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第19話 此奴らは、もう友達じゃない

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『理人、君は本当に自分を鍛え上げているね、だけど危なかったよ、あと少し大河がレベルを上げていたら、君が殺された可能性もあるんだ。これからは余り危険な事はしない方が良いよ。僕が一緒に居られるのはあと僅かなんだからね』

『解かった、もうしない』

『賢明だよ、さぁ今回は君が自分でやってみなよ!』

『神の借用書、請求バージョン』

大河と俺のステータス画面が現れた。

此処からは欲しい物を俺に移動してくれば良いんだよな。


赤城 大河
LV 3
HP 5600
MP 540
ジョブ 剣聖 異世界人
スキル:翻訳.アイテム収納、剣術レベル20(剣技は剣術に含む) 防御術レベル12(防御技は防御術に含む)


『剣聖』を取り上げた→ 借証書から『傷害事件の隠蔽が上手くいくよう神社で祈った分が消えた』

『剣術』を取り上げた→借証書から『放火がバレない様に神社で願った分が消えた』

『防御術』を取り上げた→ 『軟禁がバレない様に神社で祈った分が消えた』

尚、これでも1/9も回収していない。

赤城 大河
LV 3
HP 54
MP 0
ジョブ 無し 異世界人
スキル:翻訳 アイテム収納

神代理人
LV 4
HP 8400
MP 1400
ジョブ:英雄 剣聖 日本人
スキル:翻訳.アイテム収納、術(光1 雷1)剣術 防御術 草薙の剣召喚 魅了
※非表示の物あり

『可笑しいな、剣術、防御術は何故…勇者である大樹には無かったんだ』

『それは、剣聖独特のスキルだからじゃないかな?まぁそれがあれば上達しやすいそれだけの物だよ。僕からしたら、日本人はそんな物なんて、なくても努力で強くなれるんだ。補正が働いて更に上達が早くはなるから、確かに、異世界では重宝するけどね。実際に理人はそんな物持って無くても、此処まで強くなっているじゃない』

確かに俺は無能だったが、ちゃんと剣が使えた。

『そういう物ですか?』

『そう言う物だよ、あとは見ての通りレベルは相手が鍛えた結果だから奪えない。奪った時点で見ての通りスキルレベル0からスタートになるんだと思う』

『成程』

『多分! 異世界の糞女神のスキルなんて僕詳しくないし…合っているか、保証はしないけどね』

確かに同じ神とはいえ、此処は異世界、全部は知らなくても可笑しくない。

『確かに全部は解りませんよね』

だが、此処で可笑しい事に俺は気がついた。大河がやっている事クズ過ぎる。能力が奪えたという事は『神社で願った』時に日本の神が何かしらしたのだろう。

そんなクズみたいな事に『神様』が手を貸したとは思えない。

『あのテラスちゃん、気を悪くしないで欲しいんだけど、能力が奪えたという事は、祈った神社の神様が悪事の隠ぺいに手を貸したという事なのかな?』

『それは違うよ!神はあくまで、その子が幸せに成る様に手を貸すんだ! 多分、大河が悪い事しないように導こうとはしたんじゃないかな? まぁ大河には届かなかったみたいだけど?』

『変な事聞いて申し訳ありませんでした』

『解れば良いよ!僕は心配性なんだ!あと二人は危ないから早目に手を打つ事をお勧めするよ!糞女神が与えた力とは言え、五職は怖いからね!後のクラスメイトをどうするかは理人に任せるよ』

『任せるって』

『もう私の子じゃないもの!家族で言うなら親を足蹴にして他の家の子を選んだ親不孝者の感じに近いかな。』

『それは地球の神様の庇護下に既にない、そういう事であっていますか?』

『そういう事だね!『自分達が私達に残酷な事をした』なんて事に気がつかないで生きていくんだろうけどさぁ!知らなかった、気が付かなかったで済む問題じゃないんだよ!『神や世界を捨てたという罪はね』もう取り返しはつかないんだよ。だけど彼らはその贖罪をする事は無い。だってもう私達の子供じゃ無いからね!』

これは最早よその家の子だから関われない。そういう事だ!

