1 / 104
第1話 最悪の異世界転移
しおりを挟む今日もいつものように教室で寝ていた。
俺の家は神社で、手伝いが多く何時も朝早くから起こされるので、どうしてもこの時間は眠くなるんだ。
昨日もうちの親父に家の手伝いを夜遅くまでさせられ、疲れているのに、今日も朝から掃除をさせられたせいか、何時も以上に眠かった。
そのせいでどうやら熟睡していたようだ。
だが、今日はいつもと違っていた。
「理人(りひと)、早く起きろ…」
「理人くんで最後だから早く女神様の所にいって」
どうもクラスが騒がしい。
女神様…神?
まさか…
「えっ女神様? 何?」
訳が解らない。
俺が寝ぼけているとクラスメイトの一人工藤が説明をし始めた。
「理人が寝ている間に異世界の召喚で俺達はこの場所に呼ばれたんだ、そして今は異世界に行く前に女神イシュタス様が異世界で生きる為のジョブとスキルを皆に授けてくれているんだよ! お前もノンキに寝て無いで早く並んだ方が良いぞ」
興奮気味に工藤は俺に話してくる。
「冗談だろう」
普通は神にはそう簡単に会えない。
それを俺は知っている。
俺は周りを見渡した。
白くて何もない空間のようだ。
本当に神の世界なのか?
多分、嘘ではないな。
俺をだますためにこんな大掛かりな事は誰もしないだろう。
「それじゃ、俺は先に行くぞ、お前もジョブとスキルを貰ったら来いよ」
そういうと工藤は走って行ってしまった。
どうやら、ジョブとスキルを貰った者から先に異世界へ転移していくみたいだ。
俺は、女神様らしい女性のいる列に並んだ。
女神と言うのも頷ける。
綺麗なウエーブの掛かった金髪に綺麗な青い瞳。
凄く神々しく、そして慈愛に満ちた顔をしている。
『美しく優しく気高い女性』
それが俺から見た、女神イシュタスのイメージだった。
俺の一族は『神』とは縁がある家柄だ。
だが、神に会ったなんて話は聞いたことが無い。
精々が爺ちゃんあたりに偶に神託がある、それ位だ。
『俺が女神に会った』それを知ったら、きっと爺ちゃんは悔しがるに違いない。
しかし、『女神イシュタス様』か?
どんな神様なんだろうか?
だが、可笑しな事に心の中で『神とは違う』と何かが否定をする。
何が違うのか、俺には解らないが…俺の中のナニカがこの女神を否定する。
俺は神代…神を否定なんてして良い家柄人間じゃない。
代々『神を祀る、由緒ある神社』の子だ。
きっと、何かの間違いだ。
次々にクラスメイトがジョブとスキルを貰っていく中、いよいよ最後に並んだ俺の番がきた。
他のクラスメイト達はもう異世界に向かったようだ。
俺の顔を見た途端、あの気高く美しく見えた女神が顔をしかめた。
「貴方神臭いわね…」
女神が何故、そんな事を言うのか俺には理解が出来なかった。
確かに俺は神にあったことは無いが神代神社の神主の孫『仕えている』といえば仕えている事になるだろう。
当たり前の事なのだが、神に仕えて問題があるのか?
「神臭い? 確かにそうかも知れません、俺、いえ私は代々神を祀る神職の家系ですから、女神イシュタス様の世界だと教会の神官の孫みたいな者だと思います」
貴方も女神様、神なんじゃないのか?
「そう神職なのね、異世界で魔王が現れ困っている。そして一国の王族が勇者召喚をして君たちを呼ぼうとしたのよ...ここまでは理解できますか?」
こういう事もあるのか…
しかし、何故他の世界の人間を異世界に連れていく必要があるのだろう?
まるで『神』の話ではなく、小説の話みたいだ。
「何となく小説とかで読んだ話に似ている気がします」
「理解は早いわね…だけど困った事があるのよ…」
何故か、嫌な予感がする。
虫の知らせって奴だ。
「何でしょうか?」
「本当に臭いわ、嫌になる程『他の神の臭いがする』私は女神なのよ? 他の神の臭いがするお前は、本当に臭くて気持ち悪いわ!」
何かが可笑しい。
八百万の神や異国の神であっても、日本に存在する神は優しく、爺ちゃんに聞いた限りでは、こんな言い方はしない…筈だ。
「あの、女神イシュタス様?」
目の前に居るのは本当に俺の知る『神』なのか?
まさか、神であっても悪神なのか?
