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第20話 すき焼きモドキ 探せないリヒト
しおりを挟む「京姉おはよう」
「おはよう、リヒトくん…」
死体は全部焼いたし、血も気をつけて全部拭いた。
人が居ないだけで…後は可笑しい所は無いよな。
「それじゃご飯にしようか? 食材を貰ったから小鍋を作ったんだ、顔を洗って口を注いできて、はいハーブ水」
「リヒトくん、ありがとう…」
眠そうな京姉が凄く可愛い。
本来の京姉は、多分朝が弱かったんだと言うのが一緒に暮らして良く解った。
それなのに、強制的に朝早くから働かされていたんだから…辛いよな。
俺も結構な早起きだが、村ではいつでも働いている京姉に会った気がする。
朝寝坊したり、偶にズボラになる京姉を見ると…凄く嬉しい。
これがきっと『本当の京姉』だから…
「リヒトくん…この鍋美味いね…」
これは俺のオリジナル鍋だ。
悪いけど、カイト達にも失敗作しか食べさせた事はない。
肉も具材も違いがあるが…
これが俺の前世でのご馳走『すき焼き』モドキだ。
ほぼ再現したけど…これが限界だった。
「俺のオリジナルなんだよ!京姉に食べて貰いたくて頑張ったんだよ」
「だったら大成功だね…胃袋鷲掴みだよ! 所で、なんで誰も居ないの?」
「何でもこの村は農業が盛んで、今日は作業日なんだって、だから朝食を作れないの忘れていたそうだよ…昨日お詫びにきて食材を預かったんだ」
「そうなんだ」
「うん、それじゃご飯を食べたら早速出かけよう…食べた後はそのままで良いって言っていたからね」
「そうだね、急がないと次の街に夜までにつかないもんね」
「そうだね」
まだまだ大丈夫だと思うけど…急いだほうが良いだろう。
◆◆◆
俺達はリヒトの後を追う為に飛竜艇をチャーターした。
この際、お金に糸目はつけられない。
お金は教会が出してくれるから問題はない。
ただ、問題は…
「リヒト様の行方ですか? それはお教えできません」
「何故だ、俺達にリヒトが必要なんだ」
「ちゃんとした手続きで離隊届けが出されていますよ。ギルドだけじゃなく国にもね…少し遅れてですがカイト様もパーティから正式に外しているじゃないですか? 流石にこの状態の人間に、居場所はお伝えできませんよ」
「それじゃ依頼する! リヒトの捜索を頼む」
「お受けできません…リヒト様から先に一切自分達の居場所を口外しないで欲しいという依頼を受けております」
「何とかならないのか? 俺は勇者だぞ…」
「勇者権限をお使いになれば可能です。ただ、それは記録に残りますよ! 追放した人間を法を捻じ曲げてまで探した…これは生涯消える事はありません…使われれば、ギルドは従わざる負えません…ですが、個人的に反対です! 周りを御覧なさい」
「なっ」
なんでそんな目で俺を見るんだ…
俺は勇者だ、世界を救う為に戦っているんだぞ。
それなのに…何だ、その目は。
「皆、貴方達がリヒト様にした事は知っているんですよ? 散々虐げて…破廉恥な行為まで見せつけた挙句、ボロ雑巾の様に捨てた…これ以上リヒト様に何をする気ですか」
「俺は…違う、円満離隊だ…」
「そうなんですか? 円満ならもうリヒト様に構う必要は無いですよね!」
「もう良い…頼まない!」
クソっ…これじゃ彼奴の居場所を探れないじゃないか…
敵を見るような目を向けられて俺はギルドから去る事しか出来なかった。
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