上 下
26 / 104

第26話 塔子=トーコ

しおりを挟む


困ったな!

本当に困った!

『塔子』をどうしたらよいのだろうか?

大樹も大河もこの世界でもやりたい放題だった。

聖人もあの二人程酷くは無い物の凄く横柄で好戦的だ。

だが、塔子は違う。

この世界に来てから別に悪い事はしていない。

それ処かリチャード達の時には助けてくれた。

塔子に俺は『借り』が出来てしまっている。

塔子については、元の世界で、沢山の悪い噂を聞いた。

その内容は、凄く気持ち悪く、幾ら『お嬢様系美少女』でも俺は付きあいたいとは思わない。

だが、この噂は微妙だ。

『自分を本当に愛しているなら、体の一部を差し出しなさい!』

これはどうだろうか?

本当に怖い女だが、これが悪い事かどうか判断がつかない。

塔子は性格は兎も角『超』がつく美少女だ。

ウェーブが掛った綺麗な茶色の髪は風でなびくとまるで、漫画のヒロインの様に見える。

やや釣り目だがら性格はきつく見えるかも知れないが、大き目の黒い瞳は湖の様に綺麗に見えてこれはこれで好きな奴もいるだろう。

それに塔子は本物の社長令嬢だ。

本物の美人な令嬢…そう考えたら、厳しい条件であっても悪いとは言いきれない。

『可憐で大人びて綺麗な令嬢』の塔子。

つきあう条件が可笑しくても何か問題があるのか?

そう言われれば微妙だ。

嫌なら付き合わなければ良いだけだ。

例えば『指や腕を切断したけど、付き合ってくれなかった』

これなら悪人決定だ。

だけど、噂の範囲だが、塔子は『それをしさえすれば真面目に付き合う気がある』という話だ。

一部では都市伝説の様に『腕一本捨てる気になれば付き合える美少女』そんな感じの噂になっていた。

本当に怖い話だ。

だが、塔子本人がそれを公言している。

『それをしなければ、付き合わない』と誰にでも言っている訳だ。

それなのに、ルールを破った告白をするから、大河にボコられる。

これを考えたら『塔子は悪くない』とも取れる。

簡単に言えば『ドSの変態で自分で付き合うルールを決めている。それ以外で付き合わないとまで』と言っているのにルールを守らないのが悪い。

それだけだな。

そもそも『こんなヤバイ事言っている女にルールを破って告白する男が馬鹿』なんだ。

テラスちゃんの情報では

『あの女、凄く変態だよ! 理人の事身動き取れなくして傍に置きたい…こんな事言っていたんだ...内容は流石に言いにくいけど…気持ち悪いよ』

完全にド変態決定だ。

変態だからと言って悪人と言って良いのだろうか?

『幼女好きのロリコン』が居たとしても漫画やAVで我慢しているなら犯罪者じゃない。

『SM好きの変態』も監禁や誘拐をしないで本屋やフーゾクで我慢しているなら犯罪じゃない。

つまり、北条塔子は『変態』であって悪い奴では無い可能性が高い。

※トーコと塔子が同一人物と理人は解っていません。

大体塔子が変態だからと言うならこのクラスの男子には同じ位の変態は沢山いる。

少なくとも、此方の世界に来てからは『ヒーラーを呼びに行った』『平城さんを連れ出してくれた』りして俺に対してプラスの事しかしていない。

どうした物か…なかなか結論が出ないな。

それに彼奴、偶に良い笑顔で笑うんだ。

あの破綻した性格からして、見間違いに違いないけどな。


『まだ考えているの?』

『まぁね…ただ変態だからって『能力』を取り上げて良いのかなと思って』

『僕から見たら『気が狂っていて危ない女』だけどね…どうして良いか解らないなら、取り敢えず見て見ればどう?』

『『神の借証書』は確かに何回でも使えるから、試しに使ってみればなにか解かるかも知れない』

『そういう事だよ…取りあえず見て見よう!』

意を決して、俺は塔子を呼び出した。

「どうしたの?理人、私を呼び出すなんて!聖女パーティが上手く行きそうだからお礼でもしてくれるの?」

満面の笑みで、上目遣いで俺を見つめてくる。

男って馬鹿だよな…塔子の破綻した性格を知らなければ、この笑顔に騙される。

俺は塔子に酷いことはされていない。

笑顔で見つめられると…凄く罪悪感がある。

今回はお試しだ、様子見だ…そう自分に言い聞かせた。

『神の借用書、請求バージョン!』

唱えた瞬間、時間が止まり、塔子と俺のステータス画面が現れた。

此処からは欲しい物を俺に持ってくればその能力が貰える。

欲しい物を『掴んでも』俺の方に持って来なければ移動はされない。


北条 塔子
LV 4
HP 3400
MP 7200
ジョブ 聖女 異世界人
スキル:翻訳.アイテム収納、回復術レベル22(スキルは回復術に含む) 結界術レベル9(結界スキル、魔法は結界術に含む)

試しに移動してみたが。


『聖女』を取り上げた→ NG、そこ迄の恩恵を彼女は神から貰っていない。

『回復術』を取り上げた→NG、そこ迄の恩恵を彼女は神から貰っていない。

『結界術』を取り上げた→NG、そこ迄の恩恵を彼女は神から貰っていない。

※彼女は『神を信じぬ者』であり、神に縋った事は1度しかない。


神代理人
LV 5
HP 8800
MP 1600
ジョブ:英雄 剣聖 日本人
スキル:翻訳.アイテム収納、術(光1 雷1)剣術 防御術 草薙の剣召喚 魅了
※非表示の物あり


『※彼女は『神を信じぬ者』であり、神に縋った事は1度しかない』

あの日本で神や仏に願うことなく生きてきた。

そういう事なのか?

これじゃ何も奪う事が出来なくて当然だ。

テラスちゃんが心配そうに、覗いてきた。

『嘘、この子凄すぎるよ!『神に殆ど祈った事が無い』なんて!そんな存在僕は初めて見たよ!』

『そんな事があり得るのですか』

『無神論者に近い…だけど『神からそこ迄の利益を貰っていない』が気になるわ。普通の『神の借用書』に切り替えてくれる』

『解りました! 神の借用書』

《北条 塔子への神の借りの精算を始める》

『精子と卵子が結合』し五体満足に産まれた。

『理人』の命を助けて欲しいと神に祈り叶えた。

神への借りは、この2点しか無い。

北条塔子は既に身も心も100パーセントのうち90パーセントを理人に捧げている。

《強制的に徴収》

最後の10パーセントを以上2つの利益で充当するものとする

『理人不味いよ!一旦破棄してから対策を考えよう!このままじゃ一生塔子が理人から離れられなくなるよ』

『破棄ってどうすれば良いのですかぁ!』

対価として『身と心の最後の残り10パーセントの充当完了』

『よって、その心の所有権は理人の物になる。』

『あっあっー-っ!駄目だ!間に合わなかったよ!理人ご愁傷様、もうこの危ない変態から生涯逃げられないよ』

『…』

『どうしたのよ!』

塔子は『神を信じぬ者』、無神論者に近い存在だ。

そんな塔子が何故か一度だけ祈っている。

『テラスちゃん これ→『理人』の命を助けて欲しいと神に祈り叶えた。』

『なにこれ?』

塔子の人生で一度だけ神に祈った事が俺の事?

身に覚えが無い。

『身に覚えがありません』

『これは後を引くと不味いね、この能力は理人には無い…少し時間停止を僕の権限で延ばして、塔子の記憶を覗いてみるよ…本来はこれはしてはいけない事だけど…特別だよ!』

暫く、テラスちゃんは塔子を見つめていた。

『そう、そういう事ね…』

なにか解ったようだ。

『何か解かりましたか?』

『本来は神でも余り人の過去は覗いちゃいけないんだけど…この子小さい時に貴方に助けられて凄く感謝しているよ...異常な位にね。 普通は年取ったおしどり夫婦ですら70なのに元から90、そこ迄理人が好きなんだよ…心当たりないかな?』

心当たりは…ないな。

俺に彼女が居たことは無いし、そんな愛された記憶は無い。

寧ろ美少女なんていうなら虐められた記憶しか…ないな。

トーコ? 塔子?

もしかしたら、トーコなのか?

トーコ以外にそこまで感謝されるような事はしていないよな。

トーコ?…よく見ると似ているような気がする。

名前だって、よく考えたらほぼ同じじゃないか?

『トーコ?』

『その記憶であっているよ…理人ごめんね』

『何でテラスちゃんが謝るの?』

『いやぁ~ テラスちゃんはこれでも神様だから、恋の邪魔は幾ら『薄情なムカつく死んでも良い子』でも出来ないわ…頑張ってね(汗)』

『テラスちゃん?』

『あはははっよかったじゃないか!『聖女』も手に入ったんだから!これで安心だね!』

『テラスちゃん! 俺、四肢切断とか怖いですよ』

『うん、愛されているから大丈夫だよ! ボソッ(多分ね)』

まぁ仕方ないな、塔子があのトーコだったのか。

俺の嫌な初恋の思い出だ。

今迄の生涯で祈ったのが『俺の為の1回だけだ』と言うのなら…真摯に向かい合うしかない。

そして時間が動き出した。

◆◆◆
「どうしたの?理人、私を呼び出すなんて!聖女パーティが上手く行きそうだからお礼でもしてくれるの?」

ああっ、顔が真っ赤になる、それと同時に足は少し震えている。

『初恋の思いで』と『虐めや恐怖の思いで』が頭の中でグルグルとダンスを踊っている。

『ありがとう塔子! これだけ伝えたくてね』

それだけ伝えると、俺はその場から走る様に逃げ出した。

「待ってよ!どうしたの? 理人ぉ!なんで逃げるのよ」

後ろから塔子の声が聞こえてきたが、俺はそのまま走り去った。


しおりを挟む
感想 47

あなたにおすすめの小説

フリーター転生。公爵家に転生したけど継承権が低い件。精霊の加護(チート)を得たので、努力と知識と根性で公爵家当主へと成り上がる 

SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
400倍の魔力ってマジ!?魔力が多すぎて範囲攻撃魔法だけとか縛りでしょ 25歳子供部屋在住。彼女なし=年齢のフリーター・バンドマンはある日理不尽にも、バンドリーダでボーカルからクビを宣告され、反論を述べる間もなくガッチャ切りされそんな失意のか、理不尽に言い渡された残業中に急死してしまう。  目が覚めると俺は広大な領地を有するノーフォーク公爵家の長男の息子ユーサー・フォン・ハワードに転生していた。 ユーサーは一度目の人生の漠然とした目標であった『有名になりたい』他人から好かれ、知られる何者かになりたかった。と言う目標を再認識し、二度目の生を悔いの無いように、全力で生きる事を誓うのであった。 しかし、俺が公爵になるためには父の兄弟である次男、三男の息子。つまり従妹達と争う事になってしまい。 ユーサーは富国強兵を掲げ、先ずは小さな事から始めるのであった。 そんな主人公のゆったり成長期!!

俺が死んでから始まる物語

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていたポーター(荷物運び)のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもないことは自分でも解っていた。 だが、それでもセレスはパーティに残りたかったので土下座までしてリヒトに情けなくもしがみついた。 余りにしつこいセレスに頭に来たリヒトはつい剣の柄でセレスを殴った…そして、セレスは亡くなった。 そこからこの話は始まる。 セレスには誰にも言った事が無い『秘密』があり、その秘密のせいで、死ぬことは怖く無かった…死から始まるファンタジー此処に開幕

夢幻の錬金術師 ~【異空間収納】【錬金術】【鑑定】【スキル剥奪&付与】を兼ね備えたチートスキル【錬金工房】で最強の錬金術師として成り上がる~

青山 有
ファンタジー
女神の助手として異世界に召喚された厨二病少年・神薙拓光。 彼が手にしたユニークスキルは【錬金工房】。 ただでさえ、魔法があり魔物がはびこる危険な世界。そこを生産職の助手と巡るのかと、女神も頭を抱えたのだが……。 彼の持つ【錬金工房】は、レアスキルである【異空間収納】【錬金術】【鑑定】の上位互換機能を合わせ持ってるだけでなく、スキルの【剥奪】【付与】まで行えるという、女神の想像を遥かに超えたチートスキルだった。 これは一人の少年が異世界で伝説の錬金術師として成り上がっていく物語。 ※カクヨムにも投稿しています

異世界でただ美しく! 男女比1対5の世界で美形になる事を望んだ俺は戦力外で追い出されましたので自由に生きます!

石のやっさん
ファンタジー
主人公、理人は異世界召喚で異世界ルミナスにクラスごと召喚された。 クラスの人間が、優秀なジョブやスキルを持つなか、理人は『侍』という他に比べてかなり落ちるジョブだった為、魔族討伐メンバーから外され…追い出される事に! だが、これは仕方が無い事だった…彼は戦う事よりも「美しくなる事」を望んでしまったからだ。 だが、ルミナスは男女比1対5の世界なので…まぁ色々起きます。 ※私の書く男女比物が読みたい…そのリクエストに応えてみましたが、中編で終わる可能性は高いです。

【リクエスト作品】邪神のしもべ  異世界での守護神に邪神を選びました…だって俺には凄く気高く綺麗に見えたから!