人間離れした美しい存在なのに、急に俺は女神イシュタスが不気味に感じはじめた。
「お前みたいに『気持ち悪い奴』にはなんの加護も与えたくないわ」
不味い、もしかしてやはり、悪神なのかも知れない。
不味い事になった。
「もし、俺が気に要らないのであれば、何もしないで元の場所に戻して貰えませんか?」
「この魔法はあの場に居た全員に掛かっているから、貴方1人戻すなんて無理ですね」
不味いな、嫌な考えばかりしか浮かばない。
「そうですか、それでは俺をどうするつもりですか」
「よく考えたら、貴方がどうなろうと私には関係ないわね…他の神の臭いがするんですもの…そのまま何も与えずに異世界に送る事に決めたわ!神臭いお前が悪いのよ!うふふっ、地獄の様な生活が目に映るわ、無様に惨めに、皆から馬鹿にされて死んでいきなさい」
此奴は敵だ…もう女神なんて敬う必要は無い。
道理で、何か違和感がある筈だ。
女神イシュタス…恐らくこの女神は俺が知っている『神』と何も接点が無い。
いや、寧ろ『神臭い』なんて言っている位だ、嫌っている可能性すらある。
「どうせ、慈悲を乞うても無駄なんだろうな…」
「そうね、貴方には一切の慈悲を与える気は無いわ…神臭くてキモイ…お前が悪いのよ」
「そうか…ならばお前は神じゃない…俺はどうせ死ぬのだろうが…死ぬまでお前という神を否定してやる…女神イシュタス、お前は俺の神敵だ!」
「そう? 勝手にすれば、私の世界でなんの加護も無しに死んでいくが良いわ…そうね『翻訳』それだけは慈悲であげる、惨めさを味わわせる為に…自分が如何に惨めな存在か解るようにね…」
こうして俺は何も貰えずに異世界に送られた。
19
お気に入りに追加
2,790
あなたにおすすめの小説
フリーター転生。公爵家に転生したけど継承権が低い件。精霊の加護(チート)を得たので、努力と知識と根性で公爵家当主へと成り上がる
SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
400倍の魔力ってマジ!?魔力が多すぎて範囲攻撃魔法だけとか縛りでしょ
25歳子供部屋在住。彼女なし=年齢のフリーター・バンドマンはある日理不尽にも、バンドリーダでボーカルからクビを宣告され、反論を述べる間もなくガッチャ切りされそんな失意のか、理不尽に言い渡された残業中に急死してしまう。
目が覚めると俺は広大な領地を有するノーフォーク公爵家の長男の息子ユーサー・フォン・ハワードに転生していた。
ユーサーは一度目の人生の漠然とした目標であった『有名になりたい』他人から好かれ、知られる何者かになりたかった。と言う目標を再認識し、二度目の生を悔いの無いように、全力で生きる事を誓うのであった。
しかし、俺が公爵になるためには父の兄弟である次男、三男の息子。つまり従妹達と争う事になってしまい。
ユーサーは富国強兵を掲げ、先ずは小さな事から始めるのであった。
そんな主人公のゆったり成長期!!
俺が死んでから始まる物語
石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていたポーター(荷物運び)のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもないことは自分でも解っていた。
だが、それでもセレスはパーティに残りたかったので土下座までしてリヒトに情けなくもしがみついた。
余りにしつこいセレスに頭に来たリヒトはつい剣の柄でセレスを殴った…そして、セレスは亡くなった。
そこからこの話は始まる。
セレスには誰にも言った事が無い『秘密』があり、その秘密のせいで、死ぬことは怖く無かった…死から始まるファンタジー此処に開幕
【リクエスト作品】邪神のしもべ 異世界での守護神に邪神を選びました…だって俺には凄く気高く綺麗に見えたから!
石のやっさん
ファンタジー
主人公の黒木瞳(男)は小さい頃に事故に遭い精神障害をおこす。
その障害は『美醜逆転』ではなく『美恐逆転』という物。
一般人から見て恐怖するものや、悍ましいものが美しく見え、美しいものが醜く見えるという物だった。
幼い頃には通院をしていたが、結局それは治らず…今では周りに言わずに、1人で抱えて生活していた。
そんな辛い日々の中教室が光り輝き、クラス全員が異世界転移に巻き込まれた。
白い空間に声が流れる。
『我が名はティオス…別世界に置いて創造神と呼ばれる存在である。お前達は、異世界ブリエールの者の召喚呪文によって呼ばれた者である』
話を聞けば、異世界に召喚された俺達に神々が祝福をくれると言う。
幾つもの神を見ていくなか、黒木は、誰もが近寄りさえしない女神に目がいった。
金髪の美しくまるで誰も彼女の魅力には敵わない。
そう言い切れるほど美しい存在…
彼女こそが邪神エグソーダス。
災いと不幸をもたらす女神だった。
今回の作品は『邪神』『美醜逆転』その二つのリクエストから書き始めました。
夢幻の錬金術師 ~【異空間収納】【錬金術】【鑑定】【スキル剥奪&付与】を兼ね備えたチートスキル【錬金工房】で最強の錬金術師として成り上がる~
青山 有
ファンタジー
女神の助手として異世界に召喚された厨二病少年・神薙拓光。
彼が手にしたユニークスキルは【錬金工房】。
ただでさえ、魔法があり魔物がはびこる危険な世界。そこを生産職の助手と巡るのかと、女神も頭を抱えたのだが……。
彼の持つ【錬金工房】は、レアスキルである【異空間収納】【錬金術】【鑑定】の上位互換機能を合わせ持ってるだけでなく、スキルの【剥奪】【付与】まで行えるという、女神の想像を遥かに超えたチートスキルだった。
これは一人の少年が異世界で伝説の錬金術師として成り上がっていく物語。
※カクヨムにも投稿しています
異世界でただ美しく! 男女比1対5の世界で美形になる事を望んだ俺は戦力外で追い出されましたので自由に生きます!