『確かに此処は異世界、日本でも地球でも無いですからね』

『そうだよ!彼等はこれから困った事が起きた時に『私達ではなく』この世界の女神に祈って生きていく、もう僕たちの子じゃない…だから彼等との関係は理人に任せるよ!見捨てるもよし!助けてあげるもよし! だけど、彼等はもう死んでも地球には戻ってこれない。この世界で死んだ時に地球から迎えが来て戻れるのは理人、君だけだよ。その方が彼等も幸せかも知れないけどね!』

『なんで!でしょうか?』

『万が一奇跡が起きて地球に戻ってきても、裏切り者の彼等にはどの神もご利益を与えないから自力の力だけで生きていくしかない!死んだ後は神を捨てた罪の清算が待っているから、地獄へ行く事が決まっている!このまま戻らないで異世界で死んでいく方が幸せだと僕は思うよ!』

そう語るテラスちゃんの目はかなり寂しそうに見えた。

きっと神様であるテラスちゃんも色々な葛藤があるのかも知れない。

俺も考えなければならない。

だが『人を傷つけ殺す側の味方』になった事を俺は忘れる事が出来ない。

◆◆◆

大河はすぐに駆けつけてきた騎士がヒーラーの元に連れて行った。

俺としては大河より先にリチャード達を運んでいって貰いたかったが言っても無駄だろう。

五職(勇者、聖女、剣聖、賢者 大魔道)はこの世界で一番必要な人間達だ…こんなクズでも最優先なのは仕方が無いな。

リチャード達を運んでいく騎士達が俺に敬礼をしていった。

『剣聖である大河』を倒した相手にお礼は言いにくいから彼等なりのお礼の現れなんだろうな。

「神代くん」

「理人」

「良いよ、どうせ大河に脅かされたんだろう?」

冷静に考えてみれば、緑川もこいつ等も顔色が悪かった。

だが、それとだからと許せる問題じゃない。

「それじゃ俺を許してくれるのか」

「ごめんなさい」

頭じゃ理解は出来ている。

だが、俺の気持ちが拒絶する。

此奴らが謝っているのは俺が勝ったからだ。

もし俺が負けて居たら大河の手下として俺や平城さんに酷い事をしたに違いない。

虐めとは、そういう物だ。

「許す? 何故そんな事を言うんだ!別にお前達は友達じゃないから気にしてないよ! 大樹や大河の仲間なんだから仕方ないよな!俺はお前達に積極的に何かするつもりはないよ! だけど友達だとは一切思わない!…それで良いだろう!」

「理人、俺は違う…」

「工藤、違わない、お前は平城さんを押さえつけた、俺が負けたらどうしたんだ! 平城さんがどういう目に合うか解らないとは言わせない!」

「俺は、俺はそんなつもりは」

「なら、どんなつもりだ? 押さえつけて! 俺がぶちのめされたらおこぼれでも貰うつもりだったのか?クズ! 謝罪なんてどうでも良い! これでも我慢しているんだ、頼むから消えてくれ!」

蜘蛛の子を散らす様に元同級生は去っていった。

俺の近くには平城さんと塔子が、ただ黙って立っていた。


◆◆◆

なんで塔子が俺の味方をしてくれたか解らない。

口は悪いが助けられた事実は間違いない。

「塔子ありがとうな!」

ちゃんとお礼位言うべきだ。

「別に良いわよ!あんな馬鹿な事されたら困るのは私達だからね」

「それでもありがとう」

此奴は案外悪い奴じゃ無いのかも知れない。

平城さんが再び捕らえられない様に連れ出してくれたし、他の誰もが動かない中でヒーラーを呼びに行ってくれた。

此奴のが、他の同級生より真面なのかも知れない。

結局、駆けつけてきた騎士は大河を先に連れていったけどな。

「なら、貸し一つで良いよね」

確かに此れは借りだな。

「解かった、今度、塔子が俺に頼みたい事があったら言ってくれ、余程の事じゃない限り手を貸すよ」

「絶対ですからね!」

なんであんなに嬉しそうなんだ…

塔子って案外良い奴なのか?

「痛いっ」

いきなり平城さんに足を踏まれた。

「今、理人くん鼻の下が伸びていたよ」

「そんな事無いよ」

「そう? なら良いけどね」

なんで機嫌が悪いんだろう。

解らないな。

わからないな。
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