石のやっさん
ファンタジー
主人公の黒木瞳(男)は小さい頃に事故に遭い精神障害をおこす。 その障害は『美醜逆転』ではなく『美恐逆転』という物。 一般人から見て恐怖するものや、悍ましいものが美しく見え、美しいものが醜く見えるという物だった。 幼い頃には通院をしていたが、結局それは治らず…今では周りに言わずに、1人で抱えて生活していた。 そんな辛い日々の中教室が光り輝き、クラス全員が異世界転移に巻き込まれた。 白い空間に声が流れる。 『我が名はティオス…別世界に置いて創造神と呼ばれる存在である。お前達は、異世界ブリエールの者の召喚呪文によって呼ばれた者である』 話を聞けば、異世界に召喚された俺達に神々が祝福をくれると言う。 幾つもの神を見ていくなか、黒木は、誰もが近寄りさえしない女神に目がいった。 金髪の美しくまるで誰も彼女の魅力には敵わない。 そう言い切れるほど美しい存在… 彼女こそが邪神エグソーダス。 災いと不幸をもたらす女神だった。 今回の作品は『邪神』『美醜逆転』その二つのリクエストから書き始めました。

地獄の手違いで殺されてしまったが、閻魔大王が愛猫と一緒にネット環境付きで異世界転生させてくれました。

克全
ファンタジー
「第3回次世代ファンタジーカップ」参加作、面白いと感じましたらお気に入り登録と感想をくださると作者の励みになります! 高橋翔は地獄の官吏のミスで寿命でもないのに殺されてしまった。だが流石に地獄の十王達だった。配下の失敗にいち早く気付き、本来なら地獄の泰広王(不動明王)だけが初七日に審理する場に、十王全員が勢揃いして善後策を協議する事になった。だが、流石の十王達でも、配下の失敗に気がつくのに六日掛かっていた、高橋翔の身体は既に焼かれて灰となっていた。高橋翔は閻魔大王たちを相手に交渉した。現世で残されていた寿命を異世界で全うさせてくれる事。どのような異世界であろうと、異世界間ネットスーパーを利用して元の生活水準を保証してくれる事。死ぬまでに得ていた貯金と家屋敷、死亡保険金を保証して異世界で使えるようにする事。更には異世界に行く前に地獄で鍛錬させてもらう事まで要求し、権利を勝ち取った。そのお陰で異世界では楽々に生きる事ができた。

隠して忘れていたギフト『ステータスカスタム』で能力を魔改造 〜自由自在にカスタマイズしたら有り得ないほど最強になった俺〜

桜井正宗
ファンタジー
 能力(スキル)を隠して、その事を忘れていた帝国出身の錬金術師スローンは、無能扱いで大手ギルド『クレセントムーン』を追放された。追放後、隠していた能力を思い出しスキルを習得すると『ステータスカスタム』が発現する。これは、自身や相手のステータスを魔改造【カスタム】できる最強の能力だった。  スローンは、偶然出会った『大聖女フィラ』と共にステータスをいじりまくって最強のステータスを手に入れる。その後、超高難易度のクエストを難なくクリア、無双しまくっていく。その噂が広がると元ギルドから戻って来いと頭を下げられるが、もう遅い。  真の仲間と共にスローンは、各地で暴れ回る。究極のスローライフを手に入れる為に。

転生したおばあちゃんはチートが欲しい ~この世界が乙女ゲームなのは誰も知らない~

ピエール
ファンタジー
おばあちゃん。 異世界転生しちゃいました。 そういえば、孫が「転生するとチートが貰えるんだよ!」と言ってたけど チート無いみたいだけど? おばあちゃんよく分かんないわぁ。 頭は老人 体は子供 乙女ゲームの世界に紛れ込んだ おばあちゃん。 当然、おばあちゃんはここが乙女ゲームの世界だなんて知りません。 訳が分からないながら、一生懸命歩んで行きます。 おばあちゃん奮闘記です。 果たして、おばあちゃんは断罪イベントを回避できるか? [第1章おばあちゃん編]は文章が拙い為読みづらいかもしれません。 第二章 学園編 始まりました。 いよいよゲームスタートです! [1章]はおばあちゃんの語りと生い立ちが多く、あまり話に動きがありません。 話が動き出す[2章]から読んでも意味が分かると思います。 おばあちゃんの転生後の生活に興味が出てきたら一章を読んでみて下さい。(伏線がありますので) 初投稿です 不慣れですが宜しくお願いします。 最初の頃、不慣れで長文が書けませんでした。 申し訳ございません。 少しづつ修正して纏めていこうと思います。

処理中です...