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第29話 気になる視線

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何者かに見張られている気がする。

聖教国に入るかなり手前から冒険者ギルドに顔を出していない。

だから、密偵でも放たない限り、俺達の居場所は解らない筈だ。

此処は聖教国の街だから、盗賊などが居たとしても俺より裕福な商人や貴族、聖職者を狙う筈だから…この前の様に盗賊の可能性は低い。

不味いな…そうすると勇者絡みの可能性が高い。

暫くは放置しておくしか無い。

正直言ってしまえば、聖教国が此処迄、住み心地が良いと思わなかった。

調べてみれば、結構な数の家が別荘地件自宅として売り出されている。

大きな別荘はかなり高額だが…小さい物ならお手軽な金額の物も結構ある。

俺と京姉で暮すなら小さい物で充分な気がする。

尤も此処は異世界だから…小さな家でも前世で言う3LDK位はある。

大きく分けてリゾートに当たる場所と違う地域があり…このリゾートにお当たる場所がまるで日本の様に思える場所だった。

「リヒトくん、此処凄く過ごしやすいね」

そう言いながらクレープを頬張る京姉はまた凄く新鮮に思える。

しかし、よくもまぁこんな面白い場所を作ったもんだ。

海の近くの温泉街の様な場所だが…此処は少し昔の原宿に似ている。

ただ、やはり異世界なので微妙に可笑しい物もある。

例えば、ラーメン…頼んで出てきた物はうどんみたいな食べ物だった。

ちなみに前世の水着に近い物は…あった。

だが、それは『水精の水着』という名前で、下手したら1軒の家が買えるような金額で…京姉から反対され買えなかった。

「此処は最高だな…もし暫く此処で暮らして問題が起きないようだったら、此処で暮すのも良いかも知れない」

「うん…私、こんな楽しい場所があるなんて知らなかったよ」

京姉の今迄の人生は地獄の様な物だった。

だから、何処で過ごしても楽しい筈だが…

此処は別格だ。

恐らく帝国に行っても此処程、住みやすそうな所は無いかも知れない。

「京姉…俺も本当にそう思うよ…しかも此処なら、少し遠出をすればまだまだ狩りで稼げる、ある意味理想だよね」

「うん…ご飯も美味しいし、自然が沢山あって、それなのに買い物にも困らない…最高だよね」

何よりヒーラーの数が多い。

聖教国なのだから当たり前と言えば当たり前だ。

前世で言うなら医療施設が充実しているのと同じだ。

更に、リゾート施設の近くは前世で言う『別荘地』みたいな環境だから近所付き合いが濃厚じゃない。

村社会関係なく生活できるから…後から住んだよそ者扱いをされない。

本当に場所としては最高だ。

後は勇者絡みで問題が無ければ、此処に住みたい。

本当にそう思える。

こんな事思いたくはないが『カイト』負けてくれないかな。

本当にそう思う…

可哀そうだが、勝てる未来が思いつかない。

勿論、勝ってくれても構わない。

だが、早く決着がつけば…もう俺に構わないで貰える。

「そうだね…此処で生活するのを少し延長しようか?1か月位暮らしてみて、問題が無ければ、ここで暮すのも良いかも知れない…まぁもっと過ごし良い場所もあるかも知れないから…あくまで取り敢えず…だね」

視線の事がどうも気になる。

「急いで決める事も無いよね…暫く此処で暮すのは…賛成…リヒトくん、あれも美味しそう…あれ、何だろう?」

漢字で『お好み焼』って書いてある。

「あれはお好み焼きっていうんだよ…多分美味しいと思う」

「そうなんだ…食べたい」

「それじゃ、京姉がまだ食べられるなら買おうか?」

「うん」

京姉の浴衣姿も見られるし…此処で暮すのも良いかも知れない。

だが…この視線がどうも気になる。
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