

皆と一緒に美味しい物でも食べて、少し豪華な宿屋に引っ越すか。








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