石のやっさん
ファンタジー
主人公、理人は異世界召喚で異世界ルミナスにクラスごと召喚された。
クラスの人間が、優秀なジョブやスキルを持つなか、理人は『侍』という他に比べてかなり落ちるジョブだった為、魔族討伐メンバーから外され…追い出される事に!
だが、これは仕方が無い事だった…彼は戦う事よりも「美しくなる事」を望んでしまったからだ。
だが、ルミナスは男女比1対5の世界なので…まぁ色々起きます。
※私の書く男女比物が読みたい…そのリクエストに応えてみましたが、中編で終わる可能性は高いです。
地獄の手違いで殺されてしまったが、閻魔大王が愛猫と一緒にネット環境付きで異世界転生させてくれました。
克全
ファンタジー
「第3回次世代ファンタジーカップ」参加作、面白いと感じましたらお気に入り登録と感想をくださると作者の励みになります!
高橋翔は地獄の官吏のミスで寿命でもないのに殺されてしまった。だが流石に地獄の十王達だった。配下の失敗にいち早く気付き、本来なら地獄の泰広王(不動明王)だけが初七日に審理する場に、十王全員が勢揃いして善後策を協議する事になった。だが、流石の十王達でも、配下の失敗に気がつくのに六日掛かっていた、高橋翔の身体は既に焼かれて灰となっていた。高橋翔は閻魔大王たちを相手に交渉した。現世で残されていた寿命を異世界で全うさせてくれる事。どのような異世界であろうと、異世界間ネットスーパーを利用して元の生活水準を保証してくれる事。死ぬまでに得ていた貯金と家屋敷、死亡保険金を保証して異世界で使えるようにする事。更には異世界に行く前に地獄で鍛錬させてもらう事まで要求し、権利を勝ち取った。そのお陰で異世界では楽々に生きる事ができた。
隠して忘れていたギフト『ステータスカスタム』で能力を魔改造 〜自由自在にカスタマイズしたら有り得ないほど最強になった俺〜
桜井正宗
ファンタジー
能力(スキル)を隠して、その事を忘れていた帝国出身の錬金術師スローンは、無能扱いで大手ギルド『クレセントムーン』を追放された。追放後、隠していた能力を思い出しスキルを習得すると『ステータスカスタム』が発現する。これは、自身や相手のステータスを魔改造【カスタム】できる最強の能力だった。
スローンは、偶然出会った『大聖女フィラ』と共にステータスをいじりまくって最強のステータスを手に入れる。その後、超高難易度のクエストを難なくクリア、無双しまくっていく。その噂が広がると元ギルドから戻って来いと頭を下げられるが、もう遅い。
真の仲間と共にスローンは、各地で暴れ回る。究極のスローライフを手に入れる為に。
転生したおばあちゃんはチートが欲しい ~この世界が乙女ゲームなのは誰も知らない~
ピエール
ファンタジー
おばあちゃん。
異世界転生しちゃいました。
そういえば、孫が「転生するとチートが貰えるんだよ!」と言ってたけど
チート無いみたいだけど?
おばあちゃんよく分かんないわぁ。
頭は老人 体は子供
乙女ゲームの世界に紛れ込んだ おばあちゃん。
当然、おばあちゃんはここが乙女ゲームの世界だなんて知りません。
訳が分からないながら、一生懸命歩んで行きます。
おばあちゃん奮闘記です。
果たして、おばあちゃんは断罪イベントを回避できるか?
[第1章おばあちゃん編]は文章が拙い為読みづらいかもしれません。
第二章 学園編 始まりました。
いよいよゲームスタートです!
[1章]はおばあちゃんの語りと生い立ちが多く、あまり話に動きがありません。
話が動き出す[2章]から読んでも意味が分かると思います。
おばあちゃんの転生後の生活に興味が出てきたら一章を読んでみて下さい。(伏線がありますので)
初投稿です
不慣れですが宜しくお願いします。
最初の頃、不慣れで長文が書けませんでした。
申し訳ございません。
少しづつ修正して纏めていこうと思います。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる